ポケットモンスター 希望のミッション   作:辰ノ命

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皆さんご無沙汰してます。
それではご覧ください。


Mission.2「地上」

 昨日は仲が良くなった囚人達と沢山会話をした。

 この監獄でのルールや生き方、裏の取引からなにからまで、全て教えてもらった。

 この内容が看守達に聞かれたらと思うと、恐ろしいものが多々あったが、実に有意義な時間であった。

 そして今日、エボは会話中にもあった依頼を受けるつもりだった。

 

「さて───」

 

 受付では看守のヤドン【ウワンソラ】が、ずっと一点を見つめたまま動かずじっとしていた。

 

「すみません、依頼を受けたいんですけど」

「………………」

「すみません、依頼を受けに来たんですけど」

「………………」

 

 ───日が暮れそうだ。

 エボはその間に昨日の会話内容を思い出す。

 

 

 *****

 

「いいか、エボ。ここも地獄だが、地上の方はもっと地獄だ。流石の看守も最初は簡単なもんを勧めてくると思う。まぁその代わり刑期は全然短くならねーけどな」

「そうだよね」

 

 ドッピンの他にも囚人達がいたが、どうやら彼がここのリーダーのような存在で、彼中心に話が進んでいく。

 ここに居るのも長いらしく、どれも有益な情報ばかりだ。

 

「まず外に行くに当たってのルールその1。必ず2人以上のチームを組まなければならない」

「一応それは脱走防止でしょ」

「ご明察。ただ2人作っただけじゃ、協力して逃げられちまう可能性もあるから、腕に発信機を取り付けられる。この発信機は、いつ、どこにいようが、すぐにわかっちまう厄介なもんさ」

「そしてもう1つは2人以上じゃないと危険」

「ははっ、話が早くて助かるぜ」

 

 2人で1つのチーム、か。

 この場合ランダムに決まるのか、それとも事前に決めてもいいのか。

 

「チームは基本、同じ依頼を受けた奴と行く事になってる。だからまぁ事前に決めても問題ない。ただ生憎だが俺はやめておくぜ。ここをすぐに出たいってわけじゃねーしな。そもそもここの環境は悪いわけじゃない。寧ろ待遇は良い方だ」

「そっか……」

「そう悲しい顔すんなよ。ちょうどそこに────」

 

 ドッピンはエボの後ろの方に視線を向ける。

 エボが振り向くと、そこには壁を背に腕を組むコジョフーの姿があった。

 

「あの女は相当な実力者だ。よく依頼受けてっから、あいつが今断ろうがいずれ当たるだろうさ」

「…………」

「と、話を戻すぜ。ルールその2だ。誰も助けちゃくれない」

「え?」

「看守達は俺たちを助けるなんてことしてくれねー。死んだら死んだ。それで終いだ」

「それって2人のみの場合とか、相方が死んでしまったら1人なるよね?その場合はどうなるの?」

「不審な動きをしたら回収される。それ以外の場合は基本的にほったらかしだ。大体その状況の時なんて、死が目の前に迫って来ている最悪な状態だろうからよ」

「……僕たちをなんだと思ってるんだ」

「悪事を働いた分、危険な依頼を受けて、文字通り死ぬ気で社会貢献してくださいってわけ」

 

 僕の罪は「殺人」だ。

 記憶がないにしても、これが本当であるなら、僕の犯した罪は一生掛けても償えないだろう。

 でも、僕以外の人はどうだ?

 ここの階層はLevel1。軽犯罪者も多く収監されているはず。こんなに危険な依頼を受けて、報酬はあの莫大な刑期が少し縮むだけ?死と隣り合わせなのに?

 あまりにもやっている事が鬼畜だ。

 

「ふざけてる……」

「………ルールその3。これが最後だ。依頼主とは会えない。会わせてくれない」

「依頼主にすら会えないんだ」

「人質に取られたら厄介だからな。俺たちみたいなのは黙って依頼をこなしてやって事だ───とまぁ、ルールつってもこんなもんだ。他については外に出て見た方がわかりやすい」

「ありがとう、ドッピン」

「いいって事よ。それじゃあ明日は頑張れよ……必ず生きて戻ってこい────」

 

 

 *****

 

 

「────あの依頼を……」

「はっ!!!!!!!」

「!!!!!!???」

 

 ウワンソラは「ねんりき」を使い、スッと、エボに依頼書を差し出す。

 依頼は選ばせてくれるわけではないのか。

 いや、多分もう1枚出そうとしてるのに間に合っていないのだ。

 

「ふぅ……」

 

 エボは諦めて1枚めの依頼を読む。

 

 依頼詳細

 誰か野菜泥棒をやっつけて!お願い!

 依頼主:ムックル

 場所:エリアA

 

 本来なら依頼主の名前、それから報酬が書かれている筈だろう。

 しかし、エボ達囚人は報酬という対価を得られない。話に聞いた刑期が減らせるのだろう。

 その詳細すらも書いていないとは、つくづく囚人は、ただのポケモンだと思われていない。

 

「もうこれで行きます。これでお願いします」

 

 エボがそう言うと、ウワンソラはぴたりと止まり、カウンターの横にあったベルを鳴らす。

 これは受注された、ということでいいのだろうか。

 

「とりあえずこれで………」

「待って」

 

 誰かに呼び止められた。

 エボは振り向く。

 

「君はぁー……」

「私は【アイリー】。あの時、後ろに居たでしょ」

 

 そこいたのはドッピンと話をしていた時、一緒に居たコジョフーである。

 

「あーあの時の!それで何か?」

「その依頼、私も同行してあげるから」

「えっ!」

 

 まさかの同行願いに、エボは思わず声が漏れた。

 

「初依頼を受けるポケモンには同行してあげてるの。変に死なれても困るしね」

「でも、いいの?」

「あなた本当に悪いポケモンじゃないみたいだし、私、悪いポケモンには声を掛けない主義」

「そ、それならお願いします……」

 

 思わず敬語になってしまうエボ。

 彼女はやはり慣れており、同じ依頼を受け、スムーズに受付カウンターの横にある入口へと足を運ぶ。

 

「ほら」

「う、うん」

 

 この入り口を含め、地上に繋がっている道はたった2つ。

 そこのエレベーターに乗る前に別部屋へ連れて行かれ、そこで退化装置とは別の、進化装置に掛けられる。

 元の姿を取り戻した2匹は地上に続くエレベーターで地上へと出る─────。

 

 

 *****

 

「ここがエリアAか……」

 

 そこは中々に発展した街だった。中央には大きな広場があり、そこを中心に色々な施設が立ち並ぶ。

 UBの危機が迫っているとは思えないほど、人々には笑顔が溢れており、街もポケモン達の声が響き、とても賑やかな雰囲気である。

 そしてエリアAは唯一の安全地帯と言われており、他にもエリアB、C、Dが存在するが、この3つのエリアに関しては凶悪なポケモンやUBが蔓延っているという話である。

 

「ここは都心部よ。目的地はもう少し先」

「………」

「なに?」

「やっぱり慣れないなーって……」

 

 紫の色味が濃いコジョンド。アイリーはちんまりとしたコジョフーの姿から、エボが見上げるほど背が高く、ほっそりとして美しい見た目に変貌してしまったのだから、驚くのも無理はない。

 

「あなたは元々ブースターだったのね」

 

 そんなエボの方はブースターの姿へ進化していた。

 だが、エボは記憶喪失中であり、この姿が本来の自分であるのかよくわからなかった。

 

「それはどうだろう?」

「退化装置でイーブイに戻されたんじゃないの?」

「ここに連れてこられた時からイーブイだったみたい」

「……それは変ね」

「変?」

「退化装置は、その名の通り本来の姿から退化させられる。例えばあなたがブースターだった場合はイーブイに戻される。だから進化装置に掛けられれば、元の姿のブースターに戻るはずよ。あなた進化装置に掛けられていたでしょ?あなたがイーブイのままであったのなら、力は元に戻ってもイーブイのままのはず」

「うーん……こんがらがってきた」

「つまり本来ならあり得ないって事……ただまぁ、あなたがイーブイだから、もしかしたら装置の遺伝子情報が狂ってるのかもね」

「?????」

「話は終わり。さぁ、そろそろ野菜泥棒の所に向かうわよ」

 

 エボは頭の整理がつかないまま、アイリーに連れられて目的地を目指す。

 

 ───────。

 暫くして例の畑に着いた。そこにポケモンは1匹もいない。

 囚人とは関わる事はできない、というルールがある以上、どこか遠くでみているのだろうか。

 

「どうやって野菜泥棒を捕まえる?」

「待つしかないわね。ひっそりと」

 

 そこで2匹は畑の横にあった荷車の後ろに隠れることにした。

 こんな所で待ってて本当に来るのだろうか。

 

「流石に来ないんじゃ……」

「黙って見てて」

 

 アイリーに言われるがままに待っていると、ノコノコとマンキーが数匹畑の中へと入ってきた。

 そのマンキー達は、今がその時だと、野菜を引っこ抜いて回収し始めたのだ。

 エボはアイリーの合図でバッ、と野菜泥棒の前に現れる。

 

「な、なんだお前ら!」

「やっぱりね。あなた達みたいなお馬鹿さんは、調子に乗って、なんの警戒もなしにやって来る」

 

 どうやらアイリーは、あのちょっとした時間で周りを調べていたようで、彼らがまたすぐにここへ来る事がわかっていたようだった。

 マンキーは怒り狂う。それは現場を押さえられたからではなく、自分たちへの侮辱に対する怒りだ。

 

「女ァ!!俺たちマンキーモンキーベイビーズに喧嘩売るとはいい度胸じゃねーか!!行くぞ、兄弟マンキーモンキーベイビーズ!!」

「マンキーモンキーベイビーズの力を見せてやるぜ!!マンキーモンキーベイビーズの兄弟達よ!!」

「マンキーモンキーベイビーズの名に掛けて!!マンキーモンキーベイ──────」

 

「しつこい」と、アイリーは1匹に「はっけい」を食らわせる。

 そのまま吹っ飛んだマンキーは他マンキーをも巻き込み、まるでボーリングのピンのように弾け飛んだ。

 

「このクソアマァァァッ!!!」

「───『つばめがえし』」

 

 マンキーは「ひっかく」を繰り出したが、目の前にいたアイリーはスッ、と消える。

 次にマンキーの身体に衝撃が走った。

 腕の長く伸びた体毛が、まるでムチの様にしなり、マンキーを遥か彼方に吹き飛ばしたのだ。

 

「お、おいおいまさかこいつら……!!」

「例の囚人どもか!ちっ、やべー奴らを雇いやがって!」

 

 アイリーは次に次にマンキー達を無力化していく。

 一方のエボはやる事がなく、ただ茫然と立ち尽くすだけである。

 

「────ん?見ろよ兄弟!あそこにカモがいやがるぜ!」

「本当だ!あの野郎、女に任せて高みの見物とは恥ずかしくねーのか!」

 

 そう言ってマンキー達は、一斉にエボの元へと飛び掛かってきた。

 

「わっ!────」

 

 すぐに助けに入ろうとしたアイリーだったが、次の瞬間。

 エボの口からビーム状の炎が吹き出した。

 

「あぢゃぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ッッ!!!」

 

 これは「オーバーヒート」。ほのおタイプの中でもトップクラスの火力を誇る大技である。

 

「……力入れたらなんか出た……」

 

 エボ本人もぶっつけだったらしく、自分の出した技であるが、目を見開いて驚いた。

 突然の大技に怯んだマンキー達を、アイリーはすかさず無力化する。

 その後、マンキー達を縛り上げ、アイリーは腕に付けられたブレスレットのスイッチを押す。

 

「それは?」

「依頼が完了したっていう信号を送ったの。これで看守達が来る」

 

 脱走防止の為に付けられた機械仕掛けのブレスレット。

 一応こういう使い方はできるんだな、とエボは思う。

 

「これで刑期はどのくらい減るの」

「さぁね。帰ってみるまでわからないわ」

「そっか……」

「どう?今回は私がいたけど続けられそう?」

「……まぁ大丈夫かな」

「曖昧ね」

「今はなんとなく続けるよ。まだこんなの序の口だろ?」

「えぇ、まだこの先には本当の地獄が待ってるから」

 

 今回の依頼は無事終了。

 だが、これはまだ序章に過ぎない。

 近いうちにエボは知る事になる。この世界に起きている本当の脅威を─────。




第2話終了。
次回、奴らが出てきます(予告がそう言ってます

次回、Mission.3「UB/ウルトラビースト」

そして今回から募集を始めます!
また何かご質問や不明な点がございましたら、DMまたは【活動報告→ポケミッション質問箱】にてお願いします。
肝心の
ご応募は【活動報告→ポケミッション応募場所】にてお願いします。
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