キヴォトスにおいて『銃』とは、体に付属する手足と同じものであるといっても過言ではないだろう。
その辺のコンビニやデパートに行けば、銃本体に始まり『弾薬』『爆弾』『整備道具』などなどがお手軽で買える値段で売られている。
生徒が銃を所持しないのは、全裸で道端を歩いているのと同じだとどこかの生徒は言う。
そんな街には当然銃を専門に扱う店もある。
だがそこは量産が利き、安価で、購入後すぐに使用できる工場製品の銃ではなく。
各々個人に合わせたオーダーメイド品を専門に扱うガンスミスの店だ。
ここガンスミス『ガンドッグ』もその一つ。
扱いやすいハンドガンに始まり、ライフル・ショットガン・グレネードランチャーなどを背後に展示するカウンターには鋭い目つきをした黒毛の犬が座っている。
「ミレニアムの真実、偉大なる伏魔殿の偉大なるマコトさま特集……特に見れるものはないな」
月刊クロノス・インサイトと書かれた雑誌を置き、コーヒーを飲む。
開店と書かれた看板が入り口のドアで揺れる中、店の中は静かだった。
店主の動作一つ一つが店に響く中、店のドアが開く。
「店長ー戻りましたよー」
店内にやってきたのは小柄な生徒だ。
顔はまだ幼さを残しながらも目つきが少し悪い、薬莢と弾丸の形をしたヘイローが頭上に浮かんでいる。
「いやー今回も大変でしたよ戦場の薬莢とかの回収業。 これ毎回思ってるんですけどガンスミスのやる仕事ですかぁ?」
少女はガラス張りの店の外に置いてある、大きな袋が三つほど乗った荷台を指さしながらいう。
「前にも言っただろうが、それ専門のやつらもいるが場所によっては適当な仕事をしやがるやつらいるんだからよ。 ほら、さっさと荷台中にしまって汗流してこい
「はいはい、わかりましたよー」
シエルと呼ばれた少女――薬室シエルは荷台を店のガレージへと戻しに向かった。
店長は変わり者だ。
店にやってくるほかの学校生徒や企業の人がやってくるたびに、その評判を世間話として置いていく。
曰く、キヴォトス一の銃職人。
曰く、カイザーコーポレーションの最高幹部として勧誘されたことがある。
曰く、キヴォトスで店長に勝てるものはいない。
など、最後のはクロノスの生徒に聞いた話だからあまり信憑性はないから気にしないにしても、店長の腕がいいのは確かだ。
ゲヘナの風紀委員長とか、正義実現委員会の委員長とか結構な有名人がやってくるのだから間違いない。
まだこの店に住み込んではじめはとても驚いた。
寝起きで店のほうに行ったら、見覚えのある黒い制服と赤いヘイローが店長と話していたのだから。
寝巻で店のほうに出てきたことを店長に怒られ、ツルギ先輩に見られて恥ずかしかった思い出だ。
「ヒナ先輩の時は、ゲヘナ方面に清掃しに行ったときに生徒に絡まれた時に助けてもらったりしてもらったっけ」
そのせいであんまりゲヘナにいい思いではないけど、風紀委員会の人たちとは仲良くなった。
一応トリニティ生なんだけどな私……まぁ、トリニティの派閥争いとか見てたらどっちもどっちだと思うようになったけど。
「いらっしゃい」
そんなことを考えながら店番をしていたら、誰かやってきたみたいだ。
店長がお客さんを迎える声を聴きながら来客を見る。
「あれ、久しぶりー」
やってきたのは小柄な生徒の二人組、学生証を見ればアドビスの学生証を揺らしながらやってきた。
ピンク髪の生徒とその後ろに灰色の髪に生徒がついてきている。
「久しぶりだねぇシエルちゃん」
小鳥遊ホシノ。
一年ぐらい前から知り合った友人だ。
初めて会ったのはユメ先輩と一緒に来た時だったことを覚えている。
あの時と違って今は髪を伸ばして性格も柔らかくなったとおもうけど、実際のところはどうなんだろう。
少し不安だ。
「今日はどうしたの? ホシノの銃の点検日にはまだ早いと思うけど?」
ホシノが使ってる銃は店長が作ったオーダーメイド品だ。
ユメ先輩がアドビスへ入学の記念にとホシノに送ったもので、たまに店にやってきては店長に整備を依頼しに来る。
と言ってもホシノがちゃんと整備しているおかげか大きな修理とかしたことがない、店長はそのことが嬉しいようでたまに零している。
たまにやってくるお客には銃の扱いが雑だったり、整備もせず壊れたと言って持ってくる人もいるからだろう。
「今日はおじさんじゃなくて、この子のことでね」
おずおずとホシノの後ろに隠れていた子、砂狼シロコというらしい。
少し警戒の色を宿した目でこちらに会釈してくれた。
「シロコちゃんもアドビスに入学するんだ。 だから記念に銃を送ろうって思ってね」
「なるほど、引き継がれる伝統ってところか……わかった請け負うただし」
店長が一旦区切ってシロコちゃんを見た後、なぜか私に顔を向ける。
……なんだか嫌な予感がする。
「作るのはお前な? シエル」
「はい?」
間抜けな声で返事をしてしまった。
いやそうではなく。
「はぁ!? 店長が作るんじゃないんですか!?」
「馬鹿野郎! お前には技術をちゃんと教えてるだろうが、 経験もちゃんと積めってことだよ」
確かにここに住み込んでから銃の製作技術は叩き込んでもらえたけどいきなり仕事振るの!? もうちょっと段階ってあるでしょ? 。
「お? いいねぇシエルちゃんが作ってくれるの? おじさん楽しみ!」
まさかの依頼主からの援護が飛んだ。
「え、正気なのホシノ。 私まだちゃんと作ったことなんてないんだけど?」
「大丈夫だよ、私の知ってるシエルちゃんはたまに卑屈になるけど純粋に銃製作を楽しんでたじゃない? それにーー」
「それに?」
「店長さんも冗談んでこんなこと言ったりはしないと思うよ? 」
ホシノは笑顔でそう言った。
店長を見る、うわマジ顔だ。
「うーん、でもシロコちゃんの意思は? シロコちゃんはどうなの?」
私は最後の砦に縋るように声をかける。
シロコちゃんは少し考えて
「ん、ホシノ先輩が信頼してるなら、異論はない」
そう言った。
ここまで言われてしまえば覚悟ができた。
「わかった。 あなたに最高の銃を作ってあげる!」
なら、あとはやるだけだ。
彼女の手足となるものを作り上げよう。
彼女を守るものを作り上げよう
私のガンスミスとしての第一歩だ。
生徒達の銃って誰が作ってるのだろうか
ハンドメイドもあるよねって話