それではどうぞご覧ください。
監獄へ戻ってきたエボは、急にドッと疲れが出て、すぐに眠ってしまった。
依頼の殆どはアイリーがやってくれていた為、エボはあまり活躍する場面がなかった。
ただ久しぶりの緊張感をその身に味わい、思った以上に疲れが出てしまったようだ。
───そして次の日、エボは目を覚ます。
「う〜ん………」
騒がしい。一体何があったのだろう。
きっとこの声はドッピンとそれから───。
「私の絵がしょぼい!!?私がこの絵でどれほど食べて来れたか、あなたにはわからないでしょうね!!」
「お前は偽物売りつけて地下に落ちてきたんだろうが!!そんな絵を誇ってんじゃねーよ!!」
「あなただってドーピングで落ちてきたんでしょうが!!この見せかけ筋肉ゴリラのなり損ないめ!!」
【ヒカソ】。ドーブルのヒカソだ。ドッピンと言い争っている。
ここにギマリが加わると、このLevel1ではそれなりに有名な3人組の出来上がりだ。
ドッピンは格闘技の試合でドーピングによる不正が見つかって地下落ち、ギマリはお分かりの通りミントのキメ過ぎ、このヒカソは凡作を傑作と言い張り、高額で売っていた事から地下へ。
それぞれ罪は違えど、波長があったらしく、更に同じ雑居房だというのだから、これでも仲は良好なようだ。
この光景も不思議なことではないらしい。いつもの事、アイリーからエボはそう聞いた。
「2人とも、おはよう」
「よう」「やぁ」「「エボ」」「さん」
同時か。仲良しだな。
エボはそう思う。
「ドッピン。早速で悪いんだけど、僕の刑期ってどれくらい減ったの?」
「お、やっぱりそこが気になるよな。ちょっと待ってろ───アイリー!刑期どんだけ減ったよ!」
ベッドの上で寝転がっていたアイリーに、ドッピンは声を掛ける。
「1年減ったわ。エボは残り999年ね」
途方もない。エボは絶望した。
ただ1日だけとかではなかったのが唯一の救いだろう。
「採取とか手伝いとか、簡単なものだと流石に1ヶ月とかそこらだけどな。今回は戦闘もあったし、まぁ結構減った方なんじゃねーの」
「やっぱり結構厳しいね」
「俺たちは囚人だからな。これが妥当だと思うしかねーよ」
「………ドッピン。また今日も聞きたいことがあるんだ」
「あ?なんだ?」
「『UB』についてなんだけど」
「あー……まぁ気になるよな。そりゃそうだ」
ドッピンは周りをキョロキョロと見渡し、それからヒカソを呼びつける。
暫く2人でコソコソと話していると、何か決まったようでドッピンは再びエボの元へ。
「よし、今回は特別だぞ?」
「特別?」
「俺が話してやってもいいが、俺よりも長くて地上にも慣れているベテランがいるんだ。そいつの方がわかりやすいと思ってよ」
「じゃあ、そのポケモンに頼むわけだね」
「ただなー……情報屋だから多分金が絡んでくるんだよ」
「僕、払うけど」
「いやいや待て。もしかしたら無償で話してくれるかもしれねー。ま、もし払う事になっても初回限定で、俺とヒカソが少しばかり出してやるよ」
「え!?いいの!?」
「騒いだ詫びだ。それじゃあ案内すっぞ────」
*****
「ここだ。このカフェにいるはずだ」
監獄内にカフェ。ホントにここは自由だなと改めてエボは思う。
カフェのドアを開けて中に入ると、カランカランとベルの音がなる。
「いらっしゃいませ〜。何名様ですか?」
「2人で。んで、今日は【ロトガー】さんはいるか?」
店員は「あちらに」と、奥の方を指す。
そこにはコーヒーを飲みながら、ゆっくりと新聞を読んでいるロトムがいた。
ドッピンとエボは彼に近づく。
接近に気づいたロトガーはコーヒーを置くと、エボを見て口を開いた。
「……あんたが最近ここに来た『エボ』だな?あんたの事は噂に聞いている。俺はロトガー、ただ此処に長居している中年だ」
「あ、どうも……エボです」
「それでドッピン。こいつを連れてきたのは、もちろん理由があってのことだろう?」
そしてドッピンは早速事情を説明すると、ロトガーはコーヒーを一口飲む。
「なんだ、そんな事か。ただ、これも情報の一種だ。あんたは払えるのか?」
「全財産はこれしか……」
なけなしの全財産。当然だ。エボは地下に切ってまだ数日、金など持っているわけがない。
ロトガーはやれやれと首を横に振ると、突然UBについて語り出した。
「あれは数十年前の事だ。『ポケット戦争』……。全てはあの日から始まった────」
*****
エリアB。ならず者が多いこの地だが、数十年前はそんな事はなかった。
一般ポケモン達も住みつき、皆平和な暮らしを築いていた。
だが、平和というものはそう長々と続かない。いずれ何処かで問題があるもの。
「…………!!」
その日、空に「穴」が開いた。
それは1つではなく、無数にできた。「穴」はガラスの様にヒビが入り、大きく広がると、中からこの世のものではない生物が次々に飛び出してきた。
UBたちの襲来───これが絶望の始まりであった。
「うわぁあぁぁぁぁぁぁッッ!!!」
悲鳴、叫び声、あらゆるポケモン達の声が辺りに響き渡る。
そこにはまだ幼きロトガー自身もいた。
ただ、彼はその幼さからか状況を理解できずにいた。空に「穴」がある。そう思っていただけだ。
そこから「ポケット戦争」と呼ばれる、ポケモンとUBの熾烈な戦いが始まった。
─────その戦争の結果、なんとか一部の領土だけは取り返した。
まだまだUBたちはこの世に蔓延っている。そこでポケモン達はエリアを決めた。
エリアA。UBと手が掛かっていない唯一の平和なエリア。
エリアB。ならず者が集まる治安の悪いエリア。エリアAでは住みにくいポケモン、貧しいポケモンや身寄りがないポケモン。そういう闇があるポケモンの逃げ場と言ってもいい。
エリアC。脱走者達が集う最悪な環境。あの監獄を抜け出したLevel4の囚人が、協力して拠点を作り、看守や依頼で来た囚人達を返り討ちにしている。
エリアD。UBの巣窟。彼らはここに追い詰められた。このエリアのみ他エリアと離れている為、今の所は問題ないが、いずれ強大な力を身につけ、再びポケモンたちを殲滅しにかかるだろう────。
*****
「────奴らは化け物だ。この戦争で何万匹の命が奪われたことか」
「UBってそんなに恐ろしい存在だったんですか……」
「当然だ」
ロトガーは口にコーヒーを含む。
「俺がエリアBで情報屋をしていた時、偶々いい情報がある、と言った輩がいてな。怪しいとは思ったが、着いて行った……しかし、案の定それは罠で、周りには俺を恨んでいた奴らがワラワラと集まってきた。俺は戦闘は得意な方じゃなかったんでな。隙を見て逃げようと思っていたら、奴らの1人が突然悲鳴を上げた。そいつを見ると─────無かったんだよ、首が」
「えっ……!」
「俺は思わず近くにあった機械類に飛び込んだ。暫くそこから様子を伺っていると、次々に奴らは首を抜かれちまって、辺りは血の海と化した。落ち着きを取り戻した後、俺はそいつを見た。そいつはこの世のものとは思えない様相。それもそのはずだ。そいつがUBだったんだからな」
「そ、そんな!じゃあロトガーさんは……」
「あぁ、しばらく機械の中でジッとしていた。あんな奴に1匹で挑んで勝てる筈もないからな。後から知ったんだが、そいつはコードネーム【SLASH】。又の名を【カミツルギ】と呼ばれている」
「カミツルギ……」
「俺がそいつを見た数日後、看守どもに捕まってここへ落ちてきた。奴らはポケモンじゃねぇ………昔は此処を出ようと色々試行錯誤してきたが、今はコツコツと依頼をこなしている。老いによるものかはたまた……」
「…………」
「今回は初回限定サービスだ。次に情報を貰う時は、それに見合う情報か対価を用意しておくことだな。それからドッピン、お前は今回のサービスは適用されない。ツケておくぞ」
ドッピンは頭を抱えて「そんなぁ!」と嘆く。
それからエボ達は部屋に戻る。
「ねぇ、アイリー」
「………なに?」
スティック上のお菓子を食べていたアイリーに、エボは声を掛ける。
「また一緒に依頼を受けてくれないかな?」
「私以外に組めるポケモンはいるはずよ。そっちに当たりなさい」
「確かに他のポケモンでもいいんだ───普通の依頼は、ね」
「………あなた何を考えているの?」
エボは真剣な表情で彼女に言った、
「───『エリアB』の依頼を受けてみたいんだ」
今回登場したのは煎緑茶さんの【ロトム/ロトガー】でした!
次回も応募キャラで 出ます……!!
次回、Mission.4「ならず者」
次回もよろしくお願いします!!