なんてことだ、大嫌いなキャラに転生してしまった。つまりこの状況は………最高だな。   作:一味違う一味

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お待たせしました!
第二章、のんびり開始です(`・ω・´)ゞ


第二章
第1話


綺堂 薊(きどう あざみ) side

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ行くのかい?」

 

 

「ああ」

 

 

 

 制服の袖に手を通した俺へ、メリッサが聞いてくる。今日は学園の入学式なのだ、荷物は寮へ送ってある。

 

 本当は入寮だけなら数日前から出来たのだが、何かの物語に影響されたらしい来紅(らいく)が待ち合わせしてから登校したいと言い出したのだ。

 

 俺は寮からでも待ち合わせは出来ると思ったが、来紅には「なんか違う」と言われてしまった。おそらく、寮も学園の敷地内にあるので物足りないのだと思われる。

 

 

 

「小僧、言いつけを忘れるんじゃないよ。お嬢ちゃんにも言っといてくれ」

 

 

 

 もはや耳にタコが出来るほど聞いた言葉に、手をヒラヒラ振りながら「いい加減に分かってる」と気持ちを込めながら雑に対応する。

 

 思えば、メリッサとも随分と打ち解けたものだ。

 

 最初はビジネスライクの関係を意識していたが、意外と面倒見の良いメリッサに好感を持ち気づけば年の離れた友人のようになっていた。……まあ、小僧呼びは変わらなかったが。

 

 

 

「じゃっ、行ってくる」

 

 

「はいよ。留守は任せな」

 

 

 

 この家に盗られて困る物などないが、空き巣に荒らされるのは困る。掃除や修繕費が必要になるからな。

 

 その点、メリッサが家にいれば防犯面での心配はほぼ消える。彼女が仮とは言え、自分の住処を荒らすような事はしないと、この一ヶ月弱で分かっている。むしろ、俺よりよほど大切にしていたくらいだ。

 

 なので、俺は安心して家を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あざみ)くーん、おはよー」

 

 

「おはよう、来紅(らいく)

 

 

 

 俺を見つけた来紅が元気に手を振ってくる。相変わらず元気がいい。

 

 待ち合わせ場所にしたのは、露店に行くときにも待ち合わせにつかった、公園のベンチだ。ダンジョン攻略の後も来紅と待ち合わせをするときは、いつもここにしている。

 

 

 

「それから、はいっ。これ飲んで」

 

 

 

 そう言って渡されたのは、来紅の特性ポーション(ほぼ血液)。

 

 人間時代には嫌悪感を覚えたコレも、吸血鬼になった今では貴重な栄養源。来紅様々である。

 

 

 

「いつも悪いな」

 

 

好き(・・)でやってるから大丈夫。気にしないで」

 

 

 

 来紅には吸血鬼になったことは話してある。というか目の色か変わっているので隠しようがない。

 

 当初こそ変に気を遣われたり、不気味な物を見るような目で見られるかもと少し心配していたが、来紅は一切そんなことはなく、むしろ俺の目の色を「お揃いだね」と喜んでくれた。

 

 こう考えると彼女には、心も体も助けられてばかりだ。にも関わらず、俺は何も返せていない。いつか、きちんと礼をしないとな。

 

 

 

「ああ、そういえば」

 

 

「なに?」

 

 

 

 俺は歩きながら思い出したことを来紅へ伝えるために、口を開く。

 

 別に後でもいいし、なんなら伝えなかったとしても大きな問題はないのだが、頼まれて了承したことを投げ出すというのも決まりが悪い。

 

 

 

「メリッサが『言いつけを忘れるんじゃないよ』だってさ」

 

 

「あ〜、それかぁ」

 

 

 

 言葉にこそしないものの、聞き飽きたと言わんばかりの返事があった。

 

 それはそうだろう。なにせ耳にタコが出来るほど聞いたのは俺だけではないのだ。

 

 むしろ、たまに抜けてる性格の来紅は俺以上に口を酸っぱくして言われていたので、余程うんざりしてるものと思われる。

 

 

 

「もうっ、師匠もいい加減に覚えたって言ってるのにね」

 

 

「まったくだ」

 

 

 

 メリッサの言いつけとは、彼女と会えない間に自分達でやるようにと言われている修行のことだ。

 

 俺と来紅は、それぞれ別の修行内容を指示されており、休日は俺の家に集まってメリッサに直接修行をつけてもらう予定だ。

 

 

 

「あら? すみません、大丈夫でした?」

 

 

「ああ、大丈夫だ。こっちこそ悪かった」

 

 

 

 来紅と話していたら、周囲への警戒が疎かになって曲がり角で目深にフードを被った人とぶつかってしまった。

 

 相手は平均的な身長の女性で、俺とは頭一つ分は身長差がある。

 

 若干、無理に低くしたような声で謝罪されたが、明らかにこちらも悪いので謝罪を返す。そのせいで、セリフが微妙に棒読みチックになっている。

 

 ローブから覗く制服を見るに彼女は俺達と同じ学園の生徒のようで、全寮制のダンジョン学園の生徒が、いま公園付近(ここ)にいると言うことは彼女も新入生なのだろう。

 

 詫びとしてジュースでも奢って一緒に登校するのもいいかもしれん。誰か知らんが同級生ならハッピーエンド(理想)を遂げるための一助になってくれるかもしれないからな。

 

 

 

「なぁ、俺は綺堂薊(きどうあざみ)っていうんだ。良かったら、いっ──」

 

 

 

 人脈作りも兼ねて「一緒に行かないか」と誘おうと思ったが、寸でのところで足に痛みが走り言葉につまる。

 

 見れば来紅が俺の足を踵で踏みつけていた。吸血鬼の防御力を突破するとは、やるじゃないか。

 

 いや、そうじゃなくて。

 

 

 

「何すんだよ」

 

 

「……」

 

 

 

 小声で抗議するも笑顔で同級生さんを見つめる来紅は微動だにしない。無論、踏んでる足も含めて。

 

 骨を砕き、めり込むほど押し込まれているため足の骨が再生しないのが地味に辛い。

 

 

 

「ふふっ、大丈夫そうですね。では、これで」

 

 

「あっ」

 

 

 

 苦痛を飲み込み、もう一度誘うべく口を開こうとしたが逃げられてしまった。

 

 こうなっては仕方ない。なぜか黒いオーラを纏ってる来紅と話そうと思って視線を移す途中、思わぬ物に目を引かれた。

 

 

 

「ねぇ」

 

 

 

 先程の淑やかな態度からは想像もつかないほど力強く地を蹴る彼女はローブを風に(なび)かせ、その下に有るものを顕にしていた。

 

 

 

「ねぇ」

 

 

 

 それは捲れたスカート……などではない。

 

 むしろスカートは腰に付けてある武器で一切浮いていない。

 

 故に俺が注目したのは、その武器である。

 

 

 

「ねぇったら」

 

 

 

 それは美しい翡翠色の短剣だった。

 

 白鞘に収められたソレの刀身が柄と同じ翡翠色であり、集団戦でこそ真価を発揮する国宝(・・)であると、俺は知っていた(・・・・・)

 

 

 

「もうっ(バキボキグチョ)」

 

 

 

 あの武器こそ、彼女が『病みと希望のラビリンス☆』のヒロインにして、作中トップクラスの腐れ外道たる証。

 

 その名を水雲菫(みずもすみれ)という。

 

 どうやら俺は大好きなキャラ達が笑って過ごすというハッピーエンド(理想)の重要ピースたる彼女を逃してしまったようだ。無念……

 

 まぁ、終わった事は仕方ない。今から呼び止めて、これ以上悪い意味で印象を残しても良いことはないのだから。

 

 そうして結論付け、思考の海から意識を現実に戻すと……

 

 

 

「俺の足、さっきより酷くなってないか?」

 

 

「しらない! 約束守ろうとしないから罰が当たったんじゃないの?」

 

 

 

 どう考えても事情を知ってるであろう来紅は妙に圧力のある笑顔で、そう言い切った。

 




当然ながら、来紅は親友じゃなければセーフなんて微塵も思ってません笑
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