それではどうぞご覧ください。
メンバーが揃わない。
あれから何十人と声をかけ続けたが、この大会の恐ろしさを知っているものは揃って首を横に振り、時には興味を示して前のめりになるものもいたが、Level.3も出場するという事を聞いた瞬間逃げ出した。
あとたった2人揃えばいいのに、と思うエボはふとアイリーを思い出す。
「アイリー……」
そういえばアイリーは出場するのか。
あの時、あまり反応を示さなかったが、その時は敢えて言わなかったのだろうか。と、勝手な想像をしてしまうエボ。
首を横に振り、気を取り直して辺りを見渡す。
「おっ」
するとあるイワンコに目がいった。特に何かに惹かれたという訳ではないのだが、不思議と身体が動いた。
エボはそのイワンコに声を掛ける。
「あの〜ちょっといい?」
「……なに」
全てを諦めたかのようなジト目。
正直なところ、エボは半分諦めていた。
「闘技大会に出てくれないかな?実は今、メンバーを募集してて───」
「エボ、でしょ?ここら辺で片っ端から声掛けてるイーブイがいるって耳にしたから」
ため息混じりにイワンコはそう言った。
「無理って事……?」
「……別に無理とは言ってない」
「じゃ、じゃあ!」
「条件があるわ」
「えっ、なに?」
「もし勝った場合、減刑1000年の半分以上私に寄越して」
「………」
イワンコは内心「まぁ無理でしょ」と、断る前提で言ったのだ。
しかし、彼女の意思とは裏腹にエボの答えは違った。
「いいよ」
「……………は?」
「事情があるんだよね!半分って事は……もう刑期満了までもう直ぐって事でしょ?全然いいよ!みんな特に刑期云々言ってなかったし!」
あまりの純粋な笑顔と言葉。
イワンコは口をあんぐりと開けていたが、暫くしてふっと鼻で笑う。
「はっ……あたしは『ザクロ』。元ルガルガンのザクロ」
「ん?あぁ、僕はエボ」
「あんた面白いね……いいよ、闘技大会出てあげる」
「ほ、本当!?」
「でも、例の条件は必ず守って────」
「じゃあまた今度みんなを呼んで作戦会議しよう!!今日はありがとう!!」
エボは軽い足取りで走り去っていった。
「もう少し有り難みを……変な奴」
ザクロの記憶にかつての仲間が過ぎる。
またいつか会える日を信じて─────。
*****
「あと1人……あと1人……」
エボはそんな事をブツブツと言いながら歩いていた。
寧ろ気味悪がって誰も近づいてこないという悪循環に陥っているのだが、本人はそれに気づいていない。
実はあれから数日が経過していた。大会まで残り日数も迫っているというのにも関わらずだ。
一応メンバーたちとは何度か集まってトレーニングを挟みつつ、メンバーを募集しているのだが、一向に最後の1人が埋まらなかった。
「このままじゃ……」
数日の間にアイリーに声を掛けた。
しかし、アイリーはこう答えた。
「本当に困ったら声を掛けて」
「本当に困ってるんだよ」
「まだまだね。あなたLevel.1だけで集まると思ってる?」
「え?それってどういう……?」
「この日に、このタイミング……もしこのポケモンがいたら真っ先に声を掛けて」
こう言われ、エボはとある場所───それは依頼を行う受付所。
今日も別に変わらない風景。
エボが暫く待っていると、地下行きのエレベーターが稼働し、Level.1の受付所で止まった。
その中から出てきたのはラルトス。顔の右側と右腕に大きな火傷の跡。それから全身に痛々しい痣があり、胸になにやら黒い石が埋め込まれている。
異様とも言えるその見た目に困惑しつつも、エボはそのポケモンが、アイリーの指定したポケモンであることに気付く。
「ちっ、こんな所にLevel.3のお前が何の様があるかは知らんンゴが。さっさとするンゴ。刑期を更に伸ばすンゴよ?」
「はい、わかっています」
あれはエボも覚えている。看守トゲデマルのミツオだ。
エボは早速ラルトスに声を掛けた。
「えっと……君がアイリーの言っていた?」
「"アイリー"……っ!もしかしてエボさん?」
「僕を知っているって事はやっぱり!」
「私は『シェローナ』。エボさん、お会いしたかったです」
「僕は自己紹介いらないみたいだね。シェローナがアイリーの知り合いだったなんて────」
少し雑談を挟みたかったエボであったが、それを看守のミツオが遮る。
「無駄話をするなンゴ。刑期を増やしてやるンゴよ」
「ご、ごめんなさい」
ミツオに腹が立ったエボだが、下手に刺激する事は得策ではないと考え、今はしばし耐える。
「早速で申し訳なきんだけど、大会に出てもらうって事はできる?」
「……ええ、もちろん」
「よかった。でも、君はLevel.3の囚人なんだよね?当日会うって事になりそうだけど……」
「その点においてはご心配なさらず」
直後シェローナの顔が曇る。
「………私は大丈夫ですので」
何か裏がありそうではあったが、エボはそれ以上何も聞かなかった。
「じゃあまた。今日はわざわざ来てくれてありがとう!」
「はい、また当日お会いできるのを楽しみにしております」
それからエボと手を振って別れる。
「ふん、大量殺人鬼同士クソみたいな会話してるンゴね〜。それじゃあ早く地下に行くンゴ」
「わかりました……」
「せっかく依頼で減らした刑期が"ここに来るだけでパーになる"なんて、よっぽどここの奴に用があったンゴね」
「…………」
「まぁ、いいンゴ。さっさと乗れンゴ」
シェローナはエレベーターに乗ると、再び自分がいるべきLevel.3へと降りていった────。
*****
「アイリーどうして!!」
エボの声が雑居房の中に響く。
アイリーは澄ました顔で言う。
「私の刑期が少し増えただけでしょ。何を今更」
「少しって……シェローナもここに降りるってだけで100年以上も増えて、アイリーだってシェローナに手紙を送るだけで100年以上………おかしいよこんなの!!」
「あなたが大会優勝すればいい話でしょ」
「でもアイリーは出場しない……どうしてそこまで」
「……ドッピン。あなたの作戦教えてあげて」
アイリーがドッピンに話を振る。
するとドッピンは咳払いをし、皆の前に出てきた。
「一応このメンバーが集まってきっかけを作ったのは俺だ。しっかり話させてもらうぞ」
雑居房の中にはいつものメンバーたちと大会に出場を決めてくれたフォス・キンタ・アクセル・ザクロが来てくれていた。
シェローナのみLevel.3なので参加していないが、アイリーの話によれば既に手紙を送って事情説明を終えていた。
彼女たちはたまたま依頼で遭遇してから仲良くなったらしく、それから手紙で文通をしたり、共に依頼をこなしていた様だった。
「それじゃあ早速───今回の大会は知っての通りメンバー6人でバトルを行うチーム戦だ。本来ならトーナメント方式だったが……参加する組がLevel.3の奴ら、それも毎度大会で優勝してる化け物たち。普通なら勝てる筈もない」
それに対してアクセルが声を上げた。
「あぁん!?んなもんやってみないとわからねーだろ?」
「確かにやってみないとわからない。が、ロトガーの情報でやばいことが判明してな」
ドッピンは頬に汗を垂らす。
「相手チームのリーダーが"Level.4の囚人"らしい」
それを聞いたアクセルも思わず声が詰まる。
エボはドッピンに疑問を投げた。
「ねぇ、ドッピン。Level.4って本来参加できないんじゃないの?」
「あぁ、どうやら看守が黙認している様だ。今回の大会はマジで裏がある。いや、今までもあったんだろうな……だからこそ優勝できれば奴らの作戦が崩れるかもしれねー」
「その為の作戦があるって感じ?」
「そうだ。おい、来てくれ!」
ドッピンが手を振ると、後ろの方からデリバードが現れた。
「はいはいどーも。ワタシは『ツツミン』です。エボ君でしたっけネ?実に面白い身体をしていると聞きましてネ〜……」
「え、えぇ……」
ツツミンと名乗るそのポケモンは、"ポケモンそっくりのロボット"を作るというのを目標にしている発明家で、研究材料として様々なポケモンを拉致してしまったことをきっかけに捕まった。
殺人はしていないものの、後々のことを考えたら洒落にならなそうなので結局である。
そんな彼女が来たという事は、
「ツツミンの発明を活かして戦わせてもらう。特にエボ。お前にとってはいい方法だと思うぜ」
「僕にとっては……?」
ドッピンが言ういい方法とは────。
皆さんお待たせしました。
期日投稿できればいいのですが……中々難しい。
次回、Mission.11「大会の幕開け」
次回もよろしくお願いします!!