それではどうぞご覧ください。
"すなあらし"で視界が悪い上に、"ステルスロック"によって行動範囲が狭められてしまった。
ザクロは目の前で余裕そうにこちらを見るイチジクに対し、現状は何もできないといったように一歩も動くことができない。
「"アクセルロック"ッ!!」
「ちっ……!!」
凄まじい速度で体当たりを繰り出すイチジク。
それをのけ反らせて躱すザクロであったが、2度目は胸を掠め、ジワリと血が滲む。
「ふっ!」
ザクロは地面を抉るように殴り、鋭く尖った"ストーンエッジ"を飛ばした。
それはイチジクが地面に着地したと同時。視界不良ではあるが、進行方向や技の終わるタイミングは予測可能。
「技を喰らったね」
ザクロは僅かな影の揺れを見逃さなかった。
ダメージが通ったことを確認し、再び"ストーンエッジ"を繰り出すものの、2度目はやはりイチジク。喰らう事はなく砂埃に穴を開けただけだ。
「どこを見ている」
若干反応が遅れたザクロ。
振り向いた時には腹部にイチジクの身体がめり込んでいた。
「かはっ……!!」
その勢いのままに浮遊する"ステルスロック"を巻き込みつつイチジクは真っ直ぐに壁へと進む。
「ザクロッ!首が空いてるッ!」
セコンドのアイリーから指示が飛ぶ。
ザクロは痛みを堪えながら体勢を変え、ガラ空きとなったイチジクの首に"サイコファング"を繰り出した。
鋭い牙がイチジクの首にズプリと突き刺さり、思わず彼は技を解いた。
「舐めてんじゃないよ!」
それからザクロはイチジクを投げ、間髪入れずに"かみなりパンチ"を腹部へと食らわせた。
「ぬぐぅっ……!?」
これは強烈だったかイチジクは体勢を整えることもできずに無様に地面へと転がる。
流れる様に再び"かみなりパンチ"を繰り出そうとしたザクロ。
「はっ……!!」
だが、ザクロは動きをピタリと止める。
目の前に"ステルスロック"の岩が現れたからだ。
「そう連続して食らう我ではない!」
イチジクは先ほど減った"ステルスロック"をザクロの攻撃に合わせて三度召喚。
難を逃れた事でできた僅かな隙を利用し、イチジクは"かげぶんしん"を放つ。
「これは……」
砂嵐の中での"かげぶんしん"は非常に見分けがつきにくい。
ザクロはまたその場から動くことができなくなった。
「アクセルロックッ!!」
どこからともなく飛んでくる"アクセルロック"。
四方八方から繰り出される技に対応し切れず、ザクロはガードを固めたままダメージを負い続ける。
「ぐぅ……!!」
攻撃しようにもイチジクによる妨害からのカウンターを前にどうしても有利を取れない。
アイリーとドッピンはセコンドから何かできる事はないかと策を練る。
「あのイチジクとかいうルガルガン。ザクロがどう対処しようともすぐに攻勢に転じるわ」
「ああ、"すなあらし"に"ステルスロック"。おまけに"かげぶんしん"と来た。技も遠近対応可能と隙がねぇな……」
悩む2人であったが途中でハッと気づく。
「いくら隙がないとは言えど、さっきからザクロのやつ耐えられちゃいるよな」
「あれだけの攻撃を喰らったらそもそも限界が来ててもおかしくない筈……」
「つーことはアレだな。無駄な策なんざ要らねーって事だよな」
「そういう事ね────ザクロッ!」
アイリーが声を張り上げると、ザクロはガードの隙間から彼女の方を見る。
「攻撃が最大の防御よッ!!」
「……なにさその作戦……でも」
ザクロの身体が赤く光り出す。
「気に入ったよ」
直後、"アクセルロック"で飛んできたイチジクの顔面にザクロの"カウンター"パンチがめり込んだ。
イチジクの砕けた牙が1本宙を舞う。
「自分で食らっときなッ!!」
そのまま殴り抜けるとイチジクは自分が仕掛けた"ステルスロック"を巻き込んで後方の壁へと吹き飛ばされた。
鼻と口から血を垂らしながら彼はヨロヨロと立ち上がり、ザクロを睨みつける。
「御主、ただでは済まさんぞッ……!!」
「こっちもそのつもりだから……」
両者の目が真っ赤に染まる。
気づけば"すなあらし"も"ステルスロック"も消え、互いに試合開始前の状態へと戻っていた。
「ふんっ!」
先に動いたのはイチジク。"ストーンエッジ"を飛ばすと同時に前に出る。
それを読んでいたザクロは最低限の動きでそれを躱し、逆に"アイアンヘッド"を食らわせた。
「読んでいたッ……!!」
イチジクはザクロの技を"敢えて"受けた。
必ず接近すれば彼女が物理技しか打たない、否、物理技しかできない状態にできることがわかっていたからだ。
そしてイチジクは技の勢いに任せて身体を翻し、そのまま"バークアウト"を繰り出した。
「うっ!」
ザクロの身体が宙へ浮く。その隙を逃さない。
「"アクセルロック"ッ!!」
立て続けに放たれる"アクセルロック"がザクロに炸裂する。
当たりどころが悪かったのかザクロの意識が飛び掛けるが、地面に着地すると同時に根性で意識を取り戻す。
「あたしはね……あんた達みたいな犯罪者が大っ嫌いなんだよ……。本当だったらこんな大会出るつもりもなかった……」
ザクロは立ち上がり姿勢を低くして構える。
「でもね。あたしの勝利を願ってくれてるお人好しの為に……そして……"ユキやテナの為"に……」
瞬間、ザクロが地面を蹴り飛ばすと、凄まじい速度でイチジクの元へと飛んでいく。
「これがあたし流のアクセルロック……"アサルトロック"ッ!!」
本来"まよなかの姿"が覚えられない筈の"アクセルロック"を、ザクロが血の滲むような努力の末に編み出した自己流のアクセルロック。
その名も"アサルトロック"。読める筈もないオリジナルの技。
「潰すッ!!」
「バカなぁッ……!!」
意表を突かれたイチジク。対処のしようなどある筈もなく、彼は地面を転がった。
「か、勝った……」
わああああああああああああああああああああああッ!!!
湧き上がる歓声に司会のシャウトもゴングを鳴らして試合終了させようとした────────だが、
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」
会場に響き渡る程の雄叫び。
イチジクが血を吐きながら地面に腕をめり込ませて"ストーンエッジ"を飛ばす。
「あっ───────」
ザクロの腹に"ストーンエッジ"が突き刺さる。
「油断……した…………───────」
そしてザクロは血をタラリと流し、膝から崩れ落ちて地面に倒れ伏せる。
「両者、引き分けェェェェェェェェェェェェェェッッ!!!」
試合は思わぬ形で最後を迎えたのであった。
試合は引き分け。最後の試合はエボに託された……。
次回、Mission.20「進化 その1」
次回もよろしくお願いします!!