その娘、半龍半鬼の鬼狩りなり   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 視点ってどれの方が読みやすいんだろ・・・・・・
 一人称視点(わたし、僕、俺で進行するタイプ)なのか、三人称一元視点(一人称部分が名前になって進行するタイプ)なのか・・・・・・
 ちなみに、基本的に私は一人称が多いのですが(他の連載がそう)、こちらは三人称一元視点で進行しております。


桜の女神

 童磨と寿江子が疑問の言葉を上げる中、宵月は2人を連れて荒廃した村の中にあると言う千年桜の元へと向かうために移動する。

 程なくして見えて来たそこには、確かに立派な桜の木が存在しており、村の中にあった植物達とは違い、一滴の血も浴びていない状態だった。

 きっと、人喰いの鬼もここにある異質な雰囲気に近寄ることができなかったから、こちらに向かう前に鬼狩りにかられたのだろうと思いながら、宵月は静かに大樹へと近寄る。

 

「わー・・・・・・すごく立派な大樹だねぇ・・・・・・。」

 

『はい。1000年前からずっとここに根を張り、春になる度に美しい桜の花を満開なるまで咲き誇らせておりました。

 あまりにも美しく咲き誇るため、この桜が満開の花を咲かす時は、村の皆総出で花見をしていたのです。』

 

「お花見かぁ・・・・・・前までは太陽の下に出ることができなかったからやったことなかったけど、今は太陽の下を歩けるし、春になったらやってみたいなぁ・・・・・・」

 

「それはいい考えですね。きっと、寺院の方々も童磨様と共に花見をすることができることをお喜びになられるかと思いますよ。

 まぁ、その前に童磨様は沢山の贖罪を行わなくてはなりませんが。」

 

「ゔ・・・・・・まぁ、仕方ないよね・・・・・・。それだけのことをオレはして来たんだから。」

 

 罰が悪そうに、だけど確かな反省を滲ませながら言葉を紡ぐ童磨を見て、宵月は小さく笑う。

 童磨に命を奪われ、霊魂として存在している寿江子は何度か視線を2人の間に行ったり来たりさせては、小さく笑い声を漏らした。

 

「寿江子ちゃん?」

 

『・・・・・・す、すみません。童磨様と宵月様のやり取りが、なんだか少しだけ親子のようでおかしくて・・・。

 紡がれている言葉は、親子がする会話と言う程軽いものではないのはわかっているのですが、親に叱られている子供のように見えてしまいました。』

 

「ええ・・・・・・?それ、つまり俺が宵月ちゃんの子供みたいだってこと?俺の方が宵月ちゃんより長生きなんだけど・・・・・・。」

 

「肉体面では童磨様が正しいですが、精神面ではわたしの方が大人でしょうし、童磨様はようやく感情を学べるようになった子供のようなものですから強ち間違いではないかと思われますよ。」

 

「うう・・・・・・反論できないなぁ・・・・・・」

 

 宵月から告げられた言葉に、童磨はその場で肩を落とす。

 江戸の時代に生まれ落ちた自分が、明治の世に生まれ落ちたはずの少女の子供のような扱いを受けるなんて・・・・・・と、少しだけ腑に落ちない部分を考えなくもないが、彼女達の言葉の通り、自身はようやく感情を学べるようになった幼児と変わりがないと言う事実もあり、複雑な気持ちを抱く。

 きっと、人喰いの鬼のままであったなら、このような気持ちを抱くこともなかったのだろう。

 

「さぁ、話しているうちに彼女の領域に到着いたしました。童磨様。寿江子様。頭をお下げください。彼女をお呼びします。」

 

 そんなことを思う中、宵月から童磨と寿江子は頭を下げるように告げられる。

 一瞬にして溢れた宵月の神気。童磨と寿江子はその清澄なる神聖な気配に思わず目を見開いて驚くが、すぐに彼女が告げた言葉に従うようにその場で跪き頭を下げる。

 反射的にしてしまった行為に、戸惑いを抱きながら。

 

 2人がその場で頭を下げたのを確認した宵月は、静かにその場で目を閉じ、東洋龍の姿から半龍半鬼の姿へと身を転じさせ、常に持ち歩いている舞扇を静かに広げてその場で緩やかに舞い始める。

 澄み渡る鈴の音と、軽やかに鳴り響く下駄の音。雅楽を奏でるように鳴り響かせていくその音は、視界に宵月を映していないはずの童磨と寿江子にも神聖なものだと感じてしまう程のもので、思わず聞き入ってしまう。

 だが、舞っているその姿を映し込もうと言う気持ちは一つも湧くことがなく、むしろ、自分達のような存在が視界に入れてはならないと本能的に思ってしまうものだった。

 

「ふふ・・・・・・相変わらず貴女の舞いは、とても美しくて穏やかね。思わず見惚れてしまうところだったわ。」

 

「『!!?』」

 

 しばらくの間、舞いにより奏でられた音が響いていた千年桜の麓。しかし、それは突如聞こえて来た穏やかな女人の声により終わりを告げた。

 童磨と寿江子は、宵月のものとは全く違う女人の声に驚き、思わず顔を上げそうになる。

 だが、まるでそのまま固定されたかのように動くことができず、動揺を滲ませる。

 

「美しき花女神である桜華(おうか)様にそのように言っていただけるのはとても嬉しく思いますが、女神たる貴女様にお目通りさせて頂くために舞っていたのですから、お姿を見せていただかなくては困ります。

 お気に召さなかったのだろうか・・・・・・と不安になりますので・・・・・・。」

 

「ふふ・・・・・・宵月ちゃんなら、降神の舞をしなくてもわたくしは会いにいくのだけど、今回は宵月ちゃんだけではないものね。不安にさせてごめんなさい。」

 

 呆れたように言葉を紡ぐ宵月に、穏やかな声音を持つ女人は小さく笑い声を漏らしながら、その場で数回手を叩く。

 すると、童磨と寿江子は急に体が軽くなり、その場で転倒してしまいそうになった。

 

「童磨様。寿江子様。花女神様から顔を上げる許可を頂けました。どうぞ、お顔を上げてください。」

 

「『・・・・・・!!』」

 

 宵月の声に従うように、童磨と寿江子は顔を上げ、そして、その目を皿のように丸くした。

 先程までは、緑が豊かに揺れている大樹とその青々としていた草原だったが、今、2人の目に映る景色は、満開の桜が咲き誇る千年桜と、色鮮やかな花が咲き誇る大地、そして、美しく広々とした神社のような建物が鎮座する空間へと変わっていたために。

 

「千年桜に宿っておられた花女神様です。わたしは桜華様とお呼びしております。

 まぁ、桜に宿る女神などこの世に一柱しかいませんし、どなたがすぐにわかるとは思いますが、その名を口にすることは禁じます。

 我々神格は、そう簡単に真名を呼ばれるわけにもいきませんからね。」

 

 宵月の言葉により、童磨と寿江子はすぐに思い当たる名を脳裏に浮かべる。

 桜にまつわる美しき女神は一柱のみ・・・・・目の前にいる美しき女神は、木花開耶姫であると。

 

「主神たる神々より賜った字名は桜華。是非とも、貴方達もこっちの名前で呼んでちょうだい。」

 

 桜華と名乗りし桜の女神は、穏やかな笑顔を2人に見せた後、静かに寿江子の方へと視線を向けた。

 

「随分と大きくなったわね、寿江子。貴女が幼児の時、わたくしの近くで遊んだり、お昼寝をしていたのをよく覚えているわ。

 何回も怒られている姿もね。わたくしは気にしなかったのだけど、どうやら村の人達からしたら、わたくしが宿るこの桜は神聖な神木だったようね。

 まぁ、過ごしやすい桜だったし、わたくしもいつも遊びに来ていたから強ち間違いではないのだけど。」

 

 くすくすと小さく笑いながら寿江子に近寄り、その頭を優しく撫でる桜華に、寿江子は一瞬、驚いたような表情を見せる。

 しかし、すぐにその手に懐かしさを覚え、静かに涙を流した。

 

「貴女が嫁ぎ先を見つけたと聞いた時はとても嬉しかったわ。お家も裕福な場所だったし、貴女のご両親にも仕送りをすると約束していたものね。

 だから、貴女は幸せになれると思っていたのだけど・・・・・・どうやら、そのあととても辛い思いをしていたみたいね・・・・・・助けてあげられなくてごめんなさい・・・・・・」

 

 いまにも泣きそうな表情をしながら謝罪の言葉を紡ぐ桜華に、寿江子は首を左右に振る。女神様は悪くないと伝えるように。

 寿江子の心を感じ取った桜華は、そんな彼女の身体を優しく抱きしめる。このようなことで、その傷が癒えるはずがないと思いながら。

 

「・・・・・・それにしても・・・・・・随分と変わった子も来たわね。まさか、元は人喰いの・・・・・・さらに言うと、寿江子の死因となった人喰いの鬼が一緒にこちらに足を運ぶとは思わなかったわ。」

 

 そんな中、桜華は童磨へと視線を向ける。紡いだ言葉には確かな怒気と神気が混ざり込み、黙って2人を見つめていた童磨へと重くのしかかる。

 そのことに息苦しさと僅かな恐怖を抱いた童磨は、少しだけ顔を青くしながらも、目の前にいる女神を見つめた。

 その姿を見つめた桜華は、一度だけ目を細めたのち、深く溜め息を吐いた。

 

「・・・・・・貴方のその白橡の髪と、虹を宿す瞳はよく覚えている。桜がある場所にわたくしは足を運ぶことができるのだけど、ある寺院の中で過ごし、時にぼーっと桜を眺めていたわね。」

 

 そう紡ぎながら、桜華は過去の春を思い出す。それは、なんの変哲もないひとときのはずだった。

 桜が咲く時期になると、彼女は様々な地域に足を運ぶことがあった。桜の花はどの時代でも美しく、場所によっては神聖なものとして祀る習慣を作り上げる程の力を秘めていた。

 その影響もあり、桜が咲く時期に祭りを行う場所もあり、桜華はその祭りを楽しむために、祭りが行われている場所の桜の花に宿ることが多々あった。

 そんな中、たまたま見つけた一つの寺院。神を祀っているはずのそこは、神格を持つ者は誰一柱すら宿ることなく、もぬけの殻としか言いようがなかった。

 だと言うのにそこには沢山の信仰が集まり、あまりにも空気が淀んでいたのである。

 浄化することができる神格が宿ることなく、ただひたすら負の感情の肥溜めとなっているような寺院・・・・・・なぜ、そのような場所が八百万の神々が暮らしている日の本にあるのか。

 桜華は少しだけ不思議に思い、寺院の庭に咲いていた桜に少しだけ足を運んでみたのだ。

 そこはあまりにも息苦しく、まるで、粘度の高い泥の沼に身を浸からせているようで、自身が宿るには穢れ過ぎていた。

 

 すぐに桜から離れ、桜華は寺院を見渡した。1番の淀みが存在している場所を探すように。そして見つけた。淀みが集中する一点を。

 見つけた淀みを確かめるように、桜華はその場所へ向かう。そこにいたのは1人の少年で、その少年の魂には、これでもかと言う程に沢山の淀みがまとわりついていたのである。

 桜華はすぐに理解した。この寺院にいる者達は、ただ、少しだけ見目が変わっているだけの人の子に信仰を向けていたのだと。

 なんの力も持たない人の子に、淀みを取り払う力などあるはずもなく、最終的にはその淀みは神々ですら手出しすることができない程に、寺院全体に溢れてしまい、その人の子に集中し続けているのだと。

 

「あれを見た時は本当に驚いたわ。まさか、神格も力も持たない、ただ、少しだけ容姿が珍しいだけの人の子に信仰を向け、その魂を穢しているなんて思わなかったもの。

 でも、わたくしにはどうすることもできなかった。いくら位が高い神格であるとはいえ、わたくしにはその穢れを浄化する力はなかったから。

 人の子が自身が祀られているこちら側の領域に足を運び、参拝することがあれば、少しは穢れを祓うこともできたけど、貴方はそれができなかったでしょう?

 神の子であるとされ、信仰を向けられ、人の子として過ごすことすらままならなかったのだから。」

 

「・・・・・・うん。」

 

 桜華の言葉を聞き、童磨は小さく肯定の言葉を紡ぐ。

 それを聞いた桜華は、童磨に哀れみの眼差しを向け、その頭を優しく、緩やかに撫でた。

 まさか、自身に対して穢れていると言ってきた女神に頭を撫でられるとは思わず、童磨はその目を丸くする。

 

「貴方がこれまで行ってきたこと・・・・・・わたくしが大切にしてきた人の子達を喰い殺し続けたことは、許されざる所業よ。

 わたくしは貴方の魂の穢れが完全に無くなるまで許すつもりなど毛頭もないわ。

 ですが、こうして自身が喰い殺した魂と向き合おうとしていることは評価してあげる。

 貴方が過ごしていた場所は、あまりにも悪い環境でもあったから特別にね。

 さぁ、こちらへ来なさい。寿江子の両親の魂があるから。別の人喰い鬼に喰い殺された後、黄泉へと送ろうとしたのだけど、寿江子が戻ってくるかもしれないからと残ろうとしていたのを保護しておいたの。

 だから、彼らとしっかりと向き合って、これからどのように生きていくのかを決めなさい。

 貴方が決めた道によって、わたくしも貴方をどうするか決めるから。」

 

 桜華の言葉を聞き、童磨は少しだけ無言になる。

 しかし、すぐに静かに頷いては、桜華が言った方角へと足を運び始めた。

 

「宵月ちゃん。貴女も来るでしょう?」

 

「ええ。わたしは童磨の監視者であり、教育者でもありますから。寿江子様。共に参りましょう。寿江子様のお母様達に会いにいくために。」

 

『!・・・・・・はい、宵月様!』

 

 目指す場所を定めて歩き始めた童磨を見ながら、宵月と寿江子に声をかける桜華。

 彼女の言葉を聞いた宵月と寿江子はすぐに頷き、童磨のあとを追うのだった。

 

 

 

 




 宵月
 降神の舞と呼ばれる神々を呼ぶための舞を踊り、千年桜に宿っていた木花開耶姫を呼び出した半龍半鬼の少女。
 童磨の選択を見届けるため、彼の後を追う。

 童磨
 宵月により有名な神格たる木花開耶姫と出会し、神様って本当にいたんだと改めて考えた鬼神見習い。
 自身の道を示すために、やるべきことをこなそうと足を進める。

 寿江子
 童磨により喰い殺されてしまった1人の女の御魂。
 童磨の選択を見届けるために、そして、自身の両親に再会するために足を進める。

 桜華
 真名・木花開耶姫。桜の花が満開に咲き誇る時、人の子を間近で見守る美しき女神。
 人喰いを繰り返していた童磨を許すつもりはないが、かつての彼の環境を哀れみ、贖罪の機会を与えるか否か見定めようとしている。



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