その娘、半龍半鬼の鬼狩りなり   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 いきなり彼が出てくるのは仕方ないというか……まぁ、彼がこの話で1番関わってくる鬼陣営なもので……


感情欠落の氷鬼
極彩との出会い


 伊吹童子に拾われ、酒呑童子も合流し、共に過ごすようになって数年。

 伊吹弥宵という名と、宵月という名の字名を与えられた少女は、成長して鬼神としての能力を使役できるようになった。

 伊吹童子と酒呑童子の温もりに包まれながら成長した弥宵は、変化の術を使用して人に化け、夜の山の中を歩いていた。

 

「おや?こんなところに1人で女の子がいるのは危ないぜ?」

 

「?」

 

 今日の月はなんという名前の月なんだろうかと思いながら、ゆっくりと歩みを進めていた時、歩いていた方角から声が聞こえて来る。

 どこかのらりくらりとした男の声に、弥宵は不思議に思いながら、静かに声の方へと目を向ける。

 そこにいたのは、鮮血を頭から被ったかのような1人の青年。しかし、弥宵は鬼神となったことにより会得することができた正体を見抜ける目により、その青年が鬼であることをすぐに把握することができた。

 

 鬼を視界に映した弥宵は、何度かその場で瞬きを繰り返す。

 しかし、すぐにその鬼に近寄っては、じっとその鬼の目を見つめた。

 

「………えーっと……?」

 

 弥宵に近寄られた鬼……童磨は、目の前に立って無言で自身を見つめてくる少女に対して少しだけ戸惑う。

 話しかけたのは自分自身。少女とは言え、いずれ成長すれば十分な糧になるはず……そう思い声をかけたのだが、無言で見つめられるとは思わなかったのだ。

 自身の容姿がそれなりに整っていることは一応理解している。何度も容姿に言及しては、近寄って来る女を見たことがあるために。

 だが、基本的にそう言った女達は、何かをごちゃごちゃと言いながら、自身の方によって来るのがほとんどであり、無言で見つめてくる女には、これまで会ったことがなかったのだ。

 

「……えっと……君……お父さんとお母さんはどうしたのかな?」

 

 とりあえず何か話をしよう……そう思い童磨は少女であれば何かしら話すであろう話題として、親の話題を振る。

 もしや、本格的な迷子なのでは……だとしたら親を見つけて喰らう方がまだ栄養を取れるかもしれない……そんなことを思いながら。

 

「……わたしの両親はいませんよ?数年前に人喰いの鬼に喰われてしまったので、今は別の方に引き取られて生活をしています。」

 

「え、そうだったの?両親を目の前で失ったのかい?」

 

「そうですね……確かに目の前で両親は事切れて、そのまま鬼の腹の中に。その頃のわたしは、今程肉がついていない娘だったので、見逃されてしまった感じです。

 そのあと、今の親代わりの方と会って、拾われましたね。そう言えば……その時の鬼は、母のことを稀血と言っていたような……?あまり覚えていないですが。」

 

「そっかぁ……稀血……だとしたらまぁ、優先的にそっちにいっちゃうよね。」

 

 何故だろう。この子、見知らぬ男を見ても随分と平然として言葉を紡ぐ……と、妙に肝が据わっている不思議な少女に、童磨は少しだけ首を傾げる。

 これまで幼い子供も何度か見て来たが、ほとんどが見知らぬ男が現れた場合、うるさいくらいに泣き叫んでいた。

 そんな幼子と同じくらいの年齢である割には、やけに落ち着いている存在に、童磨は少しだけ調子が狂う感覚に陥る。

 いったいこの子は何者なんだろう……少しだけ脳裏に疑問を浮かべた。

 

「……見た感じ、お兄さんはどうやらわたしの両親を襲った鬼とは違うようですが、人喰いの鬼のようですね。

 しかも、能力としてはかなり高く、わたしの親を襲った鬼以上の力を持っているような気がします。」

 

「あれぇ………?」

 

 そんな中紡がれた少女の言葉に、童磨はさらに困惑した。普通ならば、見ただけでは人間が鬼かわからない容姿をしているはずだと言うのに、目の前の少女は確りした声音で童磨を鬼と称したのだ。

 どうして鬼と見抜かれたのか……もちろんそれに関しての疑問は頭に浮かぶが、それ以上に目の前の少女の肝の据わり方に驚愕する。

 人喰いの鬼とわかっていながらも、この少女は平然と自分と言葉を交わすのかと、これまで見たことがない性質を持っている彼女に、童磨は少しの興味を抱いた。

 

「すごいなぁ……。俺のことを一瞬で人喰いの鬼って見抜くなんて。もしかして鬼狩りの子だったりする……わけないか……。鬼狩りの子達って、もっと大きい子ばかりだし。」

 

「鬼狩り……?ああ、もしかして、たまに山の中を通過している刀を持っている黒服の方々のことでしょうか?」

 

「そうそう、その子達のこと……って待って?ここって鬼狩りの子の通り道なの?」

 

「はい。たまにビュンッてすごい速さで抜けていく人がいますよ。廃刀令が出されてだいぶ経つのに、刀を持ってるのが珍しくて、しっかり記憶していたんです。

 その人達の背中には、白い文字で雄々しく滅の文字がありまして……。」

 

「うん、鬼狩りの子達だね……。そっかぁ……通り道になってたんだね。」

 

「はい。あ、でも、いくら鬱陶しいからってこの山で鬼狩りの人を襲って食べたりしないでくださいよ?

 この山は本来ならば神様が住まう神聖な山なので、許可された人しか足を踏み入れることができない場所なんです。

 だから捕食行動をされたら神様がやったのかと思われるので、罰当たりにも程があります。」

 

「ええ……?」

 

 怒ったような表情をして、人を喰らうなと忠告してきた少女に、童磨は少しだけ引いてしまう。

 神様なんていないのに、この子は神様を信じているのか……目の前で両親を失ってしまったから、そのようなことを考えてしまうのかと、憐れに思いながら。

 

「あ!今神様なんていないのに!って思いましたね!?」

 

「うわ!?吃驚した!?何で俺の考えたことがわかったの!?」

 

「わかりますよそれくらい!!いいですか!?あなたがどう思おうと関係ありませんが、神様はちゃんといらっしゃいます!!

 わたしは実際、神様に助けていただいた人間ですからね。それだけは断言できます!」

 

「神様に助けられた……?」

 

「はい。両親を失って、孤児になっていたところを助けていただきました。そういえば、山の麓にある集落の跡地は見ましたか?」

 

「ああ……確かにあったね。随分と荒れていた……というか、何があったのかわからないくらいに崩落していたけど……」

 

「あれをやったのは、このお山に暮らしている神様なんです。どうも、山の中で生活しているわたしの姿を見た村の者がいたらしく、その人間がわたしに邪な感情を抱き、手篭めにしようとしていたようで……。

 自分の娘を手篭めにしようとするなど何ごとだって怒ってしまわれまして……。

 落雷に土砂に大竜巻に地震に……とにかく、あらゆる天災を村だけに叩きつけるカタチで村全体を鏖殺しちゃったんです。」

 

「随分と怖い神様だね……?」

 

 少女の顔色からして、実際にそんなことが起こってしまったことを把握してしまった童磨は、思わず引き攣った表情を浮かべてしまった。

 

 ─────……えっと……落雷に土砂に竜巻に地震……それって特定の場所のみで起こせるものだっけ……?起こらないよね……?

 

 長く生きた経歴の中にある知識から、このようなことが引き起こせるだろうかと探し出すが、全くと言っていい程に例になるものが思い浮かばない。

 

「……ちょっと待ってね?他にこんなことあったか思い出してみるから。」

 

 もしや奥底の方にはあるかもしれないと、少しだけ思案したのち、自身の記憶を探るように過去をたどる。

 目の前の少女は、彼の記憶を探す行動である指で頭を貫く方法に、青い顔をして引いていた。

 

「……うん。これまでいろんな人の話を聞いたりして来たけど、そんなとんでも厄災の話は初めて聞いたよ……。」

 

「わたしからしたら目の前で頭を容赦なく指で貫いていたあなたの姿の方が衝撃的なのですが……?」

 

 互いに何言ってんだこいつ、でも事実なんだよな……と言わんばかりの様子で言葉を交わす。

 

「……神様って本当にいるんだねぇ…………。」

 

「そりゃいますよ。いなければ神社もお寺もこの世に存在しませんし、八咫烏に導かれる人の話なんてできませんから。

 それに、八咫鏡や勾玉、草薙の剣など現存している神器の話とかどうするんですか。

 偶像を決定づけるためだけに作ったとでも?だとしたら罰当たりでしょうに……。

 知ってます?神様を騙るとその分の皺寄せって自分の方にやって来ますよ。」

 

「うーん……まぁ、君が言いたいこともわからなくもないけどね。ほら、神様って誰も姿を見たことがないだろう?だから、イマイチ信じることができないっていうか……」

 

「まぁ、その言葉も一理ありますよね。わたしも実際に見るまでは神様なんて信じなかったと思います。」

 

「なるほどねー……」

 

 見たことがあるか、見たことがないかの違いなのかと、童磨はらしくないことを考える。

 今でも自身は神様なんてものは信じるつもりはないが、超常的な天変地異が村に起こっていたことは、村を見る限り事実としか言いようがなく、本当は知らないだけで、何かとんでもない存在はこの世にいるのかもしれないと。

 

「そんな存在に拾われて、大変じゃないの?」

 

「大変ではありませんよ。まぁ、そもそもわたしも今は人間ではないので。」

 

「え?」

 

「こっちの話です。まぁ、そう言うことですから、この山で捕食行動は取らないでくださいね?

 お父様と兄様がそれをしたと思われたらわたしも気分が悪いので。では、失礼しますね、極彩色の鬼いさん。」

 

「え、ちょ、待ってよー!」

 

 人それぞれなんだなと考え込む中、サラッと暴露された少女の言葉に、童磨は一瞬混乱する。

 しかし、それに関して問いかけようとした瞬間、言葉を交わしていた少女は、闇の中へととけるようにその姿を眩ました。

 慌てて少女が向かった方に童磨は走ったが、その先には崖しか存在しておらず、少女の姿はどこにもなかった。

 

「……あ〜……名前聞きそびれちゃった……。人間じゃない……か。随分と変わったことを言う子だったなぁ……。」

 

 広がる崖を見つめながら、ポツリと呟く童磨。

 結局、自身の目をじっと見つめて来た理由も、少女に何者かを問うこともできなかったと、少しだけ肩を落とした。

 だが、すぐに彼は、自身の中に芽生えた一つの感情に、何度か瞬きを繰り返し、そっと自身の胸元に手を添える。

 

「……なんだろう。さっきの娘のこと、もっと知りたいって思っちゃってる。」

 

 神様なんていないと言う自分に、神様はいると返してきた娘……相入れない考えを持ち合わせているはずだというのに、不思議と彼は、先程の少女のことをもっと知りたいと思っていたのだ。

 どうしてそんなことを考えているのかはわからない。しかし、彼女と言葉を交わすことで、何かわかるかもしれない。

 

「……また、明日も来てみようかな。さっきの子、またここにいるといいのだけど。」

 

 小さく呟いた言葉を聞くものはおらず、崖付近であるがゆえに吹き抜ける強い風がその言葉を攫っていく。

 不思議な少女との出会い……童磨は、まさかこれが、自分自身に変化をもたらすことになるとは知らずに、その場から姿を消すのだった。

 

 

 




 伊吹弥宵
 山の中を散歩していたら、人喰い鬼がいたので割と吃驚していた鬼神の少女。
 このあと伊吹童子と酒呑童子の2人に、山の中に人喰い鬼が入り込んでいたことを報告した。
 出会った人喰い鬼の目が極彩色だったので、綺麗だなと思って見つめていたことは内緒。

 童磨
 たまたま弥宵が暮らしているお山に足を踏み入れていた上弦の人喰い鬼。
 最初は幼い弥宵を自分の住処へと連れて行き、頃合いになったら食らおうと思っていたのだが、弥宵の独特な雰囲気や、無言で見つめらていたことが影響して、行動に移すタイミングを見失ってしまった。
 弥宵のことを知りたいと思っている。


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