転生者がリボーンの世界でもみ消し屋一族の10代目当主になった話

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リボーンってお嬢様キャラいないよねってふと思ったので書きました。

主人公イメージ(AI生成画像のため、苦手な方はご注意ください)

【挿絵表示】



砂漠の薔薇

 イタリア南部のある寂れた港にて。

 夜闇の中、人気のない場に似つかわしくない格好の男女が向かい合っていた。男は全身をシックなスーツで固め、口もとは緩やかな弧を描いている。しかし頬に残る傷跡と、獣のように鋭い眼光も相まって、すべての要素が見るものに威圧感を与える調和を保っていた。一方、女が身を包んでいるのは数世紀前の貴族が身に着けるように優美なインディゴのドレス。輝くようなプラチナブロンドの髪を腰まで伸ばした彼女の姿は、一人だけ別世界からやってきたかのような異彩を放っていた。

 

 水を打ったような沈黙ののち、先にそれを破ったのは男の声だった。

 

 

「見事な働きだ『もみ消し屋』。あの議員がウチと繋がってる事はおろか、あいつの存在すらみんな幻みてえに忘れちまった」

 

 満足げな男の言葉に、女は優雅にカーテシーを返す。

 

「ええ、ご期待に沿えたようで何よりですわ。では、約束のものを」

 

「ああ。報酬はすべてこの中だ。アンタの望みの額と───あの小役人よりずっと()()()()への裏の連絡先が入ってる」

 

 

 男が指定の位置に置いたアタッシュケースを受け取ると、『もみ消し屋』と呼ばれた女はそれを開けて数秒間確認した。

 

 

「確かに。契約は果たされました。

 では、(わたくし)はこれにて。ネーロファミリーの皆様方におかれましては、今後とも良いお付き合いができることを切に願っておりますわ」

 

「まァあわてるなよアデニウム。こっちはまだアンタに用があるんだ」

 

 

 男───この地域に根を張るマフィア、ネーロファミリーの幹部───に不躾に名前を呼ばれ、(アデニウム)は怪訝な顔で振り返る。

 

 

「……まだ何か?追加のご依頼でしたら口頭ではなく正規の───」

 

「ああ、依頼だよ。急で悪いが……そこに這いつくばってくれ」

 

 

 その瞬間、音もなく飛来した弾丸が()()()()空間へ飛来するや、今まで会話していた女がモヤのようにかき消えた。それに代わるように、左脚を撃ち抜かれた女の姿が着弾した場所から現れる。

 

 

「───ぐ、うぅっ⁉」

 

 

 突然の痛みに顔をゆがめたところへ、さらに数発の弾丸が飛来する。四肢を撃たれ、美術品のようなドレスが鮮血に染まった。先ほどまでの気品漂う振る舞いも崩れ、女は地面に倒れ伏した。

 その姿に、男は勝ち誇った笑みを浮かべる。

 

 

「やはりな。報酬の確認と受け取りの瞬間は幻覚ではなく本体が現れる必要がある。当然襲撃に備えて正確な位置は幻術で誤魔化してたようだが、その技巧こそお前が本物である証拠。遠距離からサーマルセンサーで居場所を確認すれば術士なんざただの的だ。

 ───お前の一族は今まで世界中で要人の秘密をもみ消してきたな?

政治家、大企業の重役、マフィア幹部……。お前が持ってる情報を我がネーロファミリーに役立ててもらおうと思ってな。勧誘に来たんだよ」

 

「……わた、くしが……それをのむ、とでも……」

 

 

 呼吸もままならない女に対して、嗜虐的な本性を現した男は楽しそうに言葉をつづける。

 

 

「喋るさ。ネーロファミリー(ウチ)の拷問部隊はそこらのマフィアとは違う。特にそのトップの俺はな。お前がどこまで()()か確かめるのが楽しみだよ。

 まァ焦る必要もねえ。数か月もかけりゃどんなに頑固な性格でも()()できるもんさ。お前は有能な術士だ。そうなればうちのファミリーに───」

 

 

 

「口説き文句としては0点ですわね。続きは来世で練習してからにしてくださる?」

 

「───があっ⁉」

 

 

 背後から女の声がした瞬間、男はそれ以上言葉を続けられなくなった。両手と両足からは焼けるような痛み。混乱したまま、男はその場に崩れ落ちる。

 そんな男の様子に一瞥もくれず、傷一つなく立っていた『もみ消し屋』は徐に先程のアタッシュケース本体を調べ始めた。

 

「なるほど。アタッシュケースに放射性マーカーを仕込んだのですね。それを持ったところで暗視ゴーグルなりを装備したスナイパーが遠距離から狙撃……術士対策としてはなかなか考えられていますわね。数の力に頼って安易に近距離戦を仕掛けてくる殺し屋(ヒットマン)の方々よりよほど賢明ですわ。同士討ちのリスクを避けられますもの。

 ───相手が(わたくし)でなければ、ですが。勉強不足でしたわね。超一流の術士の幻術は数百メートル先の機械すら欺くのです」

 

(バカな……!()()()()()()()()()()()()……?いくら幻覚を見せられても立っていられない痛みに気づかないはずが……)

 

「不思議そうな顔ですわね。人間の脳を騙す術は幻術に限りませんわよ?

 『癒しの香水(プロフーモ・クーラティーヴォ)』。我が家に伝わる秘薬のひとつ。報酬受け取りの際にこれを嗅いだ事で、あなたの脳は一時的に痛覚を()()()のです。弾丸が貫通した部位は霧の炎を織り混ぜた幻覚で補強させて頂きましたわ」

 

(霧の、炎?何の暗号だ……?いや、今はあいつの種明かしはどうでもいい。

俺、にはまだとっておきが……この任務は死んでも失敗するわけには……)

 

 

 死の淵にあっても男の眼は光を失わず、執念の色を見せる。その姿に女は感心した様子を見せた。

 

 

「へぇ?素晴らしい覚悟ですわね。地方(ローカル)マフィアによくいる思い上がり幹部かと思いましたが、正直見直しましたわ」

 

「なめ、るな……。お前は、俺が……!」

 

(万が一に備え用意していた、俺がやられた場合自動的に作動する大量の非殺傷兵器!鼓膜を破って目を潰した後選りすぐりの部下がこいつを捕獲する手筈だ!俺の方が一枚上手───)

 

「ですが、演技は二流ですわね。あなたがただの囮であることくらいお見通しです」

 

 女はそう言うと同時に、気が付くと横にあった木箱を蹴って中の物を無造作にばら撒いた。それは男が仕掛けておいたはずの兵器の山。すべて丁寧に分解済みのそれを見て、男は目の前が真っ暗になるのを感じた。

 

「う……ああ……」

 

「悲観することはありませんわ。あなたほど執念深く用意周到な方に情熱的なラブコールを頂いたのは久方ぶりです。残念ながら、あなたには文字通りこの世から()()()もらうほかありませんが……

 ───きっと来世(つぎ)は、もっと恵まれた人生を歩めるはずですから!」

 

 

 その明るい声音に、男は初めての恐怖を覚えた。暴力と恐怖でのし上がってきた人生において、殺人に躊躇のない者などいくらでも見てきた。だが、自分がたった今殺意を向けられ、そして死にゆく人間を眺める側になっても、『幸福な来世(つぎ)の人生』を心の底から信じているような女の顔。幻術によって掌の上で転がされていたと悟った時より、もっと人間として決定的な乖離を感じた瞬間だった。この恐怖が、男が人生で最後に抱いた感情だった。

 

 

 この2日後、ネーロファミリー本部は騒然となる。ボスから極秘の任務を命じられていた幹部1名、およびその部下十数名が失踪したうえ、その人間のあらゆる記録が抹消されていたためだ。もはやそれらの人物が存在した痕跡は構成員の記憶のみとなり、ボスは世界最高のもみ消し屋(フィクサー)を敵に回したことを後悔するのだった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

チャオ――――!!!!(クソデカボイス)

 前世でひどい死に方をしたと思ったら昔読んだバトル漫画の世界に転生し、なんやかんやあって今や業界トップのもみ消し屋、ルーナ・アデニウムですわーーーー!

 犯罪の証拠から特定人物の痕跡そのものの揉み消しまで、手広く請け負う老舗の10代目当主を務めておりますわ!お父様は幼少期から頭のおかしい幻術の修行をつけてくるわ、しょっちゅう殺し屋(ヒットマン)が襲って来るわで転生直後は大変でしたが、いわゆる転生特典のおかげで今日まで生きてこられました。

 

 この世界裏社会の人間の戦闘力が高すぎなんですのよ!そんじょそこらの護衛を何人雇ってもちょっと強いマフィアや殺し屋が来たら簡単に殺されたり拉致られてしまいます。特に(わたくし)の一族は職業柄狙われやすいので生き残りたくば自分が強くなるしかないのです!裏社会において権利とはすなわち力!力のないものには発言権も人権も与えられません!暴力!暴力!そして暴力!

 

 おっと話がそれましたわね。転生特典について説明がまだでしたわ。沢田綱吉(しゅじんこう)しかりバミューダ(ラスボス)しかり、この世界では臨死体験で覚醒することが割とあるのです。だいたい死ぬ気の炎とかいうクッソ便利な存在のおかげですわね。かく言う私もそうでした。前世で意識が残ったままゆっ……くりと堪能するような死に方をした私は、そのショックで精神がぶっ飛び。さらに転生までしたらもう……『死』に対して吹っ切れたというか、SAN値が0になったというか。幼少期に初めてリングをはめるとキャンプファイヤーもかくやのクソデカ死ぬ気の炎が出たのですわ。もちろんリングはその直後砕け散りました。魔力測定の水晶を割るチート転生者か?

 

 そうそう、転生によって戦闘力が上がるといえば六道骸の例がありましたわね。物語中盤以降影が薄くなったあの6つの能力(スキル)とかいうやつですわ。六道骸は異世界チート転生者だった……?急に親近感が湧いてきましたわね。もっともあの能力(スキル)というのは前世の記憶から得た技らしいので私とは若干活用方法が異なりますね。今世の精神への影響は無さそうですし、死ぬ気の炎は多分自前の精神力で出しているんでしょう。

 

 さて、つい最近リボーン様が日本(ジャッポーネ)へ発ったという情報が入ったのでもう原作開始の時期ですか。私も原作の舞台へ参るとしましょう。この間の依頼報酬で日本に安全な拠点を作る事にも成功いたしましたし、次期ボンゴレ10代目には早めにご挨拶するべきですわね。一族に代々受け継がれた使命を全うするためにも、ここから先の動向にはしっかり注意しなくては!

 

─────っと、その前に……

 

「当主様?何か御用でしょうか?」

 

「ええ。これから大きな仕事があるから明日日本へ発つの。

 一族の悲願に関わる事だから、その前にご先祖様に報告しようと思ってね」

 

 ここはアデニウム家が所有する霊園。揉み消し屋一族が数世紀に渡り秘匿してきたもの。村1つ分の広さはありますわ。ここに歴代当主を含めた一族の方々が埋葬されております。

 墓守の少女に軽く要件を伝え、墓前に花を供えます。この娘もこの広い霊園をほとんど一人で管理しているトンデモ体力の女の子ですわ。そこらのマフィアが襲ってきても一人で返り討ちにできるくらいは強いのです。機密保持や霊園の管理のため、アデニウムの墓守には戦闘能力を含めた特別な資質が求められるのですわ。

 

「それはそれは……眠っておられる方々もお喜びになるでしょう」

 

「うん。しばらくは帰って来れないから、もし()()事があったらそう伝えてくれる?」

 

「承知しました」

 

 エヴォカトーレの血が入っているからか、彼女には降霊術士の才能があります。しばしば子孫を心配して現世に降りられるご先祖さまとお話しする事もあるようで、こうして言伝を頼む事もありますわ。ご先祖さまにはいつも安らかに眠って頂きたいですから。

 

「行って参ります」

 

 一族の決戦へ赴く心持ちで、私は墓前にそう告げました。

 

──────────────────────

 

「はぁ〜

 今日もひどい目にあった……」

 

 午前中の理科は抜き打ちテストで5点とるし、昼は不良に絡まれるし、さっきの体育ではボールが顔面直撃で鼻血出すしで散々だよ……。おまけに理科担任の根津のやつオレ1人だけ補習にするし……。今日こそ京子ちゃんを(うち)に遊びに誘うつもりだったのになあ。前回はハルと京子ちゃんが餃子饅食べて大変だったし。あーあ。家に帰ったらまたリボーンのスパルタ教育だと思うと憂鬱だよ。このまま保健室に行ったら放課後まで寝てようかな。

 

「すみませ-ん。鼻血が出ちゃったので休ませて欲しいんですけど」

 

「ようこそ!!!お待ちしておりましたわ沢田様!」

「どちら様---!!?」

 

 保健室の扉を開けたら初対面の綺麗な女の人がハイテンションで挨拶してきた。テレビでしか見た事ないようなドレスをなぜか校内で着てるし絶対保健室の先生じゃないでしょこの人!あとなんでオレの名前知ってんの!?

 

「申し遅れました。(わたくし)は『もみ消し屋』、アデニウム家が10代目当主、ルーナ・アデニウムと申します。次期ボンゴレ10代目である沢田綱吉様にお目通りを、とイタリアより罷り越しましたわ」

 

「え゛!?ひ……人違いじゃないですか……?し、失礼しましたっ」

 

 やっぱりこの人マフィア関係(あっち)の人だーーーー!!どうせまたリボーンが呼んだんだろうし関わりたくないよ!ドアを閉めて教室に戻……

 

「まあまあそう警戒なさらないで下さいまし。挨拶代わりと言ってはなんですが、沢田様がお望みの契約(プラン)をご用意いたしました。こちらの契約書をご査収ください」

 

「ちょっ……近い!近いです!」

 

 

 滅茶苦茶グイグイ来るよこの美人さん!うわすごいいい匂いする……じゃなくて!マフィアがらみの人が言う契約とか怪しさ満点だよ!ここはきっぱり断らないと……

 ……えっなにこの契約書。

『ルーナ・アデニウムは本契約が成立した日付において、沢田綱吉が笹川京子をデートに誘う為に障害となりうる事実を抹消する』?

契約内容は雑だし、なんで初対面のこの人にオレが京子ちゃんを遊びに誘おうと思ってたことが知られてんの!?オレのプライバシーは一体……

 

 この人怒らせたら色んな意味で怖いし、どうやって穏便に断ろうか悩んでいると、いま一番来て欲しくなかった声が聞こえた。

 

 

「十代目!先ほどのお怪我は……あん?てめえ教師じゃねえな!何処のヒットマンだ!」

 

「ちょっ獄寺君いきなりダイナマイト出したらダメーーー!!」

 

「まあ!あなたが沢田様の第一の側近でいらっしゃる獄寺様ですのね!でしたら私のことは……『当代のアデニウム』と言えばお分かりになるでしょうか?」

 

「なっ……アデニウムだと!?」

 

「獄寺君知ってるの?」

 

 そう尋ねると獄寺君がマジメな顔になった。

 

「アデニウムといえば裏社会で百年以上続くもみ消し屋の名家!特に現当主は国家が管理する機密情報すら操作すると言われています!」

 

(そんなヤバい人だったのーーー!!?)

 

 オレが内心ビビりっぱなしな事にはお構いなしに、アデニウムさんはにっこり笑って続けた。

 

「ご存じ頂き光栄ですわ。宜しければ獄寺様もそちらの契約書をご確認くださいまし。

 文言にある『障害となりうる事実』とは、具体的には『放課後の補習』及び『昼間の不良生徒とのトラブル』。現在この2つの事実を抹消する予定となっております。特に後者に関しては件の不良が綱吉様を恐喝のターゲット(カツアゲのカモ)にする旨の会話をしているところを盗聴しました。こちらがその会話記録です。放課後に待ち伏せされる事が予想されますので、緊急性が高いかと」

 

 アデニウムさんはそう言いながらレコーダーをこっちに差し出してきた。ありがたいけど一々物騒だよ!

 

「報酬に関しましては、契約書にも記載の通り初回サービスということで無料となっております。いかがでしょう?」

 

「……確かにこれはアデニウム家の紋章、外部の者が契約書にこれを使うのは自殺行為……

 ですが十代目!この程度の事であれば部外者に依頼するまでもありません!オレが今からそのセンコーとケンカ売ってきたヤローぶっ飛ばして来ますよ!」

 

「……アデニウムさん、お願いします」

 

「はい!ご依頼、承りましたわ!」

 

「十代目ーーー!!?」

 

 結構悩んだけどすごい人なのは事実らしいので素直にお願いすることにした。

 ここで断ったら獄寺君が余計大変な事起こしそうだし。

 

 

──────────────────────

 

 

 さーて気合い入れてお仕事開始ですわ!

 まずはすぐに終わる補習の帳消しからですわねぇ。理科の担当教師を仕留めた後テスト結果と記憶を改竄していきますわ。

 

 ククク……5限目の後ターゲットがこのルートで職員室へ向かうことは調査済みです!幻術で廊下の角に潜んで……今です!

 

「───モガっ!?」

 

 秘伝の睡眠薬を手早く嗅がせてノックアウト。近くの空き教室に連れ込んで記憶の改竄に移ります。ですがいくら相手の五感を支配する一流の術士といえど、特定の記憶を忘れさせるような繊細な作業はとっても大変!

 

 そんな時役に立つのがこちらです!

 てってて〜〜。『(コールノ)のヘルリング』〜!世界に6つしかない霧属性最高ランクにして呪いのリングの一角。悪魔のツノを削って作ったという曰く付きで初代アデニウムより伝わる家宝ですわ!こんな悪趣味な見た目の指輪を家宝にするな。

 このリング、気絶もしくは無力化した供物を捧げることで術者にバフがかかるという特性があります。この場合の供物は動物でも人間でも、あるいは記憶などの形のないものでも構いません。悪魔の指輪のくせに融通が利きますわね!我が家の当主は代々この特性を利用して証拠隠滅を図ってきたのです。

 ツッコミ気質の綱吉様などはリングの特技ってなんだよと思われるかもしれません。まさに正論。ですがヘルリングに対して常識は通用しません。例えばヘルリング仲間でぱっちりおめめがチャームポイントの『(マロッキョ)のヘルリング』ちゃんなんかは文字通りの肉食系です。野生のゾウなんてペロリですわ。ヘルリングまわりは原作でも設定がオカルト寄りでしたしそういうものとお考えください。

 

Mangiareお食べなさい

 

 使い方はとっても簡単!呪文(スペル)を唱えて捧げるものを念じながら霧の波動を流すだけ!なんなら呪文(スペル)もぶっちゃけ雰囲気でかまいません。

 んー……記憶処理が終わるまで少し暇ですわ。あら?よく見たらこの方原作に居ましたわね。確か学歴詐称でクビになったFラン教師でしたっけ……自分の母校で学歴詐称して教員やるとかおロックが過ぎましてよ!おまけに自分の授業で頻繁に学歴自慢までするとか……よくこの歳になるまでバレませんでしたわね。その度胸とステルス技能に敬意を表して近くのおロッカーにしまっておきましょう。おやすみなさーい☆

 

 さてさて~あとは幻覚でこの方に化けまして……職員室で成績の改ざんを済ませれば補習はパアですわね!

 

 (仕事の)お邪魔しまーす!(犯行予告)

 

 PCのセキュリティは昨日肩越しに覗いてパスワードをチェックしたので無いも同然です。原始的で物理的なハッキングこそ結局最強なのですわ!(青葉紅葉)

 

カチャカチャカチャカチャ……ッターン!

 

 はい出来上がり!改竄完了ですわ!

 

「おや根津先生、今日は随分ご機嫌ですね。何か良いことでも?」

 

「ええまあ……(自家製の睡眠薬で)夢を見ている者の顔はいいものだ、と改めて思う出来事がありましてね」

 

「ああ。進路相談ですか。」

 

「そんな所です。

 おっと、忘れ物を思い出しました。多分掃除用具入れのロッカーの奥にあるので行ってきますね」

 

「なぜそんな所に忘れ物を……?」

 

「いえ私実は掃除用具入れのロッカーが大好きでして。中に入った日にはうっかり眠ってしまうかもしれませんから、そうなっても驚かないで下さいね。失礼します」

 

「驚きますよ!?ちょっと、根津先生!?」

 

 

──────────────────────

 

 

 ヨシ!補習の存在を完璧に消した所で次のターゲット、カツアゲを企む不良の処理に移りますわ!補習と同様にヘルリングでお手軽にやっても良いのですが、アフターケアを考えるとターゲットが二度と恐喝を企まない様にしたい所ですわねぇ。うーん……囮プランでいきますか。

 

 〜5分後〜

 

 変装完了!今の(わたくし)はどこから見ても平凡な並中男子生徒!

 実は私、リボーン様には及びませんが変装術も修めているのです!幻術という一芸だけに頼るのでは人を欺く者として二流。真のプロは幅広い技能に精通してこそですわ!

 

 準備も済んだところで作戦開始!まず6限目の授業をサボって正門前で待ち伏せしているターゲットの不良に因縁をつけられに行きます。

 ククク……これから起こる事も知らずに呑気な顔しちゃってマア…… それ突撃ィ〜!

 

「ごふっ!?」

 

 あっタックルが鳩尾に入ってしまいました。ごめんあそばせ。

 

「すっすいません!急いでて前をよく見てなくて……。

 へへ……それじゃ……」

 

「おいコラ待ちやがれテメェ!!」

 

 釣れましたー!やはりこの手の方は行動が読みやすくて助かりますわね〜。術士にとってまな板の上の鯉も同然ですわ!

 さて、このまま目標地点まで誘導します。これから少し複雑な幻術を使うのでリングを2()()、取り出しておきますわ。

 

「逃げんなテメェこのっ…」

 

 よーし良し。上手く誘導できましたわね……

 あとはそこの曲がり角を曲がってターゲットの視界から外れた瞬間に……霧のリングの幻覚でターゲットの姿に化ける!そしてすかさず石を応接室の窓に投擲!()()1()()()()()()()()でつくった幻覚で隠れれば準備完了ですわ!

 

  ガシャーン!

 

「どこだっ!さっさと出てこねぇとタダじゃ済まさねえぞモヤシ野郎!

 

 やっぱりこの手の方は少し煽るだけで不用意な発言をしてくれて助かりますわねぇ。だって私が投石した応接室は……

 

へえ……そこまで言うなら相手してやるよ

 

「あん!?やっと出てきやがっ…」

 

 あの風紀委員会の部屋ですもの。やっちゃってくださいましモブ風紀委員の方!

 

風紀委員のいる部屋に石投げてきやがるとか……どんな目に遭うか分かってるよな?

 

「へえっ!?いや違っ…俺じゃな…」

 

バキッ!!

 

今更嘘つくんじゃねえ!俺はお前がやるの見てたんだよ!

 

べキッッ!!ドゴッ!!

 

やめてくだ…ほんとにちが…

 

 

 ヨシ!これでこっちも完了ですわ!

 風紀委員に喧嘩を売った(事になった)彼は今後しばらく風紀委員のメンツの為に目をつけられるでしょう。彼らが目を光らせる中カツアゲなんて犯罪は到底できないでしょうし、今後も安心ですわね!

 

 さて!一仕事終えたところで依頼人(沢田様)に報告するとしましょうか。

 今日も華麗な仕事ぶりでしたわ!さすが私!

 

──────────────────────

 

「……と、いうわけでして。申し上げました2つの障害の排除が完了いたしました。

 これで契約は完了、ということでよろしいですか?沢田綱吉様」

 

「はあ……あの、ちょっと聞いていいですか?」

 

 放課後すぐ、アデニウムさんに教室の隅へ手招きされ、仕事の報告をされた。記憶を消した、とかめちゃくちゃ怖いことをサラッと話されたのも気になったけど、それより言いたいことがあった。

 

「なんでしょう?」

 

「なんで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?アデニウムさん、すごい目立つドレス着てますよね?」

 

企業秘密ですわ

「アッハイ…スミマセン…」

 

 気にしたらいけない事だったらしい。この人いろいろ謎で怖いからもう早く話を終わらせたい。

 

「そんな事より!笹川京子様に話しかける絶好のチャンスですわ!

 今日こそ遊びのお誘いをなさるんでしょう?さあ!さあ!」

 

「いやでも……直前になると緊張してきたっていうか……やっぱ今日はやめとこっかなっていうか……」

 

「あらあ?それは困りましたわねぇ……。

 私が請け負った依頼は『沢田様が笹川京子様を誘う為の障害の排除』ですもの。もし沢田様が躊躇なさるのなら、その緊張を()()()()必要がありますわ……」

「すいません嘘です今すぐ行ってきます!」

 

 アデニウムさんの言葉を聞いて即座に駆け出す。この場にいたら何されるかわからないよ!

 

 「今後とも『砂漠の薔薇(アデニウム)』をご贔屓に。ボンゴレ10代目♡」

 

 放課後の教室のザワザワとした話し声の中、オレの背中に投げかけられたその声が、やけにはっきり聞こえた。

 

──────────────────────

 

「────ふう。なんとか上手く行きましたわね」

 

 日本(ジャッポーネ)に作ったセーフハウス。その一室でふと呟きます。

 

 多少強引でしたが、なんとか沢田様に(アデニウム)を印象づけることができました。今後原作の展開に介入することも容易になったでしょう。

 実を言えば、今日の私は笹川京子様に話しかける沢田様並、あるいはそれ以上にプレッシャーを感じておりました。なにしろ、本日の仕事次第で一族の悲願の明暗が分かれるのですから。

 

 緊張が解けてリラックスしたせいか、思わず左手の()()()()()()を無意識のうちに撫でていました。

 シモンの秘島でのみ採掘される砂漠属性の鉱石。それを加工し作られた我が家の最も重要な宝。

 

────そう、アデニウム家の悲願。それはシモンファミリーにかけられた全ての悪評を抹消する事。

 初代アデニウムはその使命の為、ファミリーに秘密で作ったこのリングと共にシモンの秘島から出奔しました。私のお父様も、お祖父様も、その人生を懸けてシモンファミリーの汚名を濯ぐ為に陰ながら活動していたのです。

 

 この先の未来も、シモンを陥れた黒幕も、『前世読んだ漫画』として知っている私が霧と砂漠の二重属性を持ってこの時代に生まれたことに何らかの運命を感じてしまいます。

 私は私を育ててくれた家族が大好きです。だからこそ、10代に渡って本来は必要のなかった責務を背負わせた存在を許すことができません。読者としてではなく、大切な家族を害された当事者としての感情が大きくなっていくのを成長するにつれ感じてきました。

 

 憎むべきは初代シモンを嵌めた者────

 

 「殺してやる…殺してやるぞ

  D デイモンスペード…

 

 




◆オリ設定
砂漠の炎の性質は『風化』。霧の炎の『構築』に対し、存在するものを認識させない幻術に優れる。
これを使えば一流の術士か超直感持ちにしか存在を感知することができない。身も蓋もない言い方をすれば主人公一族は揉み消し屋より殺し屋の方が向いてる。

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