成り変わりカイザー理事の奮闘物語   作:CoCoチキ

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五十八話 俺は帰らせてもらう!

 

 「こうなったらスマホだけ寄こして、そこで大人しくしていてください。私が交渉する事にします」

 「は〜勝手にすれば良いだろ。だが使うのは先生のにしろ、俺はあの子たちの連絡先を持ってない」

 「“多分無駄だと思うけど“」

 

 先生からスマホを受け取って電話を掛け始めた……いやなんで俺が縛られて先生は縛られてないんだよ。あれか?昨日投げ飛ばしたからか?

 

 「……何のようですか?私たちは今から和牛ステーキ弁当を食べる所だったんですが」

 「なんて羨ましい……おほん!あなたが「RABBIT小隊」のリーダーですか?私たちは真の幸せを追求する都市の求道者、「所有せずとも確かな幸せを探す集い」……略して「所確幸」の——」

 

 −ピコン

 

 「き、切られた…?」

 「ブフッw…ほれ言わんこっちゃないw、情報収集はしっかりとしないとな?」

 「うぇっへん!…もう一度かけ直しましょう」

 

 そもそも最初の声掛けがそれって宗教勧誘か詐欺だと思われても仕方がないぞ。

 

 「み、みなさん?どうやら「いたずら電話」か何かと誤解されているようですが…あなた達の先生と大柄のオートマタは捕らえました。こちらの要求に応じなければ、今からこの方たちに残酷な仕打ちを——」

 「好きにすれば?そもそも私たちに大柄なオートマタの知り合いなんて居ない」

 

 そうハッキリ言って電話をまた切られた。まぁ、予想はしてたけど、そうだろうな。だって俺たち初対面だったし。

 

 「また切れた!?」

 

 「どう言う事だ、あなたは本当に「先生」なのか!?これぽっちも心配されてないじゃないか!?」

 「“まあ、複雑な事情があって……“」

 「そもそも先生を慕っている生徒なら先生の電話から違う男の声がしたら問い詰めてくるぞ?その時点で察してほしいものだなデカルト」

 

 俺は態とらしくやれやれと首を振ると、デカルトは小さく呟き始めた。

 

 「クソ、せっかくシャーレの先生を人質に取ったと言うのに…これでは高級弁当が」

 「おい俗物、全部聞こえているぞ。な〜にが所確幸だ。欲まみれじゃないか」

 「うぇっへん!!…こうなったら他の手段を考えなければ…」

 「“ちょっと試しに私が電話しても良い?“」

 

 おいこっち見ろ。無所有の幸せを語るならば俺の目を見て言うんだな。えぇ?いきなり攫って高級弁当を要求するとは良い度胸じゃないか。

 

 「別に構いませんが、その振りをして警察に通報……などと小細工は止めた方が良いですよ。私たち「所確幸」の武装は、ヴァルキューレを軽く凌駕していますからね!」

 「武器が良いだけでは意味がないぞ。どんなに良い武器でも使い手がヘッポコでは意味がないからな」

 

 強い武器を使ってるだけで強気になれても困る。俺は軍人だぞ?舐めてもらっては困る。パワードスーツが無くても素人の相手なら余裕で出来るぞ。

 

 「あなたさっきから何なんですか!?武装が強いと言うのはそれだけ相手の戦力を超えていると言う事ですよ!」

 「だからそれが間違いだと言っているんだ。たった四人で数百もの軍人を倒した精鋭の話でもしてやろうか?」

 「“二人とも静かにね“」

 

 実際には便利屋とかゲヘナの風気委員が居たけどそれでも百を超える軍を相手してたのは事実だし。

 

 「ああもう。何なの先生……こっちは夜遅くまで作業してて疲れてるってのに…大した用じゃないならもう——」

 「“和牛ステーキのお弁当をくれた彼がこっちに来たらまたお弁当をくれるって“」

 

 おぉ、そう来たか先生、まぁ良いけどお前も随分と強かになったな。いや元からか?

 

 「…はははっ!自信満々だったのに自分だって無視されてるじゃないですか!はぁ…こうなったらもう他の生徒を脅して」

 

 ん〜…そろそろか。

 

 俺がそう思った時には既に壁が吹き飛ばされていた。

 

 「SRTだ!関係ないやつは退け!」

 

 「サキ、私たちは今SRTの任務中ではないので名乗らない方が……」

 「そ、それよりここに、最高級の和牛の人が?」

 「おうちょっと待て俺は最高級の和牛の人ではないぞ。確かに弁当は和牛だったけど」

 

 ちょっとその覚えられ方は不服だ。俺は弁当屋じゃないんだぞ?

 

 「うん。絶対にそう言ってた。ってかすぐ目の前に居る!」

 「和牛ステーキ弁当はどこだ!?」

 「あ〜今は持ってない。けどここから出たら買いに行く……ついでになんかジュースでもいるか?」

 

 先生は弁当をくれるって言っただけで弁当があるわけじゃないんだからそんな焦んなくても良いでしょ。

 

 「はははっ!まんまと私たちの計画に騙されましたね!欲望の果て、それはあたかも存在しない虚像なようなもの…」

 「こいつらやっつけてくれたら好きな弁当を買ってやろう。どうだ?悪くない条件だと思うが」

 「え…あの」

 「それは本当か!?」

 

 俺はデカルトの長々としたセリフに被せて交渉すると最初に出会った少女が前のめりで聞いてきたので頷くと目を輝かせて武器を構えた。

 

 「ミヤコ!聞いたか!好きなのを選んで良いって!」

 「中々に好条件ですね。良いでしょう。交渉成立です」

 「おかしいですよね!?呼んだの私ですよ!?ええい!同志たちよ!彼女たちに「所確幸」の素晴らしさを見せてあげるのです!」

 

 そうデカルトが指を鳴らすとやたら武器の質だけが良い兵士?ホームレスが出てきた。いや本当に武器だけ良いな?一体どこであんなの手に入れたんだ?ただのホームレスがあんな武器を入手出来る筈がないのに。う〜ん?

 

 「作戦開始!」

 

 おっと、武器の出所を考えてたら始まってたか。じゃあ俺も。

 

 縛られている縄を引き千切ってポケットに仕舞っていたHGのデザートイーグル…『ルールブレイカー(スピア命名)』を取り出す。武器に名前を付けるのはキヴォトスでは当たり前らしいけど。俺はどうもネーミングがダメダメだからスピアに付けてもらった……ちなみに由来は法に縛られないからだとか…いやまぁ、傭兵とかやってるし実際犯罪も何度もやってるけどルールブレイカーって、俺がいつもルール破ってるみたいに聞こえるじゃん。

 

 「ちょっと失礼」

 「ん?なんですか…ぎゃは!?」

 

 俺は近くにいるやつの肩をトントンと叩いてから振り向いた瞬間に撃ち抜いた。

 

 「な!?あなたどうやって縄を抜け出したのですか!?」

 「あの程度の縄なら千切れるぞ。次誘拐するなら鎖か何かの方が良いかもな。まぁそんな機会は二度と来ないが」

 

 近くにあった鉄の廃材を盾にしながら所確幸のメンバーを撃ち抜いていく。俺ってよくコンに頼ってるけど毎日訓練は欠かさなかったからね。百発百中とまではいかなくてもそれなりに当たる。

 

 「次はそっちか!」

 「Oh!待って待って!オイラは銃持ってないヨ!HAHAHA!オイラは平和主義者ネ!」

 「いやじゃあなんで後ろに立ってんだよ」

 「いや〜後ろでボンゴを叩いてたら急に戦い始まった良い感じに隠れられそうなアナタがいたからついネ!」

 

 「ついネ!」じゃないんだよ…紛らわしいなお前。ってかそもそもキヴォトスで銃持たないやつって居たのか。

 

 「いや〜それにしてもアナタ中々に美味ナ肉饅持ってるネ!HAHAHA!思わず踊り出したくなるヨ!」

 「ん?あ!俺がお土産に買っておいたやつ何食ってんだお前!」

 「おや?そうなんですカ?それはすみません!お腹空いてたんでス!代わりにさっき拾ったこれあげますヨ!」

 

 ボンゴ野郎はおそらくAPC9だと思わしきSMGを渡してきた。いや待て本当になんでこんな武器をホームレスが持ってんだ!?

 

 「これ、廃棄されたなんて言い訳が通じないようなレベルの武装だぞ。お前らどっかから盗んできたのか?」

 「hmm…確かデカルトさんはこの間潰れたカイザーなんちゃらの会社から出てきた物を拾ったって言ってましたネ〜」

 

 あ、俺のせいか〜…横領されてた武器が幾つか発見出来なかったけどそれはもう売り捌かれたものだと思って気にしてなかったぁ〜。

 

 「まぁ、俺の使ってるやつとは違うが使わせてもらう。お前も先生と一緒のとこにでも隠れてろ」

 「HAHAHA!感謝感謝ネ!」

 

 あ、ボンゴは待っていくんだ。

 

 APC9の残弾を確認してから俺はRABBIT小隊を狙ってるスナイパーに突撃した。

 

 「な、なんだあいつ!?突っ込んでくるぞー!!」

 「ふはははははは!フルバレッドだぁ!ふははははは!」

 「弾が!!弾が当たらない!!!」

 「素人の狙撃に当たるほど俺は甘くないぞぉ!ふはははは!」

 

 しゃがんで身を捩って隠れてととにかく攻撃を避けながらスナイパーを確実に倒していく。

 

 「こ、こんな化け物相手にしてられるかー!俺はもう逃げる!」

 「な!?み、みなさん!どこへ行くのです!?まだ敵は……」

 「そもそも何もしたくないのに戦闘なんて出来るわけないだろ!?」

 「HAHAHA!それはそうネ!デカルトさん!「所確幸」は無所有の幸せを探す組織!これそもそも何の戦いでス?焼肉弁当無くても生きていけるネ!」

 

 おいボンゴの方がよっぽど無所有を満喫してるじゃないか。なんで組織の長であるお前より長っぽい事言ってるんだよ。

 

 「そもそも贅沢の何がいけないんでス?贅沢も色んな種類があるヨ!私音楽が大好きでス!音楽は心のオアシスでース!」

 「だからボンゴを頑なに離さないのか」

 「あぁ、「所確幸」のアジトが……せっかく集めた高い装飾品も、全部燃えて」

 「おいこら俗物、所有に執着しないって話はどこに行った」

 

 俺がそう聞くと逆にキレられた。

 

 「うるさい!!贅沢するのは人間の本質だろう!?…あなた達が、あなた達さえ居なければ!」

 

 【 10分後 】

 

 「Aサイトクリア」

 「こっちもスナイパーたちを縛り上げといたぞ」

 「Bサイトもクリア、何人か逃げられたけど、それ以外は全員制圧した」

 「はい、お疲れ様でした。怪我などがないようで何より」

 

 一階に降りようとすると何かを蹴ってしまい、足元を見ると缶詰が置いてあった。

 

 「ん?お〜い、先生、RABBIT小隊諸君、なんか缶詰を見つけたぞ〜賞味期限切れてるけど。燻製のサーモンにベーコン、それとホタテもある。何だこれは?」

 

 缶詰の方向を見るにさっき壊したタンスの中に入ってたみたいだけど。

 

 「ま、待て!そいつに触るな!そこの高級缶詰はお酒のつまみにしようと私が大事に……!」

 「ッハ!断る。こいつは戦利品としてありがたく頂く」

 「ミヤコちゃん、ここに寝袋とか撥水加工のシートがたくさん……雨が降るたびに困ってたけどこれさえあれば…」

 

 おいおい、デカルトのやつどれだけ溜め込んでたんだ?かなり数があるな。

 

 「何を勝手に戦利品扱いをしてるんだ!」

 「黙れ俗物、これは俺たちの正当な権利だ。俺は誘拐されているし先に攻撃を仕掛けたのも貴様らだ。文句は言わせんぞ」

 「うぐぐぐ、なんて欲望に満ちた「何か文句でも?」…ありません」

 「なるほど。ああやって威圧することも交渉に必要か」

 

 良い子は真似しちゃダメだよ。

 

 「はぁ、じゃあ俺は外で待機してるから、帰る準備出来たら言ってくれ」

 「“うん、お疲れ様…リジー“」

 

 −−−少し天気が怪しくなってきたけども、まぁ、さっき撥水加工シートも手に入れたし。先生が何とかするだろ

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