それではどうぞご覧ください。
「私の攻撃が効かないだとッ!?」
ブレーキは尾を振り回し"ほのおのムチ"を繰り出したが、アクセルはそれを避けようともせず敢えて喰らって見せる。
微動だにしない。手応えもない。弱点のほのおタイプすらどうという事もないのか。
「効かねぇって─────」
アクセルが足を踏ん張る。
「言ってんだろうがぁッ!!」
地面を蹴り抜き、その勢いのままに放つ"クロスポイズン"。
ブレーキの身体に毒のXという文字が刻まれた。
「バ、バカなぁ……!!お前は私の炎の攻撃を立て続けに喰らっているんだぞ!?なぜ効いていないッ!!」
その質問にアクセルは平然と答える。
「"てっぺき"。てめぇが"ほのおのうず"を使った時に使用させてもらった。皮肉なもんだな、おぉ?苦しませようとする筈が、逆に自分の技が相手を手助けしちまう事になるなんてよ?」
「黙れ……」
「段々と冷静さが欠けてきたな?」
「黙れッ」
「もう止まるのか?名前の通り」
「黙れッ!!」
そういうとブレーキは攻撃を仕掛けてくるのかと思われたが、その場に留まりとぐろを巻き始めた。
そのままジッと動かない。
「…………はっ!」
アクセルは何かを察し、すぐに攻撃に移る。
が、少し遅かったか─────。
「ふんっ!!」
前のめりになっていたアクセル。いくら素早く動けようとも、その巨体をすぐに方向転換する事は不可能。
とぐろを巻いてバネの様な姿となっていたブレーキは、それを存分に利用して跳ね上がり、一瞬にうちにアクセルの懐に入り込んだ。
「てめぇッ!!」
「もう遅いッ!!」
これはブレーキのコンボ技。
"とぐろをまく"により攻撃と耐久面、それから命中精度を上げ、その状態を利用した瞬間的なスピードを実現し"とびかかる"に派生させる。
更に"とびかかる"による体当たりに加え、流れる様にほのおのキバ"で追撃。
ブレーキは命中力の上昇により弱点を的確に狙える。アクセルの1番柔らかい肉の部分を噛みついた。
その痛みにアクセルは思わず声を漏らす。
「ぐあぁぁぁぁぁッッ!!」
アクセルは地面を思いっきり蹴ってブレーキを引き剥がそうとした。
が、食い込んだ牙は中々外す事はできない。
ジワリと血が滲み出る。
「ク、クソがっ!」
ならばとアクセルは身体を振り回して地面に叩きつけようとした。
それを読んでいたブレーキは、彼に巻きついて離れない様にしてしまう。更にただ巻き付いているわけではなく、これは技による"まきつく"である為、"ほのおのキバ"との2点攻め。
これだけではない。アクセルが抱えている問題はもう一つ。
「"やけど"のダメージもまずい……」
セコンドのアイリーはそう呟いた。
隣にいたドッピンも頷く。
「いくらアクセルが強化されているとは言えど、今まで受けたダメージを回復できるわけでもないし、かといって絶対にダメージが通らねぇって訳じゃねぇ……この試合長引けば長引くほど不利になるぞ」
「そろそろセコンドの仕事をしないと」
それからアイリーは叫んだ。
「アクセルッ!あなた"上か下"に行けるッ!?」
「あ、あぁん?」
「"上か下"よッ!」
「………」
ブレーキはその指示に失笑する。
「お前のセコンドは無能か?あの程度の指示しか出さないとは……わざわざ2人いる意味がないな」
「無能はてめぇだ」
彼の言葉をアクセルはバッサリと切り捨てる。
「こういう状況でデカい声出して、明確な指示なんてしたら対策取られんだろうがよ」
「それで?お前は私に巻き付かれ、更には急所を噛まれている。逃げる事など不可能」
「だから言ってただろうがよ。"上か下か"ってなぁッ!!」
次の瞬間、アクセルは身体を高速で回転させて地面を掘り進んだ。
これは"あなをほる"。単純な技ではあるが相手の不意をつけるというのがいい点ではあるが、この状況では不意をつけるもこうもない。
「ぐぎぎぎぎぃ……ッ!?」
本来じめんタイプが弱点ではないはずのブレーキも流石に声を漏らす。
この地下大監獄の壁は非常に硬い。どれだけ威力のある技を当てようともびくともしない。囚人たちが退化させられているというのもあるが、もう1つこの壁が硬く作られている理由がある。
それはこの監獄が"穴を掘ることが可能なポケモンを想定していない訳がない"のである。
この闘技場において地面は多少掘り起こされている為、上辺だけなら容易に掘り進めることが可能。ただそれが下に行けば行くほどどうなるか。
それは今、ブレーキが身をもって受けている。
「あがががががががががッ!!?」
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」
遂に"あなをほる"の限界値まで達した。
監獄の壁とアクセルの巨体に挟まれ、ブレーキはみるみるうちに削られていく。
「ブハッ……!!」
ブレーキは思わず口を離す。
しかし巻き付いた身体は意地でも離そうとはしない。
「根性あるなこのてめぇッ!!」
「組、背負ってるカシラがぁ………」
そしてブレーキは口から火を吹く。
「死を恐れてたらいけないだろうッ!!」
「うおぉぉぉッ……!!」
アクセルとブレーキの身体が炎に包まれる。
地上に開いた穴から勢いよく炎が噴出し、会場は大盛り上がり。
「アクセルッ……!!」
モニター越しから見ていたエボたちは彼の名を叫ぶ。
それから誰もがその光景を見て気づく。この炎が止まり、先に這い出てきたものが勝者であると。
「…………」
「アクセル出てこいっ……!!」
セコンドの2人も息を呑んで見守り続ける。
炎の噴出は暫く続いた──────そしてその時は訪れる。
ピタリと炎が止まったのだ。
ザワザワと闘技場内に暗雲が立ち込める。
「おいおいどっちが勝ったんだ?」
「中々上がってこねーぞ」
「すげぇ焦げ臭いな!」
最悪の場合、2人とも死亡の可能性もある。
そこにいるものたちはただただ待つのみ。
暫くの間、何も動きはなかったが穴の中から這いずる音が聞こえてきたのだ。
「まさかッ!」
アイリーは嬉しそうな声を漏らしたが、すぐにそれは引っ込む事となる。
何故なら穴から出てきたの───ボロボロになったブレーキだった。
闘技場内は一気に歓声が上がる。だが、エボたちからすればそれは敗北したという事。
「はぁ………はぁ………」
息も絶え絶えなブレーキ。
お互いがギリギリであった事は見ればわかる。
「そんな………アクセルッ!」
アイリーはすぐさま駆けつけようとするがドッピンに静止された。
「ドッピン?」
「今ここで上がっちまったら負けを認めた事になる」
「………」
「まだ終わってないだろ?」
「………えぇ、ごめんなさい」
司会のシャウトはこの光景を見て決着がついたことを確認。
マイクを手に持ち、試合を終了させようとしたその時であった─────。
「なんだこの音は……?」
1番近くにいたブレーキが気づく。
地面が微かに揺れている。明らかに何かが昇ってきている。
「ま、まさかッ……!!」
穴から爆発する勢いで何かが飛び出した。
宙へと浮かぶ黒く巨大な影。
それはブレーキ目掛けて一直線に落ちてきた。
「バカな……バカなッ!!」
「ギガァァァ───────」
──────アクセルを踏み倒す。
「インパクトォォォッッ!!!」
「この私がァァァァァァァァァァァァァァッッ──────────!!!!!」
凄まじい衝撃が闘技場を揺らす。
戦士を包む土煙。勝敗はまだ見えない。
「………」
微かに見えた黒い影が1つ。
彼はただ堂々と立っていた────。
「しょ、勝者ァァァァァァァァァァァッッッ!!!」
シャウトがマイクを掴んで高らかに叫ぶ。
「アクセルゥゥゥゥゥゥゥゥッッッ!!!!!」
ブレーキは停止し、アクセルは進む。
本当にお待たせしました()
次回、Mission.14「黒いメガシンカ その1」
次回もよろしくお願いします!!