遊☆戯☆王 ポケットモンスターズ   作:木之下ジャンクション

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【ライディング・バトル・ルール】

・形式は普通のポケモンバトル
・互いのトレーナーはライドポケモンに乗って疾走する(自らの足で走ってもいい)
・各ターンの行動順は、特定のコーナーを抜けた順番で決定する(先制ワザは除く)
・素早さを変化させる効果は、その時点でバトル場にいないライドポケモンにも作用する
・手持ちが全員戦闘不能になるorクラッシュ等で脱落すると、そのトレーナーは敗北する


だいたいこんな感じです



50.神速のライドポケモン

 

 高速で過ぎ去る周囲の景色など気にも留めず、海馬とダークの死闘は続く。

 

「リザードンでマニューラを攻撃‼ 吹き飛ばせ、『エアスラッシュ』‼」

 

 先攻を手にした海馬は、爆走するゲノセクトに大胆なドリフトを決めさせながら、後方に目を向け力強く叫んだ。

 頭上を飛ぶリザードンの翼が風を切る。

 

▽リザードン の エアスラッシュ‼

 

 鋭利な()()()()()が次々と放たれ、マニューラに襲いかかった。

 その振動で凍った地面に亀裂が走る。たかが空気と侮るなかれ。圧縮された真空の刃は、凄まじい破壊力を秘めた弾幕そのものである。

 

「ニュラァァァァッ……‼」

 

 幾つもの刃がマニューラに突き刺ささり、美しい毛並みをボロボロに変えた。

 それと同時に、俊敏な身のこなしも鈍くなる。元よりスピードタイプのポケモンであるため、耐久力は然程でもないのだ。

 攻撃力の高いリザードンの一撃を真正面から受けては、マニューラの体力も風前の灯。

 

「くっ……。だが、『きあいのタスキ』の効果を発動……」

 

 ダークは冷静な口調で返す。

 攻撃の余波を受けて渋い表情をしながらも、そう簡単に倒れるつもりはないらしい。

 

「……攻撃を受けたポケモンの体力が満タンなら、戦闘不能になる代わりにHPを1だけ残して耐える」

「ニュ、ニュラ……‼」

 

▽マニューラ は きあいのタスキ で持ち堪えた‼

 

 海馬は、マニューラを顧みて「ふん」と鼻を鳴らした。

 

「虫の息でもちこたえたか。だが、そいつはもう戦えまい?」

 

▽マニューラ は怯んで動けなかった!!

 

「おのれ……」

 

 ダークが舌を打つ。

 攻撃こそ凌いだものの、息も絶え絶えなマニューラは走るのが精一杯。それ以上の身動きができずにいる。

 こうなれば、後は海馬の思うがままだ。

 

「フフ……‼ オレに追いつけぬモンスターにターンは回ってこない‼」

 

 その宣言通り、海馬はゲノセクトのターボを全開にさせたまま直線のコースを突っ走る。

 まるでアクセルベタ踏みのバイクの如し。リザードンが広げた翼の下で風を切り、氷の世界を征く。

 一切の淀みも見せぬライディングテクニックは、流れ去る街並みの中へダークたちを置き去りにした。

 

(追いつけぬ……! このままでは……‼)

 

 いつしかダークは額から汗を流していた。全力のあまり、前のめりになりすぎて地面と激突しそうな角度である。

 もう転倒のリスクなどは度外視だ。敵を抜く事だけを考えて駆け抜けるプライドの走法。

 しかし、それでも海馬の背中はどんどん小さくなっていく。

 

「おのれ……‼」

「いくぞ、オレのターンだ‼」

 

 あっという間に第三コーナーを通過して、海馬が声高に叫んだ。

 

「『かえんほうしゃ』‼」

「リザァ!!」

 

 振り向きざまに放たれるリザードンの得意技。

 炎は怒涛の勢いでコースに広がった。肌身を燃やす紅蓮のカーテンとなってダークたちを待ち受ける。

 すでに結果は見えている。

 しかし、戦いに臨んだ以上、ダークたちはここを突っ切るしかないのだ。

 

「……ッ!!」

 

 炎に照り付けられ、ダークの瞳がギラついた。

 迷いなく『かえんほうしゃ』の嵐に飛び込むと、身を翻して炎の隙間に潜り込む。

 パルクールのように地を滑り、跳ぶ。

 層の薄い箇所を集中的に探しては潜り抜け、どうにか無傷で煉獄の罠を走破した。

 

 だが、彼の横にマニューラの姿は見当たらない。

 

 

「マ……ニュア……」

 

 

 満身創痍のマニューラには、ダークのような芸当をする余力など残されていなかったのだ。

 炎にダイブした段階で、既に体力は尽きている。

 

▽効果は抜群だ!!

 

 炎にまかれて倒れ伏し、再び立ち上がることはなかった。

 

▽マニューラ は倒れた!!

 

「使えない()()だ」

 

 脱落した手持ちを尻目にダークは吐き捨てた。

 ため息をついてマニューラをボールへ戻す。その目は、街を包む冷気に劣らぬほどの冷酷さを湛えていた。

 

「……まぁ、所詮は他人から奪ったポケモン。弱くとも当然だが」

「負け惜しみか? くだらんことをほざく奴よ」

 

 海馬が後ろ目にダークを一笑した。

 

「勘違いするな。貴様の言う雑魚モンスターとやらしか奪えぬのが、貴様の実力の全てだ」

 

 風に舞う前髪の奥から覗く、心底見下したような眼差し。

 遅れを取り続けているダークにとって、これほどまで屈辱的なものもないだろう。

 面皰の下で微かに歯を軋ませ、全速力で突っ走る。それと同時に懐から新たなモンスターボールが取り出される。

 

「……命知らずが。これからお前が味わうのは、ダークトリニティの真の恐ろしさだ……‼」

 

▽ダーク は アギルダー を繰り出した‼

 

 

「ギルダァーッ‼」

 

 

 ダークの手からボールが放たれた瞬間、眩い光と共に勇ましいシャウトがこだました。

 目にも止まらぬ俊敏さで飛び出した影は、付近の凍った電柱や車の数々を蹴って宙を舞い、颯爽とコースへ着地

 マフラーのような帯をたなびかせ、腕を組みながら走る様は正にシノビそのもの。

 ”からぬけポケモン”ことアギルダーが魅せる俊足の登場であった。

 

「ふん、またくだらん忍者ごっこか。それもナメクジとは笑わせる」

 

 が、これも海馬は鼻息混じりに一蹴。

 変わらずダークをこきおろす

 

「まだオレにスピードで勝てると思っているようだが、身の程知らずも甚だしい。次のコーナーは目前、即ちオレの圧倒的優位‼ リザードンの炎で貴様の敗北は決まった‼」

 

 そう宣言して、海馬はゲノセクトを加速させた。ぎゅんぎゅん迫るコーナーを駆け抜ければ、彼の言う通りに決闘(デュエル)は終わる。

 

 ――が、コーナーに差し掛かる瞬間。

 

 

「それはどうかな?」

 

 

 ダークの一言が風向きを変える。

 

「………‼‼」

 

 刹那。ザクリ、と。

 鋭い音が海馬の耳に届いた。

 思わず上げた顔に降り注ぐ冷たい飛沫。

 見れば、飛行するリザードンの背に深々と、手裏剣めいた水流が突き刺さっているではないか。

 

 

「『みずしゅりけん』……。先制ワザだ」

 

 

▽効果は抜群だ‼

 

 ダークが言い放つよりも早く、リザードンの体勢は崩れていた。

 刺さった手裏剣の数は三発ほどだが威力は高い。圧縮された水の刃それぞれが爆発するように弾ける。

 

「ザァァァ……‼‼」

「く……‼」

 

 水圧に押されたリザードンがよろめいた。

 制御できず滑るように落下してくる巨体を、ゲノセクトはすんでのところで回避するが。

 

 

(……しまった‼)

 

 

 急な大回りにより生じた機体のスピン。その、凄まじい遠心力が海馬を襲う。

 咄嗟に足を踏み込んでいなければ、振り回されるがまま路傍に投げ飛ばされていたかもしれない。

 持ち前の体幹でコースアウトを防いだ海馬だったが、それすらダークは面白そうに眺める。

 

「ただでは脱落しないか……。だが、貴様の()()は持つまい‼」

 

 彼の言葉通り。力尽きたリザードンは目を回して、完全に制御を失っていた。

 翼を広げっぱなしのまま、ドンドン道を逸れて曲がり角の建物に向かって飛ぶ。

 海馬はすぐさまモンスターボールを取り出した。

 開閉部分から赤い光線を照射する。光は凄まじい速度のリザードンに追いついて、その体をボールに収納。

 あわや衝突というところで危機を回避する。

 

 が、息つく間もなく追撃が迫った。

 

 

「!」

 

 

 身を捩って避けたのは『みずしゅりけん』の残弾である。

 迸る水流は海馬のコートの裾を僅かに切り裂く。そして、真鍮製の街頭を真っ二つに破壊した。

 

「悪いな。『みずしゅりけん』は連続攻撃。先にリザードンが倒れるものだから、残りはお前の方へ向かってしまったようだ」

「外道め……‼」

「……これも戦術。勝つならどんな手も厭わんさ」

 

 先程よりも近くで聴こえるダークの嘲笑。

『おいかぜ』の利は、立て続けに起こったアクシデントによって覆されていた。

 この失速を好機と見て、ダークは追いついてきたのだろう。

 今や両者の距離にほとんど差はない。

 コーナーを通過したのもほぼ同時だ。

 

(しかし、あの奇襲を受けてまだ落ちぬとはな)

 

 コーナーを曲がる最中、素直に感嘆するダーク。

 数秒前の激しい攻防から一転。熱ったコースには次第に、元の無情の冷気が蘇りつつある。

 一方の海馬は、顔をしかめるのみで一言も発さない。

 その鋭い顔つきを見て、ダークは愉快そうに喉を鳴らした。

 

「……並みのトレーナーならば当に脱落しているだろうが。どうもお前は骨のあるトレーナーらしい。こうなると、ますます引導を渡したくなる……」

「引導か」

 

 ようやく口を開いた海馬が、つまらなさそうに吐き捨てる。

 

「よくほざけたものよ。目の前の勝負から背を向けた時点で、貴様は既に決闘者(デュエリスト)失格だ」

「トレーナーだとか決闘者(デュエリスト)だとか、そんな肩書きは戦いにおいて何の意味もない。最後まで立っていた者が勝つ。それだけのこと……‼」

「………」

「次で確実に仕留めてくれる。さぁ、最後のポケモンを出せ‼」

 

 ダークが突き付けるように言い放った。

 直後、海馬の駆るゲノセクトの眼光が真紅に光る。

 

 

 

【ゲノセクト の ダウンロード】

 

▽ゲノセクトの 攻撃が上がった‼

 

 

 

「言われるまでもない」

 

 ふっと笑い返す海馬。

 

「オレは既にモンスター(ゲノセクト)を召喚済みだ‼」

「……なんだと⁉」

 

 予想外の宣言に思わずダークは耳を疑った。

 確かに、ライドしているとは言えポケモンはポケモン。戦闘に繰り出すことも可能という理屈は分かる。

 だとしても、だ。仮にも自分を物理的に脱落させようとしてきた者を相手に繰り出すとは自殺行為も甚だしい。

 

「正気か……?」

 

 ダークの口から困惑の一言が漏れた。

 それでも海馬は絶対的な自信を持って突き進む。

 

「オレは常識を超越する‼ 走れ、ゲノセクトよ‼‼」

「ゲシャシャシャシャ‼‼」

 

 猛る号令。

 戸惑う敵方の息が乱れた隙にゲノセクトが前進する。

 疾風怒濤の勢いでギアを上げ、風を掴んだ海馬たち。

 フィギュアスケートを想起させる華麗なターンを駆使して、瞬く間に次のコーナーへ滑り込む。

 

「なっ……‼」

 

 この瞬間をスピードに生きる彼らの意地。

 それをまざまざと見せつけられたダークの額に汗が浮かび上がった。

 

(再三手出しされて、まだ加速できるというのか……⁉)

 

「……待て‼」

 

 それでも負けじと後を追う。

 しかし、コーナーを曲がった瞬間。

 彼の虚ろな眼は遂に大きく見開かれることとなる。

 

 

「ッ……‼」

 

 

 ダークが目の当たりにしたのは、轟轟と唸る音に、照り付けるような熱気。

 そして、舞い上がる風と気流にはためく海馬のコート。

 

 

「フフ……‼」

 

 

 海馬の君臨する機体(マシン)——ゲノセクトは、紅い炎を纏っていた。

 

 

「そのワザは……‼ 海馬、自ら自滅するつもりか‼」

「自滅だと? くだらん‼ この海馬瀬人が()()()の炎程度で焼かれると思うな‼」

「な……‼」

 

 

 海馬は、さも当然のように言い切った。

 何か反論しようとしたダークだったが、予想外の連続に言葉が続かない。

 喉はもう乾ききっている。唾を呑み込むので精一杯。

 

「フ……‼ 三下風情が声も出ないか」

 

 そこへ海馬の鋭い声が響いた。

 自らの宣言通り、燃え盛るゲノセクトの上で平然と構える彼は、冷酷な視線を後敵へ向ける。

 

「まぁ、それも当然のこと。このターンで貴様は敗れる」

「お前……‼」

「このオレに戦いを挑んだことを後悔するがいい‼」

 

 そう言い放った傍からゲノセクトの体が翻った。 

 微塵も速度を落とさぬまま、逆走。

 真っ赤に染まった神速の機体が、主人と共に突っ込んでくる。

 

 

「ッ……‼ させるか……‼」

「ギルダァァァ——‼」

 

 

▽アギルダー の みずしゅりけん‼

 

 最後の叫びに呼応し、アギルダーの水流が炸裂する。

 突き付けられた敗北を前にしてなお、一切ぶれないダークの戦術。清々しいまでの先制ワザがゲノセクトを迎え撃つが――

 

 

「そんな反撃は読めているわ‼ 飛ばせ、ゲノセクト‼」

 

 

 ゲノセクトは躊躇うことなく突き進み、水流をいとも容易く凌ぎ切った。

 

 

「く……くっ……⁉」

「終わりだ‼ ゲノセクトの攻撃‼」

 

 

▽ゲノセクト の ニトロチャージ‼

 

 

 炎の力で素早さを高める『ニトロチャージ』。

 限界まで加速し、尋常ならざる速度をものにしたゲノセクトの一撃が今、苛烈な決闘(デュエル)の終局を告げる。

 

 

(……馬鹿な! ゲーチス様の腹心たる、この私が……! 一介のトレーナー如きに敗れると言うのか……‼)

 

 

 ダークたちの眼に、海馬の威光が焼き付いた次の瞬間。

 ぐらり、と。視界が陽炎のように揺れ動く。

 そして立て続けに巻き起こる熱風。

 全てが全身に容赦なく叩き込まれた。

 

 

▽効果は抜群だ‼

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ………‼‼」

 

 

 断末魔が上がり、コースから弾き飛ばされたダークとアギルダーは、派手な音を立てて歩道に投げ出される。

 猛スピードで平らな氷の上を滑りに滑った挙句、付近の柵に激突。

 凍った花壇の上に転がされ、そこでようやく力尽きた。

 

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