I am the perfect and ultimate XX   作:生物産業

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最終話

 3学期が始まってすぐのことだった。すでにクラスにはチャット等で知らされている内容だ。

 実際、彼の部屋を訪れて確認を取ったものがいるが、扉は閉まっており、中に入ることはできなかった。

 茶柱が神妙な顔で生徒たちに伝える。

 

「福田が自主退学した。福田の事情は学校側も承知している。そのため、今回の退学においてこのクラスにペナルティは課されない。特別措置というやつだ」

 

 ペナルティは課されないが、それ以上の損失が出たと、クラスの中の実力者はため息を吐きたくなった。

 Aクラスの背中はすでに見えている。

 だというのに、最大戦力を失ったことは、Aクラスを目指す人間には大きな痛手だった。

 

 それから学校生活は変わらず進んでいく。

 福助がいなくなってすぐの特別試験。全学年が入り乱れる混合合宿が開催された。

 7泊8日で授業を行い、最終日にテストが行われた。授業内容は以下である。

 禅、筆記試験、駅伝、スピーチ。

 そしてこれらを最終日にテストし、テストの結果で退学者が出る可能性がある。

 だが、今回の試験で退学者が出ることはなかった。

 

 試験初日に、新生徒会長、南雲雅が、旧生徒会長、堀北学に勝負を挑んだ。

 しかし、学はそれを一蹴する。

 お前では俺には勝てない。小細工が関の山だ。俺に勝てないから、俺の近しい者に狙いを定めて退学させるつもりだろう。

 学は南雲の考えを読んでそう告げた。

 

「Aクラス以外のクラスを買収でもしたか? お前は福田にポイントを没収されていたはずだ。まさかとは思うが、この学校のルールを無視して無理やりポイントを入手したとは言わないよな? 元生徒会長でも、不正があればポイントの入手経路を把握することはできるぞ?」

 

 それだけで十分だった。

 南雲は個人の勝負だと言い張り、その結果、学に敗北した。

 それ以上の何かを起こすことはせず、二人のやり取りを見ていた生徒たちからは、南雲は何がしたかったんだと、首を傾げられた。

 

 そんな特別試験を乗り越えたCクラスだが、クラスポイントに変化はない。

 各クラスがほぼプラスマイナス0で試験を終えたことで、クラスの変更が起こらなかった。もしCクラスが20ポイント以上獲得していれば、Aクラスに成れていたが、そうは問屋が卸さなかった。

 だが成長も実感している。

 福助がいなくてもイーブンの戦いが出来る。そう言った自信を持つ生徒がクラスの中に現れるようになった。

 福助が目指した形が、彼がいなくなったことで形になって表れてきたようだ。

 

 特別試験を終えて、2月。バレンタインがもうすぐという時期である。

 

「バレンタインかー」

 

 桔梗はポツリとこぼした。

 授業も終えた放課後。誰もいない噴水の前のベンチに腰を下ろし、冷たい空気を感じながらなんとなくそんなことを考えていた。

 

「櫛田さん」

 

 突然、横から声を掛けられる。

 振り向いた先には、松下千秋がニコニコと笑って立っていた。

 

「松下さん? どうしたの?」

「可愛い女の子が黄昏ていたから、ちょっとナンパしにね♪」

 

 千秋の言葉に桔梗は苦笑する。

 今までなら演技でもして、頬を赤らめていたかもしれない。

 ただ、今の桔梗はそれほど他人からよく思われたいという気持ちが強くなく、特に気にした様子もなく千秋にあいまいな態度をとった。

 

「もしかして、バレンタインデーでお悩み中?」

 

 桔梗の横に千秋が腰を下ろすと、そう尋ねた。

 

「うーん、別に上げる相手もいないからね。ぼーっとしてただけだよ」

「福助くん、居なくなっちゃったもんね」

「んん?」

 

 桔梗は耳が遠くなったらしい。

 千秋の言葉がよく聞こえなかった。

 それが分かっているのか、千秋はもう一度ゆっくりと告げた。

 

「福助くん、居なくなっちゃったもんね」

「……なぜ福助君?」

「も~う、言わせないでよ。櫛田さんが、福助くんと他の男子とで全然表情が違うのは勘のいい子なら分かるよ」

 

 千秋の言葉に、桔梗は顔を隠す。まさか、そんな簡単にバレているとは思わなかったからだ。

 

「恥ずかしいから内緒にしてね」

「ふふ、福助君に会うことがあれば、ぽろっと言っちゃうかも」

「ちょっと!」

 

 桔梗がぱっと隣の千秋の肩を掴む。言わないよという返答を期待していたが、まさか当人に言うとは想像もしていなかった。

 

「うそうそ。慌てる櫛田さんは中々レアだね。ちょっと嬉しい」

「うぅ~松下さんが苛める~」

 

 桔梗が顔を隠しながらそう言うと、ぽんぽんと優しく彼女の頭を撫でる千秋。

 

「ふふ、櫛田さんも普通の女の子みたいなところがあったんだね」

「私は普通の女の子だよ~」

「まさか。池君や山内君みたいな男子と上手くやれて、それでいて平田君や福助君みたいな人たちとも仲良くやれる。そんな女の子が普通なわけないじゃない」

 

 千秋は優秀である。実力を隠しているが、本来の彼女の観察力を持ってすれば、桔梗の違和感にすぐに気付けるのだ。

 

「……」

「最初は男子に媚びを売ってる感じが嫌いだったんだけどね」

「ひ、酷いな……」

「でも、中間テストくらいからかな? 福助くんと絡むことが多くなったよね? 最初は福助君が櫛田さんを何かで脅しているのかなって思ってたんだけど、そんな感じでもない。櫛田さんも、他のクラスメイトとは少し違う表情をしてたから、違和感があったんだよね」

 

 千秋の言葉に、桔梗は心臓を掴まれたような感覚だった。

 実際、自分の素顔がバレた時期と重なっている。

 美人ではあるが、特段優れた人間ではない。桔梗は千秋をそう評価していたが、その評価が全く違うことを今思い知らされたところだ。

 

「櫛田さん、あ、桔梗ちゃんで良いかな?」

「大丈夫だよ。私も千秋ちゃんで良いかな?」

「うん」

 

 お互いに腹を割って話す気になったのだろう。名前を呼ぶように提案し、受け入れた。

 

「桔梗ちゃんは、絶対に裏表があると思ってたんだ。というかないと困る。桔梗ちゃんみたいな女の子が女子の基準にされたら、少子化が加速しちゃうよ」

「なんのことかな?」

「もう、目が笑ってないよ。どうせ、大大大好きな福助君にはバレてるんでしょ? 私に知られたって誤差だよ、誤差」

「……随分と苛めてくるね。千秋ちゃん、性格悪い?」

「福助君にはよく言われるね」

「なるほど、それは悪女だ」

 

 お互いににっこりと笑う。

 自分を隠すという点では二人は似た者同士だ。

 

「それじゃあ、性格の悪い私は、性格の良い桔梗ちゃんに、福助君のどこが良いのか、聞いちゃおうかな♪」

「うわぁ~」

 

 この女できる。桔梗は素直に感心した。

 

「さ、キュンキュンするような話をどうぞ」

「千秋ちゃんに好きな人が出来た時は、夜通しで質問するね」

「出来たらね。今のところ、福助君が一番好印象だよ。恋愛感情はないけど」

「それだと、相手を見つけるのも大変じゃない?」

「ふふ、そうかも」

 

 話を全力で逸らそうと桔梗は頑張っているが、千秋のにっこり笑顔を回避することが出来ない。

 じっと目を見られているうちに、諦めがついたらしく、桔梗はポツポツと語り出した。

 

「い、一番は、裏の私を知って軽蔑しなかったことかな。い、いや、軽蔑はしたかもだけど、普通に接してくれた」

「自分が嫌ってる部分を受け入れてくれて、即落ちしたと」

「即落ちじゃないから!」

 

 即ではない。桔梗は強く主張する。

 

「で、いろいろストレスたまってる時とか、話し相手になってくれるし、バカなことをやって楽しませてくれるし、ムキムキだし」

「あら桔梗ちゃん、はしたない」

「ぶぅ~福助君がいるよー」

「酷い侮辱だわ」

 

 しくしくと千秋が泣きまねをする。桔梗はそんな千秋を悔しそうに睨む。

 

「いやらしいんだけど、いやらしくないし。話してて楽しいし。変態だけど、スペック高いし」

「福助君の評価が2回くらい落ちたね」

「なんというか、何をしても大丈夫って感じが凄く頼りになる」

「それは分かる。あの煽りとえっちな発言がなければ、平田君以上の人望は間違いないよね。器が違うというか」

「あ、それ! 器が大きいんだよ。ちょいちょい、小さくなるけど、基本的には大きい」

「イケメンに対する穢れなき嫉妬ね」

 

 その部分に関しては、おそらく誰もが理解をしている部分である。福助の天才的な頭脳が、停止するのだから。

 

「単純に凄いって思えちゃうところが好き」

「……」

 

 桔梗の笑みに千秋は頬を染める。少し茶化して聞いていたが、ストレートに気持ちを言葉にした彼女の可愛さに、同じ女性にもかかわらずドキッとしたのだ。

 

「全く、福助君も罪な男だ。桔梗ちゃんを泣かせたら、公開裁判をしようね」

「それ、私にも被害が出る気がする」

「大丈夫、大丈夫。皆でつるし上げるだけだから。こういう時の女子は強いよー」

 

 福助が泣かされる未来が、今ここに作られた。

 

「はぁ~でも居ないんだよねー福助くん」

「……」

「美少女の桔梗ちゃんがここで乙女しているのに~。寂しがってるぞー」

 

 桔梗を茶化すように、千秋は続ける。

 千秋は知らないのだ。

 桔梗は本人から聞かされているため、寂しくはないのだが、それを千秋が知ることはない。

 からかわれているため、裏の桔梗が表に出てきた。

 

 よし、黙っていようと。

 

「私は応援するよ。どこかで会うかもしれないし」

「福助君、前に自分のことを好きになる人間を好きにはならないって言ってたんだよね」

 

 昔からの演技がこんなところで活きるとは。桔梗は千秋の話を聞きながら、昔のように演技を始める。

 意中の男の子が突然いなくなって、そんな男の子に思いを寄せているけなげな少女。桔梗はそんな仮初の姿を即座に作り上げた。

 

「それはお金目当てってことでしょ? さすがに桔梗ちゃんレベルの女の子にお金関係なく好きって言われて断るような男じゃないと思うけど」

「で、でも、椎名さんが告白したら……。すごく仲が良いし」

「なら急がないと。椎名さんもこの前のクリスマスパーティーは呼ばれていたわけだから、彼氏はいないはず」

「急がば回れという言葉も……」

「ゆっくりしていて取られても良いなら良いけど」

「うぅ~」

「はっはー、恋せよ乙女、当たって砕けろー♪ 本人いないけど!」

「絶対に楽しんでるでしょ。千秋ちゃんに好きな人出来ないかな~。顔を真っ赤にするまで弄り倒してあげるのに」

 

 二人の性格が福助に侵食されているのが分かる会話だった。

 

「ふふ、応援してるよ。もし玉砕したら、ケーキバイキングでやけ食いでもしようね」

「振られた上に、脂肪までつけるなんて……一緒に太ってくれる?」

「いや♪」

 

 そう言って千秋が逃げ出す。

 桔梗はそれを追いかける。

 美少女の二人のきゃっきゃうふふ。

 そんな美少女のやりとりを偶然目撃した男が一人。

 

「ええやないか」

 

 そう感想を述べた。

 そして男はそのまま理事長室に足を運ぶ。

 それが高度育成高等学校の変革の始まりだったことは言うまでもない。

 

 ◆

 

 高校を卒業して数年が経った。

 そこから色々なことが変化した。

 そして二人の人生は今日この日からまた大きく変わっていくのだろう。

 

「ふぅ~よ~やく終わった~」

「そうだな」

「ねえ、あのエピソードは必要だった?」

「必要でしょうよ。桔梗と俺があの時予想したからこそ、今日という結婚式が開かれたんだから」

「まあ、ひかれつつも、お前らやっぱりバカップルみたいな視線が痛いほど飛んできたよね」

 

 結婚式の控室。式を終えた二人は、先ほどまで行われた会場での出来事を思い出していた。

 

「太ももに挟まれて、ときめきましたとか普通言わないよ」

「彼氏でもない男を太ももで挟まないよ、普通の女の子は」

 

 お互いが睨みを利かせる。これから新婚生活を迎えるというのに、大丈夫だろうか?

 

「高校か、懐かしいな~。皆、来てくれてよかったね。須藤君はNBAの試合があるから来れなかったけど」

「ああ。綾小路は軽井沢と結婚。帆波は神崎と、千秋と鈴音は海外で見つけた相手だもんなー。ひよりがマナブ君と結婚したのはめっちゃ驚いた。桔梗たちが3年の時に非常勤でマナブ君に講師をお願いしたけど、そこから発展するとは……。橘先輩に別の彼氏がいるとマナブ君に聞かなかったら、土下座してもダメだったかもしれない」

「まあ、そこは複雑な男女の関係だよね。意外と言えばひよりちゃんのことだよ。ひよりちゃんは福が狙っていたもんね」

 

 意地の悪い桔梗の笑み。ただそこに嫉妬はない。

 

「恋愛としての好きって気持ちはなかったけどな。お互いに。単純に話してて楽しいというのはあった。ひよりは、『福助君みたいな弟が欲しかったんです』とよく言っていたよ」

「え~こんな優秀過ぎる弟がいたらやだよ~。嫉妬とストレスではげそう」

「おい、嫁」

「旦那は優秀過ぎるくらいがちょうど良いの♪」

 

 着替え終えているからか、福助の首に抱き着きながら桔梗は笑う。

 

「ねえ、福。福が学校に戻って来た時のこと覚えている?」

「ああ。1年の12月で退学をした後、日本政府の要請を受けて、特別監査役兼理事長代理として戻ったんだよな」

「聞いてた話と違うから驚いたよ。監査役として復帰するって聞いてたから」

「当初はそうだったの。あの学校はいろいろと問題だったから、監査役として色んな見直しをするのが俺の仕事だった。だけど坂柳理事長に問題が起こって、代理で権限を持った方が日本政府としても助かるってことで理事長代理の役職が付いた。今はその代理すら取れたけど。なんか他の候補がいたけど、俺の方が適任ってなった」

「16歳に学校の経営を任せるとか、普通あり得ないよね」

「あの学校は普通じゃないから。ま、そこも俺が改善したけどね。今や世界に羽ばたく人材の登竜門になっているよ」

「私も卒業後は海外に行ったし」

 

 桔梗は高校を卒業後、アメリカの企業に就職している。福助が立ち上げた会社と業務提携をしている会社だ。

 彼女のコミュニケーションスキルはどこの国であっても遺憾なく発揮されたのだ。

 

「普通、彼女を異国の地に単独で放り込まないよね?」

「お前が行きたいって言ったんだろ? 俺の手伝いが出来る力が欲しいって。俺は理事としての仕事があるし、付いていくわけにはいかないだろ」

「それでもついてきて欲しいのが乙女心なの」

「ちゃんと護衛も用意したし、あっちで生活できるだけの資金も用意した。千秋や鈴音ともルームシェア出来て良かったって言ってたじゃん。あれだけ嫌っていた鈴音と仲良くなったのは笑ったけど」

「それはそれ、これはこれ」

 

 福助のようなことを言い出す。やはり夫婦はどこか性格も似てくるのだろう。

 

「そもそも高校時代は付き合ってないよね?」

 

 仕事で学校に戻った福助。学校の生徒と恋仲というのは職務上、憚られる。

 そこら辺の線引きはしっかりとしていた。

 

「私は誕生日をすっぽかされて傷ついたんだ。プレゼントくれるって言ったのに、くれないから」

 

 船上試験の時を桔梗は思い出した。

 福助を明確に意識した頃の話だ。自分の誕生日を素直にお祝いするという言葉が嬉しかったのを今でも覚えている。

 まあ、裏切られたわけだが。

 

「それは悪いと思ったよ。退学と復帰の時期がずれたんだ。でも誕プレは渡しただろ。だから今がある」

 

 福助が復帰後、桔梗は福助を呼び出した。

 そして、こういったのだ。

 

「あんたが欲しい。我ながらナイスな言葉だね」

「誕プレに要求するものじゃないよね? 遅れた分の利子にしても高すぎない?」

「でも、受け入れてくれたんじゃん。だから、私はこうして抱き着いていられるの」

 

 ぎゅっと桔梗が福助を抱きしめる。鏡に映る二人は笑顔で満たされている。

 

「結局、高校卒業までは教師と生徒みたいな関係だったけどな」

「卒業後、色んなことを無視してホテルまで行ったのが懐かしいね」

「色々散らされた。お嫁に行けなくなった」

「だから私がもらってあげたじゃん」

 

 卒業と同時にクラスのあれやこれやをすっ飛ばして、福助を拉致して事に至ったのは、桔梗の我慢が限界を迎えていたからだ。

 交際、0日で婚約が決まったとも言える。

 結局その後、遠距離恋愛しているので、不思議な関係と言えばそうかもしれない。

 それでも互いが互いを想っていたことが、今日という日に表れている。

 

「まあ、それは良かったけどさ。自慢の嫁さんだし」

「ふふーん」

 

 頬をすり合わせる桔梗。お前は私のものだいう感情を隠そうともしない。

 

「いつだったかな? 初めて、この女なら騙されても笑って許せるって思った。それくらい好きになった」

「私も、この男の子供を産みたいなって思った。絶対に逃がしてやるもんかって」

 

 恥ずかしげもなくそう語る。

 しかし、そこは桔梗。釘はちゃんと刺す。

 

「ひよりちゃんに退学前に2000万ポイント渡していたことを知った時は、本気で殺そうと思ったけどね。私の時は断ったのに」

「おい」

 

 抱き着きながらも、その手は福助の首に向かっている。付け爪を使えば、真っ赤な未来が訪れるだろう。

 

「あれはあのクラスにひよりがいるのが不憫だったからだ。俺の癒しだぞ? 助けるだろ」

「ひよりちゃん、うちのクラスに移籍したんだよね」

「まあ、それはあまり意味なかったけどな。結局卒業条件を特別クラス編成に変更したし。エリート船にただ乗り予定の奴とかブチ切れてたもんな。もっと悲惨になる未来を消してあげたはずなんだが……」

 

 実力のないコネ入学・入社など苦しい未来しか待っていない。普通のコネとは違い、片道切符。誰もかばってはくれないのだから。

 

「あ~各クラスで阿鼻叫喚だったらしいね。私は問題なかったけど」

 

 福助が理事長代理権限で、進路確約条件を特別編成クラスに限定したのだ。

 日本を担う人材が、優秀なリーダーの言うことを聞いているだけで、進路が確約されるなどあってはならない。

 そう教師陣に指示を出し、卒業前に選抜クラスを作り、そのクラスに進路確約条件を与えたのだ。

 ポイントをためることが目的となりすぎて、本人の実力を高めるという最も大切なことがなおざりになり始めていたというのが特別クラス設置の一番の理由である。

 それまでのクラスへの貢献等、さまざまな視点から選出される仕組みになっている。綾小路と高円寺は選外だ。

 能力はあっても、日本をリードする人材には数えられなかった。

 ただ綾小路と高円寺は福助の元居た会社と提携し、世界の様々な問題を解決する組織の長に収まっている。高円寺は親から引き継いだものだが、綾小路は自力で作り上げたものだ。福助や恵とも協力し、貧困で困っている世界中の人間の教育を援助する財団法人を設立した。

 父親の邪魔などあったが、逆に彼の資金源と繋がりをすべて奪い取り、ホワイトルームを解放し、日本のみならず世界に貢献している。

 KIYOTAKAの名前は、発展途上国では最も知名度のある日本人として認知されるほどだ。福助にテレビ電話でドヤ顔して煽ったのは恵と結婚する直前のことだった。

 

「まあ、今では世界を目指すならここと言われるくらいにはなったからな。さすが俺」

「仕事を引き継がせて大丈夫になったからって辞めなくて良かったのに。私は養ってあげないよ」

「お前を豪遊させて、なんなら孫の孫まで豪遊させるお金は既に稼いであるの。投資と複利を舐めるな」

「わーお、頼もしい旦那様。それで次のご予定は?」

「やりたいことをやるよ。幸い、伝手は腐るほどある。少子化改善のため街づくりなんてのもありかも。日本の未来を作るという意味では最優先事項だからな。究極的に言えば、働かずに衣食住を満たせれば子供は増やせるはず。ロボットでどこまで実現できるか、腕がなるぜ。猫型ロボットを作ったるわ」

「も~う、まずは可愛いお嫁さんをいっぱい喜ばせることでしょう? 少子化改善なら、まずは私と子作り」

「バカだなー、それはやりたい事の中に入っているよ。うちの奥さんは構ってちゃんだからな。ず~っとバカップルしようぜ。3人くらい欲しい」

「私も3人くらいが良いかな」

 

 桔梗の抱きしめる力が少しだけ強くなった。

 そんな桔梗の頭を優しくなでる。高校を出てからあまり頻繁に会うことがなかった二人が、ようやくお互いが望んだ形に収まったのだ。

 

「浮気したらチ〇コもぐから」

「怖ぇよ。つうかしねぇよ。俺、桔梗にベタ惚れだから」

「私も!」

 

 恥ずかしさのあまり、桔梗が福助の首を絞めたのは言うまでもない。

 そんな様子を、控室のドアの隙間からニヤニヤしながら覗いていた招待客たちは、「あいつら、変わらんな」と言っていたことを福助と桔梗が知る由もなかった。 

 

 その後二人は子宝に恵まれ、数々の偉業を成し遂げながら幸せに暮らしたという。




完結することが出来ました。ありがとうございます。
感想をくれた方や誤字・修正報告をしてくれた方にはいっそうの感謝を申し上げます。

ぶっちゃけますと、最終話は蛇足です。本当は前話の退学発言をして、いつものように俺たちの戦いはこれからだENDをしようと思ったのですが、綺麗に終わらなかっため、話を加えた感じですw

また何かあれば、別の作品を書こうかなと思います。主人公の特徴はたぶん変わりませんww
一番書きやすいので。

本当にありがとうございました。
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