それではどうぞご覧ください。
ブラック・イルカマン闘技大会、当日。
この大会は6人で行われるチーム戦で、先に3回勝利すれば次の試合に進めるというもの。つまりトーナメント方式である。
又、チーム戦はシングルの他にタッグ戦も1戦混ざっている為、囚人達のチームワークも試される。
本来ならば勝ち抜きで進行していく筈だった大会ではあるが、何か裏で動いているのか、Level3の他にLevel4まで参加しているという情報が入って来た。
ただでさえ前回前々回……それよりも前に優勝し続けているチームとなると、囚人たちは報酬よりも自らの安全を優先して、今大会の参加数はエボのチームとLevel3の無敗チームのみとなってしまった。
「────という事で皆んなわかってるだろうけど、もう一度並びを確認するわ」
エボたち以外にいない静かな控室。
アイリーは皆の前に立ち、今一度チーム戦の順番を確認する。
「まず第1試合『アクセル』」
「おう」
「第2試合『シェローナ』」
「お任せください」
「第3試合タッグ戦『フォス』『キンタ』」
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ……遂に来ちまったかぁ……」
「バッチコイでごんす!」
「第4試合『ザクロ』」
「任せな」
「そして最終試合『エボ』」
「うん!」
ここに至るまでエボたち6人は大会当日まで、監獄内に設置されているジムで特訓を開始した。
シェローナのみ階層が違うので、共に特訓することは叶わなかったが、彼女も1人でかなり厳しい特訓をしたと聞く。
やはり大会前とは言えど相手はLevel3の囚人たち。エボたちが前に対峙したアブソルのソウルは推定Level3の実力を有している。そいつを3人掛かりでようやく倒したレベルとなれば焦るのも無理はない。
だが、こうして皆が一丸となって特訓を終え、万全の状態で大会に臨めるのは努力の賜物だろう。
「相手は何をしてくるかわからないが……ロトガーのお陰でこっちは敵の情報を掴んでる分有利だ」
ドッピンが拳を突き上げてそう言った。
その後にアイリーは続ける。
「急に変えてくるなんてことはないと思うけど、私たちがこの試合順を組んだのは相性を重視に選んだから。ただ敵はLevel3。本当に何をしてくるかわからない」
「それに奴らを率いるチームリーダーがLevel4のやつと来た。こっちが情報掴んでんのも、もしかしたらバレてる可能性だってある」
これに対して声を上げたのはアクセル。
「あぁん!?最初から何弱気なこと抜かしてやがんだ!正面からぶつかって潰す!そうだろう?」
「……全くうるさい奴だ」
「はぁ!?」
「……でもまぁあたしも同意見だよ。最初からうだうだ言ってても始まらないからね」
ザクロがアクセルに対してそう言うと、シェローナも強い瞳を皆に向ける。
「私もやってみせます。唯一のLevel3のものとして、必ず勝利することを誓います」
続く様にフォスとキンタも発言する。
「あーもうなんだよみんなしてよぉ!ちくしょう!……ただ出るって言っちまったんだ。命なんて本来掛けるつもりなかったのに、お前らといるとなんだか俺様の脳がバグってくるぜ……」
「フォスどん!それはいい心意気でごんす!あれから随分と成長したでごんすね〜」
「………ちっ、偉そうに言いやがってちくしょう……このデッ」
「あ"ぁ"?」
「はい」
それからアイリーはエボに近づいていく。
アイリーの目はまっすぐだエボに向けられる。
「エボ、例の"ツツミンの装置"。上手く活かして」
「大トリを任せられたんだ。全力でやるつもりだよ……でも、僕は自分の実力くらいわかってる。こういう事を言うのも何だけど、もし情報通りなら勝てる確率は限りなく薄いよ」
「そうね。だからこそ最後にしたのもあるけど、1番の理由はあなたならいけそうな気がするって思ったから。ツツミンの言ってた、あなたの進化の可能性を信じてる」
「アイリー……」
「───さ、そろそろ大会が始まる。準備して」
*****
Level3の階層に設けられた超巨大なスタジアム。
既にLevel1から3までの囚人たちがスタジアムを囲って大盛り上がり。血の気がありそうなポケモンたちが騒いでるせいか、地上が試合というのであれば、地下の試合は死合と表記すべきだろう。
それほどまでに全体から殺気を感じる。
「─────地上からまんまと地下に落ちたクソ囚人共ぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!これよりブラック・イルカマン闘技大会を始めるぞォッ!!目ん玉ひん剥いて血に塗れたカスとカスの殺し合いをしかと見やがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッ!!!」
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!
スタジアム全体が震える。
司会を任されているのは囚人の1人。ペラップの【シャウト】だ。
基本的にはこう言ったイベントも囚人主体でやらせるのがほとんどで、一応周りには看守はいるもののからも殆ど機能していないらしい。
殺害は認められていないが、再起不能の重傷までは認めているらしく、如何にこの監獄が囚人たちを生物として扱っていないかよくわかる。
「ゴミ共がお待ちだぁっ!!ゴミ選手もさっさと位置につけやぁっ!!!」
スタジアムの真ん中には広いリングが設置されている。
両端には階段が設置されており、選手たちはそこを登り降りしてリングインを行う。
その前にスタジアムの端。つまり入場口近く。そこの床から進化装置が出現する。ここで地下に落とされる前の進化した姿に戻された上でバトルが行われるのだ。
「まずは第1試合『アクセル』vs『ブレーキ』!」
そしてアクセルはペンドラーの姿でリングインする。
遅れてリングインしてきた"ブレーキ"という名のマルヤクデ。
「情報通りだな……」
アクセルはボソッと呟く。
「アクセル。1回戦が1番重要よ」
「わかってんだよ。んなこたぁよ」
セコンドにはアイリーとドッピンが待機。
他のメンバーは控え室のモニターにて試合を観ている。
「アクセルか……ふっ、噂で耳にしたことがある。地上では名の知れた暴走族の頭だったそうだな」
試合開始の合図が出される前にブレーキがアクセルに話しかける。
「あ?それがどうした」
「君を地下送りにした犯罪グループ。あれは私の傘下だ」
「なんだと……?」
「私はそれなりの規模を持つ組のポケモンでね。その傘下が"偶々"君の縄張りで警察と揉めてしまったそうだ。実に申し訳ない」
アクセルの表情が変わる。
「仕組んだとでも?」
「本当に"偶々"だ。ただの暴走族程度をわざわざ潰す様な真似はしない」
「てめぇそれはどういうことだ……?」
アクセルは問いただそうとしたが、シャウトがそれを遮る様に試合開始の合図をした。
「両者お喋りはここまでだッ!!それではレディィィィィィィィィィィ───ファイトッ!!!」
ゴングが鳴らされる。
アクセルは早速正面から突っ込んだ。
「詳しく聞かせてもらおうじゃねーかッ!!」
「ふっ」
それをブレーキは身体を丸くして"かえんぐるま"で迎え撃つ。
咄嗟に避けるアクセルだが、ブレーキはなんと急に進行方向を切り替えてアクセルの脇腹を捉えた。
「な、なにっ!?」
吹き飛ばされるアクセル。だが、すぐに体制を立て直す。
「はっ!おもしれぇ……ならこっちも全力でいかせてもらうぞ」
第1試合、まずは先行を取られる────。
ちょっと短めですが申し訳ないです()
代わりに次回長くなります。
次回、Mission.12「アクセルとブレーキ その1」
次回もよろしくお願いします!