キヴォトスの二ッ岩は悪だくみの天才なんじゃよ 作:ぱる@鏡崎琴春夜
ワケってなんだ、もしかしてアレか?
どうせ個人の趣味丸出しの見切り列車なんだから、まともなものじゃないだろうって?
クロスオーバーばかりだから、読者の目を誤魔化せるとか……!
ご都合主義くらい許されるとか思ったんだろ……?
言い訳なんて、もう分かってんだよ!
どうせ無法地帯だろうなんて考えで……深夜にひっそり、二次創作しようってんだろ!!
もう限界だ!! 書きたいところまで書いて失踪なんかさせないからな!!!
「……どこなんじゃ、ここは? ……こりゃちとまず────」
その夜は妙に静かな夜だった。迷い人、いや迷い狸を優しく迎え入れるかのように、柔らかさを持った夜だった。
キヴォトスとは、様々な学校がひしめく謎の大地。学校に通う少女たちは皆それぞれ銃を持ち、その引き金は軽々と引かれる。
毎日どこかで諍いが起き、毎日どこかで怪我を負う者がいる。治安が終わっている大地キヴォトスと呼ばれることも多い。
今、酒気の波に揺られて微睡む古狸がいるのは、その中でも一等治安の悪い、ゲヘナの自治区だった。
「…い、起き……起きろよ!」
二ッ岩マミゾウは、少女のものと思われる怒鳴り声によって目覚めを迎えた。
「ふぁ~、そう騒ぐで……は?」
ゆったりとした動作で目を開いたマミゾウの目の前に飛び込んできたのは、銃器をこちらに向けている少女の姿だった。そう、銃を持っているのである。だが、幻想郷で見るような猟銃ではなく、もっと現代的でスマートな銃を少女は構えていた。
「こんなとこで寝てるなんて不用心だぜ? こんな風に有り金とられちまうかもしれねぇんだからよ」
銃を構えた少女が嘲りを含んだ声色で喋る。そして、チラリと視線を自身の背後に送った。その視線の先を見ると、もう一人少女が立っている。銃を構える少女と、その背後から出てきた少女の二人は似たような黒みがかった制服を身にまとい、頭部からは小さいながらも二本の角を生やし、その上には天使の輪っかが浮かんでいた。
「ほら、立てよ……そうだ、そのまま両手を挙げろ。変なことするなよ、痛い思いはしたくねぇだろ?」
マミゾウは少女の命令どうりに動く。しかし、彼女の起き抜けの脳内はこの場から逃げ出す算段を立てるためにフル回転していた。
「けど、まさかこんなカモに朝からあり付けるなんて、アタシたち幸運よね~」
銃を構えた少女の奥から出てきた少女。ここはとりあえず相方の少女とでも呼称しようか。相方の少女は嬉しそうな声色でマミゾウに近づいてきた。
「最初は百鬼夜行の生徒かと思ったが、起きてもヘイロー出てこねぇし、銃も持ってねぇ。本当にいいカモだぜ」
銃を構える少女は相方の少女の言葉に同意する。
一方のマミゾウは、この二人組の盗人からどのように逃げ出すか、その策を思い付き、実行の機会を窺っていた。
そしてついに、実行の時を迎える。
「キャッ!?」
マミゾウは自身の能力を発動させた。ドロンと自身の周りに真っ白な煙が溢れる。本来は化けるときの誤魔化しと雰囲気づくりに使っている目隠しの煙だが、この場合は煙幕としてとても有用だった。
まずは相方の少女を引っ張り、銃を構えた少女の射線に引き込む。目的は人質だが、もしも撃つようならば肉壁とするためだ。
「チッ! おい、大丈夫か!」
煙幕の中に容赦なく銃弾をぶち込むようなことはせず、銃を構えた少女は相方の少女に声をかける。今自分たちがいるのは行き止まりの路地、横を走り抜けようとすればすぐに気づける。逃げないのならば、煙が霧散するまでの間、警戒しながら待てばいい。
この少女の考えは正しい。自分の頑丈さを鑑みれば銃の類は痛いが耐えられる。まぁ、そもそも銃器を持っていないのは確認済みのため、銃器を用いた反撃は考えなくてもよいのだが、不自然な動作もなく煙幕を出したことを思えば、どこかに銃も隠し持っているかもしれないと考えるのは当然であった。
だがしかし、上記の考えは、今襲っている相手が普通の相手だった場合の話でしかなかった。そう、相方の少女と一緒に襲った相手は普通の相手ではなかった。
「────ふぅ、危ないところじゃった……しかし、一体ここは?」
ゲヘナ学園の自治区辺境の路地裏で一匹の狸が口を開いた。
ここは先ほど襲われた路地とは別の路地、煙幕を展開し、銃を構えた少女の射線に入るように相方の少女を引き込んだ後、マミゾウは本来の姿に化けていた。そして、銃を構えた少女の傍を走り抜け危機を脱したのだった。
彼女は物陰に隠れ、頭を働かせる。まず一つ言えることは、幻想郷でも自分の知る外の世界でもない場所であるということだけだった。
「とりあえず、能力自体は使えたが……」
ピンと自分の頭の上に乗せた木の葉を指で弾く。それとともにマミゾウはヒトの姿へと切り替わった。
「すべては夢か、それとも誰かの悪戯か────最善は夢じゃが、そんな甘い話は無いじゃろなぁ」
むにっと自分の頬を抓むが目が覚める気配はない。
「境界の賢者、ぬえ、大穴で鬼……いや、あ奴らはこんなまどろっこしいことはせんな」
結界を越えることはそれなりの実力があれば自前でできる。自分もその口だ。だが、それはあくまで"越える"だけであって、誰かを気づかないうちに越えさせるのとは別の話だ。
いったい誰が────と考えこんでいたマミゾウは路地裏を覗き込んだ少女に気づかなかった。
「大丈夫か? そんなところで何をしているんだ」
マミゾウが驚いて顔を上げると、そこには黒を基調とした軍服チックな服に身を包んだ白髪の少女が怪訝な顔をしながら立っていたのだった。