ハロー、コマンダー。
ネタバレ注意。
近年ある天文学者が未知の物体が地球に接近していると警告を発していた。さらにはその天文学者は冥王星軌道に違いハウメアという衛星に不審な活動も確認したところ述べた。しかし多くの者はその天文学者の言葉を信じなかった。宇宙人の存在を信じなかったのだ。
そして西暦2022年9月30日深夜、ついに地球はミャンマー郊外に小型の宇宙船が墜落した。
そんな翌日、10月1日早朝。
「コマンダー、起きてください。あなたの懸念通りになりました」
私の意識はそんな言葉で目覚める。
目の前には美人でクールな秘書官、そして私はコマンダーと呼ばれている。アガテミーと呼称される秘密組織の方向性を定める事実上のトップだ。秘密組織なのでわかりやすい組織図があるわけではないけども。今私がいるのはアメリカの某所にある組織所有の屋敷だった。
これは夢ではないのだ。
私は前世、令和の日本にいるどこにでもいる大学生だった。トラックに轢かれて気付けば神様を名乗る存在にとあるストラテジーゲームの存在に転生させられて、この世界にいた。
そのゲームの名前を「Terra Invicta」と言う。地球に宇宙人が襲来し、人類は7つの派閥に分かれて争い、宇宙人に備える。
そんなストラテジーゲームだ。
ゲームでの結末ら内輪で争って核戦争による衰退を経て絶滅か、媚び売って奴隷となるか、はたまたエイリアンに打ち勝つか、地球を捨てて逃げるか。
7つの派閥にはこの機に乗じて権力を手にしようとする奴らやエイリアンも他派閥も敵としか見ない奴らもいる。
冗談ではない。
ここはゲームの世界ではないと転生したばかりの赤子だった私は抵抗した。
派閥が生まれる前に宇宙に対する備えを促す為に若い内からネット活動に励んだり技術研究に投資する為に前世の知識を生かして金儲けしたり、思いつく限り手当たり次第にした。そして今では30歳、まだ若造なのだがアカデミーと呼ばれる秘密組織の司令官になっていた。原作では宰相と呼ばれる存在の1人だったと思うのだが、ここではコマンダーと呼ばれている。
結局いかに前世知識があろうとも個人の力では世の中を動かすのは無理だと痛感し、私自身でマシだと思える派閥のトップに上り詰めたのだ。
アガテミーはエイリアンとの対等な立場を目指す派閥だ。
ちなみにコマンダーと呼ばれるのは私自身は気に入っている。XCOMみたいだし……XCOMというのはTerra Invictaを出したパブリッシャーがそのゲームのmod作成しててそこから起業したらしいんだが良いゲームだった……ちなみにmodというの有志による非公式DLCみたいなもので、DLCというのは……私の前世はインディーゲームを愛するオタクで一般人に説明する言葉を持たない。
「コマンダー、エイリアンの正体も目的も以前不明です。現在地球全体で我々のような組織が水面下で活動を開始したことを確認しました。レジスタンス、人類主義、エクソダス、イニシアティヴ、保護領、しもべを確認しました。コマンダーの仰る通りに備えておくことができましたので、これから各派閥の動向をいち早く察知できます。流石のご慧眼です」
クールな美人秘書に褒められてニヤつく余裕はなかった。このままでは人類はエイリアンか他派閥の奴隷となる。
「詳しい動きに関してなのですが……イニシアティヴはエイリアン病などと称する偽の病を謳い文句に新薬を売り付け暴利を貪ってますし、しもべは教会や貧困層を相手に着実に信者を増やしています……」
「私の予想通りだな。天文学者の確保は?」
なお肝心の前世知識であるが、私に前世の知識があるなんて言っても病院送りになるだけなので高度な推測であるようにしていた。
そのおかげで優秀だと思われて司令官のポジションになったが胃が痛い。
「……申し訳ありません、失敗しました。学者は自殺したそうです。他派閥の暗殺かどうか調査中です。人類主義はエイリアンの仲間だと煽っていましたし、しもべ派閥はエイリアンを敵視するものとして消したがっていましたから……」
天文学者に関してはゲームには詳しいことはないので興味があったのだが、自殺か。
「そうか、暗殺……しもべか人類主義ならやりかねないか……。」
「これからどうされますか?」
「事前計画通りに……まずはこのアメリカを確実に掌握する」
前世では考えられなかったが、国を裏から操るなんてことが、この世界でこの組織にとっては、それが可能なことだった。大多数の国民は操作される存在だった。
胃が痛い。
リアルで秘密組織の指導者になると命のやり取りや部下とのやりとりや他組織の動向とか、ストレスフルではないだろうか。
そう思いながら私の口は動く。
「不幸中の幸いはエイリアンが軌道上からの飽和攻撃などの人類に致命的な攻撃を行なってきていない事だ」
そう、幸いなのはこのエイリアンは人類を滅ぼす気はないのだ。人類を舐め腐ってはいるが……。
「おそらく墜落した宇宙船はエイリアンの偵察だろう。周囲にエイリアンがいないかくまなく捜索しろ。ただし、捜索後の人員に対しての身体検査を必須とする。未知のウィルスや洗脳手法があるかもしれん。注意するんだ。あと計画にはなかったが保有してる衛星や通信装置からエイリアンに向けてあらゆる言語での呼びかけもはじめるんだ。ISSも使え」
エイリアンは無視するだろうが、こういうのはやった方がお得というものだ。今現在アカデミーは国際宇宙ステーションも掌握している。まぁ、現在のところ無用の長物ではあるのだが。
「事前計画通りですと、アメリカに関してはまずカナダメキシコのマスメディアを掌握し外部から外堀を埋めていきます。それに合わせてユーラシア連合に属するカザフスタン、東南アジアではシンガポールの掌握にかかるということでよろしいですね」
「ああ、それで良い。可能であればロシアに手を伸ばしウクライナ戦争を終結させたいところだが……」
2022年、ロシアとウクライナは戦争中だ。
これを止めたかった。ロシアには核兵器もある。できれば他派閥に掌握されたくはない。だが手を伸ばしすぎて失敗は許されない。ゲームと違ってロードしてやり直すことはできないのだ。わかりやすい組織の限界点も表示されない……。本当は前世の生まれ故郷である日本も欲しかった。日本は研究拠点としても優秀だ。だが今はその時ではないのだ。
日本が手に入る時は物事がうまくいって、私の予想では10年後から20年後のことだ。
「既にヨーロッパでは他派閥が重点的に活動を開始した模様です。ロシアにも当然に手が入っています。カザフスタンを超えてロシアまで手を伸ばすとなると本格的な勢力争いは避けられないかと……また日本や韓国北朝鮮にも他派閥の活動の兆候が確認されました。来月には掌握されていることでしょう」
北朝鮮には核兵器がある。
後々どうなることか……胃が、腸が、ストレスがお腹に来る。
「やはりか……わかった。では事前計画通りに。アメリカの確保に関しては失敗は許されない。それと評議員の安全と他派閥の心象には十分気をつけるように。数ヶ月後の国連安保理で我々のマニュフェストは公開する予定だが、我々は隠れて反撃の時を待つのだ。雌伏の時だ。我々は舐められ、侮辱に耐え、しかるべき時までその牙を研ぎ続けるのだ」
「はい、コマンダー。もちろんです。早速評議員に指示を届けてまいります。また研究開発を行います」
「先は長いがゆくゆくはプラズマ兵器やフェーザー、核融合や反物質を実用化しなければな……」
やるだけやっていくしかないな。
ここからエイリアンとの対等な立場、人類の尊厳を守る戦いが始まるのだ。
アカデミーでやる時は深部システム天体観測の研究は早期に終わらせておこうね(合掌)