夢と現のクロスロード   作:佐月栄汰

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 しばらくして。

 足は勿論体全体が完治し、役目を終えたルーリィも退去して、そろそろいい時間になったということで帰ろうと玄関へ向かう。

 送り迎えをしたいとのことで、今回はナタリア(と沙良)も一緒だ。

 

「おっ?」

 

 行きの時より人数が多いことに突っ込まれないように祈っていると、通り沿いに購買が目に入る。

 そわあ、と拓海の好奇心を擽った。

 

 物書きをする際、パソコンのような高価なものをおいそれと買えない拓海にとって、文房具は当然の必需品だ。

 拓海が初めて読んだ小説であり、同時に書くきっかけとなった小説の作家も、プロフィール曰く基本手書きで文具にはこだわりがあるという。

 

 ならば拓海も、同じようにこだわっていきたいと思うのは必然的。

 というわけで。

 

「リア姉、ちょっとあそこ見に寄っていってみたいから、一緒に寄ってって、くれないか?」

 

「えっ? あ、あー……ん、まあ、良いですわよ」

 

「ありがとう。お前達はどうする?」

 

「僕はいいかなあ」

 

「私も、まあ何時でも来れますので」

 

「分かった。んじゃ、個人的なあれだし、皆は先に行っててくれ」

 

 長居するつもりはないが、だとしても待たせるのもあれなので。

 

「うい。んじゃごゆっくりー」

 

 脱力状態で手を振りながら時亜を筆頭に、去っていく彼女等を見届ける。

 当然のように残った亮と沙良も連れて、拓海達は購買へと足を進める。

 

 近くに寄って見れば、品揃えはやはり上品なものが多い。

 だがそれ以上に、こちらでは買えない海外のブランド物や、普段売り切れてて買えないものも当然のようにあって、目を輝かせざるを得ない。

 

 買っていったら駄目か? そう思ってなんとなく周りを見渡すと、あることに気付く。

 

「ここ、店員いないのか」

 

「ええ、完全無人のセルフレジ。この学院で出来る限りの社会勉強と主体性を育てる一環として、こうなっているらしいですわ」

 

「へえー」

 

 創喚者二人が軽く雑談をしながら物色する一方。

 手持ち無沙汰となった亮はふと適当に文房具を手に取り、凝視しだす。

 

「ふーむ」

 

「どうしましたか?」

 

「いや、拓海の持っていたペン、とジョーギ、だっけ。前々から思っていたが、使えそう(・・・・)だなって思って」

 

「あら、貴方もそう思いますか?」

 

「もしかしてアンタも?」

 

「ええ。……少し、試してみます?」

 

 一拍の無言。

 

「おい、お前ら――」

 

 嫌な予感がした拓海が止めようとした次の瞬間、二人は手に持っていた文房具で斬り結んでいた。

 先程まで殺し合ったとは思えないほど、その表情は楽しげだ。

 思い当たるとすれば、何処となく沙良と亮の相棒であるアルアは似ている節がある。

 きっと波長が合ったのだろう。

 

(でもそれを商品でやるのは勘弁して欲しかったな……)

 

 おかげで無駄に買わなきゃいけなくなってしまった。

 セルフレジだし、なにか買おうとは思っていたが、こんな理由で買い物をするのは初めてで釈然としない。

 

「ここに来てまで、傭兵と忍者っぽいのくせに好戦的過ぎるだろ」

 

 せめて人が寄ってきませんようにと切に願いつつ、ため息を一つ。

 その時ナタリアは、拓海の言葉を聞いてニヤリと笑った。

 

「そう思いますわよねえ」

 

 急に何のことか、と一瞬ハテナが浮かぶが、自分の言葉を思い返せばすぐ消える。

 

「やっぱりなんか違うのか、そっちの幻衛士のあれ」

 

「ご明察、ですわ。あれは忍術ではありません。そもそも沙良は忍者ではなく――巫女、だったりしますわ」

 

「巫女?」

 

「ええ。それも神に等しい影なる上位存在を祀る因習村の巫女。まあ、言ってしまえば人柱ですわね」

 

「それは、またお労しいというか、規模がでかい上に重い話だな……」

 

「と言っても、正確にはそうなる筈だった、ですけど。なにせそうなる前に、その元凶を自力でなんとかしちゃった、つよつよ巫女なのですから」

 

「ええ……」

 

 あの娘の性格上、黙って人柱に徹しているわけないとは思っていたが、想像以上に強くてドン引きする。

 一方で、拓海の冷静な部分が納得していた。

 

 つまり、今まで使っていたのは、巫女として影なるモノとの繋がりを利用してのもの。

 陽光で消せなかったのは、その上位存在の一部分か本体だった、ということなのだろう。

 

(使役……いや、封印か?)

 

 思えば沙良の浮遊刃は七支・翼と言っていた。

 なのに五本。

 

(……いや、手持ちの二本を合わせれば七本になるか)

 

 七支刀といえば、昔儀式で使われていたという、最も有名な儀刀の一つだ。

 思うにあの七刀全てが儀刀で、恐らく大部分を手持ちの二刀、他五本に切り分けてその上位存在を封印しているのではないだろうか?

 

 内心で考察しながら、ドン引きする拓海の反応に満足そうにしているナタリアは「まあそこでその話は終わらなくって」と続ける。

 

「その過程で現代に飛ばされちゃって、そこで出会った子達と繰り広げるちょっと闇を感じる系のドタバタコメディが、うちの書いている物語なのですわ」

 

「へえー」

 

 沙良が対策されることを恐れて語らなかった詳細を、嬉々として語り切ったナタリアに、拓海は少し笑みを浮かべる。

 配慮した沙良に相談せず、勝手に話したことは謝っておくべきだろう。

 だが話を聞くに沙良が思うような明確な有効打はこちらにはないし、そういった意味では問題ない。

 

 それに、親しい人に話したい気持ちは、拓海にも分かる。

 

(自分の考えた渾身の設定を語るの、楽しいもんな)

 

 これは物語を紡いだことのあるものにしか分からない感覚だから。

 それに聞いている限り、普通に面白そうだ。

 こういう状況じゃなければ、じっくり読ませてもらおうと交渉していただろう。

 

 ……さて。

 

「それで?」

 

「ん?」

 

「いやだからさ。まだ話したいこと、あるんだろ?」

 

 そう断言すると、ナタリアは沈黙し、そしてため息と共に苦笑した。

 

「……まあ、分かりますよね」

 

「そりゃあ、面と向かってははじめてだけど、電話越しには散々聞いてるしな。ここ最近はそうでもないけど」

 

 元よりその話をする為に、こうして寄り道しているのだから。

 

「確かにそうですが、その……愚痴もまじってて、話すこと全部吐露してしまうと、姉としての威厳が……」

 

「そんなの今更だろ。そうやって取り繕わなくても、リア姉の威厳が変動することはないから」

 

「……たっくん?? それは一体どういう――」

 

 と、それはそれは見事なニッコリ笑顔を見せながら、ナタリアは懐に手を入れ――

 

「だから話してよ。愚痴でもなんでも。リア姉が気が済むまで」

 

 そして止まった。

 拓海の言葉に、ナタリアは目を丸くしている。

 

「今日だけじゃない。何時だって、何度だって付き合う」

 

 勿論、それでなにか変わるわけではない。

 漫画やアニメのように、親戚であっても一個人の言葉や行動で、家の方針や意識が左右される事などあり得ない。

 

 現実は、そう甘くない。

 

 ――けれど。

 

「その全部を、俺は受け止めるから」

 

 弱った姉の心に、少しでも安息を与えることは出来る。

 それがきっと、いま拓海にできる弟として――そして、ヒーローとしての務めだ。

 

(流石に、ちょっと気障だったかな)

 

 少し照れたように頭を掻いていると、ナタリアは何故かジトッとした目にこちらを睨む。

 

「……そういうところ治さないと、いつか大変なことになるかもよ」

 

「えっ?」

 

 キョトンとする拓海に、ナタリアは肩を竦めて嘆息を一つ。

 

「いえ。……そうですわね。せっかくのお誘いですし、今日はとことん付き合ってもらいますわ」

 

「お、おう。望むところだっ」

 

 そう言葉を交わした二人は笑い合う。

 

「「……で」」

 

 そして存分に笑った二人は、おもむろに拳を握り/硬貨を取り出し、

 

「お前らいつまでやってんだ!」「あなた達いつまでやってますの!」

 

「ゴ、ハァッッ!?!?!?」「ほむむぅッッ!?!?!?」

 

 未だ続いていた、ハサミやら文具での小競り合いをする幻衛士(バカ)共の腹を殴り、額に撃ち込んで止めるのだった。

 

 

 

 

 時は既に夕暮れ。

 姿を隠した沙良と二人、ナタリアは荷物を取りに足を進める。

 

 あの後、宣言通りナタリアが満足するまで話をして、終わったのがつい先程。

 校門まで送った頃にはこんな時間だった。

 

 こちらとしては清々しいくらいにスッキリ状態になれたが、拓海からすれば面倒の一言だっただろう。

 従姉弟とはいえ、聞く必要のない人の胸の内なんて聞いても気が滅入るだけだというのに、変わらずお人好しで心配になる。

 

(まあでも、たっくんが昔みたいな明るさが戻ってきてたのが分かっただけ、良かったかな)

 

 と、薄っすらと笑みを浮かべながら、エレベーターに乗り込む。

 上へ上がっている途中、ナタリアの影から沙良が顔を出す。

 

「……良かったのですか。本当の願いまで明かしてしまって」

 

「良いんですよ、たっくんには。それに、どうせ察せられていたでしょうし」

 

「なら、良い、のでしょうか」

 

 生徒会室で話した願望(こと)は、嘘ではない。

 だが、建前だったこともまた事実。

 例え拓海の願いを蹴落としてでも実現させたいことは、別にあった。

 

『あの家の子じゃ、なくなりたいの』

 

 それが、ナタリアの胸の内にある本音。

 黄金の果実にかける、本当の願いだった。

 

(まあ、全部バレバレだったわけだけど)

 

 あんな不意打ちまでして戦うということの意味を、創喚者である以上、知らないはずがない。

 良く知る従姉弟でもあるので、当然と言えば当然。

 

 まあ、言い方が悪かったせいで、拓海からも苦言を呈されたが。

 

『……それ、おじさん聞いたら泣くぞ』

 

『かもね。でも別に、パパとママの娘じゃなくなりたいってわけじゃないの』

 

 むしろ、二人とも大好きだ。

 ただ、そう。

 

『わたくしはね、たっくん。たっくんと同じ、普通の家の子になりたかったんだ』

 

 だってそうすれば、あの日あの時あの場所に、ナタリアもいられたかもしれないのだから。

 

 

 ――かつての、幼少期のナタリアは、ヤンチャの言葉に尽きた。

 例えるならシンプルにガキ大将。

 裕福な身なりとは裏腹にアクティブな彼女は、どこかにヒーローをしようとする拓海の手を引っ張って、無理矢理遊びに連れて行かれたものだ。

 

『ほら、たっくん! 早く公園いこー!』

 

『ま、まってよリアねえ!』

 

 鬼ごっこや、かくれんぼ、缶蹴りにチャンバラ。

 遊びの発案は当然いつも彼女。

 他にもいろんな場所へ探検したりで、その度に怪我をしては怒られていた。

 拓海と並んで、良くも悪くも御剣市で有名な少女だったのだ。

 

 しかしそれも、十歳になってすぐだったろうか。

 その頃までお世話役をしていた人が定年でやめ、新しいお世話役がついたのだが、それを境にナタリアは滅多に外に出られなくなってしまったのだ。

 

 勿論反抗はした。

 けれど、拓海もナタリアも、どうしようもなく子供だった。

 

(今考えると、正しいとは思わないけど、そうする気持ちは分からなくもない)

 

 むしろ電話だけでも許されていただけ、奇跡と言えた。

 なにせ四葉は、紆余曲折あってこの御剣市に腰を落ち着かせた名家の名前だ。

 その事を知る人であれば、そんなヤンチャなど許せる筈がない。

 淑女として、相応の気品と教育を施そうとするのは当然のことだろう。

 

 だからこれに関しては、その人が悪いわけじゃない。

 ただただ、タイミングが悪すぎたのだ。

 

 何も知らないナタリアは、電話越しに拓海へといつものように不満を溢していた。

 

『マナー覚えるのめんどくさい』

『ドレスとか堅苦しくていや』

『ご飯もあんまりおいしくない』

『行事とかつまらないのばっか』

『婚約者いるって言ってるのに口説いてくる野郎共(ロリコン)がキモい』

 

『寂しい』

 

 毎度毎度、押し付けるようにぼやいておきながら、何一つ気付かなかった。

 彼の相槌が、平坦になっていた事に。意見も何も、言わなくなっていた事に。

 

 ナタリアがかの一件を知ったのは、数年後。

 他の人づてに――あの新しいお世話役から聞いてのことだった。

 

 今すぐにでも駆けつけたかった。

 少しでも良いから、会って話したかった。

 遅かろうとも、抱きしめに行きたかった。

 

 けれど、彼等/彼女等はそれすら許さなかった。

 どんな時であろうとも、稽古やコンサートを優先させられた。

 あげく、その世話役は宣った。

 

『別にどうでもいいでしょう? 親戚とはいえ、たかが庶民一人をどうして気にするんです。

 そんなことより(・・・・・・・)あなたは大事な――』

 

 ……この時までは、この生活も、面倒だけど悪くないと思っていた。

 お金には困る要素はないし、欲しいと思ったものは大体すぐ手に入った。

 

 習い事だって、いろんなことができるのは楽しかった。

 生徒会長をするのも、辛いけどやり甲斐はあった。

 普通に考えたら、順風満帆な生活を送れてたし、これからも送れていたのだと思う。

 

 でも、だけど!

 

『一番の大切が辛い時に傍にいられないんじゃ何の価値もない――っ!!』

 

 ナタリアが、『四葉ナタリア』という名前に嫌悪するのは、当然の帰結だった。

 今近くにあるもの全てを壊して捨ててしまいたかった。

 けれどすぐにそうするには、巻き込むものが多過ぎたのだ。

 

 以降、拓海へ愚痴を溢す事がなくなった。

 表向きは大人しく方針に従いつつ、余計な人を巻き込まない形で『四葉』の悪しき部分、もしくは『四葉』そのものを壊せる方法を模索していた。

 

 そんな時、約一ヶ月ほど前のこと。

 

『そこのあなた』

 

 唐突に声をかけられる。

 振り返ると、そこにいたのは、妖艶な真っ黒な美女。

 

『えっと、わたくしですか?』

 

『そう、あなた。なにか不満か求めているものがあるなら、私の話を聞いてみない?』

 

『はっ?』

 

 何の脈絡もなく、その人からかけられた言葉には、ナタリアも素っ頓狂な声を上げるしかなかった。

 

 それが、北欧の神・ヘルとの出会いだった。

 

 正直、怪しいとは思った。

 だが不思議な力を魅せられた後に、夢現武闘会の話を持ち掛けられたら、二つ返事で頷いていた。

 

(だって、そうでしょう?)

 

 これで勝てば、余計な犠牲を払うことなく、この名前と立場から解放されるということなのだから。

 

 

 ――エレベーターが止まり、ドアが開く。

 荷物の置いた、生徒会室へと向かう。

 

「それで、結局、彼等の問いに明確な返答は出していませんが、どうするつもりで?」

 

「……どうしましょうねえ」

 

 人っ子一人いないので、そのまま沙良と会話しながら足を動かすナタリアは首を傾げる。

 暇がある時だけではあるが、嫌なこと全部忘れられるくらいの新しい思い出作りと、それから憂さ晴らしに付き合ってくれる事を約束してくれた。

 

(まあ流石にたっくんだけってのは無理そうだけど)

 

 それは素直に有り難く思うのだが、明確な願いがある以上、拓海相手であろうと譲るつもりはない。

 けれどそれはそれとして、拓海相手にはなにか譲歩したい気持ちもある。

 

「落としどころとしてはやっぱり、双方にやる気が出てくるまでは停戦、くらいでしょうか。そしてどこかで決着を着ける」

 

「今度のは、途中でやめるはなしですよ」

 

「勿論、最後までのつもりですわよ。それで、そこで負けたらもうしょうがないと諦める」

 

 ただ振り出しに戻るだけだ。そうなればまた最初から考えればいい。

 

「それまでは、普段通りで。良いですわよね?」

 

「そういうことなら構いません。その時までは、好きにすればいいと思いますよ」

 

(……たっくんもこんな気持ちだったのかなあ)

 

 そう言って満足そうにするワガママお姫様に苦笑しつつ、生徒会室に到着。

 鍵を開け、ドアを開き、

 

「――――あれ」

 

 室内に入って、すぐに気が付いた。

 茶筒やティーセットが保管されている小さい棚のその上に、ぬいぐるみが一つ置かれていたのだ。

 そのぬいぐるみは、ナタリアが大好きなシリーズ、その最新作のもので……

 

(いや、待て)

 

 戻ってくる前にもその方向に目をやったが、その時はぬいぐるみの影も形もなかった筈だ。

 なのに、あたかも最初からあったと言わんばかりに鎮座して――

 いや、今思えばさっき影がその方向に一瞬蠢いていた。

 

「沙良」

 

「知りませんよ」

 

 絶対に嘘だ。

 影から湧き出ながら、半笑いでしらを切る沙良に苛立ちつつ、件のものに近寄り手に取る。

 すると、その下に挟まっていたメッセージカードらしきものが落ちてしまった。

 すぐに拾い上げ、書かれていた文字を読んでみる。

 

『誕生日おめでとう。プレゼントは気に入ってくれたかな?

 今のリア姉が何が欲しがるのか知らねえなってなったので、安直ですが昔から好きだったシリーズのぬいぐるみにしました。

 良ければ可愛がってネ☆

 

 追伸:あんまり無理しないように』

 

「……まったく、もぉ」

 

 ぬいぐるみを強く抱きしめる。

 人の事言えた口かとか、余計なこと書きすぎとか、ネ☆がキモいとか色々言いたいことはあるけど。

 

(わたくしがこのシリーズ好きだったの、未だに覚えてたんだ)

 

 肝心なことは、分かってないようだけど。

 そもそもナタリアがこのシリーズを好きになったのは、拓海が理由だというのに。

 

『たっくん、なにやってるの?』

 

『ゲーム! リアねえもいっしょにやろう! すっごくおもしろいから!』

 

 

『お誕生日おめでとう、リアねえ!』

 

『わあ……! たっくんこれ!』

 

『このキャラすきって言ってたでしょ? がんばって探したんだー!』

 

『ありがとう、たっくん!』

 

 まるでマッチポンプだ。

 こちらの事なんて姉としてしか見ていないくせに。

 

「そういうとこだよ? たっくんのばーか」

 

 口元の弛みと火照った頬を隠すように、ぬいぐるみに顔をうずめ、当てつけのように呟いた。

 

 

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