ドローレス・アンブリッジの娘(仮) 作:どんぐりを辿ったら着く書店
主人公は生まれてすぐ両親と親族を皆殺しにされ、家族を失ってしまったちょっと可哀想な女の子ですが、すぐに母の親友であったドローレス・アンブリッジに保護されます。
アンブリッジと主人公の関係性は後見人と被後見人であり、戸籍上家族ではありません。
主人公はレイブンクローの血筋ではありますが、チートでは無く努力タイプの子……として書いていくつもりです。
錬金術と古代魔法に関心があり、よくアンブリッジの家を爆発させています。
アンブリッジの娘(仮)が行くホグワーツの物語です。
次話を書くかは小説の評判を見て決めます。
もし物語が続くとしたら、ドラコと関わって原作にも色々ちょっかいをかけたりしていく予定です。
知識ではなく学ぶ行為こそが、所有ではなくそこに至る行為こそが、最も喜びを与えてくれる。
By カール・フリードリヒ・ガウス
とある著名な数学者の言葉だが、エレナは彼の言葉に大賛成だ。何故なら、学ぶという過程の中で得た経験は、記憶し財産となった知識の大部分を占めるものであり、その大部分の苦労の経験こそが学び終えた後に最も強い快感を与えてくれるからである。エレナは学び終え、覚えた知識について考えるより、どれ程の努力をして得た知識なのかを考える方が気分が良い。覚え、記憶するとは快感を得る上でついでに着いてくるオマケ……いわば副産物に過ぎないのである。というわけで───
「ねぇ、おば様。私、ピエール・ジャンクソンの"古代魔法中級編"の初版本が欲しいわ。中古にはなってしまうけど、今度ノクターン横丁のオークションに出品されるそうなの。ねぇ、良いでしょう?これもこの国の発展の為なのよ。」
濃いピンクのジャケットに更に濃いピンクのスカートを合わせた、センスの欠けらも無い自身の後見人であるマダム───ドローレス・アンブリッジに上目遣いで頼むと、彼女はチッと舌打ちをし、こう言った。
「まあまあ、相変わらず憎らしい子ですこと。本当にソフィアにそっくりですわ。それから、その本の値段を知っていて仰っているのかしら?」
古代魔法に関する本は基本的に、どれもかなりいいお値段がする。けれど、ここで諦めてなるものか。エレナは古代魔法を学んだという経験が欲しいのだ。その経験は500ガリオン以上の価値がある。オークションなので、値段はそれ以上に膨れ上がっていくだろうが、古代魔法の書物とはそれほどまでに価値があるものなのだ。
「おば様、お願いします。古代魔法の研究については、レイブンクロー家が代々行ってきた伝統ある文化なのです。この文化を継続し、魔法界の現代の魔法に還元する……それこそがレイブンクロー家が目指す事なのです。これはいわば、魔法界の発展の為の重要なプロジェクトとも言える事なのですよ?」
エレナの小賢しい言い分にマダムは嫌そうに顔を顰めた。フンと鼻を鳴らし、苦々しげにこう続ける。
「では、一体そのオークションでの購入費は誰が支払うのです?貴方がレイブンクロー家の財産……研究費からその金額を引くというのであれば禁止する理由はありませんが、わざわざアタクシに頼んでいる時点で支払う人間はアタクシなのでしょう?でしたら、アタクシには断る権利がありますわ。」
これは正当な文句である。しかし、 それでもエレナは背筋を伸ばし、一歩も引かぬという構えで応戦した。彼女は魔法省で大臣に続く高位の役職に着いており、たかが古い本を一冊買う程度の給料は余裕で持っている。そして母や我が生家であるレイブンクロー家に大きな借りがある為、このまま駄々を捏ね続ければいずれ彼女の言う事を聞いてくれるはずだ。
「……そういえば、おば様って我がレイブンクロー家の推薦により、昇進しておりますよね。確か、契約書も本家の後継者しか開けられない金庫に入っていたはず。もしこの契約書が世間に流出したりしたら……一体どうなってしまうのでしょうねぇ?」
微笑みながらの発言だが、エレナが言った内容は単なる事実では無く、脅しであるという事は明らかだろう。ドローレスは聡明では無いが、ずる賢い女性だ。エレナの言葉の真意くらい、簡単に見抜けるはずである。
「な、何という事を!仕方ありません……その本だけを購入するという約束でしたら、購入して差し上げますわ。フンッ!」
彼女は顔を真っ赤にしてそう言うと、机をバァンと叩き立ち上がった。そしてエレナを指差しながら、こう叫んだのだ。
「ですが、エレナ!……その本だけですからね!それ以外、何も買いませんからね!分かりましたか?」
これは予想外の発言。彼女に古書を買わせるという当初の目的は、見事に果たされたのである。なんて幸運なのだろうか。まさかこんなにも、簡単に上手くいくだなんて思いもしなかった。
「はい、もちろんですわ、おば様!」
嬉しさのあまり元気よく返事をした私に、彼女は少し言い淀みながら話しだす。
「…………そう……なら、いいのですが………………でも……ああ…………アタクシが貯めた貯金が……またこんなお遊びの為に消えるだなんて……」
けれど彼女の悔しそうな、悲しそうな声と態度にエレナは思わず笑みが零れた。流石はスリザリンの卒業生なだけある。
そして後日、エレナはオークション会場で錬金術の材料の中でかなり高価な部類に入る、貴重な人魚の心臓を見つけ大興奮だった。
「おば様!あれ!あれが欲しいわ!たったの800ガリオンで買えるのよ!さあ、早く手を挙げて!」
「何を仰いますの!アタクシは無関係です!」
「もう、そんな事言わないの!ほら、お手手をあげて!」
エレナはそう言いながら、ドローレスの手を掴み勢いよく上にあげこう言った。
「800ガリオンですわ!」
「ッー!?」
この時のドローレスの顔は、一生忘れられないと後になってからエレナは語る。そうして結局彼女は、泣く泣く気貯金を手放し、人魚の心臓を落札したのだった。落札価格はなんと当時のエレナでは到底買う事の出来ない程の高値であったにも関わらずである。
「エレナー!約束と違うじゃありませんの!これは一体どういう事です?!アタクシの、アタクシの貯金を……よくもー!」
「でもおば様、人魚の心臓なんて滅多に市場に出回らないし、今回の商品は一部じゃなくて、心臓がまるまる一つなのよ?こんなにお得な事って無いわ!……それとも何?おば様はこの商品の価値が、未来の錬金術にかけられている期待が、どれほどのものなのか!魔法省の大臣付きの次官でありながら分からないって言うの?」
わざとらしく周りの観客達に聞こえるようそう言うと、彼女は悔しそうに口を開いた。
「……ッ……ゔっ……分かったわ!だから!大声で人聞きの悪い事を言うのはおやめなさい!」
こうしてエレナはドローレスを上手く丸め込み、古代魔法の古書と錬金術の貴重な材料である人魚の心臓を落札する事に成功した。何かを得るには覚悟が必要だ。そしてこうして得た過程である経験も、彼女にとってはこの上ない貴重な財産としていつまでも忘れる事は無いだろう。
これは両親と親族を虐殺されたレイブンクローの後継者と、彼女の後見人となったドローレス・アンブリッジの不思議で危険なハートフル(笑)ストーリである。
「ねぇ、おば様。私、ホグワーツになんて行きたくないわ。今からでもボーバトンに入れるようにしてよ!」
朝食に出されたコーンスープ掬いながらエレナは駄々を捏ねる。
「そうやって大騒ぎして、魔法省の役人であるアタクシを困らせるおつもりなんでしょう!」
ドローレスも負けじと言い返す。しかし、彼女は本気で嫌がっているわけでは無かった。何故なら、これはいつもの事だから。
「もう!おば様ったら、冗談よ。……でも私、ホグワーツになんて行きたくないわ……本当に行きたく無いのよ……」
エレナは急に暗い顔でそう言った。エレナはホグワーツの偉大な創始者であるロウェナ・レイブンクローの末裔であり、直系一族で唯一生存している人間だった。レイブンクロー家はヴォルデモートが死ぬ前に闇の陣営に着くようせがまれたが、母を含めた全ての親族は彼の誘いを断った。そしてその腹いせにより、レイブンクロー家の人間は酷い拷問の末全員虐殺されてしまったのである。
ホグワーツに通えば、当時闇の陣営に着いていたという元教授のセブルス・スネイプや闇の陣営に着いていた家の子供達とも会う事になる。エレナはレイブンクロー家を愛するあまり、彼らを殺した人間やその血を引く人間を毛嫌いしていた。だからこそ、ホグワーツに通いたくないというのは彼女の本心でもあったのだ。
いつもと違って暗い態度のエレナに、ドローレスは悲しげな様子でこう言った。
「……エレナ、貴方の母であるソフィアは聡明な人間でした。マグルの血が混ざったアタクシの事を教授すらも嫌う中、親友だと言ってくれた、親切な女性でした……彼女はいつの日だったか、娘をホグワーツに入れるのが夢だと話していました。だから、貴方がホグワーツに通えばきっとソフィアは喜ぶでしょうね。」
ドローレスは親友であるソフィアに少なからず好感を持っていた。そして彼女が死んだと知らされた時、ほんの少しだけ胸がチクリと傷んだ。だから今話した言葉は全て本心だ。しかし、それとは別にエレナの願いを聞けない理由もあった。その理由というのは、今からボーバトンに入学の申請を出す事は時期的に厳しいというものであった。いくら彼女が魔法省で重要なポストについていようと、だからといって何でもかんでも好き放題に決める事は出来ないのだ。しかもボーバトンは他国のアカデミーだ。イギリスであればまだしも、他国の事情について融通をきかせるなんて事は不可能である。
「エレナ……どうしてもボーバトンに通いたいのであれば、2年次に編入という形出ボーバトンに入学する事は出来ます。だからまずは、ホグワーツに一年間通ってみましょう。……ええ、我ながら良いアイデアですわ。いかがですか?エレナ。」
ドローレスはエレナを何とか説得しようと、そう提案した。エレナは嫌そうではあるが、ドローレスの言葉を何とか受け入れ、ホグワーツに入学する事を承諾した。
それから数日が経過した。ホグワーツに入学する為には、様々な入学用品を揃える必要がある。だから今日は入学用品を買う為にダイアゴン横丁へやって来た。
「まずは制服を購入しましょうか。あそこのお店に入りますよ?エレナ。」
ドローレスが指差したお店は、かの有名な"マダム・マルキンの洋装店─普段着から式服まで様々な洋服を販売しているブティックだ。
「ええ……でも私、マダム・マルキンはちょっと苦手なのよ。あの人達ってちょっと話が長すぎるわ。」
エレナは不満げにそう言った。しかしドローレスにはそんなエレナの気持ちなどお構い無しである。
「つべこべ言わない!さあ、行きますよ!」
そして2人は店内へと入った。すると、そこには2体のトルソーに着せられた、素敵なドレスが飾られていた。
「まあ!このドレス素敵ね!あっ!この70ガリオンのワンピース、とっても可愛らしいわ!ねぇ、おば様!私このワンピースが欲しいわ!」
「ええ!本当に!……って、何を言っているのですか!それにこんな高価なワンピース、必要ありません。今日は貴方がホグワーツで着る制服とローブを購入しにきただけですわ。ほら、早くマダムの元へお行きなさい。」
ドローレスの金切り声が店内に響くが、多くの客で賑わっているおかげが、悪目立ちをする事は無かった。エレナは欲しいドレスから視線を移し、仕方が無いとばかりにため息を着いた後、マダム・マルキンの方へ向かった。
「お嬢ちゃん、ホグワーツの新入生?今丁度、学用品を買っていく新入生のサイズを測っているところよ。……さあここに立って。……ふむ、なるほどね。じゃあ両手を上げて……袖に腕を通してちょうだい……」
マダム・マルキンはエレナの体にメジャーを這わせ、次々とサイズを測っていく。
「全部済んだわ。さあ、次はローブね……お嬢ちゃん、丈を合わせてあげるからちょっとじっとしていてちょうだい……そうだ、お嬢ちゃん。今年はハリー・ポッターも入学する年ね。お嬢ちゃんは会った事がある?実はね、さっきこのお店にハリー・ポッターが来たのよ。それで……」
マダム・マルキンは楽しそうにお喋りをしながら、ハリー・ポッターに会った事があると自慢気に話し始めた。聞いてもいない事をベラベラと話されて、エレナはうんざりしていた。
「さっ、次はこれを着てみてね。……ふむふむ……これは長いわ。裾や袖も直してあげるから少しじっとしていなさいね……」
そして再び彼女は杖を振り、ローブの丈や袖の長さを調整していく。そして全ての丈を合わせ終え、マダム・マルキンはエレナに調整の終わったローブを試着するように勧めた。エレナは言われた通りローブを着た。サイズはピッタリで、流石はプロといったところだ。素晴らしい出来である。
「うん、丁度良いわね。制服一緒に仕立てておくから、2時間後にここへ来てちょうだい。」
「ええ、分かりましたわ。」
マダム・マルキンの言葉にドローレスはすぐ返事を返し、エレナとドローレスは店を出た。次に向かったのはフローリシュ・アンド・ブロッツ書店だ。
「ええと、1年生が必要な教科書は……全部で8冊ですわね。エレナ、少し店主の方とお話してくるから、ここで待っていなさい。」
エレナは大人しく言われた通りにしよう……とは思わず、少し離れた本棚へと向かい本を物色する事にした。本屋なんて何時ぶりだろうかと思っていると、彼女の視界に"上級調香レシピ"というタイトルの本が目に入った。
エレナは7歳の時、始めて自身の後見人であるドローレスの香水がかなり臭い事に気付いた。その時彼女はドローレスにこう言った。
『ねぇ、なんだかおば様って腐った卵とラグレシアを混ぜて練りこんだような匂いがするわ。このままじゃ、近所の方に悪臭がするって通報されてしまいそうね。』
『なっ……なんて事を言うんですか?アタクシが使っているこの香水は100ガリオンもする高価なものなんですのよ?この価値が分からないどころか、臭いですって?なんて失礼な子なんでしょう!』
ドローレスはかなりショックを受け、失敬な事を言ったエレナにそう言い返し、高級な香水をエレナの周りに吹き付けた。
『……く、臭いわ!おば様、私にその匂いを強要するなんて最低よ!ファッジおじさんに言いつけてやる!きっとおば様は魔法省をクビになるに違いないわ!』
『なっ……なんて事を!アタクシはただ、貴方が失礼な事を言ったから躾をしただけですのに!それに、この香水はアタクシがフランスから特別に取り寄せたものでしてよ?!だから臭いなんて事はありません!』
自分が臭いかもしれないという可能性すらも否定するドローレスにエレナは失望し、とある事を決心した。
──いつか、絶対にその香水を辞めさせてやる!
そんな想いを抱き、エレナは調香の勉強を始めた。
エレナはレイブンクローの生き残りであり、唯一の次期後継者だ。そんな彼女は勿論レイブンクロー邸の秘密の書庫の鍵だって持っている。レイブンクロー邸の秘密の書庫には、様々な世には出せないような書物が保管されており、その中には魔力を込める特別な香水の生成方法について書かれた書物も保管されていた。
しかし、その香水を作るには初心者ではほぼ不可能で、多くの調香経験が必要だ。そこで彼女は簡単な初級の調香から学び、現在では中級レベルの調香を行えるまでに成長した。そして、ドローレスが気に入るような、それでいて悪臭のしない香水を調香し、彼女の香水が切れる度にプレゼントしている。
しかし、そろそろ上級の調香について学んでも良い頃だ。彼女は湧き上がる知識欲、そしてレベルの高い調香への期待に胸を馳せ、その本を手に取った。そしてこっそりレジに持っていき、こう
言った。
「すみません、この本を買いたいんですけど、先程若い店員の方と話していたドローレス・アンブリッジという女性の名前で会計に加えておいてください。彼女は後でホグワーツの教材をレジに持ってくるので。」
「かしこまりました。私の方でお預かりさせていただきます。」
気の良い若い女性店員はすぐに本を預かり、近くの羊皮紙にメモ書きを行った。
エレナはその様子を見届けてから、ドローレスに待っているように言われた店の入り口の方へと歩き始めた。それから数分後、店内にドローレスの怒号が響き渡ったのだが、それはまた別のお話。
「200ガリオンと386クヌートになります。」
「ひ、200ガリオンですってー?!これは一体どういう事なのですか……って、こんな本買った覚えはありませんよ?!エレナー!早くこちらに来なさい!!」
ついにエレナが勝手に会計に加えた調香のレシピ本がバレてしまった。たかが学校の教材なんて数ガリオンあれば買えてしまう。200ガリオンを超えたという事は、あの調香のレシピ本は100ガリオン以上した事になる。エレナはどうドローレスを丸め込むかを思案しながら、彼女の元へ向かった。