スロット形式で投票結果が発表された。リールが回転を始め、やがて勢いが衰えた時、モノファニーの柄が揃った。
「はーい! 投票の結果、クロはモノファニーとなりました! おめでとう! 大正解です!!」
モノファニーが犯人だったことに困惑する者は少なかった。動機は十分だったし、実行可能な存在の中では順当な結果だったからだ。問題はそっちではない。
「おい、天海。聞かせろ。なんで、テメーは最原を罠に掛けようとしたんだ?」
普段は快活で人柄も良い百田が苛立ちを見せながら、天海を問い詰めていた。当の本人はと言えば、涼し気な顔をしていたが。
「まず、確認しておきたいことがあるんっすけど。事件は起きたから、例の動機ビデオ。アレのノルマは達成したと思ってもいいんっすよね?」
「犯人に関しては不本意ですが、まぁ。認めましょう」
本当に渋々と言った具合だった。残す所はおしおき位だが、この事件に納得が行っていない者は多かった。
「とりあえず、手早くおしおきは済ませておきますね」
「いやぁああああああ! なんで、アタイが!! 天海クン! 話が違」
モノファニーは最後まで言い切ることなく、ドローンに連行された。放り込まれたステージでおしおきは始まった。
~~
『モノファニック』
船上はパニックに包まれていた。避難するモノクマ、誘導するモノクマ、喧々囂々。彼女達が乗っている船は座礁して、沈もうとしていた。
困惑するモノファニーの手を握りしめているのは死んでしまったハズのモノタロウだった。
「モノタロウ。アタイ、どうしたら……」
「ヘーキさ! オイラがなんとかするよ!」
何の根拠もない自信だが、こんな状況では不思議と頼もしく見えた。
そう、今の自分達は許されない恋をしている。身内同士での恋愛など、誰もが反対するだろう。この座礁事故は、言ってみれば天罰の様だ。
救命ボートの数は足りず、乗客たちは訳も分からないまま冷たい海に放り出されて行く。その中でモノタロウとモノファニーはお互いを励まし合っていた。
「もしも、助かったら。オイラ達は2人で過ごそう。こんな困難を乗り越えられるなら、どんな問題でもへっちゃらだい!」
なんて頼もしい言葉だろう! 周りのモノクマ達がどんどん沈んでいく。救助船は未だか、救命ボートは未だか。誰もが希望を抱いては、叶わず、呪いと共に沈んでいく。
モノファニーとモノタロウの体温も奪われつつあった。このままでは、2人共一緒に冷たい水底に沈んでしまうが、それでも一緒ならば寂しくはない。
「あ。見て!」
だが、奇跡は起きた。救命ボートがこちらに向かってやって来たのだ。夜の海と言うことで視認性も悪いが、これさえ掴めば自分達の未来はすぐ前に!
消え入りそうな命を燃やして、手を振る。ここだ! 見つけて! 声を上げる気力もないが、必死に縋る。
「よぅし。こうなったら!」
モノタロウが力を振り絞った。手を振っても見えないなら、もっと目立てばいい。彼は跳び上がった。先程まで隣にいたモノファニーを踏み台にして。
幾ら夜の海と言えど、そんなことをすれば流石に目立つ。救命ボートは彼らを見つけて、近寄って来た。
「やったー! 助かったよー!」
モノタロウは無邪気に喜んでいた。だが、隣にモノファニーの姿はない。
何故なら、彼が踏み台にしたことで冷たい水底に沈んで行ったからだ。1人、寂しく、感謝されることも無く。
~~
「なんか、露悪さえやっておけばいいと思っている気がするんだよね。趣味が悪いんじゃなくて、センスがないよ」
ヤレヤレと白銀が溜息を吐いていた。犯人を指摘する裁判は終わったが、問題はまだ何も終わっていない。
「天海君。もしも、貴方がこの事件に加担していたとすれば、今後の共同生活において、無視することのできない要素になる。魂胆を聞かせて頂戴」
東条が詰問していた。普段はクールな彼女がここまできつく問い詰めることから、どれだけ業腹かが伺えた。
他のメンバー天海からの回答を聞かなければ、納得しそうにもない。特に、ターゲットにされた最原としても。
「まず、今回の時限式のトラップを教えたのは俺っす。ちなみに動機は報復っすね。モノファニーとしても自分を襲ったモノダムが許せなかったらしいっすよ」
至極当然だった。ならば、先程の心配を考えるに例の動機ビデオのノルマをクリアする為に教唆した。と言えば、納得は出来るのだが。
「じゃあ、どうして最原を巻き込んだ?」
星の声色には怒りが滲み出ていた。モノファニーや最原を利用したことについて、思うことがあるのだろう。赤松も続いた。
「最原君を巻き込む理由がないよね。いや、むしろ。今回のトリックから考えれば、モノダムの行動が無ければ最原君が被害者になっていたよね?」
「それが目的だったからっすよ」
実にあっけらかんと言ってみせた。この男は、自分の為なら他者を犠牲にすると平然と言ってのけた。
「どうして、そんなことを? 貴方が外に出られる訳でもないのに」
「このゲームを終わらせる為っすよ。だって、これが黒の挑戦(デュエル・ノワール)の一環であると言うことは、ルールに則って行われているってことっすよね?」
東条は思い出していた。先日、天海はモノクマにしつこい位にルールを確認していた。このコロシアイ学園生活は黒の挑戦(デュエル・ノワール)も兼ねていると言うことで、校則も大量に追加されていた。
「詰まり、オマエはアレか? 運営側の人間にルール違反させて、ノーゲームにしようって思ってたんか?」
「そう言うことっす。だから、モノファニーにトリックを教えた後。モノダムにもアドバイスをしたんっすよ。『研究教室の修繕、最原君のチェックを挟まなくて大丈夫か?』って。最後に彼が庇ったのは予想外だったんっすけどね」
自分の手を汚すこと無く、運営同士をぶつかり合わせてゲームを破綻させようとする能力は、超高校級と呼ばれるだけの何かではあるのだろう。質問したモノスケは今にも殴り掛からんとしていた。
「信じられねぇ。お前、頭おかしいんじゃねぇの……?」
普段は強気な姿勢でいる入間も引いていた。彼女だけでは無く、この場にいる者達から侮蔑や懐疑的な視線を向けられている中、王馬だけは楽しそうにしていた。
「天海ちゃん、早まっちゃったね~。第1の事件を考えれば、最原ちゃんが事件に巻き込まれる可能性。って言うのに、疑問は出なかった?」
「それを鑑みて、起こしたこともあるんっすけどね。恐らく、2回連続だからほぼ確定じゃないっすかね?」
2人の間だけで通じる何かが遣り取りされていた。モノクマはそんな様子を実に楽しそうに見ていた。
「モノファニーとモノダムはどーでもいいけれど、天海君には功労賞を上げたいね~。じゃあ! 明日には次の動機を用意しておくから、楽しみにしていてね!」
ぼよよ~んとコミカルなSEと共にモノクマは裁判所から姿を消した。
このまま解散。という訳にもいかない。一度、罪を犯した奴は次も何かするかもしれない。
「天海君。どうして、貴方がこんな早まった真似をしたのかは疑問だけれど、拘束は出来ないにしても監視はさせて貰うから」
「了解っす」
現状、監禁や拘束をすると人手が取られてしまうし、彼ほどの能力があれば行動を制限するだけでも相当な労力が取られてしまうことを鑑みて、東条は『監視』という妥協をした。
事件を解決し、モノクマの動機もクリアしたというのに、一同の顔は晴れなかった。朝方から調査を始めて、昼過ぎには終わっていたが、これから何かしようという気にもなれず、全員が寮へと戻って行った。