貞操逆転世界で俺はチョロ可愛いをしてるらしい   作:黒鉄48号

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 大規模訓練回は初投稿です。


第二十二話 始まりの一歩

 ついに本格的なIS訓練が出来る――先程の豪華な模擬戦闘もあってか、合同授業の生徒は軒並み浮足立っていた。グループごとに別れた者たちは居ても立っても居られないようで、今か今かとその時を望んでいるのが気配で分かるほどだ。

 

 

「ええと、いいですかー皆さん。これから訓練機を一班一体取りに来てください。数は『打鉄(うちがね)』と『リヴァイヴ』が3機ずつです、好きなものを班で決めてくださいね」

「「はーい!」」

 

 

 いつもより5倍ぐらいしっかりした雰囲気の山田先生の説明を受け取り、全員が元気よく返事する。「早い者勝ちですからね~」という補足も聞き逃さず、迅速な話し合いが始まった。

 

 

「とりま、私ら三上くんの班じゃん。ならリヴァイヴでいいんじゃない?」

「けど、アレって確か中級者向けの機体でしょ? デュノア君の説明とかでも、なんか結構難しそうだったし……」

「それもそうかぁ……リーダー、どっちにします?」

 

 

 班の面々――大体一組の顔見知りだ――では決まらなかったのか、俺の方へ話が振られてくる。よーし、今こそ日々の特訓で身につけたものを発揮する時だ!

 

 

「そうですね。個人的に、歩行だけならどっちも同じぐらいなんですけど……午後にメンテナンス作業の訓練もやるじゃないですか」

「あ、そういえば」「忘れてた!」「初心者にやらせることかぁー!?」

「ふふ。で、その観点で言ったら個人的には打鉄がオススメですね」

 

 

 さて、今更ながら打鉄について軽く説明しておこう。日本が誇る第二世代最初期の傑作であり、もしリヴァイヴが某機動戦士のジェガンだとすれば、こっちはザクⅡみたいな感じだと思えばいい。

 世界第二位のシェアを誇ることも有名だが、それは何も拡張装備だけが理由ではない。本体設計がかなりシンプルであり、繊細な扱いを要するISの中ではわりかし楽に弄れる方なのだ。

 

 

「リヴァイヴだと保持アームやらハードポイントやらも見ないと駄目だし、それでいてパーツ点数も多めなんで。もはやパズルですよアレ」

「うっわぁ……じゃあ打鉄にしちゃおっか!」「「賛成(さんせ)ー!」」

 

 

 想像以上に皆は素直であり、結局俺の班が一番乗りで訓練機を受け取ることが出来た。少し遅れて他の班も受け取りにやってきて、意外なことに最後になったのはセシリアさんの班だった。

 

 

「ありゃ、結構遅かったじゃないセシリア。もしかして揉めた?」

「いえ、折角の機会なので両機の違いを説明していたらだいぶ長引いてしまって」

「「「あー」」」

「な、なんですかその目は!?」

 

 

 俺と鈴、ついでに一夏の反応が完璧に被る。なにぶん頭がいいからか、この人は間違いが起きないように隅々まであれこれ話したがるタチなのだ。しかも結構専門用語が多めなので、班員はきっとチンプンカンプンだっただろう。

 

 

『では、各班長は訓練機の装着を手伝ってあげてください。全員にやってもらうので、最適化(フィッティング)専用機化(パーソナライズ)は切ってあります。とりあえず、午前中は動かすところまでやってくださいねー』

 

 

 合間を見つつISのオープンチャンネルで山田先生が連絡してくる。居残り勉強の甲斐もあって、今の段階であれば分からないところはない。やはり先生様様だ。

 

 

「それじゃ、出席番号の早い順で装着と起動、あと歩行までやりましょう。最初は――」

「はいっ、私です!」

 

 

 はきっとした返事と一緒にまっすぐ手が上がる。その主は我が1組随一のしっかり者こと鷹月(たかつき)静寐(しずね)さんであり、緊張しているのか表情が少しこわばっていた。

 

 

「よ、よろしくお願いします!」

「はい、こちらこそ」

 

 

 しっかり腰を折って目線を合わせてくれる辺り、本当に生真面目な人だ。あくまで礼で止め、握手だなんだを求めてこないのも良いポイントだ。

 ……なーんて思った矢先、背後から出席簿の音と複数人の悲鳴。振り返ってみれば、どうやらシャルルに対してぐいぐい迫った不埒者ども千冬先生にドナドナされるところであった。うーん、南無三。

 

 

「……容赦ないなぁ、先生」

「きっ、きき、気を付けないとね!」

 

 

 謎に青ざめつつも鷹月さんは打鉄の外部コンソールを開き、ステータスを確認し始める。これを怠ると普通にずっこけたり、運が悪いと壁という壁に傷を残す羽目になるので大事な作業だ。

 

 

「お、手際がいいですね。鷹月さんって、もうISに乗ったことありましたっけ」

「う、うん。授業で、センサー画面の見方だけは」

「じゃ、ここは軽くで大丈夫ですね。時間過ぎたら居残りで、最悪飯抜きですから」

 

 

 そうやってあれよあれよという間に下準備は終わり、装着、起動、歩行までつつがなく進行する。若干おっかなびっくりであれど、不安定さとかは見受けられなかった。

 

 

「筋がいいですね鷹月さん。しっかり立ててますし、これなら早足もすぐに出来るようになりますよ!」

「そ、そんなに褒めたって何も出ないよ。それにこう、なんかISのお陰でやれてるように感じるというか……」

「――ふふ」

 

 

 彼女の呟きに思わず笑みが零れる。普段はクラスのムードメーカーかマスコットみたいな扱いの俺だが、こうして指導側に回るのも存外悪くないものだ。

 

「み、三上くん? 何か変なこと言っちゃったかな私!?」

「あ、ごめんなさい。アレです、オタクの性みたいなもんです」

「……そういえば、よくロボットの話とかするもんね」

「男の子ですから、好きなんですねそういうの。お陰でISも楽しめてますし」

 

 

 そうやって軽口も混ぜつつ、訓練の補助を続けていく。歩幅のコツや楽な立ち方とかのアドバイスをいくつか加え、汗を流し始めたところで鷹月さんの手番を終わりにさせる。

 そうするとISのコクピットから降りてもらわねばならぬのだが、これが意外と難しい。パーソナライズしてない機体は気軽に収納出来ないので、しゃがませた態勢に変えたうえで上手いこと抜け出さないとならないからだ。

 

 

「うぐぐ……足が抜けない!」

「あー、しゃがみ過ぎですね。中に人いなくても結構自立するんで、深めのスクワットぐらいで大丈夫ですよ」

「なるほど、ならこれで――ッ!?」

 

 

 こちらのアドバイス通りの姿勢になったその瞬間。鷹月さんはうっかり変なボタンにでも触れたのか、いきなり手足がすっぽ抜けてしまったのだ。

 コクピットから落下する彼女の姿に班員たちが息を吞む最中、俺は大慌てでその下にばばっと滑り込む。ただし焦り過ぎたのか若干位置を見誤り……ぼふん、と顔面に何か柔らかいものが押し当てられる形に。

 

 

「こっ、怖かったぁ~……って、あぁー?!」

「静寐ちゃんだいた~ん!」「いやけど事故……あれこれ事故かな?」「故意すか?」「抜け駆けは一年女子鉄の掟で車裂きよ!」

「まあまあまあまあ、皆さん落ち着いてくださいね!」

 

 

 借りてきた猫のようにフリーズしている彼女を地面に降ろしつつ、俺は何事もなかったかのように振る舞い他のメンバーを宥める。若干耳が熱いしいい匂いがまだ残っている気がしてならないが、断じてラッキースケベを堪能してなどいない!

 そう自分に言い聞かせながら、もっと冷静さを取り戻す為に一旦周りを見渡しておく。鈴の班は順調そのものといった感じで、セシリアさんの方は解説地獄なれど進みはしている様子だ。

 

 離脱者がいきなり出てたシャルルの班もなんだかんだ調子を取り戻しているが、やはり教える時の手際が良すぎるのが引っ掛かる。

 各々が機体から降りる際、しゃがみ動作を指示する前に班員の重心を一瞥して降り方を判断している所とかだ。……なんなら地面を滑ったりもしてるし、かなり経験を積んでいそうである。

 そして、実は一番気になっていたラウラさんの班なのだが……意外なことに結構悪くない雰囲気であった。

 班内でのやり取りこそ最小限であれど、彼女はきちんとリーダーとして生徒らを指導している。というか教え慣れている感じで、もしかしたら人の上に立つ経験も豊富なのだろう。

 ただその視線の動き方は妙で、班員の訓練を見ているようでいて、実際には周囲の全班を等間隔に観察……或いは値踏みしているように見えた。

 

 そんな観察を交えつつもこれ以降は大した問題は発生せず、これなら全員の訓練が時間内に終わるはず――そう思ったのも束の間。遠くの方から騒ぎ声が聞こえてきた。そこには純白のISが立っており、どうやら一夏の班でトラブルが起きてしまったようだ。

 

「んー、どうしよ……」

「……三上くん、見に行っても大丈夫だよ」

「へっ? いやでも、俺一応リーダーですし……」

「大丈夫大丈夫! 教え方すっごい上手かったから、私たちだけでも出来るって!!」

 

 

 そっちをチラチラと気にかけていたからか、班のみんなからあれやこれやと安心させようとする言葉が飛んでくる。本当に大丈夫か若干心配になるが……居残りが出ない方が後々楽になるはずだ。

 俺は自分にそう言い聞かせ、班員から離れて騒ぎの元へ駆け足で向かう最中にふとあることを思い出す。

 

 打鉄が動かしやすい理由を、鷹月さんへ上手く説明できなかったのがちょっとだけ引っかかっていたのだ。「ISのお陰でやれてる気がする」という感想は正しいようで、実はそこまで単純な話でもない。

 ここ最近のドタバタで意識から抜け落ちがちだが、この世界ではアニマトロニクス技術が数十年前に実用・商業化できているという事実がある。それらには様々な形や種類があるものの、多くはヒト型を取っている。

 そして()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()となれば、当然ISにもフィードバックされている。なんなら鬼月先輩曰く、第一世代とかはでっかいアニマトロニクスのガワと言えてしまう、とのことだ。

 打鉄はその流れを重点的に汲んでいる機体であり、『中に人を入れて自然に動かせること』を重要視した設計になっている。だから『ISのお陰』というよりかは、『人の動きをそのまま受け取る機体だから』という方が正確なのだ。

 ――――なんて説明を、さっきはなぜ思いつかなかったのか。まだまだ精進せねばと自戒しつつたどり着いた先では案の定、訓練機が見事な仁王立ちをかましている真っ最中だった。

 

 

「よ、大丈夫か?」

「ん、勇か。そっちの班は放っておいていいのか?」

「みんなすっごい優秀でさ、ありがたい限りだよ。それでどんなトラブルだ?」

 

 

 仏頂面の一夏に尋ねてみれば、どうやらしゃがみ問題のことを失念して立ったまま1人目を降ろしてしまったらしい。一夏らしからぬ失敗だが、これは結構困った事態である。

 見かねた山田先生もやってきてくれたものの、残念ながら遠隔でしゃがませたりは出来ないとのことだ。

 

 

「で、どうすればいいんですかね先生」

「んー……仕方がないので、織斑君が乗せてあげてください」

「……え?」「な、なんだと?」「えええ~っ、超ラッキー!」

 

 

 一夏、その班員だった箒さん、乗れずに困ってた2人目の女子がバラバラな反応を示す。ちなみに俺はゆk……ゲフンゲフン面倒なことになりそうな気配をひしひしと感じていた。

 

 

「だってそれが一番楽ですし。織斑君、白式で岸里さんを抱っこしてください」

「いやー、それはまず――」

「な、なぜですか!?」

 

 

 先生からの提案に箒さんが食ってかかった。まあ実際、楽なやり方が正解とは限らないのが世の中なので彼女も何か代案があるのだろう。

 

 

「ISは飛べますから、安全にコクピットへ人を運ぶのに向いてます」

「そんなことをしなくても、他にもっとこう……えーっと、そのぉ」

 

 

 いざ発言しようとした瞬間、何故か箒さんは言いよどむ。頻りに一夏の方を気にして上下に目線を動かす……もしや、踏み台にするとか考えていたのだろうか。

 実際そのやり方は確実なものかもしれんが、あまり人情的にゃよろしくなさそうだ。もし仮に一夏へ人に踏まれる趣味があったとて、織斑千冬の弟を足場に出来る命知らずはこの場にゃいないだろう。

 

 

「まあ、運びますよ俺が」

「抱っこしてあげてくださいね!」

 

 

 やたらと抱っこを強調する山田先生に対し、班員たちはにわかに欲を目に浮かべ始める。うーんこれ、下手すると全員わざと立って降りかねないんじゃねえか?

 そんな俺の不安を他所に、2人目こと岸里さんはウキウキで一夏の元へ近寄る。きっと彼女は自分がお姫様抱っこをされる未来を想像し――

 

 

「――じゃ、動かないでくださいね」

「へっ?」

 

 

 その幻想をぶち壊すかのように、白式の巨大な爪がISスーツの襟へと伸びた。俺も含めた皆が呆気に取られるのも気にせず、首根っこを掴んだ状態で白いISがちょっぴり早めに上昇していく。

 

 

「いやちょっ、織斑君!? そこは物語の王子様のように優しくぎゅっと包み込むように――」

「それじゃ時間が足りなくなりますから、ね?」

「アッハイ」

 

 

 夢見る少女の抗議は目の笑ってない微笑みによってあっさりと中断される。そしてもう片方の巨腕を足場にしつつ彼女は訓練機の打鉄に乗り込むと、ぱぱっと歩行を終えてから思いっきりしゃがみ込んでそこから降りた。

 そんな見せしめじみた一連の流れによって一夏班の訓練は結構な勢いで進んでいくものの、俺と山田先生は遠くでちょっと引いていた。

 

 

「お、織斑君って……意外とS、ですね」

「いや、あれはアルファベットで括れる属性ではないかと……」

 

 

 そうしてトラブルは無事(?)解決して、なんだかもやっている箒さんだけが残されることになった。あの顔は恐らく、一夏に抱っこされたかった欲望と、辱めを受けなかった安堵がないまぜになってるとかだろう。

 

 

「さて、最後は箒か。つっても打鉄はしょっちゅう乗ってるし、補助なしでもいいよな?」

「……あぁ、そうさせて貰おう」

 

 

 一夏の言葉にいつも通りの調子で答えながら、彼女は手慣れた動きでテキパキと準備を澄まして訓練機へと乗り込んでいく。すっと立ち上がったその佇まいは、同じ機体でありながらも随分と印象が違うものだ。

 そのまま歩行へ動作を移せば、やはりと言ってはなんだが一切の無断がない。剣道の所作――或いは修練をした侍――のような一連の振る舞いに、周囲の女子から感嘆の声が漏れ出す。

 

 

「か、かっこいい……」「つうかやっぱり大きすぎない?」「太ももが2世帯住宅なんだよねもはや」「デカパイがまるで揺れてない……!」

「……まだ、訓練中ですからね?」

「「「スイヤセンッ‼」」」

 

 

 幼馴染のことを好き勝手言われたせいか、一夏の言葉はいつにも増して毒が混じっている様子だ。

 まあ実際、あいつの中だと箒さんの評価順位は普通に最上位ではある。真面目で清廉、若干ぶっきらぼうではあれど転校生活を経たうえであれば許容範囲。そして何より、鈴とかと違ってマジで滅多にセクハラをしでかさないというのが大きいだろう。

 

 

「いやー、武器なしでも様になるもんだなぁ……ちなみに山田先生的にはどうです?」

「んーっと……打鉄らしくはありますが、ちょっと惜しい部分は多いですね」

「と、言いますと」

 

 

 意外な評価に思わず尋ねると、先生はぐっと腕を寄せて考え始めた。むにゅうと聞こえてきそうな双丘の潰れ具合から咄嗟に視線を逸らしつつ、俺は彼女の講評だけに耳を傾ける。

 

 

「一見するとしの――箒さんは機体を使いこなしている風ですが、むしろその逆です」

「逆?」

「そうですね……例えばあちらのデュノア君は、PICによる慣性移動を多用して細かい移動をしていますよね。ですがこっちの場合、PICは最低限でほぼ人力動作です」

「…………ふむ」

 

 

 その言葉を念頭に置いたうえで箒さんの動きをじっと見つめ、特に丸太の如き太ももの動きに着目してみれば。ISに乗ってるにしては筋肉の収縮頻度が多く、ともすれば微調整を異様なまでに繰り返している感じであった。

 

 

「箒さんのIS適性はC――具体的に言えば、人体に存在しないPICや推進器の使用が苦手といった感じでしょうか。今の彼女はいわば、慣れない竹馬を生まれ持った身体能力だけで無理やりに乗りこなしているような状態なんです」

「……それであの動きが出来てるの、おかしくないです?」

「私もちょっとビックリしてます」

 

 

 周囲に聞こえないように耳打ちされる解説と実際の訓練風景に、俺は内心で脱帽する。思い返してみれば、日々の訓練でも彼女はあまり地面から離れようとしなかった。

 偏に打鉄の推進器の位置関係でそうしているだけかと思っていたが、むしろアレは箒さんなりの戦略だったのだろう。……というか、実質ハンデありで一夏や鈴に食らいつける素のスペックが末恐ろしいまであるな。

 

 

 さて、そんな風に考えている部外者を他所に彼女は一連の訓練を恙なく終えた。素早くしゃがんで地面に降りれば、たわわな双丘がその弩級の質量を喧伝するかのように重く揺れる。

 その姿に数多の女子――言わずもがな鈴も含まれる――が歯軋りする最中、一夏が朗らかな笑顔を浮かべて彼女に話しかけた。

 

 

「流石だな箒。今まで見てきた中で一番上手だったぞ」

「そ、そそ、そうか! ならばこれまでの特訓は無駄ではなかったのだな、うん!!」

 

 

 照れを誤魔化すように咳払いした彼女は、何かを思い出したかのように一夏へと近づきぼそりと耳打ちした。彼は少し目を丸くしてから「……了解」と短く頷く。それ以上の説明は何もなかったが、まあ後で分かることだろう。

 そんなコッテコテのラブコメ波動にクラス全体へ甘ったるい空気が蔓延する最中、不意に力強い拍手の音が鳴り響いた。その主たる織斑先生は数人のゲッソリした女子生徒を引き連れながら、ビシッと決めた雰囲気で声を張り上げる。

 

 

「では、午前の演習はここまで。全員時間内に終えられたようでなによりだが、次からはトラブルを減らすように心掛けろ。午後は今日使った訓練機を整備するので、各人格納庫に班別集合すること。専用機持ちは自機も見るように。では、格納出来た者から解散!」

 

 

 告げられた連絡事項に全員が笑顔を浮かべるも、「格納は専用カートを生身で利用すること」と付け加えられた一言によって一瞬で悲鳴に塗替えられた。

 何せそのカート、恐ろしいことに動力などという生易しいものは一切ついてないのだ。強いて言えば動力「人」であり、この世界の女子ですら数人がかりで顔を真っ赤にするレベルである。

 

 

「ま、これも授業の一環か。皆さーん、頑張ってさっさと運んで早く昼飯しましょうよ!」

「勿論! ……って、まさか三上君も運ぶつもり!?」

「そりゃそうですよ。なんせリーダーなんですから、1人指示役で楽するなんざ性に合いません」

 

 

 心配そうに見つめてくる鷹月さん達にそう返しつつ、打鉄が載せられたカートの持ち手にぐっと触れれば。伝わってくる質量にちょっとだけ、某デカ盛り喫茶店のデザートぐらいの不安を俺は覚える。

 そのままぐぬぬと全力で押すこと30秒。スーツ越しでも掌が白くなるのが分かる程に頑張ってみるも、進んだ距離は親指の半分にも満たないものだった。

 

 

「あー、三上君……その、ほらさ? 適材適所って言うし、運ぶのは私たちが担当するよ」

「…………はい」

 

 

 彼女らの親切かつ合理的な申し出を受け入れ、俺はトボトボとカートの数歩後ろにつく羽目に。というか、これならあっちのシャルルみたいに最初から運んでもらう側に回った方が、こんなダサい姿を晒さずに済んだじゃないか。

 そんな鬱屈をどうにか飲み込んで、適宜指示を出しつつ訓練機を仕舞い終える。ちなみに最初におわらせたのは怪力の箒さんを抱える一夏班だった。

 次いでシャルル(新たな男子)にいいとこを見せようと奮起するデュノア班で、少し遅れて俺らの班。残りの3つの班は大体同じぐらいのタイミングで作業が終わったようだった。

 

 

「まっさか、あんな重いとはな……マジで筋力が欲しい」

「おーい、勇。なにしょんぼりしてるんだ?」

「ん、一夏か……いいよなぁ、お前は。鈴と同じぐらいにはパワーがあって」

「おいおい、そんな卑屈になるなよ。むしろそっちの班は一発で収納出来てたじゃねえか。お前の指示のおかげだろ?」

 

 

 彼は肩を落とす俺を励ますようにあれこれと言ってくれるが、それじゃ肉体格差はどうにもならんのだ。なんならむしろ、同じ背丈なれどカート押しに参加してたラウラさんを見ててちょっと内心辛いまである。

 

 

「織斑君、三上君、お疲れ様……って、どうしてそんな濡れた犬みたいな顔してるの?」

「あぁ、デュノアか。いやな、勇は稀によくこうなるんだ。女子と男子で色々違って当然なのにな」

「……そう、だね」

 

 

 さも当然のように一夏が言い放った台詞に対して、何故かシャルルは一瞬ギクッと動きを固めた。とはいえ今の俺にゃそれを訝しむ余裕はおろか、彼の顔を見ようとする気力すら沸いてこない。

 

 

「まあ、いいや。デュノア、さっさと着替えに行こうぜ。俺たちはまたアリーナの更衣室まで行かないといけないしよ」

「え、ええっと……僕はちょっと機体の微調整をしてから行くよ。時間がかかるかもしれないから、待ってなくていいからね」

「ん? いや別に、待つのは平気だぞ。勇だ鈴だで待つのには慣れ――」

「い、いいからいいから! 僕が平気じゃないし、あと三上君このままだとずっとここにいそうだから! ね?」

「お、おう。なら、後で屋上に集合な。箒が用事あるっていうんで、ついでに他の奴らも集めたくてよ」

 

 

 妙な気迫を放つ青年に押され、一夏はそう言い残すと俺の手を引っ張って更衣室に向かう。それにつられて歩いていくも……グラウンドに残ったシャルルの、やけに必死な表情がどうにも目から離れないのであった。




 今回の話を書くにあたってISのモブ生徒とかを調べ直してみたんですが、どの子も本当に可愛いんですよね~。キャラの立ってることもなんと多いことか。

 感想・評価、あとはここすきとかをしてくださると筆がだいぶ進みます!!

ムフフなif、読みたいですか?

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