成り変わりカイザー理事の奮闘物語   作:CoCoチキ

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四十五話 カイザー理事と錠前サオリ

 

 二日後、モモイは早速大人数で遊べるタイプのパーティーゲームを持って遊びに来てくれた。

 

 「そしてこのサイコロで決まった数だけ進むとマスの色やマークによって色んなイベントが起こるの!」

 「あの、このイベントとは?」

 「ん?これは新しいサイコロが貰えるイベントだね!」

 

 アリウスの子たちはモモイたちゲーム開発部に任せて俺は散歩に出た。

 

 「ん?…雨か、まぁ問題ないな」

 

 この体だと特に風邪を引く心配がないから傘を持たずに外へ出る。

 

 「…このアビドスも、砂漠化が進んでいるとは言え俺が買わなければ人がもう少しいたのかもな」

 

 俺が歩いている場所はいつも人通りがなく誰も近寄ろうとしない無人の区域。ここは俺がカイザーPMC理事に成り変わる前に住民を退去させたから、誰も近づかないし、きっと近づきたくない。

 

 「でも、だからこそ一人になりたい時にはピッタリな場所だ」

 

 独り言を言っていると公園の方で空を見上げているアリウスの生徒が居た。確かアリウススクワッドと名乗っていた気がするな。

 

 向こうの俺に気付いたようで少し驚いた顔をしていた。

 

 「…お前はカイザーPMC理事…他の仲間とゲームをやっていたはず」

 「少し一人になりたくなってな、抜けてきた。そう言うキミは?一緒にゲームをやらないのか?」

 「……私には少し、眩しくてな」

 

 だから一人抜け出してきたってことか。

 

 「………私はあそこにいる資格なんてない。アリウスの仲間を率いていたのも。この銃を握って事を起こさせたのも私なのだから」

 「…それは洗脳されていたから、なんて言葉が欲しいわけじゃないだろ?良かったな。俺が先生じゃなくて、先生だったらきっとキミを慰めていた筈だから」

 

 彼女の目には自責の念で溢れている。彼女自身が自分を許す事を望んでいないんだ。俺が何かを言うのはお門違いだろ。

 

 「…俺もな、本当は先生に倒されていてもおかしくない事をやらかしたんだ」

 「…お前が?俄には信じられないな、あの時、腕を失ってでもマダムに立ち向かっていた言うのに」

 「キミ、名前は?」

 「…錠前サオリ」

 

 彼女は少し迷った後に名前を名乗ってくれた。

 

 「錠前サオリ、キミが言っていた俺が搾取する側の外道だって言うのもあながち間違っていなかったんだよ」

 「なに?」

 「ここ、人が居ないだろう?なのに街だけは残っている」

 

 錠前サオリは辺りを見渡して、「確かに」と呟く。

 

 「……俺のせいなんだ。俺がここの土地を買い取って住民を追い出した」

 「なんだって!?」

 

 どれだけ偽ろうと俺はもうカイザー理事なんだ。カイザー理事がやったことだとしても、俺がカイザー理事である限りその責任は俺にある。

 

 「今更ながらバカな事をしたと思っているよ。あれだけベアトリーチェに説教をしていた俺も所詮は自分勝手な大人だったのだから」

 「……お前はどうしてそんなことを?」

 「この砂漠に隠されていると言う兵器、それを手にする為…ただそんな馬鹿げたことの為に俺はアビドスを買い、住民を追い出した。それに、アビドス高校の子たちの弱みにも付け込んだ」

 

 そんな兵器持ったところでどうしようもないのにな。

 

 「気付いた時にはもう遅かったさ。小鳥遊ホシノは攫われ、俺の部下の襲撃は始まっていた…どうにか事態を治めることは出来たけど、それでも俺がやったと言う事実は変わらないんだ」

 

 だからこうやって散歩と言って抜け出しては誰も居ない所まで歩いて来てる。

 

 「それに…俺は一人の少女を犠牲にキヴォトスの危機を回避しようともした。犠牲なんてバカバカしいと言っておいてな。ほんと、矛盾してる」

 「……お前もそうなんだな。周りから許されても、お前自身が自分を許せない」

 「だから楽しいと思うと同時に、息苦しくも感じるんだよ。俺はそこに居ても良いのか?そんな資格はあるのか?ってね」

 

 彼女たちと深く関われば関わるほど、「どうでもいい」から「大切」になっていく、大切になればなるほど。どうしようもなく苦しく感じるんだ。

 

 「だから俺は俺に出来る事をしている。カイザーPMC理事としても、傭兵の海崎リジーとしても、いつか胸を張って歩けるように」

 「…自分に出来ることか……お前には教えられてばかりだな、カイザー…海崎リジー」

 「矛盾だらけのポンコツで教えられる事なら幾らでも教えてあげるとも」

 

 もしかしたらあれは俺自身にも言ってた事だったのかもしれないな。

 

 「さ、そろそろ戻るとしようか錠前サオリ、風邪を引いてしまうよ」

 「この程度の寒さには慣れているが、そうだな。姫たちも心配しているだろうし、帰るか」

 

 俺と錠前サオリは横に並びながら雨が降る街を歩いた。

 

 「…少しは迷いが無くなったか?」

 「いいや、でも、もう苦しくはない」

 

 −−−俺も…少しだけ胸につっかえていた苦しさは無くなったかな。こんなこと誰にも言えなかったし

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