「お、黒服!こっちだ!」
「私たちが最後でしょうか?」
「まぁそうだ」
アビドスの砂漠で見つけた兵器、ウトナピシュティムの本船の中に入りながら、俺は黒服と情報を共有した。
「なるほど…今は作戦に備えて解散ですか」
「そうだな、俺たちみたいなオートマタはともかく、先生たちは疲労が溜まっている。少しだが休憩と言うわけだ」
この船はまぁ、宇宙戦艦と言えるのか怪しい構造らしい。詳しい事は分からんけど。武装とかがないからそれはうちの会社から固定砲台や機関銃、レールガンを持ち込んだ。
「……名もなき神々の王女もこの船に乗るのですか?」
「そうだが、どうした?」
「………リジー、彼女を失いたくないのであればウトナピシュティムを起動する前にこれを渡してください」
「……ブローチ?」
なんか不穏な事を言ってるな。え、この船にアリス乗せるのはヤバいのか。
「ただのブローチではありません。これは無名の司祭が残した遺産の一つです。詳しい説明は省かせてもらいますが。この船は名もなき神々の王女にとって心臓に銃口を突き付けられているようなものです。これは彼女を守るための防弾チョッキだと思ってください」
本当にヤバいじゃないか!?このままアリスを船に乗せて起動してたら取り返しのつかない事になるところだったぞ。
「助かる黒服、まさか乗るだけでもアウトとは思ってなかった」
「この船は対方舟に造られた決戦兵器、ですので起動したら即座に彼女の存在はキヴォトスから消し去られるでしょう。そしてそのブローチが無名の司祭が用意した防御システムです。大して興味が無かったのですが。まさか役に立つ時が来るとは思ってませんでした」
黒服からしたら無名の司祭に対抗するために集めてるのにその無名の司祭に有利になるような代物だしな。これ。
「……ところでリジー、あなたは何か悩んでいるように見えますが。大丈夫ですか?」
「…大丈夫と言えば嘘になる。がそんな事は言ってられない状況だからな。とにかく武器の整備をしたり、船の構造を少しでも理解しなければいけないし。やる事が多いんだ」
出来る限りの弾薬と、武器を用意したけど相手の戦力が分からないからこれだけの数があっても不安だ。
「あなたの手伝いをしている私たちも私たちですが。これは古より定まっていた事象だと私は結論付けました。なぜ、破滅を迎える未来にあえて突き進むのでしょう?」
「そう言うのは先生に聞くべき事じゃないのか?」
黒服には質問されてばかりだな。
「…先生の答えは聞きました。実に彼らしい答えでしたよ。ですがあなたは?…あなたは逃げようと思えば逃げる事が可能の筈です。ここまでする義理はないのですよ?」
「…ふむ、確かにな、なら答えよう。俺が気に入らないからだ」
「……ほう?」
大体のやつはどうしてここまでする?なんでそんな事をする?なんて聞いて尤もとらしい答えを期待してるみたいだけど。俺にはそんな大層な理由なんてない。
「この未来が気に入らない。この結末が気に入らない。俺はそれを望む結末を迎えるために行動をしている。つまりはただの欲望だな」
「クックック!欲望と言う割には他者の為に行動している事が殆どではないですか」
「それが俺の望む未来に必要な事だからだ。お前は知っているだろう?俺が強欲な悪党だってな」
俺の場合はそれが人助けが多かったってだけだ。
「えぇ、あなたはとても強欲な人だ。実にあなたらしい答えでしたよ」
黒服は満足したようにクックックと笑いながらどこかに行った。まぁ、何かトラブルを起こす事はないだろ。状況が状況だし。
−−−俺も少しだけ休憩するか