キヴォトスの二ッ岩は悪だくみの天才なんじゃよ   作:ぱる@鏡崎琴春夜

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 投稿したらすごい喜ばれたので頑張って二話目を書く。
 ブルアカで好きなキャラは、マコト・ヒマリ・ネル・ヒナ・ミノリ・ミサキ・ユカリ・セナ・カホ・ウタハ・サオリでかっこいい感じの子はみんな好きな面食い先生です。


狸はどこにでもいる生き物なのだろうか

「大丈夫か? そんなところで何をしているんだ」

 通学中にふと目線を向けた路地裏に座り込んでいる女性を見つけ、私は声をかけた。

 女性は私が近づいていることに気づいていなかったらしく、驚いて顔を上げる。そのせいで赤茶の髪は乱れ、鼻眼鏡がズレていた。

「こんな路地にいると強盗に襲われてしまうぞ。さぁ、ほら」

 私が手を差し出すと、女性はおずおずと私の手を取り、立ち上がった。

 立ち上がると私より少しばかり背が高い。171か172ほどだろうか。頭の上にヘイローがないことから生徒ではないことがわかる。

「ここは観光施設も少ないし宿泊施設も遠い、見たところ生徒ではなさそうだが、いったいなぜここに?」

「……あ~、なんというべきかのぅ。少々物盗りに出くわしてな、命からがら逃げて来たというわけじゃ」

 女性の声色は探り探りといった感じで、なにかしら機会を窺っているような気配がある。

「────あぁ、申し遅れた。私はこのゲヘナ学園を治める万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)のトップ、羽沼マコトだ」

 

 

 

 儂を引っ張り起こした少女は羽沼マコトと名乗った。言葉遣いは少々尊大さが透けて見えるが、こちらを気遣うような思いが強く感じ取れた。それがよく分かったのは名乗った次の瞬間のことだった。

「この度はすまなかった」

 少女が深く頭を下げる。長い髪の毛が重力によって引かれ、毛先はかすかな風に揺れた。自分は彼女に何か謝られるようなことをしていただろうかと、脳内に疑問が浮かぶ。だが、儂が何かを言う前にマコトは言葉を続けた。

「普段から風紀委員会には治安を向上させるように言っているのだが、いかんせん我が学園自治区は広くて、手が回らないんだ。至らない部下の責任は上司の責任、心より謝罪を申し上げる」

「わっ、わかったから頭をあげとくれ!」

 マコトの言葉通りならば、彼女はそれなりに上の立場にあると思われる。そんな人物に深々と頭を下げさせているところを見られれば、どうなるかわからない。

「む、そうか……では、ホテルまで送らせよう。何、呼べばすぐに車は回してもらえる」

 儂が何か言う前に、マコトは携帯端末を取り出し、どこかへ電話をかけ始めた。

 これは少々不味い。なにせ儂はこちらの世界に紛れ込んだ異分子。宿泊しているホテルなんてものはあるわけないし、そもそも身分証明するものすら存在しない。

「───あぁ、イロハか? 東区に来てくれ。そう、今すぐにだ。なに? もっと詳しい場所を言えと? ……私の通学路を駅から逆走してくれ。近くを通ればこちらから声をかける」

 また煙に巻いて逃げてしまおうかと思い立った時には、すでにマコトの通話は終わっていた。

「さぁ、こちらへ。もうすぐ部下が迎えに来る。通りに出て待つとしようじゃないか」

 マコトは儂の手を引き、通りの方へ連れていく。手を握られてしまっては、先ほどと同じように逃げることはできない。

「───そうだ。何か盗まれてしまったものなどはあるか? できる限り補填しよう」

「あ~……そうじゃのう……」

 いっそ身分証明ができるもの一式盗まれてしまったことにしてしまおうかとも考えたが、手を引く彼女の対応の真摯さを鑑みれば、四方八方手を尽くしてしまいそうな雰囲気がある。そうなればまさに大ごと、いろいろな面倒ごとが降りかかってしまいそうだ。

「・・・・・・馬鹿な話と思って聞いてもらえるかい?」

 マコトはキョトンとした表情を浮かべる。

「儂はな、この世界の外から来たんじゃよ」

 何を馬鹿なことをと一笑に付されるであろう言葉を紡ぐ。儂の思いついた案はこれしかなかった。

「・・・・・・? 服装から、てっきり百鬼夜行連合学院の方だと思っていたが、キヴォトスの外からのお客様だったのか?」

「違う、本当に違う世界からやってきたんじゃよ」

 何とか自分の常識の中に当てはめようとするマコトを儂は正面から否定する。

 黙りこくって具合の悪い方へ転がり落ちるくらいなら、最初から明かしてしまう。相手はそれなりに偉そうな人物。ここから逃げて新しい拠点を手に入れたときと、この場でマコトに囲って貰うのと、どちらが動きやすいかで言えば後者だろう。

 大事なのは理解して貰うことと、得があるようにみせること。

 今は、世界のルールが違う場所から来たということを解らせなければならない。

 その為に、儂は能力を発動させた。

 

 

 

「───どういうことだ?」

 白い煙が現れ、私と目の前の女性を包んだ。そしてその煙が晴れた瞬間、驚くべきことが起きていた。

「これが儂の能力じゃ」

 手を握っていた女性の姿は無く、そこには私が立っていた。そう、ゲヘナ学園のトップであるこのマコト様が立っていたのだ。まるで鏡の前にいるような感覚を覚えるが、目の前の私から出た声は、先ほどの女性のものだった。

「大抵のものは化けさせられる。その程度の能力ではあるが……これで、少なくとも別の法則がある世界から来たことがわかってくれたかのぅ

 唖然としているところに、女性はさらに続けて喋る。それも、途中からは声すらも私と同じ声が出ていた。

「これは、夢か? 夢なのか???」

「儂もそうであってほしいもんじゃがな、今のところは覚める気配がない夢じゃ」

 目の前の私はニヒルに笑う。

 不思議な能力というものなら私もいくつか聞いたことがある。曰く、直感だけでどのような暗号も鍵も解いてしまう者だとか、どれ程酷い損傷状態だろうと修復してしまう司書だとか。目の前の出来事もそれらの類なのか。そう思い込もうとしても、肌で感じる直感がそれを否定する。

 これは明らかに飛び抜けた神秘。いや、もはや超常の域に突っ込んでいる存在だと。

「今、それを明かして……何を求めているんだ」

 今わかることは二つ。

 一つは、目の前にいる存在は異質な超常であること。

 一つは、何か取引をしようとしていること。

 でなければ、私に自身の秘密を明かす必要はない。どこかでうまく逃げればいいのだから。

「───覚めないうちは、儂もここで生きていくしかないんじゃ。けれども儂はこの場所に戸籍がない。身元もない。所属もなければ、雨露をしのぐ場所もない。つまり縁がない」

 やはり予想は当たっていた。こいつは私に取引を持ち掛けている。

「……どうじゃ、儂を傍においてみんか? 無論お前さんの頼み事をできるだけ手伝うぞ。狸はそこらへん義理堅いものでな」

 ”大抵のものは化けさせられる”そう、私に化けた女性は言っていた。それも、本人ですら鏡写しの様に感じるほどに精巧に再現された姿で。きっとその言葉に嘘はないのだろう。であれば、そこらに放っておくほうが恐ろしいと感じる。本人そっくりに化け、声も仕草も完璧に再現されてしまえば見破るのは難しい。

 ”誰かに取られる前に、手元に置いておきたい”と私は強く思ってしまった。いや、むしろ、この存在を知ったうえで野に放ってしまえば、能力を知る私は誰も信じられなくなると恐れてしまったというほうが正しいだろう。

「───どうする? 儂も土地勘のない場所でゆったり待つほど能天気ではないからのぅ。ダメなら他に頼る先を自力で探すことにするぞい」

 私は私の視線に見据えられる。その目は、ここで拾っておかないとお前の想定通りのことが起きると述べていた。

「……私は─────」

 

 

 

「戦車長、先ほど議長殿らしき人影がいたような気がしたのですが……」

「……はぁ、声をかけると言っていたのに」

 運転手に合図を送り、無線手がマコト先輩を見たという場所まで戻る。そこには無線手の言った通り、先輩がいた。

 私はハッチから身を出して、先輩に声をかけた。

「先輩、何してるんですか。危うく通り過ぎるとこでしたよ」

 先輩は路地の方から私に向かって振り向いた。

「スマン、イロハ。気が付かなかった」

「それで、私をこんなとこに呼び出してどうしたんですか? 何かありましたか?」

「───あぁ、ちょっと乗せてほしい人物がいるんだ」

 誰ですか? と私が聞き返すと、先輩は路地の方から一人の女性を連れて出てきた。

「やぁ、赤毛のお嬢さん。儂は二ッ岩マミゾウという。しがない大人じゃよ」

「彼女は少々見るところがあってな。我が万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)の一員として招待しようと思う」

「……なんですって?」

 いつもの先輩の思い付きかと、一笑に付すことはできなかった。

 それは、先輩の顔はとても真面目で、普段の調子のよさが陰りを見せていたからだ。

 私はそれに、いつも以上の不安を抱くしかなかった。

 




 とりあえずアビドス2章後くらいの時間軸で進めていこうかなと思っています。
 まぁパヴァーヌには不干渉なので、実質エデン条約から先生やメインストーリーに絡み始める感じですけど……

 ゲヘナメインで百鬼夜行、アビドスをサブという感じで行こうかなと思っています。

 当面は万魔殿になじむターンですかね。
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