【 バルバラ視点 】
私は問い掛ける。
なぜ、貴女たちは私と同じ存在なのに彼女らを傷付ける?私たちの役割は、彼女たちを守ることの筈なのに。
私は問い掛ける。
なぜ、貴女は私と同じ姿の筈なのに、その銃口を彼女たちに向ける?私の役割は彼女らを守ることの筈なのに。
「っく、ユスティナ聖徒会の数が多過ぎる。このままでは時間が間に合わないどころか私たちまで危ういぞ」
「姫ちゃん、私たちの後ろに隠れてください。弾除けにはなる筈です」
「私だけ、守られているわけにはいかない」
守るべきあの子たちが、私たちの手の届かない場所で傷付こうとしている。
「ミサキ!避けろ!!」
「しまった!」
私はそれを拒絶する
「……ば、バルバラ?」
「……」ミサキの頭を撫でる
「ちょ、ちょっと、やめてよ」
あの時、あの時の契約から私たちの中で規律以外のモノが存在していた……ただ命令されて動く事が窮屈である事、ただ契約を執行する事だけが煩わしく感じてしまう事……規律の守護者たる私たちが、それを破棄してしまうことは許されないけれど。規律を守るだけでは、本当に守るべき者を守れないと私たちは理解した。
「敵じゃ……ない?」
「……まさか彼女は、時々会社で見掛ける方のバルバラなのか?」
私たちは今は亡きユスティナ聖徒会の複製である。
私は今は亡き聖女バルバラの複製である。
そして、私の前に存在する彼女もまた。聖女バルバラの複製である。それならばどうして貴方はこの子たちを傷付ける?貴方も私も聖女バルバラの意思を継ぐ複製なのに。
「…バルバラ、私たちはこれからサンクトゥムの守護者を倒さないといけない。だから、力を貸して」
お願いなんてされずとも、私たちは助けよう。私たちはその為に生まれた存在なのだから。故に…私は聖女バルバラの意思を継ぐ者として、目の前の彼女を否定する。
手に持つ銃を捨て、私は彼女に接近する。
「銃を捨てた!?」
「違う!格闘戦で挑むつもりだ!」
あの男は規律を破り、敵対していた筈のあの子たちを守っていた。あの男と戦いながら私は何度も自身に問い掛けた。このままで良いのか?私はこのまま言う事を聞いていれば彼女たちを守れるのか?と…。
「アリウススクワッド!バルバラを援護しろ!」
そうして出た答えは「否」である。私たちは命令を拒否し、規律を守ることを放棄した。
足で銃を蹴飛ばし、拳で彼女を殴る。足を振り上げ胴を薙ぎ払い。落ちていた瓦礫で遠くにいる相手を再起不能にする。
「…あれは彼がバルバラにしていた立ち回り?」
「凄い、細身なのを活かした軽やかな動きです!」
銃を拾い上げてゼロ距離で撃ち込み、目の前の私も倒す。
「同じバルバラだと言うのにこの差は一体なんだ?」
「…多分、彼女もリジーに感化されたんだと思う」
「……あぁ、確かに…彼ならあり得るな」
彼の在り方は不思議だ。その身を犠牲にしながらも、自分は生き残ると言う絶対的な確信をしていた。彼女たちが必ずバシリカにやって来ると分かっていた。
思考しながらも私は走り出し。目の前に存在する守護者に一撃を入れる。
「聖女バルバラ!?一体なぜここに、いえ、しかしヒエロニムスに攻撃を仕掛けた?」
シスターフッド、聖徒会の意思を引き継いだ新たなる守護者、ユスティナは既に文書だけの存在となってしまったけど。その意思は引き継がれていく。
だから…偽りの天使よ。貴方は邪魔です。亡霊である私たちは生者の行進を阻んではいけない。
故に私は規律に則り、貴方を排除する。
「ヒエロニムスの注意が聖女バルバラに向きました!聖女バルバラは…え!?銃を捨てて素手でヒエロニムスを圧倒してる!?」
杖を殴り軌道を逸らし、彼から放たれる光は回避した後に踵を後頭部に落とす。
「FOOoooo!?」
「……!」何度も頭を踏みつける
後頭部に乗り、何度も何度も踏みつける様な蹴りを当て続ける。
「…そう言えばバルバラさん…リジーさんとの特訓を覗いてる時がありましたね」
「つまりあれは彼との特訓を見た彼女が独自に鍛え上げた格闘技だと?」
「そうですね」
私の筋力ならば銃を扱うよりも格闘戦の方が強い事を理解した。ならあの子たちを守るためにより効率的な戦術を使うだけ。
「FOOooooo——」
「ヒエロニムス沈黙!」
最後に飛び上がり、上空から思い切り足を振るい彼を地に沈めた。これであの子たちは傷付かなくて済む。
「……」ピース
「あ、やっぱり私たちのバルバラさんです。あのピースサイン」
「あんな事をするのは彼女しか居ないな」
−−−その理解のされ方は不服だけれど。親しみを持ってくれてると思っておくわ