好きな人を手に入れるのに命を懸ける、なんてバカのする事だと思っていた。
傷ついて傷つけて、そこまでやるぐらいなら諦めて次の恋を探せばいい、と私は諦めていたんだ。
高校に進学し、彼に出会うまでは。
『プリンス・オブ・スカード』美しい顔を横断する一文字の痛ましい傷、それが私の心を射止めた。
もちろん私だけではない、同級生、友人も、そしてそれ以前からこの学園にいる先輩方……皆、彼を手に入れたいと思っていた。
故にここにいる。
「これより真愛市立第四高校!第二期ヤンデレスリングを開催する!」
ヤンデレスリング条項
・年に四回、3ヵ月に1回行われる。(例外あり)
・武器はナイフ・ハサミ・ナタ・斧・ガムテープ・ロープ等100種の中からのみ使用可能
・優勝者には恋愛対象への「告白(チャレンジ)権」が与えられ、振られた場合も試合で勝利すれば結ばれる。
・男でも参加可能
だが彼はその全てを跳ねのけた、跳ねのけ続けて来た。全てのチャレンジャーを下し続け、頂点に立ち続けて来た、そして彼は誰も見ては居なかった。
そんな彼に私は、「私を見て欲しい」と願った。
だから振り向かせる為に、私はこれから全てのライバル達を倒すのだ。
「第一試合!サンドリヨン対ザ・ワード!!」
対戦相手のザ・ワードは同級生だ、彼女の事はよく知っている。全国ヤンデレスリング中学生部門優勝者、ナタを武器とし、相手の腹を掻っ捌く……そして愛するものの首を断つフェイバリット「愛獄のギロチン(ナイス・ボート)」は世間を沸かせた恐るべき技だ。
彼女は愛した者の首をコレクションし、永遠となる事を望む異常者……簡単にいく相手ではないが……!私は負けるつもりはない。
「ははは……私に勝てる人なんて、この中には誰も居ませんよ」
「どうやらハイライトと一緒に視力もなくしたようですね」
「ほざくなぁぁーっ!」
ガンッ
ナタの一撃が私の腹部を切り裂く事はない、何故ならば!
「なにーっ……!腹筋で!?受け止めたッ!?」
「よく見ることですね!これが私の……ガラス・ハートだ!」
私は灰だった、燃え尽きて……何もかもを諦めていた灰だった。
もはや燃え上がる様な事などないと思っていた、けれど違った!
身を焦がす想いが、灰すらも溶かし、ガラス細工へと変えた!
強化防弾ガラスの心へと!
「だが所詮はガラス!どんな固いモノであっても!固いモノならばこそ砕けるのよーっ!」
ガンッガンッ!ガンッ!ガキッ!
「愛している!私は!真なる愛!」
しかしこの程度でザ・ワードに勝てるとは思ってない、震えだ、心の振動とザ・ワードの名の由来である言葉、言葉とは震えだ、振動がナタに破壊力を乗せる!
ガシャン!!
そしてついに一撃がガラスの壁を突き破り私の腹部を薄皮一枚の所をかすめ、血が垂れるが……これでいい!これを求めていた!
「おおーっと!!サンドリヨン!自らの割れたガラスをブーツで踏む!一体何を!」
「あっ……あれはっ!!!!!伝説のヤンデレ殺人奥義!」
「知っているのですか!?」
「ああ……御伽噺におけるシンデレラ、彼女のフェイバリット「ガラスの靴」は有名ですが……!それはあくまで表のイメージで作られたカバーストーリー!真なる「ガラスの靴」とは割れたガラスをブーツに纏わせて殺傷力を纏わせれる、殺人技!!」
右足を軸に踊るように、バレリーナの様に回転!加速する竜巻は真空を、カマイタチを生み出し、そして尖った強化ガラスの破片はザ・ワードのナタさえも切り裂く!
「「ブラッディ・ブロークン・エッジ・ストーム!!」」
「ああああーっ!!!」
巻き上げられたザ・ワードの服を、肌を切り裂き、ズタズタに切り裂き、血を噴出させ体力を奪う!
そしてトドメのキックで彼女をリングアウトさせた。
「おお!!!一回戦からとんでもない番狂わせです!サンドリヨン!ザ・ワードを逆にズタズタに切り裂き撃破です!!」
とはいえ今の戦いで私のガラスの技は「割れて」しまった、初戦からこの技を使ってしまった以上……後の戦いでは間違いなく対策されるだろう……まだまだ恋敵は多い……!
「フン……サンドリヨンか、果たしてあの灰被りは本当のシンデレラになれるか?」
「無理無理ネ、中か拳法の秘技の前ではあんなもの児戯にすぎないアルヨ」
「へぇ……中学の頃は随分冷めた女だと思ってたけれど随分と情熱的じゃない……」
まだ見ぬ敵達……だが私は……スカード……。
「…………」
あなたに、あなただけに振り向いてもらう!
ヤンデレスリング 一話 シンデレラはやってきた。
続きを書いてもいいのよ