キヴォトスの二ッ岩は悪だくみの天才なんじゃよ 作:ぱる@鏡崎琴春夜
同じ塒に入った狢
「・・・・・・流石に狭いな」
「文句言わないでください。戦車はタクシーじゃないんですよ?」
棗イロハと自己紹介した赤毛の少女は、先輩である羽沼マコトを見上げながら言った。
戦車に乗るのは初めてだが、車内は思っていたよりも狭かった。その為マコトはハッチから身を乗り出しており、中には彼女の長い足しか乗っていない。そして儂とイロハが戦闘室に居り、元々乗っていた装填手は運転席の方へ移って貰っているとイロハが言っていた。
「外から見ると大きいんじゃが、中はこんなにも狭かったのか。ひとつ勉強になったのぅ」
「超無敵鉄甲虎丸の装甲は分厚く、主砲も破壊力を重視したものを選んでいる。我々万魔殿の権威と強さを示す───」
「そのおかげで車内は狭いし、砲弾も多いし、メンテナンスも手間がかかって大変ですけどね」
「だがいい車だろう?」
「・・・・・・そこは認めます」
イロハはマコトの言葉に少し間をおいてそう答えた。
「こちらだ」
マコトの先導に続き、儂は荘厳な建物に入る。
床にはレッドカーペットが敷かれ、白い柱はローマを思わせる。だが、一際目を引くのは黄金のマコト像だった。
「・・・・・・すごいのぅ」
「キシシッ、そうだろう、そうだろう。これはこの羽沼マコト様の偉大さを表す崇高なr」
「先輩、そういう意味の”すごい”では無いと思いますよ」
「キヒヒッ・・・・・・えっ、そうなのか?」
儂は曖昧に目線をそらした。
「着きました。ここが私たち万魔殿の部屋───言い換えるならば、生徒会室です」
イロハが話題を打ち切り、少し先の扉を示す。そこには焦げ茶色の重厚な観音開きの扉があり、その左右によく似た二人の少女が立っている。服装自体はマコトやイロハの着る軍服風の服と似た服を着ており、目元が髪で隠れていることもあって、二人は双子と言うよりクローンとでも言うべき程そっくりだった。というかよく思い返せば、戦車に同乗していた兵員も皆、この目の前の二人によく似ていた気がする。
「おはようございます。議長閣下、棗戦車長殿・・・・・・えっと、そちらの方が───」
ドア前に立つ二人はこちらを認めると、挨拶をする。
「うむ、おはよう。こちらが先ほど連絡しておいた客人、二ッ岩マミゾウだ」
「お早う御座います、じゃ。今紹介された通り、儂は二ッ岩マミゾウと言う。以後お見知り置きを」
手を差し出して、ドアマン・・・いや、この場合はドアガールとでも言った方が正しいのだろう。ともかく二人のドア係と握手をしておく。
「挨拶は済んだな。では、中へ入ろう」
マコトに促され、開かれた扉を潜る。
ちらりと後ろを窺うと、イロハがなにやらドア係の片割れに耳打ちをしているのが見えた。