「不知火カヤ…なんだこの書類の山は」
「………ヴァルキューレの装備に関する解決書類に向けた会合書類や嘆願書、そのための人員確保に…その他の猫探しや破壊された道路の補修工事…浮気調査などなどの依頼書です」
「また浮気調査!?子供にそんな仕事を持ってくるなよキヴォトス人!アホか!?」
そもそもそれは防衛室長がする仕事なのか!?浮気調査なんて探偵とかに任せるような仕事だろうが!連邦生徒会をなんだと思ってる!?
「ちょっと待て、ヴァルキューレの装備?……まさか資金不足なのか?」
「それは……私が原因の一つだったりするのですが、はい…弾薬などが不足していまして」
「………まさか、うちの所から武器や弾薬が横領されていたのって」
「……私がカイザーコーポレーションと癒着を少々」
マジか……便利屋に頼んだあの依頼が防衛室と繋がっていたなんて。誰が思うよ。
「…それで資金は防衛室にあるのに弾薬を買うところがないと言う状況に?」
「…貴方の商談をする前の私は本当にこれが一番の近道だと考えていましたので」
「横領している資金を表で使うわけにはいかないよな。じゃあここに連絡を入れてくれ。傭兵団の武器弾薬を取り扱っている会社だから助けになる筈だ」
さっきまでの自信満々の様子が嘘のようにしょぼくれて、か細い声を出す彼女を見ると、何か悲観的なことを考えているのが分かる。もしかしたら自信に溢れているように見えた姿は超人になる為の心の鎧だったのかもしれないな。
「…ん?待ってくれ気になることがあるんだが。調印式の時はなぜ連邦生徒会は動かなかったんだ?」
「……身内の恥を晒すようですが。こちらでも何か行動を起こすべきだと言う派閥と、状況がまだ不明である以上は介入は避けるべきだと言う派閥に分かれてしまい。ウダウダと討論している間に先生と貴方に解決されたと言うところです。幸いにも事態は一日で終息し被害も最小限に収まったのですが…」
連邦生徒会、全然連携が取れてないじゃないか。
「…仕方がない、連邦生徒会全体のことは俺にはどうも出来ない事としてまずは防衛室を機能するようにするぞ。まずは横領を止める事だ」
「それはご尤もなのですが。急にやめたら怪しまれますよ?また私が何かを企んでいると」
「あぁ、だから武器や弾薬だけじゃなく食事などを取り揃えてこの資金は必要な物資を取り揃える為の保険だったと言うことで誤魔化すんだ。その為に横領していた資金の殆どを装備や食事代などに使う、残った資金をヴァルキューレに戻せば良い」
正直これでも危ないんだけどな。カイザーコーポレーションと癒着していた書類を管理している筈だしこれもなんとかしないと。
「そして大事なことはここだ。そもそもカイザーコーポレーションと癒着していたと言う事実を抹消する」
「えぇ!?そんな事出来ませんよ!横領していることはヴァルキューレのカンナさんやその部下の数人は知ってるんですから!」
なるほど、確か世間では狂犬と呼ばれている生徒だったか。俺も何度か会話したことがあるが真面目で冷静な印象だったんだが。なぜ狂犬?
「ならそのカンナと言うのもこちら側に引き込め、強引にでもな…今の連邦生徒会は形骸化していて殆どの生徒がシャーレさえあれば良いと考えているのが現状、せめて防衛室やヴァルキューレが機能するようにしなければ近いうちに連邦生徒会は崩れ落ちるぞ」
先生が素直に生徒を頼って仕事を分担するようにはなったがそれでも負担が大き過ぎる。
「書類はカイザーコーポレーションではなくアビドス傭兵団との取り引き書類に偽装するんだ。これからは実際に取り引きをしていくんだから全てが嘘ではない。その次に職員の待遇の改善だな。これだけの横領資金があれば当分は問題ないだろう。その間に機能するように出来れば安定した資金源を得ることが出来るし何も問題はない」
彼女がポカンと口を開けて呆けた顔をしているけど、どうしたんだろう?
「…あの、そう言うのは私が普通考えるべき事なのでは?私は雇用主ですし」
「だからその為の下準備をしているんじゃないか。不知火カヤ、キミがどう部下を動かしていくかで今後の方針が変わるんだ。しっかり考えてくれよ?」
「……えぇ、もちろん分かっていますよ。私は超人になるんです。この程度のことで躓いてなんていられません!」
防衛室のドアが開き誰かが入ってきたので見てみるとさっきまで話題に上がっていたカンナが夢でも見ているのか?と言うような顔で目を擦り交互に俺と不知火カヤを見る。
「……防衛室長、これは?」
「丁度良かったですカンナさん。これからはこの人と取り引きをするのでカイザーコーポレーションとの書類は全て破棄してください。それとヴァルキューレの装備に関する書類とシフトの書類を持ってきてください。大至急で」
「え?あ、分かりました…いえその前に…その、なぜカイザーPMC理事がここに?」
「それは後で説明します。今はこちらの書類を片付けなければいけませんので」
いやまぁ混乱するのは分かる。分かるからそんなスペキャフェイスで俺を見るな。お前は猫じゃなくて犬だろ。
「…分かりました」
なんの用事かは聞いてないけど、そのまま書類を取りに行っている間に不知火カヤとああでもないこうでもないと話し合っていた。
「書類を持ってきました。これはどこに置いときましょう?」
「こちらのデスクに持ってきてください。それとカンナさん。この書類なのですが貴女ならばどのようにしますか?」
「…これは巡回ルートに関する書類?そうですね。私ならば、ここと、この位置、それとこの場所を重点的に巡回させます」
「分かりました。ではそのように通達しましょう、カンナさん、そこの書類を取ってください」
そのカンナは今、あの防衛室長が意見を聞いた?と驚愕の表情で固まって動きそうになかったから俺が代わりに書類を取った。
「ありがとうございます。ではヴァルキューレの装備をどのルートから輸送してもらうかを考えましょう。ほら、カンナさんもそこで立ち続けてないで一緒に考えてください」
「……っは!し、失礼しました」
−−−状況が分かっていないカンナを交えてこの後の方針について三人で話し合った