ドローレス・アンブリッジの娘(仮)   作:どんぐりを辿ったら着く書店

5 / 5
エレナの元に恐ろしい手紙が届いてインセンディオしたり、闇の魔術に対する防衛術でクィリナスの匂いに怒って授業をボイコットさせたり、色々やらかしすぎて遂に罰則を受ける事になるが、エレナにとってはご褒美だったりする話。スリザリンとグリフィンドールは授業が受けれなくなって可哀想だし、ハグリッドにはドン引きされるし、トレイシー・デイビスは同室なのでストレスは減少しません。どんまい。



好奇心

自由と我儘との界は、他人の妨げをなすとなさざるとの間にあり。

By 福沢諭吉

 

 

エレナは常に自由に振舞ってきた。彼女がそんな振る舞いを行えたのは、彼女が純血の魔女であり、レイブンクロー家の研究を継ぐ唯一の後継者であり、賢く聡明な少女だったからである。しかし、最近のエレナは自由というよりただの我儘を言い、駄々を捏ねている子供と何ら変わらない。

 

 

自由とは誰かを害さない時にのみ使える言葉であり、誰かに害を成した状況ではその言葉を使う事は許されない。そんな状況で使うべき言葉は我儘である。そしてエレナはルームメイト、スリザリンの同寮生、ホグワーツの教授陣、保護者であるドローレスという多くの人間に迷惑をかけ、害を与えてきた。傍若無人で唯我独尊な青いレディは、最近我儘が行き過ぎている。だからこんなおぞましいものが朝食の席に届けられたのである。

 

 

「……あら、手紙?差し出し人はドローレス・アンブリッジ……おば様からのようね。」

 

 

エレナは器用に封を開け、手紙を取り出す。しかしその瞬間、手紙は大きく上に上がりドローレスの金切り声が大広間に響いた。

 

 

『エレナアア!』

 

 

「ちょ、おば様……こんな事してくるなんて、陰湿にも程があるわよ!流石はスリザリンの卒業生ね!性格が悪過ぎないかしら?」

 

 

エレナに届いたドローレスからの手紙は吠えメールだったのである。

 

 

『貴方は一体なんて事をやらかしてくれたんですか!スリザリンの寮室で錬金術を行い、爆破させ、火災を起こし、大きな穴が空いて湖の水がなだれ込んできたなんて、貴方は一体何を考えているのですか!……ご学友やホグワーツの教授の皆様、そして何よりも先にスネイプ教授に謝りなさい!そして妙な研究なんてやめておしまいなさい!それから、このアタクシにも謝罪なさい!良いですね?今すぐ謝罪をし、二度とホグワーツで錬金術を行わないと誓うのです!良いですね?分かりましたか?』

 

 

「……」

 

 

エレナは吠えメールの内容を全て聞いてから、杖を手に取って手紙に向け、静かに呪文を唱えた。

 

 

「インセンディオ。」

 

 

 

手紙は燃えて灰になり、エレナの朝食の皿の上に降り注いだ。

 

 

「これでよし。」

 

 

「良くないわよ!早くスネイプ教授達に謝ってきなさいよ!レイブンクロー!」

 

 

デイビスが顔を赤くして怒りながらエレナに命令するが、エレナは彼女の命令なんてお構い無しにテーブルの上に置かれたパンに手を伸ばす。

 

 

「それより早く食べましょう?今日は一限に闇の魔術に対する防衛術があるのよ。私、この学問は少し楽しみにしていたのよね。闇の魔術…ねぇ。古代魔法とも密接に関わっているし、是非とも御教授いただきたいわ。」

 

 

「いや、ホグワーツで闇の魔術は学ばないぞ?エレナ。」

 

 

ドラコが呆れながらエレナの言葉に突っ込む。しかしエレナは彼の言葉なんてお構い無しに、上機嫌で朝食を摂るのだった。

 

 

ホグワーツでは闇の魔術に対する防衛術を学びはするが、闇の魔術そのものについては学ばない。防衛術と関連して知識として学ぶ事はあるが、闇の魔術を生徒に伝授するなんて事は有り得ないのだ。そんなに闇の魔術に関心があるのなら、ダームストラング専門学校にでも通えば良かったのが、エレナは別に闇の魔術だけを学びたかったわけではないので、もし通えたとしてもその学校を受験する事は無かっただろう。

 

 

エレナは食事を終えると大広間を出てスリザリンの寮へと戻る事にした。

 

 

「純血」

 

 

合言葉を言い寮に入ると談話室を通って真っ直ぐ自室へと戻った。そして自分の机から闇の魔術に対する防衛術で使う教科書と羊皮紙、羽ペン、黒いインクを掴み、それらを持って寮を出た。

 

 

そのまま防衛術の教室へと向かう。教室に着くと、そこには既にドラコやデイビス、パーキンソン等、スリザリンの全生徒が集まっており、席に着いて談笑していた。エレナはそんな彼らに見向きもせず、空いている席に着席し、教科書を開いて予習を始めた。暫くしてグリフィンドールの生徒も教室内に入ってきたが、エレナの隣の空席を避けるように空いている席は座っていく。そして一番最後に教室にやってきたマグル生まれの生徒であるハーマイオニー・グレンジャーは今日も変わらずエレナの隣に腰掛けた。

 

 

グレンジャーとて、学校一の問題児と揶揄されるエレナの隣に座りたいわけではないが、空いている席がエレナの隣しかないので仕方なくここに座ったのである。エレナは変わり者で勉強に熱心なグレンジャーにさえ、邪険にされている正真正銘の問題児だったのである。

 

 

「で、ではじゅ、授業を……始め、ます。」

 

 

そう授業開始の挨拶を言いながら教室内にやってきた男は、紫色のターバンを頭に巻いて、酷いニンニクの激臭を放ちながら、緊張しているのか震えながら教卓に立った。彼の言葉や珍妙なターバンには目もくれず、多くの生徒は彼から放たれるニンニクの匂いに顔を顰め、口で鼻を覆っている。しかし、エレナはこの匂いを我慢出来る程大人では無かった。かつてのアンブリッジのフランスから取り寄せた香水よりも臭い匂いは、エレナの鼻を曲げてしまいそうな程、おぞましい匂いを放っている為、アンブリッジの香水如きに大声で抗議するような彼女が耐えられるわけがなかったのである。

 

 

「わ、私は、闇の魔術に対する防衛術を皆さんに1年間教える事になったクィ、クィリナ「もう!……くっさいわね!」……ひぃ」

 

 

闇の魔術に対する防衛術の教授を務めるクィリナス・クィレルは名乗る事すら許されず、エレナの大きな声で自己紹介を遮られてしまった。彼女の大きな声と悪鬼の様な態度に驚き、怯えながらエレナを見つめている。

 

 

「臭い、ねぇ臭すぎるわよ!ちょっと!プロフェッサー!そんな匂い撒き散らさないでちょうだい!こんなんじゃあ授業どころじゃないわよ!今すぐシャワーでも浴びてきて!」

 

 

「わ、私は、ル、ル、ルーマニアで吸血鬼に襲われ「言い訳はいらないわ!」……ッ!」

 

 

クィレルが困惑した様にボソボソと呟いていると、エレナは席を立ち上がりクィレルの立つ教卓の前へ向かって歩き始めた。そしてクィレルの前に立つと、思いっ切り頭を掴んで匂いの元であるターバンに向かって彼女が開発した、アンブリッジお墨付きの"良い匂いのする中級香水"を吹き掛けた。すると、香水がターバンに向かってシューッと噴射された瞬間、クィレルがギョッと目を見開いて固まり、数秒後────

 

 

「ぎゃああああっ!!!」

 

 

教室内にクィレルのものとは思えない程低い悲鳴が響きわたり、クィレルは頭を押えながら口をハフハフと開けては閉じてを繰り返し、浅く呼吸し、猛スピードで走りながら教室を出て行った。

 

 

「ふぅ、これで少しは臭くないでしょ?」

 

 

エレナは鼻を押えながら呆然としている生徒達に問い掛ける。クィレルが教室を出て行った瞬間、その匂いから解放されて悶えていた生徒達は、恐怖で目を見開いたままコクコクと頷いた。

 

 

「じゃあ授業を始めましょう!……でも教授がいないわね。」

 

 

「お前のせいだろう!エレナ!今すぐクィレル教授に謝ってこい!今すぐにだ!」

 

 

ドラコがそう言い、エレナに謝るよう何度も繰り返し伝えるが、彼女は彼の言葉に頷く事はなく首を傾げながら話し始めた。

 

 

「あら、そうだったかしら?私はただ、あのおぞましい教授の匂いが授業に不似合いだと指摘し、良い匂いのする香水を吹き掛けただけよ。……つまり、悪いのはあの男で、私はむしろ英雄じゃない!……ねぇ、英雄であるミスター・ポッター!貴方もそう思うでしょう?」

 

 

「え?!」

 

 

突然名前のみ知っているスリザリンの問題児に質問を投げ掛けられ、ポッターは酷く動揺し、上手く言葉を紡げないでいた。

 

 

「ポッター!いくらなんでも今回のことはエレナが悪いと、そう思うだろう?なぁ、そうだろう?ポッター。」

 

 

ポッターは内心驚いていた。まさかあの嫌味でズル賢いドラコが、同寮生のエレナが悪いと言うとは思いもよらなかった。そしてまさか、嫌いであるポッター自信にエレナを批判させようとするなんて、一体誰が想像しただろうか。

 

 

「ぼ、僕は……その、クィレル教授が……えっと……」

 

 

「あ!ご、ごめんなさいね。急に話し掛けたりして。でも私の事、少しは知ってるわよね?私はエレナ・ヴァイオレット・レイブンクローよ。あのヴォルデモートを退けた英雄さん、貴方が一体どんな力で彼を潰したのかはとても興味があるわ。ねぇ、是非いつか貴方の体の隅々まで調べさせてちょうだいね。ふふふ。」

 

 

「……ッ!!」

 

 

ポッターはエレナの最後の発言を聞いた瞬間、全身の肌が栗立ち、毛穴が開き汗が吹き出たような感覚がした。この女はヤバい奴だと、第六感が告げている。

 

 

その後、授業が行われる事は無く、話し声がしない教室を不自然に思ったマクゴナガルがやって来るまで、クィレルのボイコットが判明する事は無かった。

 

 

「ミス・レイブンクロー!また貴方ですか!」

 

 

「ええ?!私は何も悪くないのに!ニンニク臭い教授が悪いのに!理不尽ですわ!」

 

 

 

「言い訳は不要です!私について着なさい!」

 

 

「そんなあ!このエレナ様をこんな風に扱って良いと思っているの?!私の時間を奪うなんて、魔法界の損失よ!損失!」

 

 

マクゴナガルが教室へやって来てエレナ見つけた瞬間、彼女の手を引っ張り、教室を出て行った。エレナはマクゴナガルに引きずられながら、理不尽だと訴えていた。

 

 

そしてエレナは、次の授業の時にはきちんとした格好をしてきたクィレルと対面する事になるのだが……それはまた別の話である。

 

 

 

『あら、教授!しっかりとシャワーを浴びたのですね!これからは毎日そうしてください。後、ニンニクは身に付けないで下さいね!』

 

 

『え、ええ、わ、わかりました……この、小娘が。オレ様をあんな目に遭わせるなんて、許せん……』

 

 

何か呟き声が聞こえるが、クィレルの口は動いていない。エレナはこの事から、クィレルが腹話術を習得したのだと考え、今度レイブンクロー家にある腹話術の参考書を貸してあげようと思った。後日クィレルの元に何故か腹話術の本が届くのだが、その本を見てクィレルのターバンの中の何かが好都合だと言わんばかりに話し始めるのだが、クィレルから二人分の声が同時に聞こえるという奇妙な噂が流れたり、流れなかったりするのだった。

 

 

それから数ヶ月の月日が流れ、マルフォイがポッターに宣戦布告をした。それから数日後、夜時間に出歩いていたドラコとポッター、ウィーズリー、グレンジャーが罰則を受ける事になった。そしてその日の夜、寮室をまたもや爆破させたエレナもスネイプに怒られ、彼らと同じ罰則を言い渡されてしまったのである。

 

 

「……何でレイブンクローがいるんだよ!」

 

 

ウィーズリーが突然連れて来られたエレナを見て訝しげな顔で突っ込む。エレナは彼の質問にうんざりとした様な態度で答える。

 

 

「……はあ、それがね、私が錬金術の研究を寮の自室でしていたんだけど、今回のポーションは途中で必ず爆破を起こさなければならなかった。だから仕方なく、仕方なく、よ?……爆破を起こしたんだけど、その威力がちょっと想定外で、部屋の壁に大きな穴が空いてしまったの。」

 

 

エレナの言葉を聞いたウィーズリーは勿論、ドラコ、ポッター、グレンジャー、引率のフィルチとホグワーツで有名な大男のハグリッド達も呆れて何も言えないでいた。特に生徒達は、遂にあの問題児であるエレナ・ヴァイオレット・レイブンクローが罰則を受けたが、その罰則が自分達と同じだという事実に屈辱的な気分になり、エレナをギロリと睨み付けている。しかしエレナはそんな視線を物ともせずに、禁じられた森へ罰則という形でも入れる事が嬉しくて、この罰則を与えてくれたスネイプに心からお礼を言いたい気分だった。

 

 

「あぁ!スネイプ教授ったら、なんてお優しいのかしら。私の好奇心を満たせるように禁じられた森での罰則を用意してくれるなんて、本当に素晴らしい方だわ。前は融通が効かなくて、不潔で、面倒臭い人だと思っていたけど、彼はとても生徒思いなのね。本当に素晴らしいわ!」

 

 

「……え?」

 

 

「は?」

 

 

「何を言っているのかしら……」

 

 

「……フォ、フォイ?!」

 

 

上からポッター、ウィーズリー、グレンジャー、ドラコと彼女の能天気さとスネイプが与えた罰則の軽さに呆れながら、罰則さえも褒美として考えてしまう問題児の思考にドン引きしていた。そしてそんな彼らを引率するハグリッドはゴミを見るような目でエレナを見つめ、フィルチは何度も舌打ちをしながらブツブツと文句を言っていた。

 

 

今日、エレナを含める5人の生徒は禁じられた森で傷付いたユニコーンを探し助けるという罰則……という名の慈善活動を行わなければならない。エレナはユニコーンの生態について興味があるので、嬉嬉として受け入れているが、他の4人ユニコーンを傷付ける者がいるという真っ暗な森を恐れ、震えていた。

 

 

「さあ、行くぞ。2組に別れて行おう。」

 

 

今から、ハグリッドチームとハグリッドの愛犬のファングチームに生徒を振分けるらしい。エレナは別に誰と一緒でも良いが、レディでありマグル生まれのグレンジャーが魔法界の生物に襲われた時、頼れる人間がいた方が良いと思った。だから、こんな振り分けを提案した。

 

 

「あー、ミスター・ハグリッド。ミス・グレンジャーは女性であり、マグル生まれの魔女でしょう?もし魔法生物に襲われた時、頼れる人間が居た方が良いわ。だから貴方とグレンジャーは一緒に行動すべきよ。それから、ミスター・ウィーズリーとドラコ……ミスター・マルフォイは仲が悪くてユニコーンを探すどころか、森の中で喧嘩してしまいそうだから、彼も貴方と一緒が良いと思うの。私はミスター・マルフォイとミスター・ポッターと一緒で構わないわ。ええ、今からでもとても楽しみよ!早くユニコーンを見せて!解剖させて!その血液を採取させて!」

 

 

「……く、狂っておるな、この少女は。」

 

 

ハグリッドが頭を抑えながらそう呟き、ドラコとポッターは顔を見合せてあからさまに嫌そうな顔をした。

 

 

 

「クソ、なんで僕がポッターなんかと……」

 

 

「こっちだって、マルフォイと一緒なんて嫌だよ。レイブンクローの振り分けは最悪だね。」

 

 

そんなポッターとドラコのやり取りに、ウィーズリーは同情の眼差しをポッターに向け、肩をポンと叩き慰めた。

 

 

「どんまい、ハリー。まあ、数時間の我慢だろ?君なら、なんとかなるさ。」

 

 

「他人事だと思って……」

 

 

ウィーズリーの慰めの言葉を聞いたポッターはため息をつき、彼を薄情者を見るような目で見つめた。

 

 

ちなみに、この罰則が行われる前にハロウィンの日にトロールが出撃したり、第2の吠えメールがドローレスから送られて来たり、ポッターとマルフォイが夜時間に決闘の約束をしたがその約束をポッターがボイコットしたり、飛行訓練後にポッターがクディッチの選手に選出されたり、クリスマス休暇に入ってドローレスに絞られたりしたが、そこら辺はいつか───

 

 

「番外編で触れるかもしれない!」

 

 

「……誰に向かって言っているんだい?エレナ。そんな事より、早く罰則を終わらせてしまおう。」

 

 

「ちょっと待ちなさいな!今、良い所なのよ!……このっ、邪魔しないでちょうだい!」

 

 

そんな事は言いながら、エレナとドラコ、ポッターはファングを連れて禁じられた森の中へと足を踏み入れたのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。