それではどうぞご覧ください。
「くふふふっ、さぁ悲鳴を聞かせてくれ!」
「ぐぅ……!」
ソウルの動きは俊敏で、一才の隙を見せない。
エボとアイリーはその動きについていくのに必死で、技を仕掛けるタイミングが掴めないでいた。
度々繰り出される"つじぎり"を避けると、追撃で鋭い爪による"シャドークロー"が繰り出される。
「しまった……!!」
「エボッ!」
標的はエボに変わり、エボに向けて"つじぎり"が飛んできた。
これをかわす事などできず、見事に命中してしまう。
「かはっ……!!」
エボは吹き飛ばされ、粗末な家の壁に叩きつけられる。
それを見たアイリーはすぐさま応戦し、ソウルの目の前で両手を叩いて"ねこだまし"を食らわせる。怯んだ彼の胴体に、すかさず"はっけい"を叩き込む。
無防備な胴を狙われたソウルは、苦しい声を出しつつ、アイリーから距離を取った。
「……よくこの俺に一撃を与えたなぁ」
「あなたもまだまだって所ね」
「言ってくれる。だが、2度目はないッ!」
ソウルは"れいとうビーム"を繰り出す。
それをアイリーは後ろに下がって回避する。
「避けたなぁ」
そしてソウルはそのまま"れいとう"ビームを放ち続け、地面全体を凍らせてしまった。
これにより足場が滑りやすく不安定で、戦い難くなってしまったのだが、それはやった張本人も同じ事。
彼は一体何を考えているのだろうか。
「構えろ、女ッ!」
すると、ソウルは凍った地面をものともせず、アイリーに向かってきた。
ソウルの全身がバチバチと音を立てたかと思うと、アイリーに向けて"10万ボルト"が飛んできた。
それをアイリーは避けようとしたが、足に力が入らず滑ってしまい、"10万ボルト"をくらってしまった。
「うぐぅ……!!」
「まずは1匹目」
ソウルの"つじぎり"がアイリーを捉えようとしていた。
その時─────。
「やめろッッ!!」
なんとか立ち上がったエボがソウルに向けて"ハイドロポンプ"を放った。
これに対してソウルは、アイリーに気を取られて対処が遅れてしまい、ものの見事に吹き飛ばされる。
エボはすぐさまアイリーに駆け寄ると、彼女は「大丈夫」といい、すぐに体勢を整えた。
「助かったわ、エボ」
「気にしないで。それより……」
「えぇ、あのソウルとかいうアブソル、本当に厄介。私たちが束になってもこれじゃあ長期戦になればなるほど不利」
「どうする?」
「どうするも何も助けなんて来ない。だったら"生きる為"に戦うしかない」
"生きる為に"、その言葉がどうにも後ろ髪を引かれる。
どこかに隠れていたフォスは全身がムズムズとし始めた。
「やってくれたなぁ……獲物どもぉ……」
「構えて」
「うん」
ソウルはスイッチが入ったのか、先ほどよりも動きが俊敏になり、エボとアイリーに確実にダメージを与えていく。
2人掛かりだというのにも関わらず、彼は臆することなく果敢に攻めてくる。
「まだまだぁ!」
「はぁっ!」
エボの"ねっとう"に、アイリーの"はどうだん"。
2つの技が彼を捉える。が、それを受けきって"かえんほうしゃ"を繰り出してきた。
「うわぁぁぁぁぁっ!!」
「うぅ……!!」
凄まじい火力の"かえんほうしゃ"に2人は思わず声を漏らす。
ニタリと笑いながら、ソウルが近づいてくる。
「随分と耐えたが、これで終いだぁ」
ソウルは剣の様に鋭い角にエネルギーを集約させて、"つじぎり"の体勢を取った。
エボはいつでも"ハイドロポンプ"を放てる様に、ソウルの方向に身体の向きを合わせる。
緊迫した空気の中、空から何かが降ってくるのをアイリーは見た。
「うおぉぉぉぉぉぉッッ!!」
それはフォスであった。フォスはソウルの脳天に"ハンティングダイブ"を食らわせてやったのだ。
これによりソウルは思いもしなかったダメージを負うこととなり、その隙をついてエボは"ハイドロポンプ"を放ち、彼との距離を一気に離した。
「フォス!なんで!?」
「………し、仕方ねぇから戻ってきてやったんだ!もしあの野郎倒せれば刑期がもっと短くなるかもしれないからな!」
「ありがとう」
「うるせいやい!」
空気が張り付く。ソウルの瞳が黒く濁り、ギラリとした眼光でエボ達を見る。
思わず汗が噴き出るほどの殺意。どうやら本気で殺しにくるつもりだ。
「血を、血を見せろ………ここら一帯を赤く染めて─────!」
瞬間、ソウルは踏み潰されることとなった。
「バッチコイでごんす!」
"ヘビーボンバー"が炸裂。それが決まり手となり、ソウルは気を失ってしまった。
3匹がポカーンと口を開けていると、身体の大きなハリテヤマが近づいてきた。
普通のハリテヤマと違い、肌色の部分が薄茶色となっており、大きいと言っても他の個体比べて体格はやや小さめな様だ。斜め掛けの袋も常備している様で、中には大量のきのみが詰まっている。
「お前たちも敵でごんすか」
「違う!違う!僕たちは依頼でここに来た囚人だよ」
「お、という事は同士でごんすか!」
「そ、そうだね。えっと、ところで君は……?」
エボがそう聞くと、彼はニコッと笑い自己紹介をする。
「オイラは【キンタ】と名乗る者でごんす!以後お見知り置きを、でごんす!」
話を聞くと、彼も依頼を受けてエリアBに来た囚人の1人であるらしく、たまたま依頼を完了させたところ、音を聞きつけて駆けつけてくれた様だ。
「とにかく助かったよ、ありがとう」
「いやぁオイラも偶々ここにいてよかったでごんす。そうだ、体力も減っている様でごんすから、これを」
キンタは袋からオレンの実を取り出すと、エボとアイリー、それからフォスに1つずつ配る。
「これで少しは体力を回復させるでごんす!」
「きのみまで……本当にありがとう」
「気にしないで欲しいでごんす!」
3匹はもぐもぐとそれを食べると、少しではあるが身体が楽になった。
「しっかし、今のヘビーボンバーは凄かったなぁ。お前が『デブ』じゃなかったらあの威力は出せないだろ」
と、フォスが言った瞬間。
「あ"ぁ……?」
「へ?」
「今、"デブ"って言ったの誰だ」
「あ、いや……」
フォスの口からオレンの実が溢れる。
「土俵の塩にされてぇのかぁ!?あ"ぁ"!!?」
「ひぃぃぃぃぃぃぃっ!!?」
それからフォスはキンタに首を掴まれ、ブンブンと勢いよく振り回された。
「はははっ!」
「………ふん」
「見てないで助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
エリアBの依頼。色々あったが無事完了。
エボ達は監獄へと戻るのであった──────。
*****
4匹は無事帰還し、互いに健闘を讃え合い、その場を後にした。
Level1の階層なのだから、いずれまた会えるだろう。
「ふぅ……」
「浮かない顔ね」
「うん、さっきの話」
「あなたは知らないものね。『脱獄囚』の存在を」
先ほど看守達がソウルを回収しに来た時の話だ。
ソウルはエボ達を見ると、不敵に笑い、こう言った。
「────いずれぇ、お前達は最凶最悪と呼ばれる『脱獄囚』と戦う事となる。エリアCは魔境だ。俺1人に苦戦している様では、これより起こる戦争に、監獄で呑気に暮らしているお前達では勝てる未来はない」
"脱獄囚"に"戦争"。
物騒な言葉が並んでいるが、果たしてこれは誠の話なのだろうか。ほら話であってほしいものだ。
「脱獄囚に関してはまた話が出る筈よ。その時にでも聞けばいいわ」
「もし戦うとしてアイリーはどう?勝てる?」
エボが好奇心でそんな風に聞くと、アイリーはそっぽを向き。
「Level4の囚人相手なんてごめんだわ」
と、心底嫌そうな顔をして言った。
最下層に近いLevel4から、自力で逃れることのできる実力者が揃うエリアC。
エボにとってはまだ先の話。また暫く簡単な依頼をこなし、その時まで気を休めよ─────。
ハムサン堂さんから【ハリテヤマ/キンタ】でした!
次回、Mission.6「平和」
次回もよろしくお願いします!!