キヴォトスの二ッ岩は悪だくみの天才なんじゃよ 作:ぱる@鏡崎琴春夜
「マミゾウちゃん! 貴女の能力を私にも教えて欲しいの!」
ズズイッと目の前に柔らかい二つの山が迫る。今にもボタンが弾け飛びそうだ。
「近い、近いぞい!」
押しつけられた双丘を手で押し返し、距離をとる。
「ひゃん! ちょっと、手つきが嫌らしいわよ」
「不可抗力じゃ!」
名誉のためにも、そう反駁しておく。
「もうっ、そんなことより、貴女の能力の話よ!」
ずずいと再び迫った少女。薄桃の色合いの髪から飛び出した二つの角がビロードの様にきらきらと光っている。
「・・・・・・えっと、その前に名前は何だったかのう」
「あら、自己紹介していなかったかしら」
コクンと頷くと彼女はそうだったかしらと言っていたが、やがて自己紹介を始めた。
「私は万魔殿の議員で情報部のを引き継いだ、京極サツキよ」
サツキという名前は前に聞いた。確かあの時は、儂が万魔殿に来たとき。まだ登校しておらず、それ以来もなんだかんだ話したことがまだ無かったはずじゃ。
「それでは儂も、最近こっちにきた二ッ岩マミゾウじゃ、よろしゅう頼むぞい」
差し出した手をサツキが掴む。
「えぇ、NKウルトラ計画に協力者が増えてとても嬉しいわ」
NKウルトラ計画、名前の響きはなんだかとても胡散臭い計画の様だが、実際にはどのようなものか説明がない。だが、儂の能力を教えて欲しいというのと、情報部という役職からだいたいどんな協力を求められているのかは想像がついた。
「その”えぬけーうるとら”とやらはどんな計画なんじゃ? 儂の能力を教えて欲しいというからには、なんとなく予想ができそうじゃが」
そう訊ねると、サツキは嬉しそうに顔を緩めた。
「よく聞いてくれたわ! NKウルトラ計画は、科学的技術を用いた人心掌握計画なの。特に催眠術を今は研究しているのだけれど、貴女の能力、それはきっと催眠を用いたものなのよ!」
「……は?」
科学的とは? 能力が催眠術? 突っ込みたいところは色々あるが、それを口にする前にサツキはどんどん捲し立てる。
「いい? 普通に考えて、相手に変身するなら準備は大変だし、所作でバレるはずだわ。でも、聞くところによると貴女は、煙幕を発生させて、その中でそっくりに変わってしまうらしいじゃない。それも一切の違和感の無い鏡映しの様な変身。そんなことは現実的じゃないわ。だから、きっと催眠をかけているんだと思うの!」
現実的じゃないとか言われても、そもそも現実側にいる存在ではないのだが、この様子ではそれを説明して納得してくれるのか怪しいものだ。かといって科学的に研究したところで成果が出るか怪しい。なに? そもそも催眠術が科学的か怪しいし研究して成果が出るとは思えない? それはそう。
「……その、言いにくいんじゃが、この能力は超能力なんかじゃ───」
「本当にそうなの? 無意識下で使っている可能性は無いのかしら?」
そんなことを言われてしまえば、返す言葉は無い。原理は分からないからだ。ただ、できる。だから使ってきた。どのようなことに応用できるかは試してきたが、その原理を解明するということは思いつきもせずに、生きてきた。
「わかった、では調べてみようではないか。何が分かるか分からんが、それで気が済むかのぅ」
「ただ調べるだけでは足りないわ! そのやり方、私にも教えて欲しいの。これが一番大事なことよ!」
グーっと顔が近づき、世界の法則に従って、二つのたわわなものが揺れる。というか、今思ったんじゃが、上着と乳の間にある布は上着の装飾なんじゃよな? これ、下着ではあるまいな?
「なにこれ!!! まったく意味が分からないじゃない!!!」
半刻ほど経った頃、万魔殿中に響くサツキの大絶叫が響いたのだった。
「ってことは、この能力は催眠じゃないの?」
「そう言うことになるのぅ」
わなわなと震えるサツキの目の前で儂はポリポリと頬を掻く。試しに化けてみたが、随分胸が重い。相当な栄養が詰まっとるようじゃ。検査や計器で計ってみても仕組みはよく分からぬ。だが、サツキの言葉からすれば、思った様な結果では無かったのじゃろう。哀れじゃ。
「……ところで、これマミゾウちゃんは人に教えたことあるの?」
「あ~……同族を鍛えたことはあるがのぅ、やつらも化け狸。そういう能力は持っておった訳じゃし……人に教えたことは無いな」
「もう、NKウルトラ計画ディスカイザー案は廃案よ!!」
捕らぬ狸の皮算用と言ったところかのぅ?
あれ、タヌキってこんな感じで書いてたっけ……