なんてことだ、大嫌いなキャラに転生してしまった。つまりこの状況は………最高だな。   作:一味違う一味

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第23話

雁野 来紅(かりの らいく) side

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ──」

 

 

 

 来紅は走っていた。見るも悍ましいモンスター達から。

 

 腐敗した蛇や猫、焼け焦げた蜥蜴(とかげ)と選り取り見取りだが、そんな奴等は奇をてらう事もなくワンパターンに襲いかかる。

 

 圧倒的な捕食者であるモンスター達だが、意外にも彼等は遊びを入れる事なく必死に追い掛けていた。

 

 それは食欲に従った凶暴性からではない、自身を襲う苦しみと恐怖から逃れる為の行いだ。

 

 

 モンスター達は来紅と出会ってからの短い時間で学習したのだ。この人間を喰えば自身の傷が治り、徐々に朽ちていくしか無かった己を延命出来ると。

 

 魔女の呪いによって生かされているが限界がある上、永遠と感じる苦痛が和らぐのだ。さらに自分より弱いとくれば襲わない理由が無い。

 

 本来なら死んでいる筈のモンスター達は並の生物より遥に生に貪欲(どんよく)だった。

 

 

 一方、来紅も同じ程度に必死だ。

 

 霧に身体を灼かれては己の肉を喰らって傷を癒し。

 

 トラップで腹が裂け中身が(こぼ)れ落ちれば傷を癒しながら、腹から零れた()()を引き千切り囮として投げ捨てた。

 

 これでは、どちらが蜥蜴が分からないなと自嘲(じちょう)する。

 

 今の自分は傍から見れば無様を晒して無駄な足掻きをする愚か者だろう。人によっては苦痛を長引かせるだけだ、と言われるかも知れない。

 

 それでも──

 

 

 

 

「それでも、死にたくないなあ」

 

 

 

 もっと(あざみ)くんと、一緒にいたい。その為には死ぬわけにいかない。きっと大丈夫。彼は優しいから助けに来てくれるはず。

 

 自身にそう言い聞かせ必死に逃げ続ける。

 

 

 

「薊くん、私はここにいるよ。だから助けて……」

 

 

 

 いつか薊が助けに来てくれる、そう信じて。

 

 

 

 

 

 

 

綺堂 薊(きどう あざみ) side

 

 

 

 

 

 

 

「シネッ」

 

 

 

 俺が剣を振るうと出現したモンスター達は絶命していった。

 

 この剣は、来紅と露店市場を巡ってる最中に買った物だ。その名も『応報(おうほう)の剣』という。

 

 この剣には『両手剣形態と短剣形態が選べる』能力と『物理攻撃力を200%上昇』させる効果がある。念の為、この剣は短剣形態で服の中に隠して持ってきていたので助かった。

 

 俺の貧弱な火力でも三倍にすれば、それなりにダメージは出る。まあ、デメリットで『10秒毎に最大HPの5%のダメージ』があるのだが。

 

 いくら『HP自然回復』の特性で霧を含めた継続ダメージを回復出来るとは言え、痛覚はそのままなので痛みが激しい。

 

 せめてもの救いは、先程『苦痛耐性』のスキルを手に入れた事と継続ダメージは十秒毎に一括でダメージを負う訳ではなく、等分されたダメージを少しずつ食らう事だろうか。

 

 十秒毎に全てのダメージを一度に受けていたら、とても耐えられる痛みでは無い。

 

 

 

「来紅はこっちか」

 

 

 

 俺に向かって来るモンスターの中で妙に欠損が少ないヤツが目立ってきている。

 

 よく観察すると、欠損が少ないヤツは全て同じ方向から来ていた。おそらく来紅の肉を食った事が原因と思われる。

 

 見るからにアンデッドモンスターのこいつ等は本来HP回復とは無縁の存在であり、むしろダメージすら負うことになるだろう。

 

 アイテムやスキルで回復するならば、それらは基本的に神聖属性を帯びている。故に『ブラッド・スライム』がポーションでダメージを受けたように死滅する筈なのだが来紅の固有スキルは別だ。

 

 実体さえあれば人もゾンビも関係なく癒しを与える。究極の生贄は伊達ではない。

 

 

 

「だからこそ、早く助けなきゃならないんだ」

 

 

 

 俺がそうであるように、来紅も苦痛や精神的ダメージは消えないのだ。

 

 彼女をそんな目に合わせるのは、親友として、ハッピーエンド(理想)を求める者として到底看過できる事柄ではない。

 

 

 

「待ってろよ、絶対に助けてやるからな」

 

 

 

 気を引き締め直した俺は、来紅がいるであろう方向へモンスターを倒しながら進んで行った。

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