それではどうぞご覧ください。
「それでは第3試合ッ!!選ばれしゴミ共ぉッ!!さっさと位置につけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッ!!!」
シャウトの叫びに、観客たちは更なる盛り上がりを見せる。
エボ達チームは1勝1分。このまま流れに身を任せ、3試合目のダブルバトルも勝利する事を願っていた。
控え室にいるメンバー、セコンドの2人、3試合目というプレッシャーを背に凹凸コンビがリングに上がる。
「おい、キンタ」
「なんでごんす?フォスどん」
「相手はLevel3の囚人だ。お前がいくら仲間想いだからって無理して命を懸ける必要はねーからな」
「フォスどん!どうしてそんな事言うでごんすか!」
「ちげーよ。ただ……無茶すんなって事だぜ」
「フォスどん……?」
キンタは違和感を覚えた。
"命を懸ける"と言った、その時のフォスの顔は何か思い詰めている様だった。
質問をしようとしたキンタであったが、ゲラゲラと笑う喧しい声に気づき、そちらの方に目を向けた。
「おいおい、兄弟。なんだあのほっせーのふってーの!」
「ガリとデブとか余裕だろ、兄弟!」
デブというワードに対し、キンタが「あ?」と反応を示すが、それをフォスが必死に止めた。
相手チームは極悪兄弟として名を馳せた世間でも有名なマニューラ。
【カール】と【クール】。相手を切り刻んで噴き出た血の量を競い合う頭がイかれた殺人鬼だ。
「それではレディィィィィィィィィィィ───ファイトッ!!!」
試合開始のゴングが鳴る。
先に仕掛けたのは───────。
「行くでごんす!!」
ハリテヤマの巨体をものともしないキンタは上空に飛び上がる。
「へー、デブの割には動けるじゃん」
カールは嘲笑いつつ、冷静に相手を観察。
"ヘビーボンバー"が来るとわかると、クールに合図を送った。
「あいよ兄弟!」
クールは爪と爪を擦り合わせて"いやなおと"を立てた。
思わず耳を塞ぐキンタ。態勢が崩れた隙を狙い、カールは"こおりのつぶて"を発射する。
「それはちょっと頂けねーなッ!」
「ガリが来やがった!」
ギリギリの所でフォクスライのフォスによる、あくタイプの鋭い爪"つじぎり"が炸裂。
カールは爪で防御をする代わりに技を外してしまった。
「このガリがッ!!」
「兄弟、こいつからやっちまうか!!」
すると、フォスは指をクイクイと曲げたジェスチャーを行う。
それは"ちょうはつ"。これによりキレた相手は攻撃技しか出せない。
「「調子に乗りやがって!!」」
フォスに2人による"メタルクロー"が迫る。
しかし、直後2人の顔面に張り手が突き刺さった。キンタの"つっぱり"だ。
「あがっ!?」
「ぐおっ!?」
地面を転がる2人はすぐに体勢を立て直す。
キンタとフォスを見る。狂気的で殺意の混ざった瞳。
2人は互いに顔を合わせて合図を送る。
「先に止めた方がいいのは……」
「ガリだな」
カールとクールは二手に分かれた。
少し打ち合っただけだが、相手の厄介となる方を瞬時に把握した。
その標的はフォス。戦闘能力だけで言えばキンタの方が優れているのだが、それをカバーできる様に立ち回れ、頭の切れるフォスがこの場合厄介となる。
極悪兄弟はこいつを先に潰しておくのが得策だと判断したのだ。
「おい、ガリッ!!」
「よくもやってくれたなッ!?」
だが、フォスも馬鹿ではない。
こう来ると予想しており、"ふいうち"の体勢に入っている。
「はっ」
カールはニヤリと笑う。
「……ッ!しまったキンタッ!!」
「なんでごんすかフォスど─────かはっ!?」
カールの方はフォスが、クールの方はキンタが見ていた。
どちらも対応可能かと思われたが、クールが思いの外速かった。いや、Level3の囚人だからこそもっと警戒するべきだったのだろう。
キンタの反応するよりも早く、クールの"こおりのつぶて"が炸裂した。
「こ、これしき……」
「そうかなデブくん!!」
流れる様に"つららおとし"。キンタの身体に突き刺さる。
「キンタァッ!!」
叫ぶフォス。だが、キンタに気を取られてしまったのがいけなかった。
「おーい、俺を忘れるなよッ!!」
「しまった……!!」
"つららおとし"がフォスにも炸裂。
そしてダメージを負い、身動きが取れないフォスを囲う様に"つららおとし"で氷の壁を形成する。
「フォスどん!!」
「仲間を気にしている場合かよ!!」
"ちょうはつ"の効果時間が過ぎた。
それを狙っていたかの様にカールとクールはグルグルとキンタの周りを走り出す。
「な、なにをする気でごんすか……」
シャリ。シャリ。シャリ。シャリ。
"いやなおと"ではない。何かを研ぐ様な音。
これは"つめとぎ"。獲物を確実に仕留める為、着々と準備が行われている。
「く、くそっ……!!」
フォスは氷の壁に体当たりを行うものの、その氷は強固であり、フォスでは破壊不可能であった。
(これが溶けるにしてもあとどのくらい掛かる……?キンタの様子もわかりやしない……まずい。叫んだ所で意味もない……!!)
こうしている間にもキンタが危険である。
フォスは思考を巡らせた。
「それならこうでごんす!!」
キンタは飛び跳ねて地面に思いっきり着地した。
地面が揺れ、繰り出されたのは"じならし"。
しかし、極悪兄弟はその揺れに合わせて避けつつ爪を研ぐ。
「"ふきとばし"でごんす!!」
デタラメに張り手を繰り出すキンタ。
無情にもその攻撃が当たることはない。
「絶対やばい……降参するべきか……」
殺害はNGの試合。そうなれば刑期は大幅に延びる事になる。
それをこの2人が気にするだろうか。否、この兄弟は殺す事に快感を覚える。刑期が延びた所で何も感じない筈。
フォスの頭に降参の2文字が浮かぶ。
「キンタ。すまねぇ……俺はやっぱり命を優先させてもらうぜッ!!」
そしてフォスは叫んだ。
「俺たちはこうさ───────!!」
「フォスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」
フォスの叫び声を掻き消すほど、キンタが吠えた。
「それだけは絶対にダメでごんす!!」
「見えてねーけど、やばいってことはわかる!!うちは1勝1分で有利なんだ!!ここで負けてもまだ……」
「勝たなきゃいけないんでごんすよ。アクセルどんとシェローナどんが繋いでくれた流れ……無駄にしちゃいけないでごんす!!」
カールとクールがゲラゲラ笑う。
「友情ごっこは牢屋の中でやりな」
「ここじゃあ死ぬか生きるかの殺し合い。まずは1人バイバイだッ!!」
刹那、極悪兄弟が飛び出す。
鋭い爪の最大火力"つじぎり"がキンタの身体を切り裂いた。
2人が交差した後、キンタの胸から鮮血が噴き出した。
「ぐほっ……!!」
「キンタァァァァァァァァァァッ!!」
スタジアムに悲痛な叫びがこだまする。
キンタとフォスの運命は……!
Mission.17「狐と力士 その2」
次回もよろしくお願いします!!