ご注文はうさぎですか?を題材にした一話完結のお話を書いていこうと思っています。
基本的にはIF世界の話だと思って読んでいただきたいです。
毎週金曜日投稿を心掛けていきたいです。

1 / 1
チノ視点、2年目春のお話です。


君といれば全てが輝く

その日の朝は、よく寝付けなかったのかいつもより頭がぼーっとしていました。

 

「今日のチノちゃんちょっと顔色悪い?」

 

「気のせいですよ。それよりも早く朝ごはん食べちゃってください」

 

ココアさんにはそう返しましたが、実のところちょっと体調が優れないというか……身体がだるい感じがします。

 

「チノ、大丈夫か? 風邪でも引いたか?」

 

「いえ……そういうわけじゃないです」

 

リゼさんにまで心配されてしまいました。そんなに顔色が悪いのでしょうか?

 

「無理しないでね、チノちゃん」

 

「はい……」

 

ココアさんに心配されるなんて初めてな気がします。けど、休むわけにはいきません。だって今日は…………。

 

「ーーっ、チノちゃん!!」

 

気がつくと私は、ベッドの上にいました。あれ、どうして……。

 

「っ!! チノちゃん!! 目、覚めた!? 良かったぁ……!!」

 

ココアさんが涙ぐみながら抱きついてきます。

 

「ココアさん、苦しいです……」

 

私はココアさんを押しのけようとします。

 

「ご、ごめんチノちゃん!嬉しくてつい!」

 

そう言ってココアさんが慌てて離れます。

 

「こらココア、病人に無理させるんじゃないぞ」

 

「あぅ……ごめんなさい」

 

リゼさんに叱られるココアさん。しょんぼりとしてます。

 

「チノ、大丈夫か?」

 

そう言いながらリゼさんが水の入ったコップを手渡してきます。私はそれを受け取りながら答えます。

 

「あ、あの、私みなさんに迷惑かけたんじゃ……」

 

「まあ急に倒れたのはびっくりしたけどチノ、すごい熱あったぞ。倒れるのも無理は無い」

 

そう言ってリゼさんは私の額に手を当ててきます。冷たい手が気持ちいいです。

 

「ごめんなさい……私、バイトの途中だったのに……」

 

「そんなの全然大丈夫だよ!チノちゃんはゆっくり休んで!」

 

そう言ってココアさんが手を握ってくれます。とても暖かいです。

 

「ほら、ココア行くぞー。チノの分までしっかり働かないとだからな」

 

「はーい。チノちゃん、また来るからね!」

 

リゼさんに手を引かれてココアさんは出て行きます。そして、最後にもう一度私の手を握って「早く良くなってね」と言って部屋を出て行きました。

 

やってしまった、今日だけは体調を崩しちゃいけなかったのに……。私は自分の体調管理の甘さを恨みました。

 

コンコン、ガチャ。

 

「チノー、お見舞いに来たよー」

 

「チノちゃん、大丈夫ー?」

 

扉を開けて入ってきたのはメグさんとマヤさんでした。

 

「メグさん、マヤさん、すみませんご心配をおかけして……」

 

「もぅー、チノちゃんが倒れたってココアちゃんから聞いてビックリしたんだからねー」

 

「チノが死んじゃうー、ってココアも大袈裟だよな〜」

 

メグさんとマヤさんはそう言いながらベッド横の椅子に腰掛けます。

 

「それで具合はどう?まだしんどい?」

 

「少し……」

 

実際まだ身体はかなりだるかったのですが、2人にこれ以上心配をかけるわけにもいかなかったので少し強がってしまいます。

 

「うーん……あ、そうだ!チノちゃん、ちょっと熱測らせてねー」

 

「え?」

 

そう言ってメグさんが体温計を取り出します。そしてそのまま私の脇の下に差し込んできます。ピピピッという音がして体温計が引き抜かれます。

 

「わぁっ! 38.7度!?」

 

「全然少しじゃねーじゃんか。ちゃんと休むんだぞチノ」

 

そう言ってマヤさんが私の頭を優しく撫でてくれます。メグさんも心配そうな表情を浮かべてます。

 

「チノちゃん、お薬はちゃんと飲んだ?」

 

「はい、さっきリゼさんに……」

 

「あら? マメちゃんも来てたのね」

 

「あっ、千夜さん、シャロさん。こんにちはー」

 

「こんにちはメグちゃん、マヤちゃん。チノちゃん大丈夫?」

 

千夜さんとシャロさんまでお見舞いに来てくれました。でもあまり大勢で来てもらうのも悪い気がします……。それに……。

 

「すみません……こんなことになっちゃって。今日皆さんが集まるのは私のためじゃなかったはずなのに……」

 

「もうチノちゃん、そんなこと気にしなくていいのに」

 

メグさんがそう言ってくれますが、やっぱり申し訳ないです。

 

「チノちゃん、今日のためにはりきってたものねー」

 

「ちょっとはりきりすぎちゃったみたいね」

 

「うぅ……否定できません」

 

私は顔が熱くなるのを感じます。はりきり過ぎた結果がこれなんて……。

 

「チノちゃん、あんまり自分をせめないの」

 

「でも……」

 

「そんなに今日にこだわらなくていいのよ。こういうのは気持ちが大切なんだから。今はゆっくり休んで、元気になってからでいいのよ。その方がココアも喜ぶわ」

 

シャロさんがそう言ってくれます。でも、やっぱり申し訳ないです……。

 

「そうだチノちゃん、これお見舞いの品よ」

 

そう言って千夜さんが取り出したのは数珠繋ぎになったネギです。

 

「アンタはいつまでその民間療法信じてるのよ!」

 

「あら? ごめんなさい。こっちだったわ」

 

今度は十字架の首飾りが出てきました。

 

「ドラキュラとでも戦ってるのかよー」

 

「あ、あの……お気持ちはありがたいんですが……」

 

「チノちゃん、治るって思い込みの力はすごいのよ」

 

「千夜ぁ、チノちゃんに変なこと吹き込まないの!」

 

いつも通りな千夜さんとシャロさんの仲の良いやりとりに、少し胸があったかくなります。

 

「ねぇチノちゃん、無理してたのはやっぱりココアちゃんのため?」

 

メグさんがそう聞いてきます。

 

「……はい」

 

私がどうしても今日にこだわってたのは今日がココアさんの誕生日だったからです。ココアさんに少しでも恩返しをしようとサプライズパーティーを計画してました。「

 

やっぱりそうだったのね……でも、無理して倒れたら元も子もないわ。ココアだって悲しむわよ」

 

シャロさんがそう言ってくれます。確かにそうですが……。

 

「……はい、すみません……」

 

「チノちゃん、そんなに落ち込まないで」

 

「とりあえず今はゆっくり休んでね。また元気になったら遊ぼう?」

 

「チノちゃんは頑張りすぎなのよ。もっと私達を頼ってもいいのよ?」

 

千夜さんもそう言ってくれます。

 

「はい……」

 

「あ、チノちゃんお粥とかは食べた? まだなら私達が作るわよ?」

 

シャロさんがそう言ってくれます。ありがたいですが……。

 

「いえ、そこまでご迷惑おかけするわけには……」

 

「お姉ちゃんに任せなさーい!!」

 

「ココアさん!?」

 

急に扉を開けて入ってきたのはココアさんでした。

 

「チノちゃん体調少しは良くなった? お粥持ってきたけど食べれそうかな」

 

私はココアさんからお粥を受けとります。

 

「……ありがとうございます」

 

「ん? どうかした? 私の顔になんかついてる?」

 

「あ、いえ、その……ココアさんがお粥作れるなんて意外だなって」

 

「えへへ、そうかな。お姉ちゃんなんだから妹の看病するのは当たり前でしょ?」

 

「そのお粥作ったのは私だけどな」

 

「ちょ、リゼちゃん! それは言わないお約束だよー」

 

ココアさんはそう言ってリゼさんをポカポカと叩きます。

 

「ほら、チノちゃんあーんして」

 

ココアさんがお粥をスプーンで掬って口に運んでくれます。とても優しい味のするお粥でした。

 

「美味しいです……」

 

「えへへ、そうでしょ?」

 

そう言って私の頭をまた撫でてくれます。あったかいです……。

 

「はいこれ、薬ね」

 

そう言ってリゼさんが錠剤を渡してきます。私はそれを水と一緒に飲み込みます。するとなんだか眠くなってきました……。

 

「チノちゃん、眠い?」

 

「……はい」

 

私はそう返します。

 

「じゃあおやすみ、チノちゃん」

 

ココアさんはそう言ってまた私の頭を撫でてくれました。私はそのまま目を閉じるとすぐに眠りにつきました……。

 

私が目を覚ますと辺りはもう真っ暗になっていました。

みなさん帰ったのでしょうか……?

そう思って身体を起こしましたが、まだ少し頭がぼーっとしててうまく動けません。

するとガチャっと扉が開く音が聞こえてきました。

 

「あ、チノちゃん起きてたんだね。どう、体調は?」

 

「はい、だいぶ楽になりました」

 

私はそう言って軽く身体を動かしてみます。大丈夫そうです。

 

「良かったー。チノちゃん全然起きないから心配したんだよ」

 

ココアさんはそう言って私の頭を撫でます。

ふと、時計を見るとちょうど0時を回ったところでした。

 

「……え? あ……」

 

私はそこでやっと気づきました。

今日は……4月11日。

ココアさんの誕生日が終わってしまいました!!

 

「あ、あのココアさん……」

 

「うん?」

 

「えと、その……」

 

私は言葉が出ませんでした。

だって……私のせいで誕生日が台無しになってしまったのですから……。

熱でパーティーができなかったのはもう諦めるしかないけど、せめてココアさんに直接「おめでとう」だけは言おうと思ってたのに……。

 

「チノちゃん、サプライズパーティーの話聞いちゃった。私のためにいっぱい準備してくれてたんだよね?」

 

「ごめんなさい……」

 

私は顔を伏せてしまいます。

 

「ううん、謝らないで? チノちゃんが私のためにいっぱい頑張ってくれてたって知って、すっごく嬉しかった」

ココアさんの言葉を聞いて、私は思わず顔を上げます。

 

「私ね、チノちゃんが元気でいてくれることが一番嬉しいんだよ? だからチノちゃんは何も気にしなくていいの」

 

そう言ってココアさんはまた私の頭を撫でます。

 

「でも……せっかく準備したのに……」

 

「うーん、また今度にしようよ」

 

「……え?」

 

私が驚いてるとココアさんは私の手を取ってこう言いました。

 

「確かに誕生日は特別な日だけど、私たちが集まったらいつだって特別な日に出来るもん」

 

「ココアさん……」

 

私は思わず泣きそうになりました。でも、それをぐっと堪えます。そして笑顔でこう返します。

 

「そうですね、またみんなで集まりましょう!」

 

ーーその後、すっかり元気になった私は皆さんにお礼の電話をしました。今度はちゃんとお祝いできるように頑張ろうと思います。でも今は……ーー

 

「チノちゃーん!早くしないと遅刻しちゃうよ!」

 

「待ってくださいココアさん!」

 

この当たり前のような日々が幸せです。

だから……今日もきっと良い日になるはずです!


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。