ポケットモンスター 希望のミッション   作:辰ノ命

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皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


Mission.4「ならず者」

 エボとアイリーは受付に向かう。

 そこではいつも通り何を考えているのかわからない、ヤドンのウワンソラが途轍もなく途方もなくゆっくりと資料を整理していた。

 アイリーは構わず、ウワンソラから依頼書を取ると、それをエボに渡す。

 

 依頼詳細

 誰か恋人をボッコボコにしたクソ間抜け共をやっつけて!お願い!

 依頼主:ラブカス

 場所:エリアB

 

「エリアB……か。アイリー、エリアBって結構危険な場所なんだよね?」

「えぇ、犯罪者が多いエリアだから、それなりには危険な場所。本来、あなたみたいな新参者が受ける依頼じゃないもの」

「そっか。でもアイリーがいるから大丈夫でしょ?」

「あなた自分で戦いなさいよ」

「そ、それは勿論戦うよ。冗談だからさ……」

 

 そんな会話をしていると、後ろから突然声を掛けられた。

 

「お?お前たち丁度いいな。俺様もその依頼を受けるところだったんだ」

「君は?」

「これは申し遅れた。俺様は【フォス】。気安く呼んでくれて構わないぜ」

 

 彼はクスネのフォス。話を聞くとスリの常習犯で捕まり、1000年の刑期を言い渡され、さっさと抜け出したい所なのだが、現在987年とまだまだ先が見えずに途方に暮れているとの事だ。

 

「それじゃあフォス。よろしく頼むよ」

「あぁ、よろしくな。お嬢さんもよろしくな」

 

 そう言って触れようとした瞬間───。

 バシッ。

 と、フォスの手が勢いよく弾かれる。

 

「ちくしょう!いってぇ!!」

「気安く触れないでくれる」

「ツレねぇやろうだな!くそッ!」

 

 少し不安な部分もありながら、3匹は地上に向かうのだった────。

 

 

 *****

 

 

 エリアB────。

 その治安の悪さは、エリアAと見比べると、すぐにわかってしまうほど目立つ。

 例えば今、エボの目の前でポケモン同士の殴り合いが起きている。その横を通り過ぎようとしたポケモンが、他のポケモンのカバンから財布を抜き取った。

 立て続けに起こる犯罪行為。ここがエリアB。

 エリアAの様に発展しておらず、ボロボロになった家が目立つ。ゴミもそこら辺に捨てられており、路上で倒れているポケモン達も多い。

 

「ここがエリアB……なんていうか酷いね」

「当たり前だろ。誰が言ったが『ゴミ捨て場』。エリアBなんてこんなもんだぜ」

 

 フォスはそう言った。

 その束の間、フォスの首を掴むポケモンが。

 

「ぐへぇ……!!?」

「てめぇなんだフォクスライ。誰がゴミだって?」

「ま、待てって!物の例えだ!いや、寧ろ俺様がゴミだったって事で、な!」

「あぁん!?」

 

 このポケモンはゴーリキー。今にもフォスの首をへし折りそうな雰囲気である。

 しかし、アイリーがそこに割って入り、その手をバシッと叩き、フォスを落とす。

 

「なんだ姉ちゃん。やる気か?」

「やるならやるけど」

「この……!!」

 

 一触即発。これを更にエボが割って入る。

 彼の懸命な説得により、その場は難を逃れた。

 

「はぁ……アイリー。これ逆に手を出したら刑期伸びない?」

「犯罪者相手だから伸びないわ。寧ろ監獄に送ってもらった方が、あっちの都合もいいらしいし」

「そ、そうなんだ」

「………それよりあなた、また別の姿になってるのね」

「うん、そうみたい」

 

 今回エボは"シャワーズ"になっていた。

 監獄にいる時、エボはこの現象についてドッピン達に話をしていた。

 その時、監獄に同じイーブイがいるという事を聞いたのだが、彼らが地上に出た時は、当たり前なのだが、地上にいた時の姿になる。

 ブースターならブースター。シャワーズならシャワーズ、と言った具合だ。

 しかし、エボは何故かわからないが、進化先が固定されていない。これに関しては看守達も驚きを隠せなかった様子で、機械に不具合がないか、エボが何か仕込んでいないか等の検査が始まった。

 

「んな事よりさっさと依頼終わらせようぜ。エリアBの依頼ならそこそこいい報酬が手に入るからな」

「それもそうだね」

 

 それからエボたちは指定された場所に移動する。

 そこには乱雑に積まれた木材によって作られた、よく見れば住処の様にも見える物体があった。

 中からエボ達の存在に気づいたズルッグが、睨みをきかせて次々に現れ、最後に彼らよりも二回りほど大きいズルズキンが姿を見せる。

 

「おうおうおうおう、ここが俺たち『ガッツ・オブ・ズキン』のナワバリだって事わかって来てんのか?あぁ?」

「僕たちは依頼で君たちを倒しにきたんだ」

「はぁ?…………あぁ、そういう事か。お前たちブラック・イルカマン大監獄の囚人どもだな?けっ、俺たちを捕まえにきやがったわけか」

「大人しくした方がいいぞ。アイリーが黙ってない」

 

「ちょっと」と、アイリーがツッコむ。

 彼女の実力を知らないフォスでさえ、うんうん、と同意して頷く。

 

「けっ!やっちまえッ!お前ら!」

「午前2時の踏切ぃ!!」(返事

 

 ズルッグが一斉にエボたちに襲い掛かる。

 すると、その内の1匹が宙を舞った。

 

「『ふいうち』〜!」

 

 フォスの先制攻撃が決まり、思わず驚くズルッグたち。

 その隙を見逃さず、アイリーは"トリプルアクセル"を放ち、ズルッグたちを次に次に蹴散らしていく。

 

「さすがお嬢さんだ」

「アイリーと呼んで。寒気がする」

「はいはい」

 

 続いてフォスは"ちょうはつ"を行い、敵の注意を自分に向けると、"こうそくいどう"によって敵を撹乱する。

 その素早さを利用し、周りにある木材やゴミの後ろに隠れ、その場から姿を消した。

 彼を探してウロウロとするズルッグ。油断した隙をつき、"どろぼう"で相手の道具を奪い取る。

 

「あぁ!?返せッ!」

「にひひ!んで、これをポイッとな─────」

 

 フォスがせっかく手に入った道具をその場に捨てると、彼の動きはそれまでと比較にならないほど素早くなった。

 凄まじいスピードを保ったまま、一気にお山の大将の元へと飛び込んだ。

 

「これで報酬は頂きだぜッ!!」

 

 "ハンティングダイブ"。

 あくタイプの確定急所技で、相手の急所に目掛けて頭から飛び込むフォスの大技である。

 しかし、高威力の技には欠点がある。

 

「当たるかよぉ!」

「わっ、馬鹿野郎ッ……!!?」

 

 ズボッ────。

 頭から地面に埋まってしまった。必死にもがいても頭は抜けない。

 

「ファッ!?グモォフォーーーー!!!」(はぁ!?マジで冗談だろ!!!)

 

 もがくフォスに光が訪れる。

 やっと抜けたと思いきや、それはズルズキンの手によって抜けただけ。

 つまり、大きな隙を与えた。

 

「せいっ!!」

「ぐほぉあ!?」

 

 フォスの顔面に"とびひざげり"がヒットする。

 もろに顔面に受けたフォスは地面を転がって非常に痛がる素振りを見せる。

 

「勘弁してくれよちくしょう!今ので鼻折れてないよな?………やめだやめだ!一旦引くぞ俺はよ!」

 

 そう言ってフォスはエボの後ろに隠れる。

 

「今度はお前のターンだからな!」

「も、もちろん!行くぞ!」

 

 後ろに下がっていたエボは、フォスと交代し、前線に出る。

 ズルッグたちに"ねっとう"を放ち、アイリーが自由に戦える様に隙を作る。

 

「あちぃぃぃ!?」

「アイリー!僕がズルッグたちを引き受けるから、代わりにズルズキンをお願い!」

 

 それに対してアイリーは頷くと、一気にズルズキンの元へと走る。

 ズルッグを引き受けたエボは、口から水の輪っかを放射し、"アクアリング"を発動。

 ここでズルッグたちの質量に耐えられるように身構えた。

 

「おぉ、お前アクアリング使えたのか」

「なんか適当にやったら出たんだ。とにかくここで耐え切る!」

 

 エボは口を大きく開け、真っ直ぐに"ハイドロポンプ"を放つ。

 ズルッグたちが次々に吹き飛ぶほどの威力。

 彼らも黙ってそれを受け続けるわけにいかないと思ったのか、左右に展開し、一気に攻めてきた。

 

「このっ!」

 

 "でんこうせっか"で左の敵を何とか倒すも、右の敵に対処できず"ずつき"を食らってしまう。

 幸いアクアリングを纏っている状態なので、この攻撃のみなら耐え切れる。しかし、まだ敵の数は多い。このままくらい続けたら回復が追いつかない。

 

「やっぱり1人じゃ……」

「……ったく」

「フォス……」

 

 エボの隣にフォスが並ぶ。

 

「しょうがねぇから戦線復帰だ。こうなったら何が何でも生き残ってやろうぜ」

「……うん!」

 

 エボは上空に向かって"ねっとう"を放つ。

 "ねっとう"は雨の様に降り注ぎ、ズルッグたちを次々にやけど状態にさせる。

 

「おいおい!俺様に当てないようにしろよな!」

「わかってるよ!」

「じゃあ─────よし、止めろッ!」

 

 そしてフォスが"こうそくいどう"を絡めながら、"つじぎり"でズルッグたちを制圧した。

 

「………まぁ俺様のおかげもあるが、助かったぜ。エボ」

「僕こそありがとう───あっ!アイリーは!?」

 

 アイリーの方を見ると、すでにズルズキンはフルボッコにされた後だった。

 エボとフォスは互いに顔を合わせると、改めて彼女の恐ろしさを理解し、うんうんと頷き合う。

 

「てな訳で依頼も終わったしさっさと帰ろうぜ────」

 

 ドスン、と重い何かが落ちる音がした。

 エボがそれに気づき、音がした方を向くと、そこにはズルズキンの首が無惨にも地面に転がっていた。

 

「────ッ!!?アイリー!!」

 

 突如、アイリーの背後から斬撃が飛ぶ。

 エボの叫びにより、それを間一髪でかわした。

 

「……げっ!?こいつは!?」

 

 フォスがアイリーを切りつけようとしたポケモンを見て驚いた。

 それに対し、エボはそのポケモンを知っているのかと問う。

 

「知ってるの?」

「知ってるも何も、あの野郎はここじゃ有名のならず者だよ!それはそれはもう相当な実力者だ!」

「えっ!?」

 

 フォスは続ける。

 

「ちくしょう!今日は何て日だ!あんな奴と出会っちまうなんて………戦うんじゃなくて逃げるぞ!俺は帰る!」

 

 エボはそう言うフォスを宥め、一体何者なのかと問い詰める。

 

「あいつは『ソウル』。殺しが趣味のイカれ野郎だ!」

 

 アブソルのソウルは、エリアB内で有名な殺人鬼だ。

 自分が最も気持ちよく殺せるタイミングがあり、その時に何匹ものポケモンを葬る事で快楽を覚えるイカれたポケモン。

 このソウルの討伐依頼は、以前から出ていたが誰1人として倒す事ができなかった。殺すつもりでかかろうとも、簡単に返り討ちにされてしまう。

 本来であるならエリアCに行ける囚人たちが受注するのだが、今回は運悪く、このエリアBに現れてしまったようだ。

 

「女が1匹……男が2匹。3匹も殺せるのかぁ………くくくっ、さぞ気持ちがいいだろうなぁ。高音と低音の混ざり合った悲鳴を聞くのは……」

 

 ソウルはニタリと笑みを浮かべる。

 

「構えなさいエボ。本気でやらないと殺されるわよ」

「わかってるよ!でも、こっちは3匹だ。数的には有利────ってフォスは?」

 

 エボが辺りを見渡すと、いつの間にかフォスの姿がなくなっている。

 きっとどこかに身を潜めたのだろう。

 

「肝心な時にっ……!!」

「来るわよ、エボッ!!」

 

 突如として現れた強敵。

 エボたち3匹の運命は────。




シキDXさんから【フォス】でした!これからの活躍に乞うご期待。

次回、Mission.5「斬撃」

次回もよろしくお願いします!!
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