0・スキーのおともにしまりん
資金不足のため雪中キャンプに挑んだ千明だったが、様々なトラブルに直面し早々に断念。みんなにお金を出してもらい、リンとなでしこと一緒に老舗のペンション・ラディウスに泊まることにした。
陽が暮れる前にペンションへ向かおうとキャンプ道具を片づけ始めるリンとなでしこだが、千明は、自分もスキーがしたい、と言いはじめる。
もうすぐ陽が暮れるし、天気も下り坂で、夜には吹雪になる恐れもあるらしい。
あまり遅くなると遭難してしまう可能性もある。
それでもスキーをしたいと駄々をこねる千明に、リンとなでしこは――。
◇
「――仕方ないね」
と、なでしこが言い、リンの方を見た。
「リンちゃん、キャンプの道具はあたしが片付けておくから、アキちゃんと二人で、スキーに行って来る? 」
「え? いいのか?」
「うん。一人だけスキーをしてないアキちゃんの気持ちも判るし、ね。天気はもうちょっと大丈夫そうだから、一回くらいならいいんじゃないかな?」
寝転がってじたばたしながら駄々をこねていた千明は、がばっと起き上がると、
「さすが! やっぱなでしこは優しいな! イヌ子だったら、絶対許してくれなかったぜ」
と言い、なでしこの両手を握ってぶんぶん振りたくった。
「しょうがないな」
と、リンも渋々同意する。
「判った。その代わり、ホントに一回だけだぞ?」
「OKOK。でも、さすがに片づけをなでしこ一人に任せるのも悪いから、一緒に片付けて、みんなで行こうぜ」
千明はそう言ったが、なでしこは「ううん」と首を振った。
「これくらいなら、あたし一人でも大丈夫。それに、片づけしてたら遅くなっちゃうし」
そう言って、なでしこは自分のスキー道具を千明に渡した。
「じゃあアキちゃん。スキー、楽しんで来てね」
「そっか。悪いな」
千明はスキーを受け取ると、
「じゃあ、さっそく行くか」
と、リンに言った。
「あ、ちょっと待って」
リンはなでしこを見た。
「ここで待っててもらうのも悪いから、なでしこは、片づけが終わったら先にペンションに行っててもいいよ」
「うん。じゃあ、そうさせてもらうね」
「キャンプ道具は、後であたしが運ぶから、その辺に置いていっていいからな」
千明は両手を合わせて片目を閉じた。
「ありがとな、なでしこ。お礼に、今晩のディナーのデザート、あたしの分もあげるよ」
「いやそのディナーはなでしこが懸賞で当てたチケットに含まれてるヤツだろ。借りを借りで返すな」
ツッコミを入れるリンに、
「ま、細かいことはいいじゃねぇか」
と言って手のひらをひらひらさせた後、
「ようし。じゃあリン。さくっと滑ってこようぜー」
と、千明はウキウキしながらスキー場へ向かった。