なんてことだ、大嫌いなキャラに転生してしまった。つまりこの状況は………最高だな。   作:一味違う一味

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第22話

綺堂 薊(きどう あざみ) side

 

 

 

 

 

 

 

 『病みと希望のラビリンス☆』には不規則出現迷宮(ランダムダンジョン)という系統のダンジョンが存在する。

 

 このダンジョンはその名の通りランダムで出現するダンジョンであり、ストーリー進行を不可能にしない範囲という制作陣の微かな良心の下で出現する。

 

 逆に言えば『病みラビ』制作陣に不可能とされなければボス戦直後であっても容赦(ようしや)無く出現し、プレイヤーを殺しに来るが。

 

 さて、そんな凶悪ダンジョンが制作陣の良心という脆い枷から解き放たれた現実()はどうなるか。

 

 そんなのは簡単である。低レベルだろうが、ストーリー開始前だろうが関係なく病みを振り撒く絶望となるのだ。今の俺達に対してそうだったように。

 

 ちくしょう。ゲームクリアまで一度も出現しないこともザラにあったのに、どうして今の弱い時に来やがったんだ。

 

 これでは来紅の安全が、ハッピーエンド(理想)の実現が───

 

 

 

「いや、ココはクリア出来ない訳じゃなかった筈だ」

 

 

 

 だから絶望するには早すぎる。

 

 そうして、来紅が連れ去られてから数分後に透明な壁が消えて前に進めるようになった。

 

 大丈夫、攻略の仕方については出来る限り考えた。当てにならないゲーム知識だが、それでも最低限の参考にはなる筈だ。

 

 事実、『血封の迷宮』がそうだったのだから。

 

 

 

「「ねえ、お兄さん。こんなところで、どうしたの?」」

 

 

 

 案の定、体の自由が効かなくなった俺の前に来紅にも現れた双子が現れて声を掛けてくる。

 

 幼気(いたいけ)な見た目をしているがへど反吐(ヘド)が出るほど邪悪な笑みを浮かべているため庇護欲(ひごよく)は全く湧かない。

 

 むしろ、今すぐ実行したいほどの殺意しか湧かなかった。

 

 

 

「「道が分からないなら、お婆さんに聞きましょう。こっちに、お家があるの」」

 

 

 

 双子に導かれるまま俺の体は勝手に歩き始めた。

 

 最初は薄暗い廊下のような道を歩いていたのだが、少し歩いてから突然、景色が切り替わり辺り一面森になった。

 

 森と言っても生命溢れる深緑ではなく、深い病み(・・)色に染まっており、禍々(まがまが)しさに満ちていた。

 

 木の幹は黒く、葉は紫。空を飛ぶ鳥たちは腐敗して骨が見え隠れしている。

 

 地面には無数の十字架が突き刺さり、野ざらしの髑髏(しゃれこうべ)が散らばっていた。

 

 

 だが、この程度の禍々しさは当然だ。俺は魔女の館に向かっているのだから。

 

 ここのダンジョン名は『お菓子(かし)な魔女』。ファンシーな名前に反して毒や瘴気を操る魔女の住処である。

 

 

 

「「見えてきた。あそこが、お婆さんのお家」」

 

 

 

 考え事をしている間に到着したようだ。俺のハッピーエンド(理想)を阻む障害(ダンジョン)へと。

 

 目の前のダンジョンを一言で表すならば、お菓子の館だろう。ケーキの屋根にクッキーの壁、飴細工の窓。甘い香りに食欲を刺激される。

 

 まぁ、謎の(うごめ)く黒い液体が掛かっていなかったらの話だが。

 

 

 

「「さあ、入って。私達はお茶を用意してくるから」」

 

 

 

 双子の声に合わせて触れていない筈の扉が独りでに開く。中からは強烈な甘い臭いに混じり、腐敗臭や焦げ臭さが充満しており、とても人の住める環境ではないと断言できた。

 

 

 

 グチャ───

 

 

 

 一歩、踏み入れれば粘着(ねばつ)く感触と共に不快な音が響いた。

 

 館の中に紫色をした毒々しい(きり)が満ち始める。

 

 霧に触れた肌が痛い、目が溶けそうだ、呼吸するだけで体内が()かれたように熱い。全身が毒に侵されているのを感じる。

 

 

 これは、ここのダンジョンの特性で『戦闘時の1ターン&通常時の10歩毎に最大HPの10%ダメージ』を与える『魔女の毒霧』だ。現実となった今では『10秒毎に最大HPの10%ダメージ』となるだろう。

 

 対策をしていなければ、まともに攻略出来ないにも関わらず出現は完全ランダムという開発者の悪意から産まれた特性だ。

 

 だが、俺は固有スキル【不死の残滓(ざんし)】の効果で『10秒毎に最大HPの30%自然回復』で相殺(そうさい)されるので問題ない。身体を()かれるような激痛を除けばだが。

 

 ここで、やっと体が自由になった。早く来紅(らいく)を見つけて脱出しなければ。

 

 俺は、その一心で先へ進んだ。

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