「なるほど、俺が潰したカイザーコーポレーション傘下の会社以外にもまだ取り引きしている場所があるのか」
「…話は理解しました。防衛室長が1からやり直そうとしていることも。ですがその為にもまずは癒着をどうにかしなければなりません。書類を破棄してはい終わりではありませんので」
それはもちろん分かってるよ。それをどうにかしないと傘下の会社から脅しを受けるだろしな。
「問題ない。うちの傭兵で潜入調査に秀でたやつを派遣して癒着に関する書類を取ってきてもらう。不知火カヤ、確か書類は全てオフラインで管理していたんだよな?」
「えぇ、PCなどで管理をするとハッキングなどを仕掛けられた時に発見される可能性がありましたので」
それなら紙媒体さえ奪ってしまえば後はどうとでも出来る。そんな事実は無かった事にすれば良いからな。
「ですがここは連邦生徒会とも近く、何か騒動が起きればすぐに気付かれてしまいます」
チェスの駒を人に見立ててどう動いていくかを考える。
「でしたらこの場所の道路の補修工事と言う名目で立ち入り禁止にしてしまえば爆発音が起こっても違和感を感じることは少ないと思いますカンナさん」
「ならそれはPMCが引き受けよう。うちの傭兵を動かすにしてもヴァルキューレだと都合が悪いだろ?」
「…ではその方針で先生経由でこの補修工事書類をカイザーPMC理事に渡したと言う事にしましょう。手筈は整えておきます」
別にヴァルキューレが悪いと言うわけじゃないけども、犯罪も犯す傭兵とヴァルキューレじゃ相性が悪いからな。
「カイザーコーポレーションとの癒着はどうにかなりそうだな。なら今度は書類の偽装だ。今持っている書類を傭兵団と以前から取り引きをしていたかのように改変する」
カイザーコーポレーションと取り引きをしていた書類をシュレッダーに掛けて新しく書類を作っていく。この程度の量ならすぐに終わるな。
「ん?なんだこのカイザーコンストラクション主導の子ウサギタウンって」
「……あ………」
「おい、どうした?不知火カヤ」
彼女の顔がどんどん青くなっていって、震える手で書類を手に取ったかと思うと勢いよく頭を机に打ち付けた。
「不知火カヤ!?」
「ぼ、防衛室長!?」
「……終わった。終わってしまいました。癒着をどうにかしたところでこの案件がある限り、私の失脚は免れないでしょう……過去の私を殴りたいです」
そう呟く彼女の手から書類を手に取るとそこにはしっかり防衛室長不知火カヤと言う署名があった。
「………なるほど」
「……すみません、カンナさん、カイザーPMC理事…これだけの事を考えて貰いながらこんな事を見落としていたなんて」
「…防衛室長」
ふむ…待てよ?この書類使えるかも知れないぞ?
「…不知火カヤ、諦めにはまだ早いぞ…この書類を使っていま子ウサギタウン再開発を主導しているカイザーコンストラクションを潰す」
「えぇ!?で、ですがそんな事をしてしまったら貴方の立場が!」
「ふははははは!誰がこの書類をそのまま使うと言った?貴様が取り引きしているカイザーコンストラクションの使っている便箋がここにある。そしてこの筆跡を真似てカイザーコンストラクションの印鑑を押せばあら不思議!防衛室長宛に送られた脅迫文書の出来上がり」
オフラインで書類を管理しているからこそこの小細工は効くぞぉ!なんせPCにデータが無いんだからな!カイザーコンストラクションがどれだけ送ってないと言ってもこの偽装書類がある限り脅迫したと言う証拠が出来る。ちなみに内容はこうだ。
『子ウサギタウン再開発にあたり我々カイザーコンストラクションが主導で動かせて貰います。資金などもそちらで用意して頂きますよう。もしお断りされるのであればあなたのご友人は二度と朝日を拝むことは出来ないでしょう。それとこの事を誰かに話してもご友人の命の保証は致しませんのでご了承を、良い返事をお待ちしております』
「この書類に、カンナ、何かお前が写っている写真はないか?隠し撮りだと思わせるような写真をこれに入れる」
「…でしたらクロノススクールから押収したこれでどうでしょう?」
喫茶店でコーヒーを飲んでいるカンナの後ろ姿が撮られた写真を見せられた。アングル的にも隠し撮りをしたと言う事がハッキリ分かる写真で証拠としては完璧だろう。
「不知火カヤ、これが大人の汚いところと言うものだ」
「…で、ですがそれが偽装書類だとバレてしまったら」
「そこで一芝居するのさ、まず、この書類を公安局にまた保管する。この偽装した手紙は書類の隙間にでも挟んで見つけ辛くする。この書類はカンナと不知火カヤしか見ていないのだろう?」
二人が頷くのを確認してから俺は続ける。
「なら書類の中にこの手紙が紛れていても見つけられた時にこれは最初からあったと言う事に出来る」
「…お言葉ですPMC理事、それを見つける相手が居なければこの作戦は」
「居るじゃないか。生徒の為に動き、組織や法に縛られない自由な人が」
「……まさか!?」
不知火カヤも同じ考えに至ったのか正気?と訴えるような視線を送ってくる。
「子ウサギタウン再開発を進めて公安局の不信感を煽り、先生にこの書類を見つけてもらう。だが、ただ書類を盗ませるだけじゃ先生に怪しまれるから全力で妨害するんだ」
この話を聞いて不知火カヤは自信が無さそうに目尻を下げる。
「……こんな事をして、超人になれるのでしょうか」
「納得がいかないのならこれからの行動で挽回すれば良い、だが防衛室長をクビになってしまえば挽回する機会もなくなるんだ」
「…そう、ですね。今更迷ってはいられません。やりましょう!」
「カンナ、キミに汚れ役をしてもらう事になるけど大丈夫か?」
そう聞くと彼女は僅かに笑みを浮かべた。
「大丈夫です。これで不正をする事が無くなるのであれば迷う必要などありません」
「よし、決まったな。良いか?この作戦は絶対に失敗出来ないぞ。失敗した時点でお終いだ。だが安心してくれ、キミたちの責任は俺が負う、キミたちはカイザーコーポレーションに脅されてこうするしか無かったと言えば立場は守れる筈だ」
俺がそう言うと二人とも呆れたような顔でため息を吐いた。
「貴方と言う人は…」
「多くの生徒に慕われる訳ですね」
「……何か変なこと言ったか?」
−−−そう聞いたらまたもや大きなため息を吐かれてしまった。なぜ?