それではどうぞご覧ください。
「オラァッ!!」
アクセルは自慢の触覚を硬化させ、ブレーキに向かって"メガホーン"を放つ。
それに対しブレーキはすんでの所で躱すと、身体を鞭の様にくねらせて"ほのおのむち"を浴びせた。
「ちぃ……!ちょこまか動きやがって!」
「実に単調、明白、馬鹿の一つ覚え」
「まだ"メガホーン"だけでボロクソ言ってんじゃねぇッ!!」
続いてアクセルは巨体を活かして"ギガインパクト"を食らわせる体勢を取った。
「ぶちかます!」
全体重の乗った体当たり。距離が離れているのなら避ける事は容易そうに見えるが、正面に立ち、その巨体から放たれる圧に耐えられるかは別だ。
だが、相手はLevel.3の囚人ブレーキ。またしてもヒラリとかわされる。
「この野郎ッ!」
その時、アクセルの動きが止まる。
"ギガインパクト"はノーマルタイプの中でもトップクラスの高火力技。代わりにデメリットも大きい。それは反動で暫くの間は動けないという事。
それを知っているブレーキはアクセルを動けないアクセルの周りをゆっくりと歩く。
「て、めぇッ!!」
「君たちが縄張りとしていた場所。元々は我々が取引する為に利用していた場所だ。それをどこのギャロップの骨かも分からん奴らに奪われ、私のビジネスに少しばかり影響を与えられた」
「んな事、知るかよ」
「私はそれに関して非常に、非常に……腹が立った」
次の瞬間、ブレーキはアクセルの脇腹に噛みつき、その巨体を持ち上げて"ぶんまわす"。
そして最後に勢いよく地面に叩きつけると、続け様に"ほのおのむち"で滅多打ちににしていく。
「ぐぉぉぉぉッ……!!」
「いいか?暴走族風情が組に手を出すってのはこういう事なんだよ」
アクセルの身体が焼ける。
むし・どくタイプのペンドラーは"ほのお"タイプに対しての耐性がない。故に弱点となるタイプの技は酷。
あまりの苦しさに思わず声を漏らしている。
「君にはまだまだ味わってもらう。地獄の苦しみを」
*****
控室のモニターで試合を観るエボたち。
Level.3囚人の容赦のなさにシェローナは怒りを露わにする。
「酷いです……動けない相手にここまでするなんて!」
するとフォスがそれに対して、
「Level3に常識なんてあるわけないだろ。大体の奴らが……あっ」
というが自分の口を塞ぐ。
目の前にいるシェローナもLevel3の囚人だということを思い出したのだ。
「わ、悪い……」
「大丈夫です。間違っていませんので……」
悲しそうな顔をするシェローナ。
それを見たキンタはフォスを掴んで振り回す。
「仲間に向かってなんて事を言うんでごんすか、フォスどん!」
「うわぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!やめろデブッ!!」
「あぁん!?」
2人がいつもの流れを繰り広げる中、ザクロがシェローナに近づく。
「ねぇ、あんた。大丈夫?」
「は、はい。ありがとうございます」
「敬語なんてやめなよ。あたしに対してはタメ口でいいから」
「でも……」
「あんまウジウジしてると潰すよ」
「そ、そんな!」
「……冗談さ。とにかく気を遣わなくていいから」
「あ……ありがとうございます」
シェローナは少し微笑む。
その時、モニターを貫通して歓声が大きく響き渡った。
「アクセルッ!!」
エボがモニター越しに彼の名前を叫ぶ。
モニターに映し出されていたのは"ほのおのキバ"と"ぶんまわす"による最悪なコンボが行われていた。
千切っては投げる。この言葉をそのまま表した様に、アクセルの身体はみるみるうちにボロボロになっていく。
「おいおいこれまずいんじゃねーの!?」
「アクセルどんの身体が酷い有様でごんす!早くきのみを渡して回復させなきゃいけないでごんす!」
「バカやろう!んな事したら失格になるわ!」
「で、でも……」
フォスとキンタが言い合う中、エボは冷静に「大丈夫」と一言。
「アクセルは……ここからなんだ」
*****
試合は早くも終盤戦の雰囲気を醸し出していた。
ブレーキによる猛攻は止まる事はない。
「どうしたのかねアクセル。先ほどまでの威勢はどこへ行った?」
激しい攻めに対して容赦のない追い討ち。
最早為す術なく終わりかと思われた。
「………」
するとアクセルは急に身体を捻り、ブレーキの技から抜け出すとそののまタックルをして距離を離す。
「ほう、まだやる様だな」
「………はっ」
アクセルはニヤリと笑う。
今までの流れ中で笑う箇所があっただろうか。突然のことにブレーキは動揺を隠せない。
「何を笑っている」
「なんでって?でかい組を抱えてる割には察しが悪いやろうだ」
「なに……?」
その一言がブレーキの怒りを買う。
「私の技を散々食らった君は"やけど"を負っている。その状態では物理攻撃しか能のない君では大した威力を発揮できない。もう諦めたらどうだ?」
そう言ってブレーキは口から炎を噴射した。
炎は徐々にクルクルと回転を始め、アクセルの身体を包み込んだ。
「そのまま"ほのおのうず"に呑まれて死ぬがいい、アクセル」
ブレーキは勝利を確信し、アクセルが燃え尽きるのを待った。
だが──────。
「─────ん?」
黒い影がゆらりと動く。
その影は炎の渦の中をゆっくりと歩いていた。
「な、なんだ……?」
その状況を理解できないブレーキ。
直後、渦から足が飛び出した。
「アクセル……見掛け倒しではなかった様で安心したが、その傷でどうするつもりだ?」
アクセルは目を鋭く立ててブレーキを見据える。
その目にブレーキの身体は震え上がる。それは恐怖か或いは何かを危機としたか。
「その目はなんだ」
ブレーキは身体を丸めて"かえんぐるま"を発動。
そのままアクセルに向かって転がっていくが、それを見事にかわされてしまう。
先ほどまで自分がやられていた光景。
「ただ避けただけじゃない……この違和感は」
それからブレーキは方向転換し、"かえんぐるま"を連続して行うも、それら全てをアクセルは軽々と避けていく。
彼が回避行動を行う度にブレーキは違和感を覚えた。
「これはまさかッ……!?」
「───ようやく気づいたか。てめぇちょっと遅すぎやしねーか?」
アクセルが行っていたのはただの回避ではない。彼は舞っていた。
"つるぎのまい"。自らの攻撃力を増加する技。
「"やけど"の負傷を補う為の手段という訳か。だが、今更何をしようと……」
「負傷を補う?ちげーよ。これが俺の"戦闘スタイル"なんだよ」
ブレーキは"かえんぐるま"の使用を続け徐々に加速していく。
かなりスピードでリングを駆け回りアクセルの様子を伺う。
「様子見てんのか?ただそれが"ニトロチャージ"だったらよかったな。今の俺からしたら……遅過ぎる」
その瞬間、ブレーキの身体が曲がる。
自らが曲げた訳ではない。外部からの衝撃によるもの。
「かはぁっ……!?」
先程まで当たらなかった"メガホーン"がブレーキに突き刺さった。
その衝撃によって彼の回転は止まり無様に地面を転がる。
「ゲホッ!!ゴホッ……ッ!!」
「何が何だかわからねーって顔だな」
ブレーキはアクセルに向き直る。
この男はここまで大きかったか?スタジアムの光はこんなにも遠かったのか?とブレーキの思考は止まらない。
「確かに俺は物理攻撃しかできない。空中に飛ばれちまったらそれこそ為す術がない。格上相手になんて尚更物理戦法なんてもんは足を引っ張るだろうよ」
「ならば、これは……」
「だがな。そういううぜー奴ら、俺からしたら関係ねーんだよ。チマチマ遠距離から攻撃?状態異常でチマチマと削る?んなおせぇ事誰かするかよ。最後に勝つ。正面切ってな」
それを聞いたブレーキは煽る様に笑う。
「くっ……くくっ……君が投獄している間、私の仲間は君の捨て駒達を追っている。何の為かわかるか?殺す為だ。それでも正面切って戦うなどというバカな事はしない。能のあるものはじわじわと利口に殺していくんだ。1人残らず綺麗にな。弱者は弱者らしく死んでいけばいい。最後に勝つ?ならばそれは私だ。私の邪魔をするものは全員始末する」
長々と語ったブレーキに対してアクセルは、
「なげーしおせーよ。敗北者」
と言った直後、ブレーキの血管が切れた。
「はぁ……はぁ……敗北者?この私が?……殺すッ」
ブレーキは身体を丸めて"かえんぐるま"放つ。
今までのものとは比べ物にならないほどの熱量に加え、その転がるスピードを桁違いである。
「ふんっ!!」
が、それをアクセルは正面切って受け止めた。
そして全身に力を込め、足に踏ん張りを効かせてブレーキを天高く放り投げる。
「"ばかぢから"か!?」
「さっきはよくも避けてくれたな。今度は────外さねーよッ!!」
ブレーキが落下するタイミングに合わせて、アクセルは"ギガインパクト""お見舞いする。
リング上を転がるブレーキ。ピクピクとしながら血走った目をアクセルに向けた。
「より強く、より硬く、より速くッ!タイマンのぶつかり合いで俺が負けるわけねぇだろうが!」
アクセルは睨みつけてこう言う。
「来やがれLevel.3。本当の強さってもんをその身体に刻んでやるよッ!!」
皆さん本当にご無沙汰です。申し訳ない……。
次回、Mission.13「アクセルとブレーキ その2」
次回もよろしくお願いします!!