未完の話がまだまだあるのに新作を投稿しだす作者の屑が居るらしい……
以前没にした話を再構成した物
主人公の個性でヒーローサイドに行くとどう頑張っても「こんな危険人物をヒーローにするとか雄英頭おかしい」ってなるのでこうなった
トガちゃん可愛い、けど弔ちゃんのがもっと可愛い(異端)
ニコニコ復旧記念
幼い頃……個性が発現した時から、天を仰ぎ見るのが癖になっていた。
私は個性の影響か視力が非常に弱く、何も見えないの。
なのに、何故かそうしてしまうのだ。
理由は私にもさっぱり分からない。
気付けばいつも、無意識に上を向くの。
でも、私に許された自由はこれくらいが限界だろうから。
身の程を弁えた趣味みたいな物とも言えるかもしれない。
監視の人達……現役ヒーローに見守られながら、私は小さな丘の上で寝転んでいた。
この丘も施設の敷地内にある場所である。
優しい風が私の頬を撫でる。
風に煽られた長い髪が肩を動く感触がちょっとくすぐったい。
私の個性はとても危険な物だから、誰かが見てないと施設内でさえ自由に動けない。
外に出られるだけ、凄くありがたい事なのは理解している。
今私の事を見ているのは、プロヒーローのミルコさんとリューキューさん。
二人とも特製のマスクを着用している。
結構離れた位置にいるけど、ミルコさんなら一瞬で私の元まで移動できる筈。
リューキューさんも上空で飛び回っています。
ミルコさんは私の事をこう言っていました。
「お前の事なら私は聴覚すら使わずに感知出来る。本能で分かるんだよ、その鱗粉のお陰でな」
この2人はよく私の監視役としてそこそこの付き合いがある。
私が10歳の頃からの付き合いだから……もう5年くらいになるのかな。
学校も通えず、友達も出来ず、楽しみなんて偶に許可された散歩とテレビくらい。
私が周囲からどのように見られているのだろうか。
自分がどんな姿をしているのかすら、私には分からないから。
哀れに思われているのか、化物だと思われているのか。
どう思われてても、私にはそれを否定する権利も無ければ肯定する勇気もない。
私はただ、このまま閉鎖された世界で一生を終えるのみ。
それが皆が最も望む私と言う存在の終わり方だろう。
個性【ウイルス生物】
それが私に名付けられた個性の名前だ。
異形型個性の一種で、身体中の至る箇所に爬虫類のような黒い鱗がある。
さらには、大きな黒い翼と尻尾。
翼の先には凶悪な爪が付いていて、第3の腕としても扱えます。
翼の内側にある皮膜は妖しく光る紫色で、外側から見ると黒い衣を纏っているようにも見える……らしいです。
体液の色まで黒色なんだとか。
個性の名前の由来は、翼等に付着している大量の鱗粉。
ただの鱗粉ではない。
この鱗粉を直接吸い込むと、狂犬病によく似た症状が出るのだ。
凶暴性が増して、物を頻繁に咬んだり、光や音に過敏な反応を示すなど。
最終的には昏睡状態に陥って死に至りかねない危険な物質。
この物質を、研究者達はウイルス似てはいるが非なる物と結論付けたそうだ。
……そんな超が付く危険人物を放っておく事が出来る筈もなく。
ヒーロー達や研究者、他にも様々な人達に私は拘束されている。
私がそこら辺を飛行してウイルスである鱗粉を撒き散らすだけで、悍ましい数の死者が出るだろうから。
今でさえ、抑え切れずに鱗粉が僅かに溢れているの。
残された鱗粉を見つけたら、必ず報告して対策をしなければならないのがこの施設内のルールの一つだ。
この個性の所為で、私は研究施設に押し込まれる事を強要されている。
なんで、ウイルスなんて危険物を撒き散らしてしまうんだろう。
何度も簡素なベッドの中で私はそう思っていた。
私の両親は何て事もない、普通の人だったらしい。
何処にでもいるような人。
個性も良くある物だったそうです。
職員さんの話だと、私が発見される前には既に行方不明になっていたらしいけど。
……私には何となくだけど分かるよ。
その職員は嘘を吐いています。
と、そろそろ部屋に戻らないいけない時間だ。
私は立ち上がって服に付いた土や草を払う。
ここまで言ってて何だけど、私はこの生活に納得している。
私は他人にとっては人間ですらない危険生物同然だから。
この扱いが正しいと断言できるよ、うん。
……そもそも、こうして生きているだけでも譲歩なんだよね。
昔、たしか私が7歳の時だったか。
私の個性に関する実験が行われたのだけど、その際は酷い事件に発展した。
ウイルスを採取する時に研究員がうっかり吸引したのだ。
幸いにも、感染経路は鱗粉を直接吸ったり触れたり発症はしないので他に被害者はいない。
だけど、吸引した研究員はあっさり死んでしまった。
最初はちょっと調子が悪そう、くらいの症状で。
だけど、次第に半狂乱になって暴れ出した。
辺りの物を片っ端から叩き壊し、人が居れば引っ叩き。
最終的には、昏睡状態になってそのまま息を引き取った。
……私は目が見えないから、これは人伝に聞いた話になりますけどね。
ほら、私は危険な存在でしょう?
本能で分かるの。
鱗粉を撒き散らすのは、私にとっては当たり前の事みたい。
無意識に鱗粉は周囲に散らばってしまうの。
意識していれば鱗粉を出さずには居られるけど、凄い違和感があるし。
それに……精神構造も人間とは異なるかもって、研究員さんが言っていました。
私も、一応自覚があります。
実験で死んだ研究員に、あまり罪悪感が湧かないのです。
罪悪感どころか、感想が出て来ないんです。
記憶が余り無いのもあるけれど、人間らしくないと我ながら思います。
……いっその事、リューキューさんのようにドラゴンの姿だったら。
人間らしさなんて考える必要なんかなかったのかな。
まあ、それだと完全に害獣として駆除されてそうだ。
……ああ、こうして考えると私は
下手なヴィランよりもよっぽど危険な化け物。
それが私なんだ。
だから、施設で閉じ込められていても何も文句は言えないの。
いや、文句を言ってはいけないのだろう。
それはきっと、人類に敵対するのと同義なのだから。
だから、私は今日もベッドで夢を見るのだ。
いつか、この翼で……
高い、高い天空を飛び回ってみたいと。
思い切り、身体を動かしてみたいと。
◆ ◆ ◆
「あれ、この子……想像よりもカアイイです!」
誰だろう、この声。
寝静まった時間帯に、珍しく私は目を覚ました。
知らない人の声がしたからだ。
普段ならぐっすり寝ている時間なので、かなり眠気があります。
「危険な個性を持っているって言ってたから、もっと怖い顔をしてるかと思いました!」
目が見えないので分かりませんが、この声は若い女性の声です。
女の子の声……私に同年代の知り合いなんて、一人も居ないのに。
「貴女、誰?」
「あれ〜? もしかして、眼が見えないの?」
「そう言えば、そんな事も言ってましたね」
もう1人分、今度は男性の声がしました。
こっちも知らない声です。
おかしいですね……見張りの人が何人も居るから、見ず知らずの人が通れる訳ないのに。
「私に何か用ですか?」
「そんな所です。ご同行願えますか?」
「えっと……痛い事はしない、ですよね?」
「ええ、貴方が抵抗しなければ勿論」
「ねぇねぇ、ちょっと吸っていいですか?」
「駄目に決まってるでしょう」
す、吸う?
それはどう言う……
あ、もしかして。
「私は猫じゃありませんよ!」
「……猫は吸う物なのですか?」
「え、そうに決まってるじゃん」
「猫は液体って聞きました……触った事もありませんけど」
もしかして、私は変な事を言ってしまったんでしょうか?
「……ごほん。とにかく、此方へどうぞ。自力で歩けますか?」
「ええ、何とか」
私は意識を集中させる。
私は視覚こそ機能してないけど、他の感覚は優れているんです。
嗅覚も味覚も下手な動物よりも優れています。
何となくですが二人の姿の輪郭も掴めました。
そこで、私は疑問が生じます。
「あの……貴方。人に見えないのですが……その身体はどうなってるんですか?」
「おや、目は見えなくても分かるのですね。お気になさらず、これはワープの個性です。ここを通れば目的の場所まで一瞬で辿り着けます」
「そう、ですか……もう一つ聞いていいですか?」
「なぁに?」
「そこの……女性の方から、妙に血の臭いがするのですが……あっ」
言ってしまってから気付いた。
私は生殖機能が完全に無くなっているから無縁だけど、もしかして……
「いえ、何でもないです! 失礼な事を聞いてしまって申し訳ありません」
「え、何考えたの今? 気になります〜」
「……早く行きましょう」
「ああもう、分かりましたぁ」
……あ、そう言えば。
「まだ、名前を聞いていませんでしたね。貴方達の名前は?」
「……私の事は黒霧とお呼びください」
「私はトガヒミコ! よろしくね、黒味ちゃん!」
「よ、よろしくお願いします」
もう夜なのに元気だね、この人達は。
ふわぁ、私はまだ眠いや……
でも、これは聞いておかなきゃ。
「私は連れて行かれた先で何をするんですか?」
「まずはウイルスの採取をする……と聞いております」
「……危険ですよ?」
「最大限配慮して行いますから平気ですよ」
「多分ねー」
「こら、不安にさせる事を言わない」
……この人達って、何者なんでしょうか。
悪い人じゃなさそう……いや、全然悪い人かも。
ヒーローの人達は良い人だって分かるけど、悪い人と聞かれても私にはあまりピンと来ないんだ。
「……私の個性を、悪用したりしませんか?」
最後にこれだけ聞いておこう。
「……」
「悪用って、例えば?」
「えっと……採取したウイルスをばら撒くとか?」
ちょっと街中でばら撒くだけで、大規模なテロを起こせる筈。
もしくは飲食店とかにこっそり仕込むとか、やり用は幾らでもありますね。
「どうなんですか?」
「貴方の意志には、なるべく従うつもりですよ」
私は、この人達に着いて行くべきなのかな。
どうしたら良いのかな。
……こんな時に迷ってるなんて意志が弱いな、私。
別に悪用されても私はきっと罪悪感を抱く事はないだろう。
私が迷っているのはそれが理由じゃないの。
理由じゃない、と思うんだけど……
誰かを殺したい訳じゃない。
こんな個性の所為で不自由な生活を送るのを強要されているけど、誰かが憎い訳じゃないんだ。
何だろう、このもやもやとした気持ち……
「キミはどうしたいんですか?」
唐突に、トガヒミコさんがそう口にしました。
……私がしたい事?
「それは、どう言う……」
「周りの面倒臭い事柄関係無くさ、キミは何をどうしたいんですか?」
私が、したい事……
「……私がやりたい事をすると、きっと皆に迷惑が掛かるから」
「生きている限り、誰かに迷惑掛けるなんて普通じゃん?」
「え……」
生きている限り、誰かに迷惑掛けるなんて普通……
「私は普通に生きると決めています! だから、黒味ちゃんも普通に生きたらいいんじゃないでしょうか!?」
「……まだよく、分からないけど」
自分の為に生きるって事が、私には理解できない。
きっと誰も私が自由に生きる事を望まないと思う。
私だけが私の自由を望んでいるんだ。
「……そうですね。少しだけ、考えてみたいと思います。私の生き方」
「分かりましたー。じゃ、行きましょ!」
私はいきなり手を掴まれました。
私と同じくらいの大きさの手です。
思っていたより、暖かいな。
思えば、誰かにこんな風に手を握られたのは……初めてでしたね。
主人公は無性です
あしからず
多分続かない