【悲報】PVしか知らないソシャゲ世界にTS転生して死にそう
≫1 キヴォトスの匿名さん
お知恵拝借キボンヌ
≫2 キヴォトスの匿名さん
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スレ立てしてそのまま仕事中放置してたら釣り乙とかのレスすらなしに落ちるの悲しい。
太陽が中天に差し掛かり日差しが強くなってきた頃。一旦作業を切り上げ、校庭の隅、校舎の陰に設置されたベンチに腰掛け暫くスマホで匿名掲示板を眺めていたが、何だか悲しくなってきたのでブラウザを閉じて側面のボタンを押してスリープモードに切り替えた。
「……はぁ」
6.7インチの黒い画面に映りこむ、見慣れてしまった自分の顔についため息が出る。
白く血の気が無い人工皮膚。碧眼を模したカメラアイ。軟質系放熱樹脂製のパネルを組み合わせミディアムボブのような形状をした灰色のヘアーパーツ。人形のような、不自然なまでに左右対称で整った作りものの顔。
手袋をしてスマホを握っている手だって、関節部分には繋ぎ目があり内部にはアクチュエータが入っている。それらの要素が人間ではなくなったという事実を突き付けて来ることに、スレ落ちして気分が落ち込んでいることも相まって鬱屈した気持ちになる。
「おんやあ? なんかお疲れな感じだね、サラさん」
「──ああっ、すみません。仕事中なのに」
「いやいや見るからに休憩中でしょ〜? いいっていいって、楽にしてなよ〜」
スマホを作業服のポケットに突っ込んで立ち上がると、声を掛けてきたのは桃色髪にオッドアイ、眠気が強いのか気怠げでふわふわした雰囲気の少女、小鳥遊ホシノさん。運動でもしたのか少し汗ばんだ彼女は笑いながら手のジェスチャーで座るよう促してくるのでそれに従おうとして──。
「──ッ!?」
瞬間、世界が切り取られた。
風が止まっている。舞い上げられた砂塵がその一粒まで、靡いていたホシノさんの髪がその一本に至るまで、全てが静止している。
時が止まった。そう言い表すしかない状況。音はしないし、しかも自分は動けない。誰得なんだこれ。いや邪な思惑なんてないけども。
そして。
【小鳥遊ホシノの言葉に甘えてベンチに座る】
【だが断る。仕事を切り上げ周囲のゴミを回収してから事務所に帰る】
【選択肢】が現れた。
いやほんと、選択肢としか言いようがない。ゲームのシナリオシーンとかでお馴染みのアレが視界に浮かんでいる。
上はともかく下! ジョジョかよ。まだ仕事中だよ、帰るなよ。等と色々文句は尽きないが、この世界に転生? してから数年間、事ある毎に世界は止まり自分に選択を迫ってきた。既に諦めの境地に立っている。慣れたとも言う。
とりあえず下は論外なので上を選ぶ。
そう思考すると、マウスカーソルのようなモノが現れ上の選択肢に移動し、もう一度上だと念じると光る波紋のようなエフェクトと謎の効果音と共に選択肢は消え去り、世界は動き出した。
すっと、意識する間もなく自分の身体はベンチに座りなおす。この選択肢と言うやつは、選ぶとその通りの行動をこちらの意思に関係なく実行してくる。それでこれまで何度やらかしたか。今回はまだまともな選択肢だったけど、時折凄いのが来るからな……。
過去を思い出し遠い目になっていると、ホシノさんが「お隣失礼〜、よっこいしょっ、とぉ〜」とロリロリしい見た目に似合わないおっさんじみた口調でベンチの空きスペース、自分の隣に腰を下ろす。
「ホシノさん?」
「へへぇ、おじさんも休憩〜。あ、炭酸って飲める?」
「え、ええ」
「じゃあこれね。一杯つきあってよぉ〜」
「一杯って……」
前世で仕事終わりとかに時折耳にしたフレーズに苦笑してしまう。特にホシノさんのような美少女が缶サイダーを手に言うのは違和感が凄い。
お互いプルタブを開けるとブシュッと音を立てて炭酸ガスが吹き出しシュワシュワと爽やかな音色が集音センサーを通して伝わってくる。
ホシノさんは缶を傾けるとゴクリと喉を鳴らして「かぁ〜っ! 最高だねぇ〜」ととても美味しそうに言い、自分もそれに釣られて口を付ける。
この身体は高校生程度の見た目をした女性型ロボットだが、前世のそれとは一線を画した超技術を使っているのか人としての機能が大凡揃っていた。味覚もその一つで、舌はしっかりと冷たさや甘さ、炭酸の弾ける感覚を捉え、伝えてくれる。もし五感が損なわれていたら、自分はきっと発狂していたと思う。
「美味しい。ありがとうございます」
「どーいたしまして。こっちこそ、サラさんにはお世話になってるからね〜」
「いえ、そんな……自分はこれくらいしか。ホシノさん達はもっと大変なのに」
この自分、サラ『S.A.R.A.H. (Smart Artificial Robotic Assistant for Home)』が学園都市キヴォトスで目覚めたのは数年前。イカれた武装ロボットが徘徊する廃墟から始まり、紆余曲折あってこのアビドス高等学校の近隣に『サラ・クリーンサービス』という会社を開業し、何かと物騒な日常を送っている。
その開業にあたって、色々と便宜を図ってくれたのが元生徒会長の──ホシノさん曰く今は他校に『転校』してしまったらしい──ユメさんで、自分は恩返しとして週に一度程度、このアビドス高等学校に清掃ボランティアとして来ていた。
いや、恩返しだけじゃない。進む砂漠化、過疎化、治安悪化……数々の問題を前にしても、母校を廃校の危機から救おうと日夜奮闘するホシノさん達対策委員会の助けに少しでもなりたかった。
でも。
「何度も言ってるけどさ〜、サラさん。これは私達アビドス対策委員会の問題……無償でボランティアに来てくれてる人に、更に甘えるなんて出来ないよ」
やんわりとした拒絶。ユメさんが転校して2年の間に髪が伸びて雰囲気や言動は随分ゆるくなったけど、その根っこの部分には傷付いた狼のような、かつての名残があるのを感じる。
「そう、ですか」
「そうそう、気持ちは嬉しいんだけどね〜」
にへらとゆるく弧を描く口角と眦。でも、こっちを見つめる瞳には何の熱も冷たさもなくて、ロボットである自分のカメラアイよりも無機質に感じてしまう。
【何も言わず小鳥遊ホシノをあすなろ抱きする】
【何も言わず小鳥遊ホシノを膝枕する】
ここでかよ。早いよ。
というか、え? 前世アラサーの童貞ぞ我。それが現役JKにあすなろ抱きか膝枕? いくら自分が男どころか人間ですらなくなったとしても法律に反してない? 人道に対する罪じゃない? あ、人じゃなかったわ(激ウマギャグ)。
しかし、選択肢が出てしまったらどちらかを選ばなければ時は進まない。
ここは第三者視点で想像しよう。見た目JKのロボットがロリ美少女にあすなろ抱き……なんだかアブノーマルというか『ガチ』な感じがする。まだ膝枕ならパッと見微笑ましい光景なのではなかろうか。姉と妹的な。たぶん。めいびー。
ええい、男は度胸! 人生は諦めが肝心だ!
選ぶのは下! すると世界に音が戻り、身体が勝手に動き始める。
自分が持っていた缶を脇に置くと、ホシノさんの手にある缶をそっと取り上げそれも置き、驚きからか目を見開き硬直する彼女の肩を掴んでコロンと膝の上に頭が乗るように転がす。脚部の人工皮膚はそれなりの厚さがあるから人肌くらいの柔らかさはある……筈。
「は? へ? サラ……さん?」
混乱した様子のホシノさんが口を開いたところで身体の自由が戻ってきた。自分に投げっ放しはやめてくれよ。ここからどうすんだよ。とにかく何か言い訳を。
「…………」
って口は動かないのかよ!?
間が持たない。もうどうにでもなれの精神で手袋を取ってから背を向けているホシノさんの頭を撫でる。手触りが分かるほど精密な触感センサはないので感触は分からないけれど、見るからに極上の触り心地なのは分かる。
「ん……ふへ……」
すると何という事でしょう。ホシノさんはなすがままで自分に撫でられているではないですか!!
ふと手を止めると、彼女の小さな手が血の通わない自分の手に触れてくる。まるで「やめないで」とでも言うように。可愛いがすぎる。
結局、学校のチャイムが鳴るまで謎の膝枕タイムは続いた。途中から寝息がしていたけど、どうやら相当疲れていたみたいだ。まあ、たった5人で廃校の危機を乗り越えようと奮闘してるのだから、さもありなん。
その後、気まずくなった自分はホシノさんから逃げるように仕事に戻り、敷地内や周囲の砂やゴミを集め、社用車のハーフトラックに積み込んでアビドス高等学校を後にした。
「砂、増えたな」
自治権を持つアビドス高等学校の規模縮小と機能不全によりインフラの整備が行われず、明かりの灯らない信号機と廃墟が並ぶ道路、その一面を覆う砂を履帯で巻き上げながらハーフトラックは進む。
「今の事態は悪意ある『大人』が描き、招いたもの。だから、同じ『大人』の自分には頼らない、頼りたくないのかね」
見た目は兎も角、自意識と周囲の認識からして自分は『大人』だ。ホシノさん達からすれば『敵』と同類。
信用も信頼も親愛も向けてくれているけれど、それはそれ。結局のところ自分は週一で来る清掃員に過ぎず、そんなのが力になりたいと言ったところで、という事だろう。
「空はこんなに青いのに」
ふと見上げた空に浮かぶ晄輪、そして天を貫く巨塔。かつて見たPVで特に印象に残っているシーンそのままの光景。
「
「ごめんね、サラさん。気持ちは嬉しい。本当に、嬉しい。でも、巻き込みたくないんだよ。先輩があんなことになって、もしあなたまで……そうなったら私は、耐えられない」
ホシノは遠ざかっていくハーフトラックを見つめながら言った。
サラ。
『サイボーグ』らしい彼女との出会いは2年と少し前の事。事業を立ち上げたいが資金が心許ないという理由で土地代が安いアビドスに来た彼女に、当時の生徒会長であるユメが土地やら物件やらを色々と融通したことが始まりだった。
去る者ばかりの状況での新たな住人に舞い上がっての大盤振る舞いにホシノは呆れたが、サラはそれを恩に感じて無償での清掃ボランティアを始め、ユメが『転校』したと聞いても未だに来てくれている。
教え導くことは無くとも、ただ時折そっと寄り添ってくれる。そんな木漏れ日のような大人がサラだった。
「……ふへ」
彼女の低反発な太腿と頭を撫でたひんやりとした指の感触を思い出してだらしない笑みを零すと、耳につけたインカムがザザッと音を立てる。
《──ホシノ先輩、残敵の掃討完了、ヘルメット団の撤退を確認しました》
「ん、んんっ、ありがと〜。まったく、よりによってサラさんが来てる時に仕掛けてくるなんて、運が悪いよね〜」
《ん、愚か》
《お掃除しゅーりょーです☆》
《ふんっ、歯応えのない連中ね》
次々と聞こえる対策委員会の仲間達の声。
過去に戦闘が苦手だとサラは話しており、彼女が清掃に来ている日は学校への襲撃を未然に防ぐためドローンと生徒たちの巡回を増やし索敵範囲を広げていた。
今日はその索敵網にヘルメット団が掛かった為に掃討作戦を実行。これを学校に居たサラに悟られることなく撃退している。
《こちらの被害は極軽微。ですが武装の整備、そして弾薬の補給が必要かと》
「そうだね〜、とりあえず皆戻ってきて〜。そろそろ利子の回収もあるし、色々話さないとだから」
頼れる後輩たちからの返事に笑みが浮かぶのを自覚しながらホシノは空を見上げた。
「私、頑張るからね。先輩、サラさん」
なお、アヤネがドローンで盗撮したらしい膝枕&おねだり写真を皆の前で晒され顔を真っ赤にするまであと30分。
ブルアカアニメ始まったし、去年書いて放置してたやつを供養
続きはない