それではどうぞご覧ください。
「フォス……キンタ……」
エボは2人の名を呟く。
第3回戦。2人の大健闘虚しく、敗北を許してしまった。
極悪兄弟のカールとクールは彼らを殺すつもりだった様だ。大会のルール上、殺害自体は認められてはいないが、危険と判断又はやむを得ない事情が発生した場合のみ良しとしている。
ただ極悪兄弟には関係ない話。自分たちがそうしたいから、そうするまでである。
「バトルだから仕方ないとは言えど、あそこまでする必要あるのか!」
「エボ君。君の気持ちは痛いほどわかりますけどネ。相手はどんな理由があれ"囚人"なんです。倫理観がワタシ達とは異なるんです……と、ワタシが言っても説得力ありませんがネ」
怒りに震えるエボを、丁寧だが現実的な事を淡々と告げるツツミン。
それからエボは深呼吸をし、なんとか冷静になると現状を振り返り始めた。
「1勝1分1敗……ねぇ、この大会って先に3勝した方が勝ちってルールだっけ?」
それに対してある程度傷の癒え、控え室に戻ってきたアクセルが答える。
「それであってる。が、ドッピンの野郎が言うには……例えば2勝1分2敗となった場合、延長戦に突入するらしい。それも日を改めずにその日にやるとの事だ」
「それって代表で1人を選ぶの?」
「ああ、ただそれでも終わらねーなら、どんな怪我人引っ張ってきてでも続けるらしいぞ……いつだかの大会でそんなクソみたいな事例があった様だ。ちっ、馬鹿馬鹿しい」
つまり次の第4回戦で勝利しなければ、傷ついた誰かが戦うということになる。
エボは怒りよりも呆れが勝ってしまう。
「監獄にいるポケモン達は、皆んな人権なんてないのか……」
「まぁ俺が出てやる。チビや他のメンバーが出る必要はねぇよ」
「アクセル!そういう問題じゃないだろ!」
「ちっ、勝って地上に出る。他の奴らも殆どがそういう理由だろうが。お前はここで負けてもいいってのか?あぁ!?」
そう言うアクセルにエボは反論することができなかった。
その時、モニターから歓声が聞こえ始める。
「……次はザクロの番だね」
不穏な空気が漂う中、4回戦のゴングが鳴った──────。
*****
「………はぁ、聞いちゃいたけど……」
歓声で揺れるスタジアムのリング内。
ルガルガンのザクロの相手は───────。
「ルガルガン……ね」
"まよなかのすがた"の姿に対して、相手は"まひるのすがた"。
その名は"イチジク"。
「御主がザクロ。ふむ……やはり"まよなかのすがた"か」
「……何が言いたいわけ?」
イチジクの含んだ言い方に、ザクロは眉を顰めて聞いた。
「我はルガルガン一族にて"たそがれのすがた"を筆頭に、昼、夜、姿関係なく静かに暮らしていた。一見すると姿の違うもの同士が仲睦まじく平和な日々を過ごしていると思うだろう。事実、一族の皆は口々にここに産まれて良かったと言っていたものだ……しかし、我だけはそれを良しと思わなかった」
「……なぜ?」
「わからないか?たった1匹の黄昏が一声掛けただけで奴隷のように従う愚者。自身の幸せを他人に委ね、呑気に幸せな日々を送る様な恥知らず。我にはそれが見るに耐えなかった。少々実力があろうとなかろうと、黄昏という特殊個体でしかない輩に族を操る権利があるのか、と」
訳のわからない持論に嫌悪感を示すザクロ。
「なんとなくわかったよ……あんたその"黄昏"を殺したんだろ?」
「左様。リーダーなど不要である。奴さえ殺せば皆気づく、と思った……しかし、一族は互いに手を取り合ってリーダーを仕立て上げた。何故繰り返す?」
「大勢を動かすにはリーダーっていう指標が必要なんだ……あんたみたいに個人で動く様な奴だけだと組織として崩壊する。どう足掻いてもあんたは間違ってるのさ」
「ふっ、劣等種が吠えるではないか」
「言ってなよ……速攻で潰す」
両者構えを取る。鋭い眼光で睨み合う2人。
後ろ足に力を込め、一気に飛び出した。
「"かみなりパンチ"!」
先行はザクロの"かみなりパンチ"から始まった。
右腕に電気がバチバチと音を立てて纏わりつく。
「甘い!」
イチジクは軽やかに躱し、着地した地面から岩を突き出させ、爪でそれを砕き弾丸の様に弾き飛ばす。これは"ストーンエッジ"だ。
「ちっ……!」
それにザクロはすぐさま反応。
自身の毛の黒く硬い部分を更に硬化させ、"アイアンヘッド"で飛んできた岩を砕く。
「………っ!」
ザクロは反撃に出ようとした。
だが、イチジクの姿がない。
「はいはい……そういう事」
そうポツリと呟いたザクロは地面に向けて腕をクロスさせる。
直後、地面からイチジクが勢いよく飛び出し、彼女を宙へと浮かばせた。
「"あなをほる"。そしてこれが"ドリルライナー"ッ!!」
続け様の攻撃にそのままザクロの腕にドリルライナーの鋭い先端が食い込んだ。
「……あたしがこれくらいで怯むとでも?」
「なっ……!」
ザクロの筋肉が隆起する。
「全部持っていきなよ────── "カウンター"!!」
クロスさせた腕を解放すると同時にイチジクの態勢も崩れる。
空中で無防備な状態。顔面にザクロの拳がめり込む。
「むっ……!!?」
「吹き飛びなッ!!」
拳を振り切ると、イチジクは真っ逆さまに地面へと落下し激突。
強烈な一撃と衝撃が彼の全身に響き渡る。
「ふんっ!」
ザクロは流れる様に地面に向けて"いわなだれ"を発動。
無数の岩がイチジクを埋め尽くす。
ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ。
会場が沸く。流れはザクロか。
「……っと、ん?」
土煙が立ち込める中、ザクロは着地して早々に違和感を覚える。
この土煙がやけに範囲が広い気がしてならない。
「─────ッッ!!」
ザクロが視界が悪い中、周りを見渡しながら歩いていると足に痛みを感じた。
その場で止まり足元見ると、なんと地面から鋭い岩が突き出ていたのだ。
「まずい」
気づいた時には遅かった。既に周りには無数の岩の槍が突き出ていた。
すると、土煙の中からゆらりと動く影が見え始める。
「……イチジク」
「いい動きではあったが、ザクロよ。御主は甘い」
ザクロは今自分に置かれている状況を瞬時に把握した。
無駄に広い土煙の正体は"すなあらし"。そして地面には鋭い岩の槍は"ステルスロック"。視界が悪く見えづらいがきっと宙にも浮いているだろう。
"いわなだれ"を喰らう直前にイチジクは"あなをほる"で回避。そしてザクロが土煙で見えない間に彼は一瞬にして罠を仕掛けた。
「へぇ……あんた最初からこれが狙いだったでしょ」
「左様。ただ御主が予想以上の力量があったのでな。早々に我の領域とさせてもらった」
「あっそ」
ザクロは岩の槍を逆に利用して影に向けて"ストーンエッジ"を放つ。
しかし、砂埃から見える影は穴を開けたままその場に居続けていた。
「……っ!これは……」
ザクロはその場で静止する。
下手に動くと"ステルスロック"によるダメージを受けるというのもあるが、イチジクが2つの技だけではなく"3つ目の技"も発動していた事がわかったからだ。
「……"すなあらし"に"ステルスロック"……それに"かげぶんしん"。厄介にも程がある」
これだけの技を同時に発動するのは容易な事ではない。
一族と黄昏を1人で壊滅させたというのも頷ける実力。
「はっ……!」
瞬間、ザクロは身体をのけ反らせる。
第六感というのだろうか嫌な予感がしたからだ。
だが、その予感は的中していた。
「よく避けたな────」
イチジクの声が後ろから聞こえてくる。
いや、至る所から聞こえてきた。
「御主には使えぬだろう。劣等種である"まよなかのすがた"では」
ルガルガンの"真昼"と"黄昏"にしか与えられなかった専用技。
「"アクセルロック"。さて、御主は耐えられるだろうか」
「……ホント何から何まで気に食わない奴だよ」
4回戦で全てが決まります。ちょっと短めで申し訳ないです……。
あと今更なんですけど、私よくポケモンなのに○人やら人権やら"人"って使ってますが特に伏線とかありません。
では次回、Mission.19「 昼夜 その2」
次回もよろしくお願いします!!