「“リジー!どこに向かってるの!?“」
「ゲヘナだゲヘナ!そっちに俺の傭兵たちを待機させてるからそこに貴様を避難させる!」
GLとか爆弾とかでデコボコになっている道を走りながら辺りを見渡す。
「あっちこっちが激戦区だな!良くもまぁ弾丸が当たらないもんだ!」
瓦礫とかもあるが小さいのならぶつかるだけで砕けるからそこまで気にする必要はないだろ。気にする必要があるとしたら目の前で通行止めをしてるあの子だよな。
「先生!良く聞けよ!今からお前を道に先に投げ飛ばす!着地したら一気に脇目も降らずに逃げろ!」
「“え!?リジー!そんなこと突然言われても!“」
「俺はお前にアビドス生徒や今回の件を突然やられたんだぞ!良いからやれ!!」
アリウス生徒と思わしき少女の前まで行った瞬間俺は先生とゲヘナ生徒の乗ったパワードスーツを投げ飛ばした。
「うぉおおおらああ!」
「投げただと!?」
そして少女は先生に気を取られてる間に後ろに回り込み追わせないようにする。
「ふははは!立場は逆転したようだな!ここから先は通さんぞ!」
「…そうやってまた搾取するのか。味方のフリをして」
「ん?」
なんだ?この生徒俺を知ってるような口振りだけど。もしかしてカイザー理事の時に出会ってたのか?
「…絞りとるだけ絞りとり、用が無くなればゴミのように捨てる。マダムから聞いた通りの男だ、表向きは良い人を演じて最後には死ぬまで搾取する」
「…はぁ?」
「今回のことも武器を売るための口実として来たんだろう?この戦闘を長引かせ、より多くの金を得るために!」
なんか凄い誤解を受けてるんだけど。
「…なんだ?貴様はそのマダムとやらの言葉を鵜呑みにしているのか?」
「合っているだろう?カイザーPMC理事、お前は金を手に入れることさえ出来ればどんな事でもする外道だ!」
そうかぁ、この子もそう言う感じか。しかもなんか根強い感じするし。
「……なるほど、所詮貴様も操り人形という事か」
「…なに?」
「そうではないか?口を開けば二言目にはマダムがそう言った。まるでマダムが全て正しいと言わんばかりの言い草ではないか」
レーダーにはちょいと遠目にいる狙撃手と、さっきのRL持ってた子。囲まれてるし。
「貴様らには考える脳が足りないのか?それとも考えてその思考なのか?」
「お前…言わせておけば」
「図星か?銃を撃てば何でも解決できると思うなよ。小娘、その引き金を引くことの意味さえ分からずにただ言われるがままに動くだけの操り人形、ただ聞いただけだと言う曖昧な事でそれは全てだと決めつけてしまう短絡さ、よくもまぁそんな頭でこんなことが出来たものだな。いや、それもマダムのお陰か?貴様ら如きではこのような作戦は思いつかぬよなぁ?」
他二人はどうか知らないけど目の前の子は怒り始めたな。殺気がダダ漏れになってる。
「なんだ?事実を言われて怒ったか?ならば言い返してみろ。ほら、待っててやるから」
「お前の戯言に付き合ってる暇はない!」
「……で?それだけか?」
無言で何発も銃弾を撃ち込まれるが耐久値は全く減っていない。
「…それだけの様だな、では続けさせてもらおう、貴様は俺が子供から搾取するだけの存在だと言っていたな?なるほど、確かに俺も言い返せないところはある、が、俺はあくまで正当な取引を行い正当な金を受け取っているだけに過ぎない。金を集めるのが目的?あぁそうだな。うちには給料を払わなければならない社員や兵士、整えなければならない施設や設備があるんだ。そりゃあ金は集める努力はするとも、しかし、俺はちゃんとした働きをした者にそれ相応の報酬を与えている。対して貴様らのところは?隙間風の多いボロ小屋、まともな栄養が取れない食事、まともに生きることすら難しい悪環境」
俺はパワードスーツから降りて彼女の目の前に立つ。
「…さて?本当に搾取されているのはどちらかな?」
「っ!黙れ!」
頭に銃弾が撃ち込まれるが、丈夫なのがこの体の取り柄、一発ぐらいなら無傷でやり過ごせるのさ。
「黙らんさ。俺はな、そんな環境に置かれても今のまだそのマダムとやらの命令を聞いて動いてるお前たちにイライラしているんだ!お前たちの言うマダムはどこにいる!子供だけにやらせて自分だけ高みの見物とは良い度胸をしてるじゃないか!えぇ?俺が保護したアリウス生徒は全員怯えていたよ!涙を流しながら教えてくれたさ!アリウスで何がされているのか、何が起こっているのかを!やらされることは戦闘に関することばかり。寝床は碌な整備もされておらずいつもボロボロ、食事はパンと冷え切った薄いスープ!そして昨日まで一緒に笑っていた筈の友が、明日には物言わぬ冷たい屍になっている!!」
今の俺はミレニアムの時よりも怒っている。今回はアリウスだけじゃなく、ゲヘナやトリニティまで被害が出てる。
「教えて貰おうか!マダムの居場所を!貴様らをそんな風にした大馬鹿者を!!」
「……事前の情報と全く違う…これが、カイザーPMC理事?」
目が左右に揺れ、あり得ないと呟く彼女を見ながら俺はパワードスーツにまた乗り込む。
「…貴様がそのまま操り人形で良いと言うのなら、それで構わんさ、だが一つ言っておく、襲撃の日、アリウスの生徒は…彼女たちは自分たちで物事を考え俺の手を取ったぞ…貴様は貴様に手を伸ばしてくれる存在を、何も考えずに振り払う気か?」
正直、俺じゃああの子達を説得するのは無理だ。だから先生に丸投げしようと思う。
「…お前は本気で言っているのか?…マダムの場所を知ってどうするつもりなんだ?」
「なんだ、質問をするだけの思考は持ち合わせていたか」
俺はこの話を聞いてからずっとやろうと思っていたことを彼女に言う。
「そんなもの、殴りに行くに決まってるだろ?」
目の前の少女がそんなことしようとも思わなかったと言う表情で俺を見る。
「……聞かせてくれ、お前は…お前は一体誰なんだ?本当にカイザーPMC理事なのか?」
「何を今更、俺は海崎リジー、カイザーPMC理事としてではなくただの傭兵としてこの場に立っているのだよ。傭兵と言う立場ならばある程度自由が出来るからな!ふはははは!」
「…自由……自由か」
自由だからこそこうやって先生に依頼されたんだけどね?
『リジー、襲撃の位置からアリウス生徒が出て来た道を辿った結果、ある地点で消失しています。恐らくそこがアリウス分校の所在かと』
(分かった。じゃあスピアや傭兵たちにデータ送っといて、俺は先に行くってね)
『了解』
−−−待っているが良いマダム。今の今まで虐げられて来たアリウス生徒の恨み辛み、お前にそのままぶつけてやる!