『リジー、先ほどの戦闘で一部の武装が使用出来ません。注意してください』
(分かった)
ここから先にはアリウス生徒や幽霊モドキは見当たらないと言うことは、ここには誰も近づけたくない理由があると言うことだ。こう言う場合の理由は大概。
「黒幕以外に居ないよな」
扉を開け中に入ると白いドレスを着た赤い肌の女性が立っている。
「…あら、私のバシリカへようこそ、カイザーPMC理事、私はベアトリーチェ、ゲマトリアの一人です」
「どうも初めましてだな。マダム」
『リジー…ベアトリーチェと名乗る女性の奥から生命反応があります』
コンに言われ奥を見ると、仮面を付けた少女は枝のような何かに巻き付かれ磔にされていた。
「………おい、貴様の後ろのそれはなんだ?」
「それ?…あぁ、これは儀式ですよ。ロイヤルブラッドの神秘を吸収し、キヴォトス外から到来する力を借りて……私は自分の存在をより高位なものへと昇華しています」
「…より高位なものだと?」
こいつ、何を言ってるんだ?まさかそれだけのためにこんな大掛かりなことをやらかしたって?
「私たちはこの世界を通じて各自が望むことを追求しています。あなただって、同じ。何に成ることも出来るし、全てを織ることが出来ます。より高位な存在になることーーそれを通じて全てを救うことが大人の義務なのです」
「……その為ならば犠牲は致し方ないと?」
こいつは本当にゲマトリアなのか?今回の出来事も、先生がいる中でミサイルを落とし、古聖堂に爆弾を仕掛けて。先生を殺しに掛かっているじゃないか。黒服は先生を殺すことなんてしていないのに。
「えぇ、この犠牲は必要なこと、これこそが「崇高」へ至る道。あなたならば理解しているでしょう?圧倒的な軍事力を持ち、些細なことを揉み消すことが可能な権力を持つ。あなたなら!」
「……つまりは子供は道具だと?」
ベアトリーチェが笑みを深めて言う
「そうでしょう?あなたは搾取する側の存在、私と同じなのですから…生徒たちはお互いに騙し合い傷つけ合う地獄の中で私たちに搾取される存在なのですから」
なるほど、そうか、それが貴様の本性か…。
「ははは……ははははは!」
「…?どうしたのですか?突然笑い出して」
「ふはははははははは!………ふざけるなよ」
「!?」
こんなやつの為に…こんなやつなんかの為にあの子たちは!!
「搾取する側…確かにそうだ。俺が俺である限りその事実は変わらない、しかし、だからと言って俺は決して子供が搾取されるだけの存在と思ったことなどただの一度もない!」
「…何を言うのかと思えば」
銃口をベアトリーチェへと向けて黙らせる。
「……救済するのが義務だと言ったな?ならば子供を虐げるのも義務か?偽りの憎しみを教えるのが義務か?美味い飯を食べさせないのは義務か?」
「 人を殺すよう教育するのも義務か?」
こいつは認められない、こいつだけは認めてはいけない。こんなやつを教育者と認めるのは許されない。
「貴様はただ自分が崇高になれれば良いと思っているだけの子供だ。アリウスと言う小さなサンドボックスの中で自分は神だとごっこ遊びをしているだけに過ぎない」
「私が子供ですって?」
ここで初めてベアトリーチェが笑みをやめて俺を睨み付ける。
「そうだろう?貴様は自分が絶対的な神だと思い込んでいる。小さな箱庭しか知らない世間知らずだ。自分には誰も逆らえないと傲慢にも思い込み、このような大惨事を引き起こす。それがただ自分を楽しませるだけのおもちゃだと言わんばかりに」
そしてそれをやった本人はこれも必要な犠牲だと言い切る始末。
「…俺は決して善だと言えるような大人ではない。だが、それでも外道に成り下がったつもりはない!貴様はただの殺戮者だ!人を殺してもなんとも思わない、むしろそれを愉悦とすら思うような外道!そんな貴様が救済者だと?崇高な存在だと?」
「思い上がるな!!!」
俺の言葉に肩を震わせて怒るベアトリーチェ、彼女が突然顔を上げたかと思うと腕を広げ声を張り上げる。
「それならばあなたに見せて差し上げましょう!不愉快なる私の敵対者!ロイヤルブラッドの神秘を搾取した姿……これこそが高位の……偉大なる大人の姿だと!!」
ベアトリーチェはパワードスーツほどの大きさにまで巨大化し、頭に花を咲かせた異形へと変わり果てた。
「ふははははは!それが偉大なる大人か?…俺にはただの化け物にしか見えんなぁ!!」
「そうやって調子に乗っていられるのも今のうちです。あなたには先生を殺す前の前座になって頂きましょう!」
−−−こいつは一発殴るだけじゃ気が済まない!