成り変わりカイザー理事の奮闘物語   作:CoCoチキ

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九十一話 ビーム砲はロマンだな。うん!

 

 「お、いたいた。アリス!ちょっと来てくれ」

 「なんですか?」

 「船が起動する前にちょっとこれをな」

 

 黒服から譲って貰ったブローチをアリスに渡した。黒服が正しければこれでアリスは守られるだろ。

 

 「アクセサリーですか?これには一体どんな効果があるのでしょう?」

 「これはアリスが致命的な攻撃を喰らった時にそれを無効化してくれるアクセサリーだ」

 「つまり即死無効のブローチって事ですね!ありがとうございますリジー!」

 

 あっさりと信じてくれたな。ん?いま……一瞬だけアリスの目が紫になったような?

 

 「どうかしましたか?」

 「いや、何でもない。気のせいだろ」

 

 先生たちの所に戻ろうとすると突然船が揺れ始めた。遂に起動したのかと思いアリスを見ると、揺れに驚いているだけで調子は良さそうだった。

 

 「びっくりしたね〜まさか突然動き出すなんて!」

 「この後は高速で動くから更にびっくりする事になるだろうな。どっかに掴まっておけ」

 

 モモイたちに近くの物に掴まるように伝えた後は今度こそ先生たちの所に戻った。

 

 「どんな感じだ?」

 「今のところは順調と言ったところでしょう」

 

 ん〜俺が呼んだんだけど生徒と一緒にゲマトリアが混ざってるのってすっごいシュール。ベアトリーチェは何故かさっきからビクビクしてるけど、今回アリウスの生徒はキヴォトス防衛に置いてきたぞ。

 

 「リオ、どんな感じだ?」

 「今は出来る限り船へのダメージを軽減するために処置を施しているところよ。オーパーツの扱いに詳しい人が居るから想定以上にダメージを軽減する事が可能ね」

 「クックック、お褒めに預かり光栄です」

 

 黒服の計算能力が高いお陰で本来の確率よりも成功率が上がっているらしいし本当に呼んでおいて良かった。そういえばここには黒服しか居ないが他のやつはどこだ?

 

 「なぁ、マエストロとゴルコンダとデカルコマニーはどこに居るんだ?」

 「マエストロは複製(ミメシス)を入手したので新たにヒエロニムスを生み出して待機しています。ゴルコンダとデカルコマニーは彼らの能力を活かし、弾薬の生産を行っています」

 「おぉ、あれって新しく手に入る物なのか」

 「数が少ないのでヒエロニムスだけですけどね」

 

 いやそれでもかなりでかいぞヒエロニムスが味方なのは。

 

 −ドォーーン!

 

 「うぉわ!?」

 「多次元解釈システムにエラー発生!ウトナピシュティムの状態が、方舟と一致しません!」

 

 それってかなりマズイんじゃないか!?このまま行くと激突するぞ!

 

 「…まさか箱舟がこれ程までの計算能力を持っていたとは、今の私たちでは箱舟に接触するどころか辿り着くことすら叶いません」

 「速度を落として!このままではあの変形した多次元バリアに衝突してしまうわ!」

 「ダメだ。いま下げたところでどのみち衝突する!あのバリアを突破する方法を考えるんだ!」

 

 ミメシスを使うべきか?いや、使ったところで何を複製すれば良いのか分からない。レールガンか?ダメだ。そもそも物理的に干渉出来るかどうかも分からない。

 

 「……方法ならば一つだけありますよ。あなた方が了承してくださるのであればね」

 「…黒服、言ってみろ」

 「あれはアトラ・ハシースの概念をコピーしたものです。なので、それに介入出来るのもまた。それと同一の箱舟のみ、つまり…名も「ダメよ!!」……」

 「…リオ?」

 

 突然大きな声を出したリオに全員が驚き視線を向けた。彼女は膝の上で拳を握って方が震えている。

 

 「それだけは…ダメ……同じ過ちは繰り返せないわ」

 「ですが、我々に残された方法はこれだけです」

 「だけど…それだと彼女を……私は…」

 

 俺は黒服に目線だけで謝った。「嫌な役回りをさせてすまん」と、黒服の表情は分からないは何となく、微笑んでいる事だけは分かった。

 

 「アリスは理解しました!安心してください!リオ先輩!リオ先輩が心配している事には絶対になりません!」

 「……アリス」

 

 リオの目には心配の色が見えていた。アリスがまた暴走しないか心配しているんだろう。

 

 「リオ、確かにあの時はああなったのかもしれないが。今もそうなるとは決まった訳じゃないだろう?俺は信じるぞ。俺たちの勇者を」

 「リジー……そうね。怖がっていてはダメよね」

 「そうだよ会長!アリスなら絶対に大丈夫!なんたってゲーム開発部の勇者なんだからね!」

 

 モモイもリオの事を励まして、少しだけ落ち着いたみたいだ。

 

 「はい!モモイの言う通りです!なので名もなき神々の王女として、ケイにお願いします」

 「……ケイ?」

 「“アリスの中に居るもう一人の生徒かな“」

 

 先生、ちょっと説明が雑じゃないか?

 

 「少し待っててください!」

 

 そう言うとアリスは目を閉じて棒立ちになった。俺は気になる事があるから黒服に近寄り小声で話しかける。

 

 「黒服、アリスの力を使っても良いのか?」

 「えぇ、ご心配なく、彼女の中に存在するアトラ・ハシースの箱舟を使用してもあのブローチがある限り安全です」

 「そうか」

 

 ブローチ凄いな。あんな小さいのに防御性能が高いとは。

 

 「そう言えばリジー、スズカちゃんたちは来てないの?」

 「あぁ、スズカは怪我をしたスピアの看病に残ってな。バルバラも看病をするスズカの護衛の為に地上だ。エンジニア君にはウトナピシュティムの外からサポートをしてもらってる。だから乗ってるのは俺とコンだけだな」

 「そっか〜」

 

 全く、無理をするなって言ったのに骨折する程の大怪我を負うなんて、びっくりしたぞ。

 

 「……起動開始」

 「お?」

 

 アリスが目を開くと彼女の目の色が紫色に変わっていた。

 

 「……コードネーム「AL−1S」起動完了………あなたがリジーですね?」

 「そうだぞ。えっと、ケイ、で良いのか?」

 「…はい、ATRAHASISを実行する前に…感謝を伝えたいと思いました」

 「感謝って、ブローチの事か?あれは黒服からの貰い物だから感謝するのならあいつにすれば良いだろう?」

 

 俺が黒服を指差しながら言うとケイは首を横に振った。

 

 「いえ、それでもあなたがゲマトリアを仲間に引き入れなければ、このブローチは入手出来ませんでした。あなたのお陰で…アリスは消えなくて済んだのです…ですから感謝を伝える相手は間違っていません」

 「あ〜どういたしまして?」

 「え、待って待って、アリスって消えかけてたの!?」

 「「………おっと」」

 

 ケイと反応が被った。じゃなくてそう言えばその事全然伝えてなかった。

 

 「まぁまぁ、そこは解決した問題だから気にするなモモイ」

 「そうですよ。気にしない方が良いですよモモイ」

 「二人とも初対面だよね!?なんでそんなに息ぴったりなの!?」

 

 アリスの中に居たんなら俺たちのやり取りも知ってるだろうし、そこまで気にする必要はないんじゃないか?

 

 「う〜…なんか腑に落ちないけど。いっか!」

 「モモイが単純で助かりました」

 「ん?」

 「いえ、なんでもありません」

 

 もしかしてあの時の暴走はアリスじゃなくてケイが主導で動いてたのか?開発部が爆破されてる音は聴いたけど直接的に見たわけじゃないからなぁ。分からん。

 

 「……それでは行きましょう!リジー!リジーも魔剣を持っているのできっと弱点を突けます!」

 「待て、その理論はおかしいぞアリス、アトラ・ハシースを使えるのはアリスだけだろ?」

 「…いえ、アリスに使用許可を頂ければリジーにも理論上は扱えます。その場合はブローチの有効範囲内に居てもらう為にもアリスとくっつかなければいけませんが」

 「ウッソだろおい!?使えんのかよ!?」

 

 衝撃的な事実を聞いた!

 

 「…リジー、お願い出来るかしら?もし〈key〉…いえ、ケイの言う事が正しいならば、アリスへ掛かる負担が分散される筈よ」

 「あ、その手があったか。じゃ、行くわ」

 「ノリが軽い!」

 

 失礼な、これでも俺は全員が出来る限り無傷でいられる可能性の高い行動を取ってるだけだ。

 

 俺はパワードスーツの電ちゃんを付けている部分に乗せてハッチに向かう。丁度四角いから足場に良いんだよな…電ちゃん。

 

 「ここら辺か?」

 「ピッタリです!魔剣を持った隠しボスと光の剣を持った勇者の夢の共闘!アリスの胸が高鳴ります!」

 「満足しているようで何より」

 

 俺も人の事大概言えないけどほんとマイペースだよなぁ、アリス。

 

 「…それでは始めます。AL−1Sに接続された利用可能なリソースを確保するため、全体検索を実行」

 『承認、ミレニアム製パワードスーツ及びオートマタ、個体名「海崎リジー」のリソースの使用をAL−1Sに許可します』

 「リソース領域の拡大、リソース名「ウトナピシュティム」「海崎リジー」の全体リソース——9999万エクサバイトのデータを確認……現時刻を持って、プロトコルATRAHASIS稼働」

 

 俺の中にアリスのデータが送られてきた。凄いリソース量だな、リオの提案に賛成しといて正解だった。

 

 「コード名「アトラ・ハシースの箱舟」起動プロセスを開始します」

 

 「王女は鍵を手に入れ、方舟は用意された」

 「名もなき神々の王女、AL−1Sが承認します——ここに、新たな聖域(サンクトゥム)が舞い降りん———!」

 

 アリスの光の剣とパワードスーツに搭載されている魔剣が宙に浮かび上がりどんどんと巨大化していく。そのサイズはパワードスーツの大きさを軽く超えてしまうぐらいの大きさにまでなると俺の腕に降ってきた。

 

 「おっっっも!」

 『安心してください。私の計算によってリジーがギリギリ持ち上げられるサイズにしています』

 「気遣いどうも!」

 

 電ちゃんの上にいるアリスを見るとそれはもう満面の笑みを浮かべて光の剣を構えていた。

 

 「ターゲット確認、出力臨界点突破……!魔力充填……100%、行きます!リジーも一緒に叫びましょう!」

 「は!?そんないきなり!?」

 

 まさかアリスにそんな無茶振りされるとは思ってなかった!

 

 「悪を打ち砕く正義の一撃……」

 「ああもう!仕方ないなぁ!傲慢なる神々を穿つ魔の一撃!」

 『リジー…あなたの言葉を借りるわ』

 

 通信を通してリオの声が聞こえる。

 

 『勇者たちよ!剣を取れ!杖を取れ!拳を掲げろ!あなた達の冒険は終わらない!……私たちの世界を救いなさい!!!』

 「当然だ!こんなところで終わらせて堪るか!!」

 「もちろんです!アリスは、仲間の期待に応えます!!」

 

 俺は吠えるように、アリスは力強く答え、引き金に指を掛ける。

 

 「光––––––––––」

 「つら––––––––」

 

 ほぼ同時に引き金を引いてエネルギーが砲身に収縮される。

 

 「––––––––よ!!!!!!」

 「抜けぇええ!!!!!!」

 

 青白いエネルギーと紫のエネルギーが合わさり、凝縮され、多次元バリアを貫通した。

 

 『……多次元バリアの破壊を確認、お疲れ様です。リジー』

 「あぁ、サポート助かったぞコン」

 

 視界にノイズが入りまともに前を見れなくなり、アリスの様子を見ることは出来ないが。どうやら気絶したらしい、モモイ達が運んでいった。

 

 「っぐ……それにしても凄まじい負担だな。よく耐え切れたもんだ」

 『それはリジーの容量が大きいからです。リジーはカイザーPMC理事ですので様々なデータをを管理する為に、容量が多いのに加え、ウタハさんが修理のついでに拡張をしてくれました。ですので視界にノイズが入るだけで済んでいます…暫くは動かずジッとしててくださいね』

 

 「分かった」と答えようとして今度は何かにぶつかった衝撃が船を揺らしたから慌ててパワードスーツの取っ手にしがみ付いた。

 

 「なんだ?」

 『リジー、内部への侵入が成功したわ…本当にありがとう」

 「ふははは!お礼を言うのはまだ早いぞ。俺たちはようやく敵の本拠地に入っただけだからな!」

 

 アリスも気絶はしてるが無事だし、俺もちょっと視界がブレるだけだから問題ない。

 

 −−−さぁて、どう暴れてやろうか?

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