なんてことだ、大嫌いなキャラに転生してしまった。つまりこの状況は………最高だな。   作:一味違う一味

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第48話

◆メリッサ side

 

 

 

 

 

 

 

 目の前で、弟子の親友(?)がフワフワした内容の弁明をしているが、メリッサはその事を咎めるつもりはなかった。

 

 なんなら、自分に戦闘を押し付けて弟子とイチャイチャしていたのも大して怒ってはいない。

 

 他人からの侮辱程度で諦める程度の安い欲望は持っていない上、人類の異端者たる魔女ならば言われ慣れてると言ってもいい。

 

 後半の出来事に至っては感謝してるほどだ。

 

 イチャイチャ(アレ)から弟子の精神状態は目に見えて良くなっているし、なんなら怨敵の片割れであるヘンゼルを殺してくれたことで前半の事も水に流してもいいと思っている。

 

 まあ、自分で殺せなかったのは多少心残りだが。

 

 なのにメリッサが薊に怒りをぶつけるのは何が原因か。

 

 それは───

 

 

 

 なんで魔女のあたしが、こんな絶好の研究材料を相手に何も手出しができないんだい!

 

 

 

 未熟な弟子は気づいていないようだが、話し込んで十分に観察したメリッサには分かった。

 

 彼は吸血鬼であると。それも、おそらくは人間から一足飛びに知性をもつ【下級】以上のランクになった、非常に稀有なタイプだ。

 

 かろうじて人間であり、常人より遥かに長いと言っても寿命のある魔女にとって、永遠の命を持つ吸血鬼の研究材料は喉から手が出るほど欲しかった。

 

 しかし、後継者も重要である。

 

 かつて、極少数ではあったが吸血鬼を捕らえて研究した魔女もいた。しかし、誰一人として永遠の命を得ることは出来ず、近頃に至っては目新しい成果すら無い状況だ。

 

 そんな研究対象を無理に得たとしても何も成果が無いどころか、最悪は弟子と二人で自分に牙を剥くかもしれない。

 

 さすがに二人同時に相手をするのは、かなり厳しいだろう。それこそ、ヘンゼルとグレーテルの双子以上に。

 

 故にメリッサは渋々ではあるが諦める。恨めしげな視線程度は我慢してもらおう。魔女を怒らせたのだ、コレで済むなら安いものだろう。

 

 ああ、それにしても

 

 

 

「口惜しい……」

 

 

「ひっ」

 

 

 

 おっとイケない、口に出てしまったようだ。

 

 薊の歪んだ顔を見ながら表情には一切出さず、彼を面白がるメリッサだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

綺堂 薊(きどう あざみ) side

 

 

 

 

 

 

 

 いい加減、鬱陶(うっとう)しくなってきたな。

 

 これは魔女の説教の感想ではない。意識を取り戻してから、ずっと視界の端で点滅しているステータスプレートだ。

 

 こいつは呼んでもいないのに、勝手に出てきて赤い光を明滅させながら存在を主張していた。説教を聞き流しつつ、ステータスをチラリと見れば、ステータス全体ではなく固有スキル【始祖の血脈】だけが光っていた。

 

 これについては、心当たりがあるので問題ない。むしろ、他の項目に変化がなく安心したくらいだ。

 

 

 

「……これに懲りたら二度と巫山戯(ふざけ)たマネをするんじゃないよ」

 

 

「はい」

 

 

 

 全く関係ないことを考えていたら魔女の説教が終わった。俺が悪いとは言え、そこその長い時間経過したので疲れた。

 

 顔に出さないように内心で溜息を吐いた後、魔女が自身の影に隠れた来紅へ向き直ったので、ステータスを視界の中心に移動し細かい内容を確認する。

 

 

 

 ステータス

 

 ︙

 ︙

 

 固有スキル

 

 名称:【始祖の血脈】

 効果:『10秒毎に最大HPの30%自然回復』『1日に一度HPが0になった際、HPを最大まで回復する』

 

 

 

 二つ目の効果が本来の白文字から反転して黒く染まっていた。

 

 元々、点滅の心当たりはあり俺の思っていた通りの内容だったので安心する。目を通した途端、点滅が収まった。

 

 二つ目の効果(コレ)が俺の生き返ることが出来た秘密だ。

 

 一つ目の効果は来紅に話したことはあったが、二つ目の方は誰にも話したことはない。周囲に露見した場合、ゲーム時代の来紅のように誰かに拉致され切り刻まれることが目に見えていたからだ。

 

 そう、例えば魔女のような奴にな。

 

 ゲームではマッドサイエンティストだった彼女は、何故か俺を捕らえるつもりがないようで、それは喜ばしいのだが理由が分からないので逆に怖い。

 

 まあ、深く考えても分からないことを考えても仕方ない。

 

 心を読むスキルなど持っていない俺が、他人の本心を断定するなど出来るわけないのだから。

 

 そんな時だった。聞こえるはずのない声が聞こえたのは。

 

 

 

「たずケて……ぉドゥざマ……」

 

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