ドローレス・アンブリッジの娘(仮) 作:どんぐりを辿ったら着く書店
エレナは相変わらずエベレストよりプライドが高いし、マルフォイはエレナ曰く弱者だし、やっぱりハッフルパフ候補は優しいよねって話です。アンブリッジの叫び声もお楽しみに☆
無礼とは、強者を真似した弱者の態度である。
By エリック・ホッファー
では、アンブリッジに無礼者とよく非難されるエレナは、果たして弱者なのだろうか。この疑問を解決する為にはまず弱者の定義を定める必要がある。
エリック・ホッファーの言う弱者とは、強者の真似をして己を強く見せようとする、プライドと実力が見合っていない、自己中心的で傲慢な人間の事だ。では、自己中心的で傲慢な強者の振りをする人間を弱者と定義した場合、エレナはこの定義に当てはまるのか……結論から言うと、勿論エレナは当てはまらない。何故なら、エレナは傲慢で自己中心的な人間ではあるが、分は弁えている淑女でもある。そして確かに魔法に関しての才能もあり、才能があるという時点で、少なくとも強者の振りをする人間では無い。確かに彼女は強者なのである。故にエレナは弱者ではない。
「QED、証明完了!」
「……何を言っているのですか?!早く支度なさい!」
遂にホグワーツへ入学する日がやってきた。エレナはホグワーツへ向かう前に荷物を入学用品のリストと照らし合わせて確認していく。そして最後に追加で持っていくお気に入りの本をざっと500冊程魔法のトランクに仕舞い、荷造りは終了した。
「全く!なんでもっと早くから荷造りを始めないんですか!入学式当日に準備するなんて人間、はじめて見ましたわ。フンッ!」
ドローレスは今日も朝からかなきりを上げてエレナに文句を言う。しかし今回ばかりはエレナも何も言えずにいた。何故なら、エレナは何度もドローレスに荷造りをするように言われても、入学式当日まで教科書の一冊すらもトランクケースに仕舞っていなかったのだから。
「昨日も、一昨日も、なんなら先週の月曜日からずっと、準備は早めに終わらせるようにと言っていたのに!」
「アハハ……ごめんなさい、おば様。」
しかしそんな事を言われても、エレナからしたら本気を出せばいつだって余裕で荷造りを終える事は可能だった。だからこそ今日まで荷造りを行わなかったのだ。他人からすれば単なる言い訳だが、一応自分の非を認め謝りはしたが、エレナは全く反省をしていなかった。エレナとしては、やる気が出た時にやれば良いだけで、やる気がない時にやっても時間がかかって作業効率が悪くなるだけ、という考えを持っており、恐らく彼女はこれからもだらしのない最悪で劣悪な生活を送るのだろう。
「全く、エレナ!貴方は本当にだらしが無い……って、もうこんな時間ですわ。早く行きますよ。ほら荷物を持って、この靴に履き替えて。」
口論をしている時間はないようで、ドローレスが時計を見るとすぐに出発の時間になったようだ。エレナはドローレスの手を握り目を閉じた。そして次の瞬間には、ロンドンのキングスクロス駅に到着した。キングスクロス駅の9と4分の3番線の柱に向かって2人は歩いていくが、エレナは立ち止まり疑いの目を柱に向けていた。ホグワーツの生徒はホグワーツ特急に乗る際、このプラットフォームから汽車に乗り込む。しかし、そんな知識が欠如しているエレナは当然のように壁の向こう側を見つめるしかなかった。
「おば様……本当にこの柱の中に入れるんですか?」
「ええ、その通りです。エレナ、貴方はれっきとした魔女です。この柱に拒絶される事は無いでしょう……さあ、行きますよ。」
ドローレスは不安そうなエレナの手を引いて、柱の中に向かってゆっくりと歩き始めた。そしてエレナは柱の中に入る瞬間キツく目を閉じた。ぶつかるかもしれないという不安と柱に拒絶されるかもしれないという恐怖に押し潰されそうになるが、それでもエレナは歩みを止めなかった。
「さあ、着きましたよ。目を開けなさい、エレナ。」
「凄い……柱の中に駅があるなんで、驚きだわ。」
そこは本当に短いトンネルのようで、少し先に紅色に彩られたプラットフォームが見えた。そして2人がそのトンネルを抜け切ると、そこには小さな柵に囲まれたプラットホームがあった。
「さあ着きましたよ、エレナ。荷物は全部持ってきましたか?忘れ物はありませんか?」
アンブリッジは心配そうな顔でエレナに問い掛ける。
「ええ、おば様……多分、大丈夫よ。多分。」
特急の前では多くの新入生と家族が別れを惜しんでいる。クリスマス休暇には家に帰る事も出来るとはいえ、11歳の少年少女にとって数ヶ月間だけでも親に会えないというのはかなりのストレスのようだ。エレナも内心では不安を抱えているのか、先程までの威勢は無くなっていた。
「……ねぇ、おば様。次のクリスマス休暇には、また最高品質の香水をプレゼントするわね。だから、おば様も私の欲しい錬金術の材料をプレゼントしてね。人魚の涙とブルーガーネット、後はペットも飼いたいわ。それから、ドラゴンの眼球でしょ?後ね、カ「お黙りなさい!」……ちぇっ。」
「舌打ちは辞めなさい。品がありませんよ…全く、また変なことを言って……まあ、その内の一つくらいならプレゼントしても「やったあ!全部プレゼントしてくれるなんて、おば様は世界一素敵なマダムだわ!じゃあ行ってくるわね!」……全部なんて言っていませんよ!エレナ!お待ちなさい!エレナアアア!」
ドローレスが話している途中にも関わらずエレナは特急に向かって走り出した。そしてそれに続いて、ドローレスも小言を言いながら、エレナが元気を取り戻したようで内心ほっとしていた。
特急の中に入りエレナは空いているコンパートメントを探した。そして先頭車両から三両目の車両まで探してようやくコンパートメントを見つけて、その中に入った。エレナはトランクケースの中から一冊の本を取り出し、トランクケースは座席の上の荷物置きに置いた。それから数分後、彼女のコンパートメントにノック音が響いた。
「どうぞ。」
エレナはすぐに扉の向こう……つまり廊下にいる人物に対して返事を返した。
「失礼するよ。」
コンパートメントに入ってきたのは、エレナと同じくらいの歳に見えるホワイトブロンドの髪を持つ少年だった。
「空いているコンパートメントを探していたんだが、なかなか見つからなくてね。良かったら、相席させて貰えないかな?」
少年はそう言い、私の許可も無く有無を合わさんと言った様子で向かいの席に腰掛けた。エレナは少年の不遜な態度にイラつき、レイブンクローの血筋であるエレナを蔑ろにした少年を睨み付けながらこう言った。
「貴方、私はこのコンパートメントを使用しても良いなんて、一言も言っていないわよ?」
エレナが文句を言うと少年は眉を顰め、傲慢とも言える言葉を口にした。
「……なんだって?なら君は僕にこのコンパートメントを使うなと、そう言ったのか?マルフォイ家の人間であるこの僕、"ドラコ・マルフォイ"に?……成程。お前、さてはマグル生まれだな。穢れた血め。」
少年はエレナがマグル生まれだと考え、嘲笑うようにそう言い放った。しかし、そんな少年の言葉を聞いた瞬間、エレナの頭の中でブチッと何かが切れる音がした。マルフォイ家というワードを妙に強調そして次の瞬間には少年の胸ぐらを摑み上げていた。
「……よくもまあ、この私に向かってそんな言葉を口に出来たわね。」
「なんだって?」
少年は挑発するようにおどけながら、エレナにゴミを見るような目を向けた。しかしエレナはそんな少年の態度を気にもせず、言葉を続けた。
「よおく耳をかっぽじってお聞きなさい、トロールよりも間抜けなマルフォイ坊ちゃん。私は"エレナ・ヴァイオレット・レイブンクロー"よ。レイブンクロー家の現当主にして、将来偉大なる賢者になる魔女よ。ホグワーツの偉大なる創始者の1人であるロウェナ・レイブンクローの直系の一族にして、最後の生き残りであるこの私に?……ああ、そういえば貴方のお父様は死喰い人だったわね。その子供である貴方も闇の魔術に関心があるのかしら?レイブンクロー家の人間がヴォルデモートに殺されたと知りながら、その一族の人間である私にそんな態度を取るなんて、やはり貴方のお父様もアズカバンに収監されるべきだったわ。」
エレナは少年を冷たい目で見下ろしながら、皮肉を交えてそう言い放った。しかし少年はそんなエレナの言葉に顔を赤く染め上げ、怒りを顕にした。レイブンクローという名を出された時は驚きに満ちた表情をしていたが、父親の名とマルフォイ家を批判した瞬間、少年は怒りを見せたのである。
「父上とマルフォイ家を侮辱するな!」
少年はエレナに摑みかかるように身を乗り出し、怒りのままに怒鳴り散らした。しかしエレナはそんな少年の様子を鼻で笑い、言葉を続けた。
「はぁ……せっかく優雅な列車の度を楽しんでいたのに最悪な気分だわ。ドラコ・マルフォイ、私は貴方を許さない。何があっても、貴方を潰す事をお約束しましょう。それでは……ごきげんよう。」
「なっ、逃げるな!待て!」
背後でエレナを呼ぶ声が聞こえたが、エレナは呼び声を無視してトランクケースを持って廊下に出た。そして空いているコンパートメントを探すという、無駄な時間を過ごす事になったのである。
「全く、あの無礼な男のせいで無駄な時間を過ごしてしまったわ。」
コンパートメントをやっとの事で見つけたエレナは荷物を降ろして席に座った後、先程の事を愚痴りながらトランクケースを開けた。中から家から持ってきたサンドイッチを取り出し、少し遅い昼食を摂る事にした。
「それにしても、あの無礼な男……ドラコ・マルフォイだったかしら?次会った時は、必ず痛い目に合わせてやるわ。」
エレナがそう決意を固めてサンドイッチを頬張っていると、コンパートメントにまたもやノック音が響いた。エレナはうんざりしながらも返事を返した。
「……どうぞ。」
「失礼します。ここに相席させて貰えませんか。他はどこもいっぱいなんです。」
少女は困ったように笑いながらコンパートメントを見渡した。そしてエレナと目が合った瞬間、少女はとても驚いた様な顔をした。
「……ロ、ロウェナ・レイブンクロー?」
「……あはは、違うわ。私はエレナ・ヴァイオレット・レイブンクロー。ロウェナ・レイブンクローの直系の子孫よ。」
少女は信じられないものを見たかのように目を見開き、エレナの向かい側の席に腰掛けた。そして興奮したように口を開いた。
「……エレナ・レイブンクローって事は、もしかして例のあの人に家族を殺されてしまったっていう、あの……って、ごめんなさい。こんな話をいきなりしてしまうなんて、礼儀を欠く行為だったわよね。」
少女は申し訳なさそうに謝罪をした。しかしエレナはそんな少女の態度に好感を持ったのか、少女に優しく話しかけた。
「気にしないでいいわ。確かに私の家族含めた私以外のレイブンクロー家の人間は、ヴォルデモートに殺されたわ……でも私はもうその事を乗り越えているの。だから大丈夫よ……えっと、貴方のお名前を伺っても?」
「あっ!自己紹介がまだだったわね!私の名前はハンナ・アボットよ。気軽にハンナって呼んでくれたら嬉しいわ。」
ハンナはそう言うと、人懐っこい笑みを浮かべた。エレナは彼女の笑顔を見てエレナも釣られて笑みを零した。アボット家といえば、聖28一族の純血名言の名だ。代々ハッフルパフに組み分けられ、勤勉で真面目で親切な魔法使いが多いとされている。
「ええ、分かったわ……ハンナね。私の事もエレナと呼んでくれて構わないわ。」
「ありがとう、エレナ。」
それから2人はお互いの家での生活や、ホグワーツでの理想の生活について語り合った。そして話が一段落すると、ハンナは何かを思い出したかのように口を開いた。
「そういえば、今年はあのハリー・ポッターがホグワーツに入学するのよね。例のあの人を打ち倒した英雄……どんな人なのかしら。」
「そうねぇ……まあ、私にとってはどうでもいい事だけど。」
エレナが興味なさげにそう言うと、ハンナは少し寂しそうな表情を見せたが、すぐに笑顔を見せこんな事を話した。
「そういえば、ホグワーツに入学する前に、お父様がこの本をプレゼントしてくれたの。」
ハンナはそう言ってポケットから一冊の本を取り出した。その本の表紙には"世界の様々な魔法生物"というタイトルが記されており、魔法生物の図鑑だという事が分かる。
「まあ、魔法生物に興味がおありなの?」
「興味があるというより、動物が好きなの。良かったら、一緒にこの本を見て見ない?エレナ。私もまだこの本は読んでいないのよね。」
ハンナは目を輝かせながらそう語った。エレナはそんな彼女を微笑ましく思いながら口を開いた。
「ええ、いいわよ。」
2人はそれから魔法生物の図鑑を読みながら、お互いの知識を披露しあった。
それから2時間後、列車はホグワーツに到着した。列車を降りると、既に多くの生徒達が列車の外にいた。そして新入生達に大男が声を掛けた。新入生は彼の案内に従って、歩いていき、湖に到着すると船に乗り込んだ。
「あの船が空いているから、あれに乗りましょう。」
「そうね、それが良いわ。」
エレナとハンナも空いている船に乗り込んだ。すると、乗り込んだ瞬間船は独りでに動き出し、自動でオールを漕いで前に進んでいった。
「そういえば、この湖にはオオイカが住んでいるって噂だけど、在学中に見る事が出来るかしら?」
ハンナは興奮気味にそう語った。エレナはそんなハンナを微笑ましく思いながら、口を開いた。
「きっと見れるわよ……まあ、私は別に興味無いけど。」
「えー!どうして?オオイカってとっても珍しいのよ?」
「所詮、ただの大きなイカでしょう?私だったらもっと美しい生物を見たいわ。」
エレナがそう言うと、ハンナは少し不満そうな表情を浮かべたが、すぐに湖の中に視線を移し注意深く水中を観察し始めた。
今は夜なので、湖の中なんて見えるはずも無い。月光により照らされているからといって、水は水鏡でしかなく、中を見通すなんて不可能だ。ハンナの行動を心の中で馬鹿にしながらも、エレナは彼女の純粋さこそがハッフルパフらしいのだとしみじみ感じた。
船がホグワーツ城の川岸に到着すると、2人は船を降りて歩き始めた。ホグワーツ城の中を進んでいくと、1人の魔女がやって来て、大男と交代し先導し始めた。魔女に先導され、大広間に着くと天井には美しい夜空が広がっていた。
「まあ、凄いわ。とても綺麗ね。」
ハンナは大広間の天井を見上げながら、感嘆の声を漏らした。エレナもそれに同意するように頷いた。それからすぐ、新入生の為の組み分けの儀式が行われる事になるが、それはまた別のお話。