あやかしランブル!~蒼澄カンナ伝:私の家がなんかデカい穴に呑み込まれてるんですけど……~   作:吾輩はもぐらである

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第九話:式神契約#3

面接の翌日。カンナの家に早くも陰陽寮からの封書が届いていた。中身は採用通知書だ。

 

(よっしゃ!第一関門クリア!)

 

早速陰陽寮へ向かう。西賀亮と正式な式神契約を結ぶためだ。

 

外来窓口を尋ね採用通知書を見せると西賀亮が迎えに来た。

 

「おはようございます。西賀さん、この度は採用いただきありがとうございます。」

 

「こちらこそありがとう。面接官の満場一致で採用を即決しました。早速手続きに移りたいんですけど、いいですか?」

 

「はい、大丈夫です。」

 

西賀亮はカンナを連れて人気のない会議室に入った。机に数枚の書類が用意されている。

 

「そこに契約関連の書類が一式ありますので読んで下さい。質問があれば何でも聞いて下さい。蒼澄さんに条件に納得してもらえたら書類に署名を貰って式神契約に移ります。」

 

「分かりました。」

 

カンナは書類に目を通し始めた。

 

(ふむふむ……)

 

書類の内容によれば、式神の働き方は契約した陰陽師に大きく依存するらしい。勤務場所や勤務時間は陰陽師が自身の裁量と責任において決めたルールに従うことになる。西賀亮は配下の式神たちに大きな裁量を認める立場らしく、役割を果たせていると認められれば勤務場所や勤務時間にはかなり融通がきくようだ。

 

給料についても契約した陰陽師の評価に大きく左右される。式神は基本給が安く年功による昇給幅も少ない代わりに、危険手当や仕事の成果に応じた特別手当が多い給与構成である。仕事の成果は契約した陰陽師だけでなく、組織の上層部も報告書などを通して独自に評価する。だが、やはり契約した陰陽師の評価が最も重んじられる評価制度のようだ。

 

式神は契約した陰陽師による処遇に納得がいかない場合、人事部に調停を求めるか、正式な手続きを経て式神契約を破棄して別の陰陽師を探す。長期間契約相手が見つからなければ陰陽寮を去ることになる。

 

何にせよ、契約した陰陽師に仕事人生が決定的に左右されるということだ。

 

カンナは給料にも働き方にも大したこだわりは無かった。最大の関心事はシジョウに真の復興をもたらすこと。それさえ達成できれば激務も安月給も笑顔で受け入れよう。万が一奴隷のように扱われたならば、使命を果たした後にたっぷりお礼参りをしてやれば済む話だ。大黒天の評によれば西賀亮はそういう心配をしなくて良いはずだが。

 

何点か細かい質問をしてから必要な書類に署名をし終える。

 

「では、式神契約を始めます。座ったままで結構です。リラックスして下さい。すぐに終わります。」

 

(式神契約って何をするんだろう?)

 

そう思った瞬間、自分の内側に異物感を覚えた。

 

(ん?)

 

それは霊力だった。アヤカシである自分の霊力とは違う、ヒト(アヤカシではない人間)の霊力。西賀亮の霊力で間違いないだろう。流れ込んだ異物はカンナの霊力とは溶け合あわず、身体を駆け巡ることもなく停滞している。

 

次に声が聞こえる。西賀亮の声。しかしそれは目の前の西賀亮ではなく自分の内側から響いてくる。

 

『面接では蒼澄さんのシジョウを救いたいという熱い気持ちが伝わってきました。俺も陰陽師としてシジョウの窮状を打破したいと思っているし、必ず蒼澄さんの力になることを約束します。契約にあたって俺が蒼澄さんに求めることは1つだけ。俺や仲間が人の世のために戦う力になって下さい。条件に納得してくれるなら『契約を受け入れます』と頭の中で3度念じれば式神契約が成立します。』

 

(これが式神契約……)

 

人生で体験したことの無い感覚だった。内側から響く声は焦ることなくこちらの応答を待っている。もちろん、結論は決まっている。

 

(契約を受け入れます。契約を受け入れます。契約を受け入れます。)

 

これでいいのかな?と思った直後、停滞していた西賀亮の霊力が全身を駆け巡るカンナの霊力の流れに合流し、調和するような感覚を覚えた。身体が一瞬青白く発光した。力が漲ってくる。

 

「終わったね。」

 

目の前の西賀亮が声を発した。なるほど、これが式神契約を受け入れた感覚というわけか。

 

「これで蒼澄さんは西賀亮班の式神です。今日からよろしく!」

 

「こちらこそよろしくお願いします、西賀さん。」

 

西賀亮と固く握手を交わす。彼の手は小さいが、ゴツゴツしていて皮が分厚く硬い。よく鍛えられた男らしい手だ。

 

(いよいよだ。)

 

カンナの式神としての闘いが始まった。

 

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