テリーside
オレンジカーソルのプレイヤーに囲まれた俺達は、油断を許されない戦いを余儀なくさせられた。
「リーテン! お前は死なないことだけを考えろ! この戦闘は普段やってるmobとの戦いとは違う!」
「は、はい!」
俺は目の前の片手剣使いを体術SS《水月》による回し蹴りで蹴り飛ばし、両手剣使いの腕をSSで撥ね飛ばす。
「死ねヤァ!」
「喰らうか!」
背後から別の短剣使いから攻撃されるが、俺は盾でそれを防ぐ。そのまま短剣を持つ手をぶった斬り、膝蹴りを顎にぶち当てる。
敵mobやNPCと戦うのと違い、殺さないように加減をしなければならないのが面倒だ。
「オラオラどうしたクソガキぃ!」
「くっ……!」
次々と自身に向けてくる攻撃を避けながら、それを持つ手を切り落とすのが精一杯だ。
本来ならば、足も切って動けないようにしたいのだが、そんな余裕がない。
「ほらほら、殺さないとずーっと攻撃が続いちゃうよー?」
毒ナイフ使いの甲高い声が俺を煽る。
奴の言う通り、殺せばこの戦闘は早く終わる。だからと言って殺すのは無理だ。
だがコイツら、俺が奴の言う通り殺しに来たらどうするんだ。まるで、殺すなら殺される覚悟をしているような目をしている。
「……なーそろそろオレ飽きてきたぜー?」
「好きに、しろ……」
「良いのか? お前のお気に入りじゃねぇの?」
「構わない…」
「んじゃ、好きにさせてもらうぜー!」
しばらく奴らの相手をしていると、いつの間にかフィリア達と距離を離されていた。
「はーい! ちゅーもーく!」
それを好機と取り、毒ナイフ使いがフィリアの首にナイフを、別のプレイヤーがサーニャの首に剣の刃を当てていた。
俺はフィリアの様子がサーニャと違うと思い、視線だけ左上に動かすと、俺が彼女の状態を勘違いしていた事に気づく。
「ちっ……!」
「卑怯な…!」
「待てリーテン!」
リーテンがナイフ使いに向かおうとするのを俺は肩を掴んで止める。
「おっと、動くなよ〜動いたら、コイツらの首が飛ぶぜぇ〜?」
刃に当たった陽光が怪しく煌めく。刃には毒が塗られてはいなかった。
「まぁ? オレは優しいからぁ? お前が武器を遠くに投げるなら? 殺さないでやるぜ?」
「わかった」
俺は剣と盾を後ろに投げ捨てる。
フィリアのこちらを見る目が大きく開いた。心配するなと目線を返し、目を左上に一瞬動かし、目線を交わし頷く。
「良いねぇ〜んじゃ、お楽しみタイムだ」
ナイフを持っていた男は部下であろう別のプレイヤーにフィリアを預け、俺に近づいてくる。
「オレがお前に何をするかわかるよなぁ?」
「ああ」
「なら動くんじゃねぇぞ。女、テメェもだ」
「っ……!」
「さぁて〜……オラァ!」
「ぐはっ……!」
俺は無防備な腹を殴られた。
「「テリー!」」
「ハッハァ! 良いねぇ! 砂の詰まったサンドバッグより、人の身体を殴る方が気持ちいいぜぇ!」
続けて顔、顎、胸、横っ腹と無抵抗のまま俺は殴られる。武器を使っての攻撃ではないので、俺のHPは大きく削られはしないが、少しずつ減っていく。
「ほらぁ? もっと楽しい顔しろヨォ! 俺が楽しんでいるんだからヨォ!」
「ぐはっ…! がはっ…! うがっ…!」
奴は拳だけではなく、蹴りまで使い始める。
「そぉうら、必殺シュートぉ!」
「ぐぁあっ!」
奴の蹴りが顎を捉え、俺は後ろへ大きく蹴飛ばされた。
「さぁてと……そろそろトドメと行きますかぁ」
飽きたのか、奴は遂に主武装を取り出し、くるくると手で器用に回す。
「あの女共を見捨てたらどうだぁ? んー?」
「……俺はアイツらを見捨てる選択肢なんか……選択するかよ……」
「お〜お〜良いねぇ〜かっこいいじゃんよぉ〜男の子だもんなぁ〜ヒヒヒッ」
奴は下卑た笑い声を出しながらゆっくりと近寄ってくる。
「……言い残す事はあるかぁ?」
「そうだな……」
奴は完全に油断している。なら、俺の考えを彼女は理解しているだろう。
「お前……怠惰だな」
「んじゃ死ね♪」
ナイフを振り下ろそうとした時だった。
「ぎゃあぁぁあ!」
男の悲鳴が突然上がる。
「はっ?」
毒ナイフ使いの男は、間抜けな声を漏らす。
「ウチの団長の器用さとフィリアの運を侮ったな」
毒ナイフ使いの後ろでは、フィリアがナイフを突きつけていたオレンジプレイヤーをば蹴飛ばし、サーニャを救出していた。
「リーテン! 2人を!」
「はい!」
リーテンに2人のサポートを頼み、俺は蹴飛ばされた先にあった、投げ捨てた剣を拾い、毒ナイフ使いに切り掛かる。
「何をしやがった!」
「お前に運がなかっただけだな」
実はフィリアだけ、麻痺毒による麻痺を受けていなかったのだ。
その事に気づいたのは、彼女のHPゲージを見た時だったので、俺の視野が狭くなっていた。
麻痺していたサーニャも、シュバルトのポーションの効果で麻痺の時間が少し短くなっており、その時間を俺がサンドバッグになって稼いでいた。
「せぁっ!」
「ちっ!」
「形勢逆転だな?」
「相棒が気にいる訳だな……!」
毒ナイフ使いとの切り合いだが、やはりPKを目的としたプレイをしているので、対人戦が上手い。
隙の少ない攻撃を繰り出している為、こちらも攻め入る事が出来なかった。
「チィっ…! 餓鬼の癖に対人慣れしてやがる…!」
「そこ…! くっ…!」
俺が毒ナイフ使いの腕を撥ね飛ばそうとした時、腕の隙間からエストックが俺の目の辺りに飛び出してくる。
咄嗟に首を傾けて、エストックを躱す。
「交代だ」
「オイオイ、もう少し楽しませろよ」
「元々は、オレの、獲物だ」
「……ちっ。負けたら、飯奢りだからな」
そう言って毒ナイフ使いが離れ、エストック使いとの戦闘になるかと思った時だった。
「オラァ!」
「ぐはっ……!?」
俺の後ろから曲刀突進SSリーバーでエストック使いをぶっ飛ばす者が現れた。
「無事っすか副団長!」
「ああ。助かったぞソーキ」
切り込んで来たのは我が龍歴院の切り込み隊長のソーキだった。
「いきなり突っ込んでどうしたんだよソーの字!」
更にクラインの声が聞こえてくる。
「遅ぇよおっさん!」
「おっさん言うんじゃねぇ!」
そんなやり取りを見ていると、更に増援が来る。
「テリー! 生きてる!?」
「おう。お前お手製のポーションでな」
「そっか……って、運良すぎない?」
そう言って現れたのは見慣れない猫獣人を連れたシュバルトだった。
「確かにな」
その幸運に俺達は助けられているのが、少しご都合過ぎるが、手段を選んではいられない。
「待たせたなお前ら。ここからは俺達もやってやるぜ」
バリントン声がオレンジプレイヤー達の後ろから現れる。
「エギルさん!」
「ギルドの面々を集めるのに、ちょっとばかりかかったがな、クラインの風林火山だけでなく、シュバルト達龍歴院とも合流出来た」
攻略プレイヤーがこの場を包囲する。
「チッ……」
囲まれたオレンジプレイヤー達は武器を仕舞い、包囲の隙間を抜けようとするが、この人数を抜き去る事は出来ないようで、狼狽え始める。
「さてと……僕のギルドメンバーであり、大事な友達をここまで痛めつけてくれたんだ。覚悟してもらうよ」
そう言ってシュバルトが飛び出そうとした時だった。
「ずいぶんとお早い到着だな?」
いきなりこの場にいるオレンジプレイヤーと似たようなデザインのフーデットケープを羽織ったプレイヤーが中心に姿を現した。
一体いつ現れた!?
「さ、サブヘッド!?」
「お前ら、ここは引け。流石に、今のお前らじゃ捕まる。それに時間稼ぎは充分だろう」
「ああ、わかったぜサブヘッド。行くぞ相棒」
「そうだな。だが、一つ、言わねば、ならない、ことが、ある」
エストック使いが俺の方を見る。
「お前は、いずれ、赤い色に、堕ちる。その、血に、濡れた、手によって、な。楽しみに、しているぞ」
「なんだと…?」
血に濡れた手だと? まさかアイツは俺が過去にやった事を、あの事件を知っているのか…?
エストック使いは包囲を抜けようと走る。
「逃すか!」
エギルとクラインのギルドメンバーが行先を塞ごうとしたその時、俺達の前に立っていた筈の、サブヘッドと呼ばれた男が、逃げる奴らの前に現れ、行先を阻んでいた彼らを蹴散らした。
「は?」
「え?」
俺とシュバルトは何が起きたのか分からず、抜けた声を漏らした。
「道は出来た。行くぞお前達」
オレンジプレイヤーの集団はこの場を去って行った。
「ふぅ……」
俺は緊張が解けて、その場に座り込んだ。
流石に今回は危なかった。フィリア達が人質にされた時はどうなるかと思ったが、生きていて本当によかった。
「テリー!」
「うぉっ!? フィリア?」
座り込んだ俺に勢いよくフィリアが飛びつく。
「よかった……生きてて」
「シュバルトみたいな無茶して悪かったな」
「ううん。私達が油断してた」
「流石に毒使いは初めてだからな……仕方ない」
そんなやり取りをしていると、背後で「ごほん!」とわざとらしい咳払いをシュバルトがしていた。
「なんか急に刺されたけど「それはシュバルトの自業自得だよ」……ウッス。テリー達が無事でよかった。だけど今は急を要する。テリー達は一旦主街区に戻って休んでいてくれ」
「……わかった」
俺は大丈夫と言うリーテンを残して、重要そうなアイテムをフィリアとサーニャが渡したのを確認し彼女達と、護衛としてクライン達と共に主街区へと向かうのだった。
─────────────────────────
シュバルトside
相変わらずの幸運だねフィリア……
まさかの必須アイテムを持っていた彼女達に驚きつつも、クエストに必須のアイテムを持っていたとは思いもしなかった。
「後は……《突き貫く者の証》だけだね」
「そいつは何を倒すんすか?」
「グラニット・ボアって言うイノシシのモンスターダヨ」
「なら早く倒しに行くか。早めに処理しないとリンド達が危ないからな」
僕達はグラニット・ボアが現れる場所まで走る。
「そう言えば団長、その猫なんすか?」
「たむのことかな? 実はね──」
僕は移動しながら、たむの事を説明する。
「今はまだ、薬草笛の僅かな回復しかできないけど、強くなったらもっと回復出来たり、僕達にバフを振り撒くことが出来るようになるのさ。他にも色々出来るけど、それはまた今度ね」
「へぇ……無法じゃないですか?」
「そう思うけど、JWの連中がバフの旗を使っていても、無双は出来てないから、少し助かるくらいの範囲だろうさ」
「なるほど……」
話をしている内に、グラニット・ボアが現れる場所に到着したようで、僕達の周囲に一斉にホップする。
「さてと……狩猟…開始だ!」
と、意気込んだは良いものの、多少のレベルが上のモンスターに苦戦するはずも無く、アイテム獲得条件の『ピンチ状態のプレイヤーがSS名を叫びながらトドメを刺す』を達成し、キーアイテムの入手に成功したのだった。
トドメを刺したソーキはシステムアシストによって、決めポーズを無理やり取らされていた。それを見たジークが笑い、2人が喧嘩を始める。
僕はそれ放置することにした。いつものことなので。
アルゴがクエストNPCの元へ行き、鍵を受け取りに行き、クエストNPCを連れて戻ってくる。
「さてと……早速、リンド達がいるダンジョンに行くよ!」
「「「「おう!」」」」
テリー
オレンジプレイヤーに襲われ、フィリアとサーニャが人質に取られてしまった。
フィリアの幸運により、無事切り抜けることが出来た。
エストック使いとのやり取りで言われた『血に濡れた手』、彼の過去に何があったのか……
ソーキ
切り込み隊長。
クラインの事をおっさん呼びしたのは、ガンダムSEEDのシンとムウの2人の関係をイメージしたもの。
金髪赤目の容姿は主人公っぽい。
多分今後もこんなやり取りする。
たむ
持っている武器による近接攻撃、ブーメランによる遠距離攻撃やオトモアイルーのサポート行動でプレイヤーをサポートする。
効果範囲は雇い主のシュバルトが決められるので、笛の音色を聞いたからと言って、効果の範囲にはなるとは限らない。
ギルドフラッグより強い気がするが、倍率や効果時間が抑えめなので、笛の強化頼りで戦えるわけではない。
オトモアイルー参加させる?
-
はい
-
いいえ
-
猫ー!