成り変わりカイザー理事の奮闘物語   作:CoCoチキ

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七十二話 ゲマトリアと悪役のお茶会

 

 「それで、本当に何があった?」

 

 部屋の隅で縮こまっているベアトリーチェをなんとかソファに座らせて話を聞く。

 

 「…ただ私の愚かさを認識しただけですのでお気になさらず。今後は何もせず誰にも迷惑を掛けないようひっそりと暮らしますので」

 「ダメだこりゃ。心が完全に折れてる」

 

 間違いなく原因は俺にあるんだが。あの時のベアトリーチェは手に負えなかったし。あれがどうしてこうなるんだ。

 

 「俺はともかく、こうしてお前を連れてきたゲマトリアのメンバーに話をしないのは少し失礼じゃないか?一応お前のそのメンタルを安定させようと俺のところに来た訳だし」

 「そういうこった!」

 

 お前は何なんだその合いの手。

 

 「デカルコマニーもこう言ってる事ですし、話だけでもしてみてはどうでしょう?」

 「………そうですね。最初はあなたに対して憎しみが溢れていたのですが。冷静になった後、あなたが最後に言った言葉の意味を考えて、アリウスの様子を見る事にしました」

 

 最後に言った言葉……あぁ、あれか。

 

 「「最後まで貴様は自分の生徒を見ることがなかったな」…その言葉がずっと頭の中で反響をしていました。最初はあなたに対する対抗心で彼女たちの様子を見ていましたが。彼女たちが遊び、笑い、喜んでいる姿を見ていると不思議な気持ちが胸の内に広がっていきました。あの子はあんな笑顔だったろうか?あの子の目はあんな色をしていただろうか?あの子はあんなに食べる子だったろうか?と…様々な疑問が頭に浮かんでは消え、いつしか私も彼女たちの日常を見るのが楽しくなっていました」

 

 これは……曲がりなりにも長いこと教師をしていたから。アリウスの生徒に少しは情を持っていたと言うことか?

 

 「……確かに私は彼女たちを見ていなかったのでしょう。彼女たちがあんなにも笑い、あんなにも眩しいなんて、知ろうともしなかったのですから……私は探究者としても、教師としても「知る」と言う事を破棄してしまった。ただ如何に私が崇高へ至る事が出来るかという事ばかりを考えていました……私の歩く道には…崇高へと至った私ではなく。全ての可能性を否定し拒絶した愚かな私しか歩いていなかった。Vanitas vanitatum et omnia vanitas…私自身に言う日が来るとは思いませんでしたよ。私のした事は全てが無意味だった。ただ定められた道へ定められた様に堕ちていくだけの虚しい舞台装置(マクガフィン)でしかなかったのです」

 

 お、おう。想像以上に心が折れてて何て言えば良いのか分からねぇ。同情する余地もない所業をしたが。流石にこれは。

 

 「………私には彼女たちの為に怒る資格何て一つもはありはしないのに。記者会見の時の記者の発言を聞いて怒りを抱いてしまった。あなたの言葉通り、無責任な大人でしかないのに…ですので私はもう何かをするつもりはありません。ただひっそりと部屋の片隅で暮らしていくだけです」

 

 もしかして怒ったり泣いたりってその時の?それで俺の言葉を聞いて意気消沈と…やっべぇ、間接的にベアトリーチェのメンタル破壊したの俺じゃん。ゲマトリアの面々も困ってんじゃん。誰が先に声を掛けるか目線で会話してるぞあいつら。いやゴルコンダは後ろ向いてんのにどうやって目線で会話してんだよ。

 

 「まぁ、そういうこった!」

 「「デカルコマニーは会話がややこしくなるので黙ってください」」

 「……そういうこったぁ」

 

 今のはお前が悪いぞデカルコマニー、俺からすればそういうこった!って言ってる様にしか聞こえないからな。

 

 「…え〜ベアトリーチェ…私の芸術でも観賞するのはどうだ?そなたも芸術に触れれば心の安らぎを得るやもしれん」

 「お気遣いありがとうございます。ですが私には勿体無い事ですので」

 「なん…だと?あのベアトリーチェがお礼を?」

 

 おいマエストロ速攻で撃沈すんな。驚くのは分かるが追い討ちをするな。仕方がない。俺が話すしかないな。

 

 「ベアトリーチェ、お前のした事は許されることではない。しかしだ。俺も心の底から後悔している者に対して何かを言うつもりはない。今までやってきた事を後悔し、反省しているのなら、お前にも彼女たちを心配する資格はあると思っている。お前は聞いていなかったかもしれないが。あの時、確かにお前と言う教師に感謝をした生徒が居るんだからな」

 

 あれだけ虐げられていたと言うのに、恨みでも怒りでもなく感謝を伝えたんだからな。

 

 「私に?」

 「水無月スズカ……お前に戦う術を教えてもらった事を感謝していた。思うところはあったとしても。あの子の中にお前に対する怒りや憎しみはないと断言できる」

 「……」

 

 一人でも先生と呼んでくれる生徒は居る。ならばお前も先生だろ。

 

 「ふむ、まだ考えを纏めるのに時間が掛かるだろう。しばらくは俺の家に泊まると良い…お前ら全員な、キヴォトスで暮らせば気分転換になるだろう」

 「良いのですか?」

 「お前らはその姿からキヴォトスの外で生活していたのだろう?ならば試しにキヴォトスで暮らしてみろ。探究だけしていてもいつかは根詰まりになる。適度な休息は必要だ」

 

 それに俺の家に泊まらせておけばある程度の監視は出来るからな。

 

 「……ではお言葉に甘えて」

 「じゃあついて来い」

 

 早速俺は自分の家にゲマトリアを案内する事にした。

 

 【 リジー邸 】

 

 「さ!着いたぞ。ここが俺の家だ」

 「「「「…………」」」」

 

 俺の屋敷の様にでかい家を見てゲマトリアは唖然としていた。

 

 「そういうこった!?」

 

 いやデカルコマニーだけが反応した。まぁ驚くよな。俺も家に帰った時は驚いた。まさかカイザー理事がこんな豪邸に住んでるなんて。

 

 「部屋は空いているから好きな部屋を使ってくれ、キッチンがあそこでリビングがあそこ、テレビも置いてあるしゲーム機もあるから勝手に使っても構わんぞ。ただガレージは気を付けろよ?あそこには弾薬や地雷とか置いてあるからな」

 

 俺もこの家の構造を覚えるのに苦労したわぁ、なんでこんな豪邸に住んでんだよと文句言いたかったわ。

 

 「家の場所は生徒たちは知らんし、PMC職員でも知ってるやつは少ないからうってつけの場所だろう」

 「一軒家やマンションを想像していたのですが。それの斜め上を行く家でしたね」

 

 同じ事思った。こんな家一人で過ごすにはデカ過ぎだろ?

 

 −−−こうして俺の家に同居人が出来た

 

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