アスカは加持とともにショッピングに来ていた。彼女の心は加地といられることに胸が踊っている。
「ラッキー!加持さんにショッピングを付き合ってもらえるなんて!」
「ここ、水着コーナーじゃないか…」
うら若き少女とアラサーの男性が歩いている姿は完全に援助k…
「うるさいわよ!」
「どうした?急に大声出すなんて」
「なんでもないわ。ねえねえ、これなんかどう?」
そう言って少し大人びたデザインの水着を見せる。もちろん、加持にその気は無いのでアスカのアピールの影響を受けることはない。
「中学生にはちと早すぎるんじゃないかな?」
「加持さんおっくれてるぅ〜。今時こんくらい、あったりまえよ」
加持のつれない態度を不満に思いながらも、アスカはまた水着選びに戻るのだった。
ようやく気に入ったものを買うことができたアスカと加持は建物内の飲食スペースで休憩していた。
「ほお。そうなんだ」
「せっかくの修学旅行だもん。パーっと気分を解放しなきゃ」
「修学旅行、どこ?」
どうやら彼女はそのために熱心に選んでいたらしい。彼女は興奮したように続ける。
「沖縄!スキューバダイビングもあるのよ!」
「スキューバねぇ…そういや、もう3年も潜ってないな」
「加持さんは修学旅行はどこ行ったの?」
その質問になんてことのないように答える。
「ああ、俺達のときはなかったんだ。セカンドインパクトがあったからな」
「あっ…」
アスカは失言をしてしまったと罪悪感に襲われる。セカンドインパクトが起きたのは南極だが、もちろん日本も甚大な影響を受けたのだ。修学旅行に行く余裕などあるはずがなかった。
「えぇー!?修学旅行に言っちゃダメェ!?」
ダイニングでアスカが叫ぶ。ミサトは申し訳なさそうに答えた。
「修学旅行に行ってる間に使徒が来るかもしれないでしょ?」
「なんで先に言わなかったんですか?」
レイが尋ねる。心なしか肩を落としていてガッカリしている様子だ。修学旅行を楽しみにしていたのを感じる。
「こうやって皆んなをガッカリさせたくなかったのよ。ほんとにごめんなさい!」
「あーもう!信じらんない!あんたらもなんか言ってやったらどうなの!」
アスカがシンジとナズナの方を見る。2人はお茶をのんびりとすすってどこかジジ、ババくさい。
「僕は多分こういうことになるんじゃないかなと思って」
「右に同じー」
その反応に彼女は眉根を寄せる。
「情けない!まるで飼い慣らされてるみたいじゃない!」
「じゃあ、アスカとレイで修学旅行に行って初号機で防衛って形にする?私たちはそれでもいいけど」
「そうしましょう」
「いやよ!」
レイは賛成の声をあげ、アスカは反対する。彼女にとってこれ以上初号機に使徒の撃破スコアを稼がれるのは癪なのだった。彼女は地団駄を踏んだ。
(レイもいい性格になったよな。図々しくなったというか。まあ感情が育ってて良い傾向だけど)
ナズナの彼女を見つめる視線が妹を見るような生温かいものになっているのは誰も気がつかない。
「いつもいつも待機ばっかり!いつ来るかわかんない敵を相手に守ることばっかし!たまには敵の居場所を突き止めて、攻めに行ったらどうなの?」
「それができたらやってるわよ。ま、2人ともクラスメイトが修学旅行に行っている間、少しは勉強ができるでしょ?」
ミサトが少し悪い笑みを浮かべてとあるものを持ち出す。それをみてアスカとシンジはげっという顔をした。
「あたしが知らないとでも思ってるの?」
それは彼らの成績表だった。アスカはそれでも強がって見せる。
「ふん、バッカみたい。学校の成績が何よ。旧態依然の減点式のテストなんか、なんの興味もないわ」
「それに、勉強できても戦闘じゃ役に立たないじゃないですか!」
シンジも反論に加わる。
「戦いが終わって困るのはシンジだよ?将来に向けて色々やってかなきゃ。勉強、手伝うからさ」
「そういうフォースとレイはどうなのよ?」
成績のことで話題に登らなかった2人についてミサトに尋ねる。彼女は成績表を見せた。アスカと横から覗き見たシンジはこれまたうげっと反応する。ナズナとレイの成績は誰がどう見ても優秀なものだった。
「2人はできるんだから、アスカ達もできるはずよ。ゴタゴタ言わずにやりなさい!」
「イーーーーッだ!」
アスカの反発する声が響いた。
エヴァパイロット達は空港で飛行機を見送る。
「あーあ。行っちゃった」
ぼやくアスカ。直前に言われたクラスメイトの言葉が蘇る。
『お土産買ってくるからね!』
『皆んな残念だったなぁ!』
『お前らの分まで楽しんできたるわ、ナハハハハー!』
レイも少し頬を膨らませる。
「沖縄、行きたかった」
「と、言うと思ってね」
アスカとレイが見つめる中、ナズナが悪戯を考えた子供のように笑う。
「許可、とっといたよ」
NERV内の施設プールでは中学生が各々の方法で楽しんでいた。
アスカとレイはその中でのびのびと泳ぎ、ナズナは縁に腰掛け足で波紋を作る。シンジはプールサイドで問題を解いていた。
ナズナはチルドレン達が修学旅行に行けない分、雰囲気だけでもとNERV関係者に掛け合っていたのだ。まあ、本編の流れを辿るためというのが1番の理由だが。
「ナズナ、ここどうするの?」
「ん、ここをこうやってこう」
ナズナは泳ぐことができない分、シンジの課題を手伝うことで暇を紛らわせていた。とは言っても、シンジは京大サラブレッドなのでやはり暇な時間の方が長かった。そんな2人にプールから上がったアスカが近づいてくる。
「何してんの?」
「理科の勉強」
「お利口さんなことね〜」
彼女との会話にシンジはふと顔をあげた。
「どういう格好?」
「ジャーン!沖縄でスキューバーできないから、ここで潜るの」
アスカの格好は以前の加持とのショッピングで購入したビキニにダイビングの装備をつけていた。
「そう言えばあったね」
「今はどの問題?ちょっと見せて…この程度の数式が解けないの?はい、できた。簡単じゃん」
アスカはシンジの問題集を覗き込むと、さらさらと問題を解いていく。シンジはそれに驚いた。
「どうしてこんな難しいのができて、学校のテストがダメなの?」
「まだ漢字全部覚えてないのよ。向こうの大学じゃ、習ってなかったし」
「大学?」
「去年卒業したの」
ナズナは感心する。
「ドイツは飛び級できるのか。すごいね」
「まあね。あんたも向こうに行けば大学に入学くらいは出来るんじゃない?」
「私は日本で十分だよ」
アスカは再び問題に目を移す。
「で、こっちのはなんて書いてるの?」
「熱膨張だね」
問題を読んで答える。
「幼稚なことやってんのね。とどのつまり、ものを温めれば膨らんで冷やせば縮むってことよ」
「そりゃそうだけど…」
シンジはどこか不服そうに呟く。アスカは揶揄ってみることにした。
「フォースの場合、胸だけ温めれば少しはおっぱいが大きくなるんじゃない?」
「そ、そんなこと聞かれたってわかんないよ!」
「なぜ私を引き合いに出す」
シンジは顔を真っ赤に叫び、ナズナはアスカに比べれば慎ましやかな胸に手を当てた。
(私だってまだ体は中2なんだ。成長段階…のはず)
アスカはその反応がお気に召さなかったのか口を尖らせてプールに歩み寄ると
「見て見て、バックロールエントリー!」
そう言って水の中に潜る。アスカの我が道をいくスタイルにシンジとナズナは顔を見合わせるとため息をついた。
浅間山地震研究所ではミサトが真剣な面持ちでモニターを見つめていた。NERVにここから報告が入り、彼女が赴くことになったのだ。その報告はこうだ『火口内に不自然に巨大な影がある』と。
「もう限界です!」
「いえ、あと500、お願いします」
研究員の抗議もミサトはすぐさま跳ね除ける。しかし、火口に沈ませた探査機はその圧力で悲鳴を上げた。
『震度1200、耐圧隔壁に亀裂発生』
「葛城さん!」
「壊れたらうちで弁償します。あと200」
研究員の声が悲鳴に近くなる。彼らにとっては大事な調査道具なのだ。壊されればひとたまりもない。それでもミサトは無慈悲に潜行指示を出す。彼女はそれがなんなのかの確証を得たかったのだ。ようやくセンサーが目的のものに反応する。
「解析開始」
「はい」
ミサトがすぐさま新たな命令を出してマコトが解析を始める。しかし、すぐさま観測機は圧壊して爆発した。
「解析は?」
「ギリギリで間に合いました。パターン青です」
それが意味することはそれが使徒であることだった。
モニターに映るのは第8使徒、サンダルフォン。
「これが、使徒?」
「そうよ。まだ完成体になっていない蛹の状態みたいなものね」
その姿に驚いたシンジがリツコに聞く。確かに、今まで彼が戦ってきた使徒の形状とは大きくかけ離れているのだ。疑問に思うのも無理はない。
「遺伝子上はヒトと使徒はほとんど一緒ですからね。幼体が似てるのも無理はありません」
ナズナが発言し、モニターを眺める。その使徒はラグビーボール状の殻に包まれ、その中から手足の細長い胎児のようなものが丸まっているのが透けて見える。
「今回の作戦は使徒の捕獲を最優先とします。できうる限り原型を止め、生きたまま回収すること」
「危険すぎませんか?もし、回収しても羽化すればどんなことになるかわかりません」
ナズナが反対する。捕獲は必ず失敗するので最初から殲滅に動くべきだと考えたのだ。
「生きた使徒のサンプル、それはとても重要なことなの。どんな危険を犯してもね」
しかし、リツコはそれを却下した。ナズナが眉を寄せる。彼女は裏の意図を知っていた。
(ゼーレはまだウナゲリオンの建造を諦めてないってことか。あっちの動向を細かく探れたらいいんだけど。家族ぐるみでゼーレ関係者だったら楽なんだろうけどな)
リツコはナズナの沈黙を了承とみたのか続ける。
「作戦担当者は…」
「はいは〜い、私が潜る!」
アスカが元気よく挙手する。リツコは頷いた。
「アスカ。弍号機で担当して」
「は〜い。こんなの楽勝じゃん」
レイがそれを受けて言葉を発する。
「私は?」
「プロトタイプの零号機には、特殊装備は規格外なのよ」
「レイと零号機には本部での待機を命じます」
「はい」
マヤとリツコの言葉を素直に聞きつつもレイは微かに頬を膨らませる。
「残念だったわねぇ〜、温泉行けなくて」
「すぐに出るわよ。支度して」
そう、浅間山周辺は温泉地帯。非常時に備えてとは理解していても、レイは不満を感じていた。リツコの纏める言葉にパイロット達は返事をすると各自の持ち場に向かっていった。
弍号機のゲージでは赤い風船が騒いでいた。
「いやぁぁぁ!何よこれ!」
「耐熱・耐圧・体格防護服。局地専用のD型装備よ」
アスカが太っていた、いや違う、プラグスーツが膨れて太っているように見えるのだ。マグマ内という極限に厳しい土地において、生命維持の機能があるプラグスーツはさらに改良せざるを得なかった。しかし、見栄えをよくすることは叶わず、アスカは不満だった。酷い見た目になったのはアスカだけではない。
「これがあたしの、弍号機?」
弍号機は今までのスタイリッシュさからかけ離れ、宇宙服のようなスーツを着たずんぐりむっくりの姿になっていた。
「あたし降りる!こんなので人前に出たくないわ!こーいうのはシンジ達の方がお似合いよ!」
アスカが叫ぶ。このような姿でいることは彼女のプライドが許さなかった。
「困りましたねぇ…」
「そうね」
マヤとリツコが頭を抱える。
「あの、僕たちが…」
「そうなるともう1人分スーツを改良しなきゃだしなぁ…」
シンジはおずおずと提案し、それを受けてナズナが苦い顔をする。こちらの2人は通常のプラグスーツのままだった。それを一度開発に成功しているとはいえ、さらに改造することは手間が掛かるのだ。レイはそれを見て発言した。
「私が弍号機ででるわ」
アスカがその提案に傾きかけるが、直前で思い直すと苦々しげに言った。
「あたしの弍号機に誰かが乗ってほしくないの、悪いけど。レイが出るくらいなら私が行くわ」
それでようやく意思を固める。
「カッコ悪いけど、我慢してね…」
彼女は弍号機に向かって呟いた。
握り飯の数日前の夢にて
ナズナ「おい」
握り飯「ナズナちゃん!?えっ、かわいい。どうしたの?こんなところで、てか揉ませて?」
ジャキッ
飯「こらこら、人に銃向けないn」
ダァン
飯「…」
ナ「書け」
飯「ウッス」